140 / 528
第二部
140「冒険者ギルド(1)」
しおりを挟む
「じゃ、よろしくねー」
というレナの言葉を最後に、さっさと『帝国』の商館を後にする。
もちろんハルカさんがちゃんと別れの挨拶をしているが、総出でお見送り状態は大国のVIP気分どころか引いてしまう。
「あーっ、肩凝ったーっ!」
徒歩で移動して『帝国』の商館が見えなくなると、ハルカさんが両腕を空に上げて大きく伸びをする。
オレ達3人も同じような心境だ。
「お疲れ様ー」
「お疲れ、ハルカさん」
「お疲れ様。だがその割には、今朝は少し元気だったじゃないか?」
それぞれ労いの言葉をかけるも、シズさんは見なくてもいいところは見ていたらしい。
そんな小さな変化をシズさんが確認したのなら、オレとしては嬉しいところだ。
「そう? フカフカのベッドで寝られたからかしら」
「リビングの様子からだと、かなり早起きしていたようだが?」
「シズさんが、ゆっくり寝すぎなんですよ」
「どうせ二人でいちゃついてたんでしょ。ボクもショウとイチャイチャしたいかもーっ」
「私とイチャイチャすればいいだろ。百合プレイなら、ショウも喜んでくれるぞ」
そう言ってシズさんがボクっ娘に後ろからガバッと抱きつく。
そしてオレに抱きつくゼスチャーだけしていたボクっ娘も、そのままシズさんに抱きつき返す。
「ショウって、どこまで変態オタクなの?」
オレの関係のないことで、ハルカさんに蔑んだ目で見られてしまった。
それなのにシズさんとボクっ娘は、そのままじゃれ合っている。
「濡れ衣だ。オタクに変態までつけないでくれよ。オレ健全だぞ」
「エロい事期待してるから、健全じゃないでしょ」
「これだけ可愛い子と一緒なんだから、期待するくらい良いだろ」
「期待以上はしないでね」
思わず本音が出たが、ハルカさんの少し温度低めの目線が怖い。
「でも、周りから見ればハーレムパーティーだよねー」
「そうか? 私は大奥だなと思っていたが」
じゃれ合いながらも、二人は突っ込みを忘れない。
しかも何か聞き捨てならない言葉がシズさんから出た。
「お、大奥?」
「ああ、ショウだけにお小姓な」
「お殿様じゃないんだ」
「まあ従者だし、間違ってないわね」
豪華だけど堅苦しい場所からの開放感から、しょーもない事を話しつつハーケンのお大通りを歩く。
人口5万だけど、商用などでの滞在者も多いので、街の中心部はとても活気がある。初めて来るこっちの都会に気分も高揚する。
なお、『帝国』の商館が建っている辺りは城壁の内側のさらに中枢部にあり、目の前には大通りがあって、すぐ近くに街の中心で6方向に道が伸びる大広場に出る。
そして相当広い大広場に面して、市庁舎、神殿、魔道士協会、商業ギルド会館、劇場、博物館がそれぞれの面に建っている。
南側に市庁舎、北側に神殿は、オクシデント共通だ。
広場は大きく中心では露天の市が毎日開かれ、大道芸人、吟遊詩人などが芸を披露している。
その中には、どう見てもバンドマンな人もいる。歌と音楽はもちろん、雰囲気と出で立ち、そして聞いた事のある歌からも『ダブル』なのは丸分かりだ。
そのバンドマンには、同郷のよしみでみんな少し多めにおひねりを入れ、軽く応援の言葉をかけていく。
しかし目的地は大広場ではない。
神殿は後回しなので、まずは『帝国』商館とは別の道に面している冒険者ギルドだ。
「思ったより立派な建物だな」
「破産した大商人から買い取ったっという噂だ」
「入る前に予備知識もう少し教えといて下さい」
オレの言葉に、みんなの雰囲気は気楽そうだ。
やはり、ご同輩達が作った組織だからだろうか。
「そんなに構えなくて大丈夫だよー」
「試用期間中だって言えば、たいてい優しく教えてくれるわよ」
「そのための組織でもあるからな」
そう言いつつ大きな扉をくぐると、まずは天井の高い大きなホールになっていた。
建物の中だけど、窓にガラスがはまっている上に、魔法の明かりで照らされているので意外に明るい。
ホールの一角は、かなりの広さのバー兼カフェになっていて、何人もの『ダブル』もしくは冒険者がくつろいでいる。
会議に使うような衝立などでパーテーションされた一角もあり、そこにも何組かのパーティーがたむろしている。
ホールの奥には、古い映画で見るような銀行のカウンターのような区画がある。
依頼の引き受け、各種登録、物品の売買、金品の預け入れや引き出しなどを行う場所だ。特にお金を扱う場所には、ガードマンらしき人まで立っている。
また一角には、冒険者ギルドのお約束とばかりに、依頼の張り出し用の掲示板がある。
文字を含むチラシや書き込みばかりなので、文字が普及していないとできないことだ。
緊急依頼などは、側に掲げられた大きめの黒板に書き出されたりもしている。
「何というか、ファンタジーと言うより、どこか見覚えのある雰囲気だな」
「そりゃ『ダブル』が整えた施設だからね。さ、まずはどうするー?」
「ショウとシズの登録。その後にお金の預け入れ。最後に買い物の順でしょうね」
「じゃ、さっさと済ませようか」
「そう簡単には済まないだろがな」
シズさんの言葉通り、簡単には済まなかった。
職員はこっちの人も多くいるみたいだけど、なまじ『ダブル』が運営しているのでどこかゲーム的だ。
まずは登録料を払って登録する。
登録は、簡単な書類を書き、一種のマジックアイテム化されている登録プレートに名前を彫り込んで血判して、ギルド所属の魔法使いがちょっとした魔法を施せば完成だ。
マニュアル化されているので、ものの10分もあれば終わることだった。
この登録には錬金術の使い手が職員にいて、ゲームっぽさも醸し出している。
けど、このままだと最低のEランク認定で、ギルドでは危険回避という理由でEランク相当の依頼しか受けられない。
このあたりは、実に『ダブル』が作ったゲーム的なシステムだ。
ちなみにEランクは一般人並みの力しかなく、魔物退治よりは町の雑用を行う。『ダブル』としては、試用期間中も現す。
そして冒険や危険な依頼を受ける気の無い『ダブル』も、互助組合に所属する意味もあってギルドに所属だけするので、その為のEランク設定と言う意味もある。
Eランクは、危険な事が無理な能力しか持たないと同時に、危険な事をしないというサインでもあるのだ。
けどオレ達は、今後の事もあるのでそれ以上の評価をもらう事にした。
2属性以上の属性を持つ魔法職の場合の実力判定は、まずは備え付けのマジックアイテムで魔力総量を計測する。
測定は神殿の聖杯を真似たもので、魔法使いの職員立ち会いで手に触れるだけのお手軽なものだ。
そのあと、どの程度の魔法が使えるかを申告制で登録し、そのうち試験場で使える最高位の魔法を行使して確認する。
そしてシズさんは、登録時から注目の的だった。
なにしろ尻尾が5本もある獣人なので、扉をくぐった時から只者ではないと見られており、登録から模擬戦までまるでVIP扱いでスムーズに行われた。
そして裏庭に設置されている閉鎖型の円形模擬戦場で、フォース・スペルの「煉獄(インフェルノ)」を空間一杯に展開した時点で、沢山押しかけていたギャラリー全員が観覧席から慌てて逃げ出してしまった。
なお、このエリアは、元大商店の倉庫と馬場を利用していて、町の一区画の裏庭の広い範囲を利用している。
そこに丈夫な石造りの体育館のような模擬戦場と運動場のような場所もあり、小さな学校程の広さがある。
だから、かなりの規模の魔法でも行使可能だ。
シズさんの検査はそれで終わりながら、暫定で魔力総量はS、魔法は自己申告を含めてフォース・スペルとしたので、恐らくSランクだろうとコメントされつつも冒険者Aランクで刻印・登録された。
Sランク認定は、ノヴァトキオの本部でしか出来ないからだそうだ。
けど、いきなりのAランクでも非常に珍しく、渡米していきなりメジャーリーグにエントリーした一流選手のようなものらしい。
Aランクですら、Cランク以上で100人に1人いるかどうかと言われるのだから当然だろう。
しかもSランクともなると、オクシデント全体で100万人に1人と言われる程の逸材なのだ。
一方戦士職は、魔力総量の測定は同じだけど、その場にいる教官や有志の冒険者との模擬戦で判定する。
しかし戦闘能力が高すぎる場合は、ノヴァトキオの冒険者ギルド本部に行く必要があるなど意外に面倒だ。
それ以外だと、登録後に依頼を受けて実力を示してランクを上げるしかない。
なお、直接戦闘しない、もしくはする気がない場合は能力、技術を形だけ判定して、受ける側に特に異存がない場合はEランクの認定を行う。
しかし『ダブル』は魔力総量が多いので、純粋に判定すると最低でもDランクになる。
戦う気がない者だけが、Eランク認定を受けるのが普通だ。
またこれは、初回入会者に限らず、既存の会員も手っ取り早いランクアップのために受けることができる。
ただし通常は、受けた依頼の質と数で判断される。
オレの場合、今までこなしてきた戦闘と魔力量から、技能はAからB、魔力総量はS、総合でA程度だろうと3人から言われたが、冒険者ギルド抜きでは認定されない。
ギルドの外で第三者が判断する場合もあったが、説明を聞いている時点で色々面倒になったので、敢えて低めの認定を得ようと考えた。
そこでシズさんに頼んで、魔力移譲の実験代わりにオレの魔力の一部を3人に移せるだけ移してから測定し、その上で模擬戦をしてもらった。
そうしたら戦闘技能、魔力総量ともにBとなった。冒険者ランクの方も、試用期間中ながらBランク認定だ。
普通試用期間中はDかCくらいで、いきなりBランク認定というのも珍しい。
なお、戦闘技能の判定については、このギルドにAランクの者が十分に居なかったのでBまでだった。十分な数のAランクは、ノヴァにでも行かないといないらしい。
試験官は最高でBランクで、最終的には彼が力量を見る。
しかし最初はCランクの試験官が相手だ。ゲームなどと違って、魔物や猛獣と戦ったりはしない。
異世界転生作品と違い、無駄に肌の露出の多い美少女試験官が登場したりもしない。相手は普通のお兄さんだ。
そしてCランクの人には呆気なく一本取ったあと、その後何度か同じ様にしたけどどれも、あっという間に模擬戦が終わる。
剣道の試合よりも、よほど楽だった。
そしてBランクの試験官を相手にしたのだけど、これも見た目は普通のお兄さんだ。強キャラって感じもない。
見た目で魔力はそれほど高くは感じず、当然というべきかハルカさんより明らかに動きが悪かった。
技量の方も、あまり強いとは思えなかった。
試験の事は、魔力を返してもらった後で3人に話してみると、魔力総量を減らしてそう思うのなら、オレの技能はB以上は確定だろうとのことだ。
思わず、どれだけハルカさんにブートキャンプされてたのだろうかと思ってしまう。
ただ、そのやり取りをギルド会館のラウンジで話している時に、偶然通りかかった連中に聞かれてしまった。
というレナの言葉を最後に、さっさと『帝国』の商館を後にする。
もちろんハルカさんがちゃんと別れの挨拶をしているが、総出でお見送り状態は大国のVIP気分どころか引いてしまう。
「あーっ、肩凝ったーっ!」
徒歩で移動して『帝国』の商館が見えなくなると、ハルカさんが両腕を空に上げて大きく伸びをする。
オレ達3人も同じような心境だ。
「お疲れ様ー」
「お疲れ、ハルカさん」
「お疲れ様。だがその割には、今朝は少し元気だったじゃないか?」
それぞれ労いの言葉をかけるも、シズさんは見なくてもいいところは見ていたらしい。
そんな小さな変化をシズさんが確認したのなら、オレとしては嬉しいところだ。
「そう? フカフカのベッドで寝られたからかしら」
「リビングの様子からだと、かなり早起きしていたようだが?」
「シズさんが、ゆっくり寝すぎなんですよ」
「どうせ二人でいちゃついてたんでしょ。ボクもショウとイチャイチャしたいかもーっ」
「私とイチャイチャすればいいだろ。百合プレイなら、ショウも喜んでくれるぞ」
そう言ってシズさんがボクっ娘に後ろからガバッと抱きつく。
そしてオレに抱きつくゼスチャーだけしていたボクっ娘も、そのままシズさんに抱きつき返す。
「ショウって、どこまで変態オタクなの?」
オレの関係のないことで、ハルカさんに蔑んだ目で見られてしまった。
それなのにシズさんとボクっ娘は、そのままじゃれ合っている。
「濡れ衣だ。オタクに変態までつけないでくれよ。オレ健全だぞ」
「エロい事期待してるから、健全じゃないでしょ」
「これだけ可愛い子と一緒なんだから、期待するくらい良いだろ」
「期待以上はしないでね」
思わず本音が出たが、ハルカさんの少し温度低めの目線が怖い。
「でも、周りから見ればハーレムパーティーだよねー」
「そうか? 私は大奥だなと思っていたが」
じゃれ合いながらも、二人は突っ込みを忘れない。
しかも何か聞き捨てならない言葉がシズさんから出た。
「お、大奥?」
「ああ、ショウだけにお小姓な」
「お殿様じゃないんだ」
「まあ従者だし、間違ってないわね」
豪華だけど堅苦しい場所からの開放感から、しょーもない事を話しつつハーケンのお大通りを歩く。
人口5万だけど、商用などでの滞在者も多いので、街の中心部はとても活気がある。初めて来るこっちの都会に気分も高揚する。
なお、『帝国』の商館が建っている辺りは城壁の内側のさらに中枢部にあり、目の前には大通りがあって、すぐ近くに街の中心で6方向に道が伸びる大広場に出る。
そして相当広い大広場に面して、市庁舎、神殿、魔道士協会、商業ギルド会館、劇場、博物館がそれぞれの面に建っている。
南側に市庁舎、北側に神殿は、オクシデント共通だ。
広場は大きく中心では露天の市が毎日開かれ、大道芸人、吟遊詩人などが芸を披露している。
その中には、どう見てもバンドマンな人もいる。歌と音楽はもちろん、雰囲気と出で立ち、そして聞いた事のある歌からも『ダブル』なのは丸分かりだ。
そのバンドマンには、同郷のよしみでみんな少し多めにおひねりを入れ、軽く応援の言葉をかけていく。
しかし目的地は大広場ではない。
神殿は後回しなので、まずは『帝国』商館とは別の道に面している冒険者ギルドだ。
「思ったより立派な建物だな」
「破産した大商人から買い取ったっという噂だ」
「入る前に予備知識もう少し教えといて下さい」
オレの言葉に、みんなの雰囲気は気楽そうだ。
やはり、ご同輩達が作った組織だからだろうか。
「そんなに構えなくて大丈夫だよー」
「試用期間中だって言えば、たいてい優しく教えてくれるわよ」
「そのための組織でもあるからな」
そう言いつつ大きな扉をくぐると、まずは天井の高い大きなホールになっていた。
建物の中だけど、窓にガラスがはまっている上に、魔法の明かりで照らされているので意外に明るい。
ホールの一角は、かなりの広さのバー兼カフェになっていて、何人もの『ダブル』もしくは冒険者がくつろいでいる。
会議に使うような衝立などでパーテーションされた一角もあり、そこにも何組かのパーティーがたむろしている。
ホールの奥には、古い映画で見るような銀行のカウンターのような区画がある。
依頼の引き受け、各種登録、物品の売買、金品の預け入れや引き出しなどを行う場所だ。特にお金を扱う場所には、ガードマンらしき人まで立っている。
また一角には、冒険者ギルドのお約束とばかりに、依頼の張り出し用の掲示板がある。
文字を含むチラシや書き込みばかりなので、文字が普及していないとできないことだ。
緊急依頼などは、側に掲げられた大きめの黒板に書き出されたりもしている。
「何というか、ファンタジーと言うより、どこか見覚えのある雰囲気だな」
「そりゃ『ダブル』が整えた施設だからね。さ、まずはどうするー?」
「ショウとシズの登録。その後にお金の預け入れ。最後に買い物の順でしょうね」
「じゃ、さっさと済ませようか」
「そう簡単には済まないだろがな」
シズさんの言葉通り、簡単には済まなかった。
職員はこっちの人も多くいるみたいだけど、なまじ『ダブル』が運営しているのでどこかゲーム的だ。
まずは登録料を払って登録する。
登録は、簡単な書類を書き、一種のマジックアイテム化されている登録プレートに名前を彫り込んで血判して、ギルド所属の魔法使いがちょっとした魔法を施せば完成だ。
マニュアル化されているので、ものの10分もあれば終わることだった。
この登録には錬金術の使い手が職員にいて、ゲームっぽさも醸し出している。
けど、このままだと最低のEランク認定で、ギルドでは危険回避という理由でEランク相当の依頼しか受けられない。
このあたりは、実に『ダブル』が作ったゲーム的なシステムだ。
ちなみにEランクは一般人並みの力しかなく、魔物退治よりは町の雑用を行う。『ダブル』としては、試用期間中も現す。
そして冒険や危険な依頼を受ける気の無い『ダブル』も、互助組合に所属する意味もあってギルドに所属だけするので、その為のEランク設定と言う意味もある。
Eランクは、危険な事が無理な能力しか持たないと同時に、危険な事をしないというサインでもあるのだ。
けどオレ達は、今後の事もあるのでそれ以上の評価をもらう事にした。
2属性以上の属性を持つ魔法職の場合の実力判定は、まずは備え付けのマジックアイテムで魔力総量を計測する。
測定は神殿の聖杯を真似たもので、魔法使いの職員立ち会いで手に触れるだけのお手軽なものだ。
そのあと、どの程度の魔法が使えるかを申告制で登録し、そのうち試験場で使える最高位の魔法を行使して確認する。
そしてシズさんは、登録時から注目の的だった。
なにしろ尻尾が5本もある獣人なので、扉をくぐった時から只者ではないと見られており、登録から模擬戦までまるでVIP扱いでスムーズに行われた。
そして裏庭に設置されている閉鎖型の円形模擬戦場で、フォース・スペルの「煉獄(インフェルノ)」を空間一杯に展開した時点で、沢山押しかけていたギャラリー全員が観覧席から慌てて逃げ出してしまった。
なお、このエリアは、元大商店の倉庫と馬場を利用していて、町の一区画の裏庭の広い範囲を利用している。
そこに丈夫な石造りの体育館のような模擬戦場と運動場のような場所もあり、小さな学校程の広さがある。
だから、かなりの規模の魔法でも行使可能だ。
シズさんの検査はそれで終わりながら、暫定で魔力総量はS、魔法は自己申告を含めてフォース・スペルとしたので、恐らくSランクだろうとコメントされつつも冒険者Aランクで刻印・登録された。
Sランク認定は、ノヴァトキオの本部でしか出来ないからだそうだ。
けど、いきなりのAランクでも非常に珍しく、渡米していきなりメジャーリーグにエントリーした一流選手のようなものらしい。
Aランクですら、Cランク以上で100人に1人いるかどうかと言われるのだから当然だろう。
しかもSランクともなると、オクシデント全体で100万人に1人と言われる程の逸材なのだ。
一方戦士職は、魔力総量の測定は同じだけど、その場にいる教官や有志の冒険者との模擬戦で判定する。
しかし戦闘能力が高すぎる場合は、ノヴァトキオの冒険者ギルド本部に行く必要があるなど意外に面倒だ。
それ以外だと、登録後に依頼を受けて実力を示してランクを上げるしかない。
なお、直接戦闘しない、もしくはする気がない場合は能力、技術を形だけ判定して、受ける側に特に異存がない場合はEランクの認定を行う。
しかし『ダブル』は魔力総量が多いので、純粋に判定すると最低でもDランクになる。
戦う気がない者だけが、Eランク認定を受けるのが普通だ。
またこれは、初回入会者に限らず、既存の会員も手っ取り早いランクアップのために受けることができる。
ただし通常は、受けた依頼の質と数で判断される。
オレの場合、今までこなしてきた戦闘と魔力量から、技能はAからB、魔力総量はS、総合でA程度だろうと3人から言われたが、冒険者ギルド抜きでは認定されない。
ギルドの外で第三者が判断する場合もあったが、説明を聞いている時点で色々面倒になったので、敢えて低めの認定を得ようと考えた。
そこでシズさんに頼んで、魔力移譲の実験代わりにオレの魔力の一部を3人に移せるだけ移してから測定し、その上で模擬戦をしてもらった。
そうしたら戦闘技能、魔力総量ともにBとなった。冒険者ランクの方も、試用期間中ながらBランク認定だ。
普通試用期間中はDかCくらいで、いきなりBランク認定というのも珍しい。
なお、戦闘技能の判定については、このギルドにAランクの者が十分に居なかったのでBまでだった。十分な数のAランクは、ノヴァにでも行かないといないらしい。
試験官は最高でBランクで、最終的には彼が力量を見る。
しかし最初はCランクの試験官が相手だ。ゲームなどと違って、魔物や猛獣と戦ったりはしない。
異世界転生作品と違い、無駄に肌の露出の多い美少女試験官が登場したりもしない。相手は普通のお兄さんだ。
そしてCランクの人には呆気なく一本取ったあと、その後何度か同じ様にしたけどどれも、あっという間に模擬戦が終わる。
剣道の試合よりも、よほど楽だった。
そしてBランクの試験官を相手にしたのだけど、これも見た目は普通のお兄さんだ。強キャラって感じもない。
見た目で魔力はそれほど高くは感じず、当然というべきかハルカさんより明らかに動きが悪かった。
技量の方も、あまり強いとは思えなかった。
試験の事は、魔力を返してもらった後で3人に話してみると、魔力総量を減らしてそう思うのなら、オレの技能はB以上は確定だろうとのことだ。
思わず、どれだけハルカさんにブートキャンプされてたのだろうかと思ってしまう。
ただ、そのやり取りをギルド会館のラウンジで話している時に、偶然通りかかった連中に聞かれてしまった。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる