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第八章 真なる聖剣
914 封鎖された地下通路の探索
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城の地下への入り口の壁が取り払われ、細かい仕上げを残してはいるものの、いちいち聖女の力を借りる必要なく、アドミニス殿の元へ行けるようになるようだ。
半ば弟子入りのお試し期間中であるルフは、聖女に行き来を手伝ってもらうなど畏れ多いとのことで、ここ数日はずっと地下に泊まり込みであり、精神的な消耗が予想出来る。
早く迎えに行ってやりたい。
とは言え、この数日で耐えられないようなら、本格的な弟子入りなど出来ようはずもないので、ここは踏ん張りどころかもしれない。
さて、このもともとの地下通路は、長年塞いでいたこともあり、確認が終わるまで使用禁止とされたが、俺達が安全確認をするということで使用許可をロスト辺境伯からもらった。
「くれぐれも無茶はしないように」
と念を押されたが、聖女が同行するからだろう。
万が一通路が崩れたとしても、聖女がいる限り大丈夫だとは言えない雰囲気である。
「ルフは元気でしょうか? 泣いていないといいのですが」
いつの間にかルフに対してお姉さんのような気持ちになっていたらしい聖女を始めとするうちの女性陣が、ここ数日地下にこもりっきりとなってしまったルフを心配していた。
本人は女性達の部屋に泊まるよりも、地下のほうが気楽ですみたいなことを言っていたが、わざわざ知らせる必要はない。
十歳というと、そろそろ異性を意識し始める頃だからな。
やっぱり辛いものがあったのだろう。
「うわぁ、ボロボロだな」
正規の通路は、何十年も手入れされずに封鎖されていたので、もともと貼ってあった壁の装飾や、魔道具の灯りなどは、手を入れなければいけない状態になっていた。
魔道具は銅か何かでで作られていたらしく、くすんだ緑にほぼ侵食されいて、刻まれた魔法陣が崩れている。
これに手を入れるよりは全部取り替えたほうが早いだろう。
アドミニス殿が喜んで作るかもしれない。
あと、ずっと動かないでいた空気が淀んていて、メルリルが風を招き入れようとしたが、うまくいかないようだ。
「ここの風の精霊はもう消え失せているみたい。もともと建物のなかはほとんど入れないみたいだったけど、ここは露骨に嫌がるの」
「ガスが溜まっているとマズいし、原始的だが松明を点けて確認しながら行くか?」
「わたくしが周囲を浄化しつつ進みましょうか?」
メルリルの精霊が駄目となると、昔ながらの方法で安全確認をしなければならない。
そう思っていたが、聖女が力技の提案をして来た。
乱暴だが確実な方法だ。
「結界と違って、ただ維持していればいいだけの魔法じゃないんだよな?」
「はい。一定範囲を浄化するだけの魔法なのでそれなりに範囲は広げられますけど、それでも五十歩に一度ぐらいは掛け直したほうがいいと思います」
「キツくはないか?」
「全然平気です。毎朝の走り込みのほうがキツいぐらいです」
「ははっ、体力は大事だから、朝の鍛錬は続けるんだぞ」
「はい!」
聖女はユーモアを交えつつ、魔法の負担が軽いことをアピールした。
まぁ実際、聖女の負担になる魔法の規模というものが想像出来ないからな。
さすがにいくつか並列で魔法を使うと辛いらしいが、あれは、魔力量の話ではなくて、技術的な問題だ。
というか、一度に複数の魔法を使える時点で、聖女はちょっとおかしい。
ちなみに勇者は魔力による身体強化を使いながら魔法を放つことは出来るが、それは複数の魔法を使ううちには入らないからな。
俺自身は魔法を使わないので、よくわからないが、勇者によると、魔法というのは、手を使わずにものを作るような感じということだ。
つまり聖女は、同時に何種類かの違うものを作ることが出来るということになる。
もはや想像の余地を超えているとしか思えない。
「淀みよ去れ、すがしき大気よ、湧き上がれ」
聖女が唱えるたびにふわりと空気が動き、まるで広々とした平原にいるかのような清々しい空気が満ちる。
「精霊の元のようなものがキラキラ光ってる。魔法って不思議」
「精霊は、意思を持つ魔力だって言ってたもんな。ある意味、魔法は意思を乗せた魔力だ。少しは近いものがあるのかもしれない」
「ダスターはものの理解が深くて、凄い」
メルリルに感心されてしまったが、贔屓の引き倒しだと思うぞ?
そもそもそういう説明をしたのはメルリルなんだからな。
というか、前に聞いたところ、聖女の魔法の大半が、オリジナル魔法なのだそうだ。
びっくりだな。
あと、聖女が開発した魔法は、ほかの普通の聖女や聖人には使えないっぽい。
魔法には、魔力量と相性とコントロールが必要とのことで、聖女はその三つ全てが揃っている稀有な存在とのことだった。
普段何気なく魔法を使ってもらっているが、よくよく考えてみれば凄い相手なのだ。
そんな相手の師匠とか言われると、何の冗談だ? という気持ちになるのは当然のことだと思う。
本当は勇者も同じなんだが、あいつはまだメンタル面の問題と、根気の無さという、俺にも指導出来る部分があったからな。
その点、聖女は最初人見知りだったぐらいで、さしたる欠点がない。
師など必要ないのだ。
そんなことを考えつつ、周囲に意識を向けて進む。
「うーん。ミュリアの魔法のおかげで大事になってないが、だいぶ淀んでるな」
「大森林並の魔力濃度だな」
俺の言葉に勇者がうなずく。
魔力が見える人間なら、おそらくはっきりと気づくはずだ。
奥へ進むほどに、ただ暗いだけではなく、魔力が淀んで魔物が生まれる土壌が出来上がっていることに。
「城のなかだっていうのに嫌な予感がするな。事前調査を俺達が引き受けてよかった」
俺は、いつでも戦闘モードに意識を切り替えられるように精神を平常に保つ。
さてさて、何が出るのかな?
半ば弟子入りのお試し期間中であるルフは、聖女に行き来を手伝ってもらうなど畏れ多いとのことで、ここ数日はずっと地下に泊まり込みであり、精神的な消耗が予想出来る。
早く迎えに行ってやりたい。
とは言え、この数日で耐えられないようなら、本格的な弟子入りなど出来ようはずもないので、ここは踏ん張りどころかもしれない。
さて、このもともとの地下通路は、長年塞いでいたこともあり、確認が終わるまで使用禁止とされたが、俺達が安全確認をするということで使用許可をロスト辺境伯からもらった。
「くれぐれも無茶はしないように」
と念を押されたが、聖女が同行するからだろう。
万が一通路が崩れたとしても、聖女がいる限り大丈夫だとは言えない雰囲気である。
「ルフは元気でしょうか? 泣いていないといいのですが」
いつの間にかルフに対してお姉さんのような気持ちになっていたらしい聖女を始めとするうちの女性陣が、ここ数日地下にこもりっきりとなってしまったルフを心配していた。
本人は女性達の部屋に泊まるよりも、地下のほうが気楽ですみたいなことを言っていたが、わざわざ知らせる必要はない。
十歳というと、そろそろ異性を意識し始める頃だからな。
やっぱり辛いものがあったのだろう。
「うわぁ、ボロボロだな」
正規の通路は、何十年も手入れされずに封鎖されていたので、もともと貼ってあった壁の装飾や、魔道具の灯りなどは、手を入れなければいけない状態になっていた。
魔道具は銅か何かでで作られていたらしく、くすんだ緑にほぼ侵食されいて、刻まれた魔法陣が崩れている。
これに手を入れるよりは全部取り替えたほうが早いだろう。
アドミニス殿が喜んで作るかもしれない。
あと、ずっと動かないでいた空気が淀んていて、メルリルが風を招き入れようとしたが、うまくいかないようだ。
「ここの風の精霊はもう消え失せているみたい。もともと建物のなかはほとんど入れないみたいだったけど、ここは露骨に嫌がるの」
「ガスが溜まっているとマズいし、原始的だが松明を点けて確認しながら行くか?」
「わたくしが周囲を浄化しつつ進みましょうか?」
メルリルの精霊が駄目となると、昔ながらの方法で安全確認をしなければならない。
そう思っていたが、聖女が力技の提案をして来た。
乱暴だが確実な方法だ。
「結界と違って、ただ維持していればいいだけの魔法じゃないんだよな?」
「はい。一定範囲を浄化するだけの魔法なのでそれなりに範囲は広げられますけど、それでも五十歩に一度ぐらいは掛け直したほうがいいと思います」
「キツくはないか?」
「全然平気です。毎朝の走り込みのほうがキツいぐらいです」
「ははっ、体力は大事だから、朝の鍛錬は続けるんだぞ」
「はい!」
聖女はユーモアを交えつつ、魔法の負担が軽いことをアピールした。
まぁ実際、聖女の負担になる魔法の規模というものが想像出来ないからな。
さすがにいくつか並列で魔法を使うと辛いらしいが、あれは、魔力量の話ではなくて、技術的な問題だ。
というか、一度に複数の魔法を使える時点で、聖女はちょっとおかしい。
ちなみに勇者は魔力による身体強化を使いながら魔法を放つことは出来るが、それは複数の魔法を使ううちには入らないからな。
俺自身は魔法を使わないので、よくわからないが、勇者によると、魔法というのは、手を使わずにものを作るような感じということだ。
つまり聖女は、同時に何種類かの違うものを作ることが出来るということになる。
もはや想像の余地を超えているとしか思えない。
「淀みよ去れ、すがしき大気よ、湧き上がれ」
聖女が唱えるたびにふわりと空気が動き、まるで広々とした平原にいるかのような清々しい空気が満ちる。
「精霊の元のようなものがキラキラ光ってる。魔法って不思議」
「精霊は、意思を持つ魔力だって言ってたもんな。ある意味、魔法は意思を乗せた魔力だ。少しは近いものがあるのかもしれない」
「ダスターはものの理解が深くて、凄い」
メルリルに感心されてしまったが、贔屓の引き倒しだと思うぞ?
そもそもそういう説明をしたのはメルリルなんだからな。
というか、前に聞いたところ、聖女の魔法の大半が、オリジナル魔法なのだそうだ。
びっくりだな。
あと、聖女が開発した魔法は、ほかの普通の聖女や聖人には使えないっぽい。
魔法には、魔力量と相性とコントロールが必要とのことで、聖女はその三つ全てが揃っている稀有な存在とのことだった。
普段何気なく魔法を使ってもらっているが、よくよく考えてみれば凄い相手なのだ。
そんな相手の師匠とか言われると、何の冗談だ? という気持ちになるのは当然のことだと思う。
本当は勇者も同じなんだが、あいつはまだメンタル面の問題と、根気の無さという、俺にも指導出来る部分があったからな。
その点、聖女は最初人見知りだったぐらいで、さしたる欠点がない。
師など必要ないのだ。
そんなことを考えつつ、周囲に意識を向けて進む。
「うーん。ミュリアの魔法のおかげで大事になってないが、だいぶ淀んでるな」
「大森林並の魔力濃度だな」
俺の言葉に勇者がうなずく。
魔力が見える人間なら、おそらくはっきりと気づくはずだ。
奥へ進むほどに、ただ暗いだけではなく、魔力が淀んで魔物が生まれる土壌が出来上がっていることに。
「城のなかだっていうのに嫌な予感がするな。事前調査を俺達が引き受けてよかった」
俺は、いつでも戦闘モードに意識を切り替えられるように精神を平常に保つ。
さてさて、何が出るのかな?
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