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第八章 真なる聖剣
872 課題への挑戦
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次の日は休養日として、ゆっくりと休んだ。
意外というか、ロスト辺境伯の気遣いというか、聖女はしばらくこっちの、来客用の部屋に滞在することとなった。
もちろん自由に自室に戻って過ごしてもいいらしいが、聖女はこっちを選んだらしい。
ちょっとご両親に気の毒だが、これからの行動予定を考えると、そのほうが助かるのでよかった。
「それで、夜にしか咲かない花というのを取りに行くんだよな。夕方に出発すればいいか」
これからの予定についての話し合いで、勇者が簡単に言う。
だが、俺はアドミニス殿からの依頼が、そんな簡単なものだとは思えなかった。
「いや、夜に行けばいいという簡単なものじゃないと思う。確かに大森林で夜を過ごす人間は少ないが、冒険者はそれが仕事のところがあるし、それなのに、そんな目立ちそうな花が今まで発見されていないことが気になる」
「確かに、そうね。夜だけ咲く花とか珍しいし」
メルリルが俺の言葉に同意する。
夜だけに咲く花と言えば、大連合の聖地に咲いていた花もそうだったな。
もしかして、あれと同じような性質を持っているのだろうか?
「何よりも、アドミニス殿が、『課題』と言ったのが気になる」
「むう、あいつに試されている、ということか?」
勇者は顔をしかめる。
単に花を取りに行くと聞いて、あまりやる気がなかった勇者だが、試されていると思ったら、俄然やる気が出て来たようだ。
アドミニス殿に対抗心を燃やせるのは凄いことだと思う。
普通、あんな人と張り合おうとは思わないよな。
「とりあえず万全の対策を立てよう。しばらくその場に滞在することも想定して、ルフと一緒に城側に待機していてくれる人間が、最低でも一人は必要だ」
「んー、寒いのは嫌だけど、ミュリアが行くなら私も行くよ?」
「それでは私が残りましょうか? ただ、私では柔軟な対応が出来ませんので、少し不安はありますが」
モンクが聖女のために同行を主張し、聖騎士が留まってくれると申し出た。
こういうときに、自分の欲求よりも、パーティのことを考えて行動出来る聖騎士の存在はありがたいな。
「クルスは貴族だし、城の人間との付き合い方も心得ている。正直、残ってもらえるならありがたい人選だ。何かあったときには、フォルテに言伝を託すので、そのときには自分の判断で対応してほしい。ルフは庶民で貴族の暮らしに慣れていないから、戸惑いや、失敗もあるだろうが、クルスを頼りにしてくれれば、間違いはないから、安心して頼って欲しい」
「承りました」
「はい!」
聖騎士とルフから気持ちのいい返事が返って来る。
この二人は、どっちも頭がいいし、判断力も高いので、案外いい組み合わせなのかもしれない。
なんというか、後詰めとしての安心感がある。
「じゃあ、花を取りに行くのは、アルフとミュリアとテスタ、そして俺とメルリルと、おまけのフォルテ……ついでの若葉、ということになるな」
「ピャッ!」
おまけという言葉に盛大に抗議するフォルテ。
あーはいはいわかったわかった。
「うん、そうだな。フォルテにはいざというときの連絡役という重要な役割があるからおまけじゃない」
「クルル……」
納得したようだ。
メルリルがクスクスと笑っている。
ふと気づくと、勇者の背後から、ちょろっと緑色の透き通るような色合いのトカゲが覗いていた。
フッと、勇者が予備動作なしで動いて、すかさず若葉を捕らえる。
おお、今の動きはなかなかだったぞ。
「やっと捕まえたぞ、このバカトカゲめ」
「ガフン、僕、バカトカゲじゃない、アルフのナカマだよ」
「は? 仲間ってのは、お互いの信頼があって成立するもんだ。貴様は、勝手にチョロチョロとついて来ているだけじゃねえか! しかも俺の魔力をこっそり食ってるだろうが!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ、だよ!」
今まで、文字通り尻尾も掴ませなかった若葉だが、どうやら名前を呼ばれて気になって出て来たようだ。
案外ちょろいな、トカゲだけに……。
「ダスターどうしたの?」
「いやちょっと、昔師匠のダジャレをバカにしたが、俺も同じになって来たなぁと思ったら切なくなってな」
メルリルが不思議そうに首をかしげる。
うん、まぁ気にするな。
俺の頭のなかだけの話だしな。
って、フォルテ、自分は知ってるぞ、みたいに髪を引っ張るな!
それにしても、若葉がいつの間にか人間の言葉をマスターしている。
あの、変化とやらが関係しているのだろうか?
見た目的にそれほど変わらなかったので、何がどう変わったのか俺達にはさっぱりだったが、もしかすると、俺達が思っているよりも、大きな変化があったのかもしれない。
「あんまり騒ぐな、外に聞こえるだろ。で、若葉、改めて聞くが、お前はどうしたいんだ? もうドラゴン達の棲み家には帰らないのか?」
捕まえた若葉をぎゅうぎゅう締め上げる勇者と、その手をバシバシと尻尾で叩いている若葉という、なんとも言えない姿を見つつ、問いかける。
いくら勇者が渾身の力で締め上げても、若葉は平気そうにしているので、ああいう攻撃は全く効果がないようだ。
まぁドラゴン本来の防御力を考えれば、素手で締め付けたぐらいで何がどうなるはずもないか。
「僕はもう選んだよ。アルフと一緒に行く。楽しそうだし!」
「は? 来るな、迷惑だ!」
「アルフ、騒ぐなって言っただろ?」
「むう」
「おっこられたー」
注意すると、勇者は不満そうに口をつぐんだが、よせばいいのに若葉がそれをからかい、あわや勇者が剣を抜こうとする。
「そんな剣で僕は斬れないよ!」
勇者が抜こうとしていた魔法剣を、若葉は馬鹿にした。
「勇者、あのナイフを使ってください」
聖騎士が助言する。
勇者は、懐から、ドラゴンの鱗で作ったナイフを取り出した。
「ちょ、マジになるの、ストップ! 僕まだ子どもだよ! きゃー! 助けて! 勇者さまに殺されるうううっ!」
「二度と口が利けないようにしてやる!」
あまりのことに、俺はすかさず、聖女に、勇者を中心とした内向きの結界を張ってもらう。
その中なら安全だから、二人で好きなだけ遊んでいるといいぞ。
意外というか、ロスト辺境伯の気遣いというか、聖女はしばらくこっちの、来客用の部屋に滞在することとなった。
もちろん自由に自室に戻って過ごしてもいいらしいが、聖女はこっちを選んだらしい。
ちょっとご両親に気の毒だが、これからの行動予定を考えると、そのほうが助かるのでよかった。
「それで、夜にしか咲かない花というのを取りに行くんだよな。夕方に出発すればいいか」
これからの予定についての話し合いで、勇者が簡単に言う。
だが、俺はアドミニス殿からの依頼が、そんな簡単なものだとは思えなかった。
「いや、夜に行けばいいという簡単なものじゃないと思う。確かに大森林で夜を過ごす人間は少ないが、冒険者はそれが仕事のところがあるし、それなのに、そんな目立ちそうな花が今まで発見されていないことが気になる」
「確かに、そうね。夜だけ咲く花とか珍しいし」
メルリルが俺の言葉に同意する。
夜だけに咲く花と言えば、大連合の聖地に咲いていた花もそうだったな。
もしかして、あれと同じような性質を持っているのだろうか?
「何よりも、アドミニス殿が、『課題』と言ったのが気になる」
「むう、あいつに試されている、ということか?」
勇者は顔をしかめる。
単に花を取りに行くと聞いて、あまりやる気がなかった勇者だが、試されていると思ったら、俄然やる気が出て来たようだ。
アドミニス殿に対抗心を燃やせるのは凄いことだと思う。
普通、あんな人と張り合おうとは思わないよな。
「とりあえず万全の対策を立てよう。しばらくその場に滞在することも想定して、ルフと一緒に城側に待機していてくれる人間が、最低でも一人は必要だ」
「んー、寒いのは嫌だけど、ミュリアが行くなら私も行くよ?」
「それでは私が残りましょうか? ただ、私では柔軟な対応が出来ませんので、少し不安はありますが」
モンクが聖女のために同行を主張し、聖騎士が留まってくれると申し出た。
こういうときに、自分の欲求よりも、パーティのことを考えて行動出来る聖騎士の存在はありがたいな。
「クルスは貴族だし、城の人間との付き合い方も心得ている。正直、残ってもらえるならありがたい人選だ。何かあったときには、フォルテに言伝を託すので、そのときには自分の判断で対応してほしい。ルフは庶民で貴族の暮らしに慣れていないから、戸惑いや、失敗もあるだろうが、クルスを頼りにしてくれれば、間違いはないから、安心して頼って欲しい」
「承りました」
「はい!」
聖騎士とルフから気持ちのいい返事が返って来る。
この二人は、どっちも頭がいいし、判断力も高いので、案外いい組み合わせなのかもしれない。
なんというか、後詰めとしての安心感がある。
「じゃあ、花を取りに行くのは、アルフとミュリアとテスタ、そして俺とメルリルと、おまけのフォルテ……ついでの若葉、ということになるな」
「ピャッ!」
おまけという言葉に盛大に抗議するフォルテ。
あーはいはいわかったわかった。
「うん、そうだな。フォルテにはいざというときの連絡役という重要な役割があるからおまけじゃない」
「クルル……」
納得したようだ。
メルリルがクスクスと笑っている。
ふと気づくと、勇者の背後から、ちょろっと緑色の透き通るような色合いのトカゲが覗いていた。
フッと、勇者が予備動作なしで動いて、すかさず若葉を捕らえる。
おお、今の動きはなかなかだったぞ。
「やっと捕まえたぞ、このバカトカゲめ」
「ガフン、僕、バカトカゲじゃない、アルフのナカマだよ」
「は? 仲間ってのは、お互いの信頼があって成立するもんだ。貴様は、勝手にチョロチョロとついて来ているだけじゃねえか! しかも俺の魔力をこっそり食ってるだろうが!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ、だよ!」
今まで、文字通り尻尾も掴ませなかった若葉だが、どうやら名前を呼ばれて気になって出て来たようだ。
案外ちょろいな、トカゲだけに……。
「ダスターどうしたの?」
「いやちょっと、昔師匠のダジャレをバカにしたが、俺も同じになって来たなぁと思ったら切なくなってな」
メルリルが不思議そうに首をかしげる。
うん、まぁ気にするな。
俺の頭のなかだけの話だしな。
って、フォルテ、自分は知ってるぞ、みたいに髪を引っ張るな!
それにしても、若葉がいつの間にか人間の言葉をマスターしている。
あの、変化とやらが関係しているのだろうか?
見た目的にそれほど変わらなかったので、何がどう変わったのか俺達にはさっぱりだったが、もしかすると、俺達が思っているよりも、大きな変化があったのかもしれない。
「あんまり騒ぐな、外に聞こえるだろ。で、若葉、改めて聞くが、お前はどうしたいんだ? もうドラゴン達の棲み家には帰らないのか?」
捕まえた若葉をぎゅうぎゅう締め上げる勇者と、その手をバシバシと尻尾で叩いている若葉という、なんとも言えない姿を見つつ、問いかける。
いくら勇者が渾身の力で締め上げても、若葉は平気そうにしているので、ああいう攻撃は全く効果がないようだ。
まぁドラゴン本来の防御力を考えれば、素手で締め付けたぐらいで何がどうなるはずもないか。
「僕はもう選んだよ。アルフと一緒に行く。楽しそうだし!」
「は? 来るな、迷惑だ!」
「アルフ、騒ぐなって言っただろ?」
「むう」
「おっこられたー」
注意すると、勇者は不満そうに口をつぐんだが、よせばいいのに若葉がそれをからかい、あわや勇者が剣を抜こうとする。
「そんな剣で僕は斬れないよ!」
勇者が抜こうとしていた魔法剣を、若葉は馬鹿にした。
「勇者、あのナイフを使ってください」
聖騎士が助言する。
勇者は、懐から、ドラゴンの鱗で作ったナイフを取り出した。
「ちょ、マジになるの、ストップ! 僕まだ子どもだよ! きゃー! 助けて! 勇者さまに殺されるうううっ!」
「二度と口が利けないようにしてやる!」
あまりのことに、俺はすかさず、聖女に、勇者を中心とした内向きの結界を張ってもらう。
その中なら安全だから、二人で好きなだけ遊んでいるといいぞ。
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