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番外編
舞台裏
しおりを挟む「いやー、うん。なんかもう尊い。」
星がきらめく公園の、背丈の高い木影からこっそりと、抱きしめ合うかたるくんとかなめを、私は深い溜め息をこぼしながら眺めていた。
ここまで決して平坦な道のりではなかったなと思い返して感極まる。
大好きだった小説の、モブキャラに転生した私…。
主人公が『自分はモブキャラとして転生した』と勘違いした小説に、本当にモブキャラとして転生している私…。
ややこしいわ!
そんな私、主人公の三津谷かなめはもちろん、その義兄伊吹かたるも、同級生蓮見帯斗も、理科教諭桜井英介も、後輩高倉優馬も、かなめの友人なみと優里亜も、みんな大好きだ。
ここは『モブ子は今日も青春中!』の世界だと気がついた時、心の中で何度両手を上げて万歳をしたことか。
しかし案ずることなかれ。
私はプロ読者。
この世界に口出ししようとか、私も仲間に入ーれて!とか、絶対にしない。
推しを、遠くから見守れたらそれで良いのだ!
…と思っていた。
それにもかかわらず、私は一つだけ、自分の招いたミスで『モブ子は今日も青春中!』のストーリーを変えてしまった。
そして、それから今日に至るまで、ストーリーを修正するために様々な努力を強いられる羽目になってしまったのだった。
それもこれも、今夜まで…。
しかと、二人の幸せを目に焼きつけさせていただこう。
そう、両目の端に涙を浮かべた時だった。
「何してんの?」
背後の茂みがゴソゴソと音を立てて蠢き、聞き覚えのある男子の声が頭上から降ってきた。
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