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第七章
兄 ④
しおりを挟む兄ちゃんの変貌ぶりは、家の中に留まることなく、学校でも続いていた。
「…かなめ、手。」
一緒に登校しようと微笑まれ、なぜか私の自転車1台を相乗りし、校門まで辿り着いてみれば、今度はしれっと手を差し出してくる。
私は目を丸くして、その手を見つめる。
「いやいや、手って…。」
「大丈夫。俺、とある一件から超シスコンって有名だから。」
…う。それを言われると弱い。
「手、つなごう?」
困った顔をして兄ちゃんを見上げれば、兄ちゃんはニコニコと笑って私の手を取った。
「仲良く登校していたねえ。」
優里亜ちゃんがとても嬉しそうに顔をほころばせる。優里亜ちゃんには、なみ同様、うちの家族のことは報告済みだ。
「なんか、変なんだよ兄ちゃん。むずむずして落ち着かない。」
私は両腕を抱いて、肩を震わせた。
「あらー。かなめちゃんのお兄さん、前からかなめちゃんに心酔している様子だったじゃない。」
優里亜ちゃんの発言に言葉を失う。
「あれ?気づいてなかった?私、お兄さんに初めて会ったときからもう感づいていたんだけれど。」
優里亜ちゃんが口元に片手をそえた。
兄ちゃんと優里亜ちゃんが初めて出会ったのは、確か体育祭のときだ。
あのとき、取り違えた軍Tを交換するために教室へ戻っていった私を、兄ちゃんは、優里亜ちゃんいわく、『憂いを帯びた表情』で見つめていたそうだ。
『憂いを帯びた表情』って…ちょっと言い過ぎではないでしょうか?
「あのとき私、『イケメンの憂い顔、最高!』って思ったもの。」
優里亜ちゃんがまさしく『憂いを帯びた表情』で溜息をついた。
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