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神様は最強です
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自分から選んだ道だから、後悔はしていない。
わたしは自分で自分の時間を終わりにしたんだ。何が待っていようとそれを受け入れようと心に決めていた。
目を開けたら見知らぬ世界。直前までの記憶は一切残っていない。
でも、初めて来たはずなのに「白く真っ白な世界」じゃないのかな。
綺麗な魂を見たくていた場所だったはず。
あれ?その記憶は誰のもの?
知っているの。わたしはここにいたことがあるから、あんな黒くてドロドロしたモノがいていい場所じゃないってことは分かるの。
「やぁ、こんにちは」
黒くてモヤモヤしたものは人型を取っていた。口と分かるところだけが動いているけど、中味は無いように思える。
「貴方は、誰?」
私は声を出せたことに驚いた。体は震えあがっていて逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。それなのに硬直してしまったのか、指一本も動かせない。
「僕は、神様だよ。君は幸運だね。普段は姿を見せないんだけど、アイツが気にしていた魂だから、姿を見せてやったのに……」
「アイツ?」
神様の知り合いがいた覚えはない。この人は、人と言っていいものなのだろうか。何を言っているのか私には理解できなかった。
「そうか。元神様だから敬う相手ではないわな。君が心を病んだ相手って言えば伝わるかな?アイツには人間の心が分からないから、君が彼を諦める必要なんてなかったのに」
「何を言っているの?」
惹かれ合っている二人の邪魔をしたのは自分なのに。神と名乗る人物は何を分かったようなことを言っているのだろう。見た目は黒いのに、でも確かに彼女、加賀美さんにどこか似ている雰囲気を感じてしまう。彼女が神様だって言うのは本当なの?
「その目、僕の力を信じていない目だ」
黒い生き物はわたしに向かって手のようなものを差し出す。それが向けられることでどうなるのかが、何となく想像できてしまった。
「裁きの時間ですか?」
「そうだな。僕は神様だから、魂を正しい道に導く義務があるんだ。お前のような魂でもだ。有難く思えよ」
「え?」
気が付けば手のようなところから何かが、あふれ出していて、それがわたしのことを取り囲む。
触れた場所から闇に飲み込まれ、自分が自分では無くなるのを感じる。
あぁ、これはわたしが大好きだった神様を救えなかった罰なのかもしれない。
涙が溢れてくる。寂しくて辛くてどうしようもないときに、わたしは神様の庭に迷い込んでいった。そこで神様はわたしを、“ウサギ”を傍に置いてくれることを約束してくれた。それなのにわたしは「神様」が唯一興味を持たれていた魂が気になって仕方なくなって、後を追いかけた。
寂しいから傍に置いてくれってお願いした人のそばを自分から離れる選択肢を選んだんだ。
加賀美さんの隣が居心地いい理由は当然だよね。だってわたしが大好きだった神様だったんだもん。今気が付いても遅い。どうしたらよかったの?神様が大好きだったのに、嫌われるような真似をしちゃったわ。
それにこの黒いモヤモヤはきっと「輪廻転生」から外されるものだ。全部思い出したもん。ウサギから人間になったときに潜った輪からは切り離される感覚がある。
「神様……」
愛が分からない神様が大切にしてくれたからって、調子に乗っていたのは、わたし。罰せられて当然なのかもしれない。でも最後に謝ればよかった。二人の仲を裂きたいわけじゃなかったの。わたしは彼が神様にふさわしいのか知りたくて、でも神様がそこまで執着されている理由も気になって仕方なかったの。
出来心で許されないけど、謝っていれば、良かったわ。
「よく来たな」
感覚が無くなっていくところで、黒いモヤモヤした奴の満足そうな声が聞こえてくる。
「私のウサギちゃんをイジメたら許さないから」
わたしと同じ制服に身を包んでいると思ったら、ふわっと体が光り輝き一枚布を身にまとうかのような姿に変わる。
わたしの記憶の中にある「神様」と同じ姿。
「僕が今、神様なの忘れた?」
「はぁ、最期まで分からなかったか。残念。君は仮の神様だったんだよ。って、ウサギちゃんをイジメているから容赦しないから」
「何を言っている??」
「権限を返してもらいます」
加賀美さん、いいえ。
わたしの大好きな神様が黒いモヤモヤしたものに飛び掛かった。
☆
屋上から飛び降りて神様(仮)のところにちょうど来れてよかった。
近づくにつれて、モヤモヤとして気分が悪くなる匂いが近づいてくる。神様が廃れたときに匂うやつだ。久しぶりに嗅ぐ。
私の力まで浸食されてなければいい。まぁ少し時間がかかるけど、浄化することはできるからそれに賭けるしかない。
「よく来たな」
仮の神様だった者が不快なモノへと成り代わっている。その隣にはウサギこと九条がそこにいた。神様(仮)の力が彼女を飲み込んでいて、視線だけ感じる。
「権限を返してもらいます」
私は加賀美 藍那の殻を破る。もう少し人間の殻を被っておきたかったな。
多分私が人間になりたい遊びを許されるのは、今回だけだと思うから。二度と人間になる遊びは許されない。
許されているうちにもっと過激に遊んでおけばよかったなって思ってしまった。
「僕が神様なのに、何言ってるの??早くお友達のところに逝かせてあげるね」
「それは出来ないよ」
私の姿が変わったのにも気が付いていない可哀想な魂。自分の姿はもう取れていないというのに、彼はどれだけの罪を犯したのだというのかな。
人間の世界に十数年しか経っていないということは、神の感覚ではほんの瞬き程度の時間しか過ぎていないはずだった。
彼は神様に成り切れなかったんだ。人の心のまま力を得てしまったから魂が崩れ落ちてしまった。
私のミスだ。人のままでいられたのなら輪廻転生に戻してあげられるけど、それは出来ない。
崩れた魂は私が食べないといけないから。浄化できなかったら私の中で眠らせてあげないと。
「僕が神様なんだ!!今更そんな姿になったとしても、君はもう人間なんだ。人間になったときに仲良くなった者の魂すら守れない奴なんだ」
「違うわ」
私は足元に力を込めて、宙に浮く。気の迷いは命取りになるから、彼には申し訳ないけど直ぐに消えて貰わないといけないかもしれない。
「流石今まで魂を扱ってきたから、宙に浮くことは覚えてたんだな」
表情ももう見えないほどに闇に呑まれている彼の名前を、そう言えば私は知らない。
知る必要は無いと思っていた。実際に私が興味を惹かれたのは、ウサギちゃんと彼の魂と、優しく接してくれた家族だけ。
「ねぇ、君は神様にどうしてなりたかったの?神様になれて願い事は叶えられた?」
普段は懺悔は一つも聞き入れない。でもこれは聞かないといけない気がした。
私が間違えてしまったから、彼は狂ってしまった。もし力に溺れなかったら側近にしてもいいかもと、人間でいる間に考えたけどそれも叶わないくらいに、堕ちてしまったから。
「神様の有難い言葉を聞きたいのか??最期なら仕方ないな。神様にしてくれたのは本当に感謝している。僕を馬鹿にしていた連中が来たときに命乞いしてきたから、希望を一瞬だけ見せてやったんだ。そしたら喜んで飛びついてきたから、その隙に地獄に落としてやった。輪廻は地獄に落ちた場合でも巡るんだろう??僕は痛くも痒くもないし、思っていた以上に恨みを晴らすことができた」
天に向かって両手をあげる、黒いモヤモヤした奴は、とても満足げな雰囲気だ。隣に立つ九条の魂の輝きは薄れない。私の姿をじっと見つめているだけ。
私はウサギにも九条にも愛情の示し方が分からなくて、間違えて、取り返しのつかないことをしたことだけは理解できていた。そんな私を君はまだそんな目で見つめてくるの?と問いかけたくなった。愛なんてもう持たれる関係性じゃない気もしたのに、彼女は私を愛してくれている、気がした。
「何を言っているんだ?カミサマハボクダ!オマエナンカスグニケチラシテヤル」
黒くてモヤモヤしたものが神様(仮)の体から溢れ出す。声が雑音に聞こえてくる。神様の箱庭の中にいるだけじゃこんなに穢れるさはずはないのに。
「貴方、何か罪を犯したの?」
例外なしに神としての犯してはいけない範囲を超えたものをしたら、裁きは受ける。そのせいで神が、神でなくなるのは時折あるのだ。信仰がなくなり、存在できなくなる神もいるが、人の欲望に影響される感受性が豊かな神だと、信仰者の影響を受けることがある。
「ツミ?ボクヲバカニシテイタヤツラニサバキヲアタエテヤッタンダ!!!」
黒くて大きな何かになってしまってる。これは私が背負わなければならない罰だ。人間が神の領域にいて、力を手に入れて耐えられるはずがない。それを考えて力を与えればよかった。
「ごめんね、貴方の魂は私が浄化します。罪の分だけ苦しむことになるけど」
背中から翼が生え、私は彼の魂を吸収した。
わたしは自分で自分の時間を終わりにしたんだ。何が待っていようとそれを受け入れようと心に決めていた。
目を開けたら見知らぬ世界。直前までの記憶は一切残っていない。
でも、初めて来たはずなのに「白く真っ白な世界」じゃないのかな。
綺麗な魂を見たくていた場所だったはず。
あれ?その記憶は誰のもの?
知っているの。わたしはここにいたことがあるから、あんな黒くてドロドロしたモノがいていい場所じゃないってことは分かるの。
「やぁ、こんにちは」
黒くてモヤモヤしたものは人型を取っていた。口と分かるところだけが動いているけど、中味は無いように思える。
「貴方は、誰?」
私は声を出せたことに驚いた。体は震えあがっていて逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。それなのに硬直してしまったのか、指一本も動かせない。
「僕は、神様だよ。君は幸運だね。普段は姿を見せないんだけど、アイツが気にしていた魂だから、姿を見せてやったのに……」
「アイツ?」
神様の知り合いがいた覚えはない。この人は、人と言っていいものなのだろうか。何を言っているのか私には理解できなかった。
「そうか。元神様だから敬う相手ではないわな。君が心を病んだ相手って言えば伝わるかな?アイツには人間の心が分からないから、君が彼を諦める必要なんてなかったのに」
「何を言っているの?」
惹かれ合っている二人の邪魔をしたのは自分なのに。神と名乗る人物は何を分かったようなことを言っているのだろう。見た目は黒いのに、でも確かに彼女、加賀美さんにどこか似ている雰囲気を感じてしまう。彼女が神様だって言うのは本当なの?
「その目、僕の力を信じていない目だ」
黒い生き物はわたしに向かって手のようなものを差し出す。それが向けられることでどうなるのかが、何となく想像できてしまった。
「裁きの時間ですか?」
「そうだな。僕は神様だから、魂を正しい道に導く義務があるんだ。お前のような魂でもだ。有難く思えよ」
「え?」
気が付けば手のようなところから何かが、あふれ出していて、それがわたしのことを取り囲む。
触れた場所から闇に飲み込まれ、自分が自分では無くなるのを感じる。
あぁ、これはわたしが大好きだった神様を救えなかった罰なのかもしれない。
涙が溢れてくる。寂しくて辛くてどうしようもないときに、わたしは神様の庭に迷い込んでいった。そこで神様はわたしを、“ウサギ”を傍に置いてくれることを約束してくれた。それなのにわたしは「神様」が唯一興味を持たれていた魂が気になって仕方なくなって、後を追いかけた。
寂しいから傍に置いてくれってお願いした人のそばを自分から離れる選択肢を選んだんだ。
加賀美さんの隣が居心地いい理由は当然だよね。だってわたしが大好きだった神様だったんだもん。今気が付いても遅い。どうしたらよかったの?神様が大好きだったのに、嫌われるような真似をしちゃったわ。
それにこの黒いモヤモヤはきっと「輪廻転生」から外されるものだ。全部思い出したもん。ウサギから人間になったときに潜った輪からは切り離される感覚がある。
「神様……」
愛が分からない神様が大切にしてくれたからって、調子に乗っていたのは、わたし。罰せられて当然なのかもしれない。でも最後に謝ればよかった。二人の仲を裂きたいわけじゃなかったの。わたしは彼が神様にふさわしいのか知りたくて、でも神様がそこまで執着されている理由も気になって仕方なかったの。
出来心で許されないけど、謝っていれば、良かったわ。
「よく来たな」
感覚が無くなっていくところで、黒いモヤモヤした奴の満足そうな声が聞こえてくる。
「私のウサギちゃんをイジメたら許さないから」
わたしと同じ制服に身を包んでいると思ったら、ふわっと体が光り輝き一枚布を身にまとうかのような姿に変わる。
わたしの記憶の中にある「神様」と同じ姿。
「僕が今、神様なの忘れた?」
「はぁ、最期まで分からなかったか。残念。君は仮の神様だったんだよ。って、ウサギちゃんをイジメているから容赦しないから」
「何を言っている??」
「権限を返してもらいます」
加賀美さん、いいえ。
わたしの大好きな神様が黒いモヤモヤしたものに飛び掛かった。
☆
屋上から飛び降りて神様(仮)のところにちょうど来れてよかった。
近づくにつれて、モヤモヤとして気分が悪くなる匂いが近づいてくる。神様が廃れたときに匂うやつだ。久しぶりに嗅ぐ。
私の力まで浸食されてなければいい。まぁ少し時間がかかるけど、浄化することはできるからそれに賭けるしかない。
「よく来たな」
仮の神様だった者が不快なモノへと成り代わっている。その隣にはウサギこと九条がそこにいた。神様(仮)の力が彼女を飲み込んでいて、視線だけ感じる。
「権限を返してもらいます」
私は加賀美 藍那の殻を破る。もう少し人間の殻を被っておきたかったな。
多分私が人間になりたい遊びを許されるのは、今回だけだと思うから。二度と人間になる遊びは許されない。
許されているうちにもっと過激に遊んでおけばよかったなって思ってしまった。
「僕が神様なのに、何言ってるの??早くお友達のところに逝かせてあげるね」
「それは出来ないよ」
私の姿が変わったのにも気が付いていない可哀想な魂。自分の姿はもう取れていないというのに、彼はどれだけの罪を犯したのだというのかな。
人間の世界に十数年しか経っていないということは、神の感覚ではほんの瞬き程度の時間しか過ぎていないはずだった。
彼は神様に成り切れなかったんだ。人の心のまま力を得てしまったから魂が崩れ落ちてしまった。
私のミスだ。人のままでいられたのなら輪廻転生に戻してあげられるけど、それは出来ない。
崩れた魂は私が食べないといけないから。浄化できなかったら私の中で眠らせてあげないと。
「僕が神様なんだ!!今更そんな姿になったとしても、君はもう人間なんだ。人間になったときに仲良くなった者の魂すら守れない奴なんだ」
「違うわ」
私は足元に力を込めて、宙に浮く。気の迷いは命取りになるから、彼には申し訳ないけど直ぐに消えて貰わないといけないかもしれない。
「流石今まで魂を扱ってきたから、宙に浮くことは覚えてたんだな」
表情ももう見えないほどに闇に呑まれている彼の名前を、そう言えば私は知らない。
知る必要は無いと思っていた。実際に私が興味を惹かれたのは、ウサギちゃんと彼の魂と、優しく接してくれた家族だけ。
「ねぇ、君は神様にどうしてなりたかったの?神様になれて願い事は叶えられた?」
普段は懺悔は一つも聞き入れない。でもこれは聞かないといけない気がした。
私が間違えてしまったから、彼は狂ってしまった。もし力に溺れなかったら側近にしてもいいかもと、人間でいる間に考えたけどそれも叶わないくらいに、堕ちてしまったから。
「神様の有難い言葉を聞きたいのか??最期なら仕方ないな。神様にしてくれたのは本当に感謝している。僕を馬鹿にしていた連中が来たときに命乞いしてきたから、希望を一瞬だけ見せてやったんだ。そしたら喜んで飛びついてきたから、その隙に地獄に落としてやった。輪廻は地獄に落ちた場合でも巡るんだろう??僕は痛くも痒くもないし、思っていた以上に恨みを晴らすことができた」
天に向かって両手をあげる、黒いモヤモヤした奴は、とても満足げな雰囲気だ。隣に立つ九条の魂の輝きは薄れない。私の姿をじっと見つめているだけ。
私はウサギにも九条にも愛情の示し方が分からなくて、間違えて、取り返しのつかないことをしたことだけは理解できていた。そんな私を君はまだそんな目で見つめてくるの?と問いかけたくなった。愛なんてもう持たれる関係性じゃない気もしたのに、彼女は私を愛してくれている、気がした。
「何を言っているんだ?カミサマハボクダ!オマエナンカスグニケチラシテヤル」
黒くてモヤモヤしたものが神様(仮)の体から溢れ出す。声が雑音に聞こえてくる。神様の箱庭の中にいるだけじゃこんなに穢れるさはずはないのに。
「貴方、何か罪を犯したの?」
例外なしに神としての犯してはいけない範囲を超えたものをしたら、裁きは受ける。そのせいで神が、神でなくなるのは時折あるのだ。信仰がなくなり、存在できなくなる神もいるが、人の欲望に影響される感受性が豊かな神だと、信仰者の影響を受けることがある。
「ツミ?ボクヲバカニシテイタヤツラニサバキヲアタエテヤッタンダ!!!」
黒くて大きな何かになってしまってる。これは私が背負わなければならない罰だ。人間が神の領域にいて、力を手に入れて耐えられるはずがない。それを考えて力を与えればよかった。
「ごめんね、貴方の魂は私が浄化します。罪の分だけ苦しむことになるけど」
背中から翼が生え、私は彼の魂を吸収した。
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