上 下
3 / 15

第3話 幼少期に出会った可愛いお姫様との、大切な記憶

しおりを挟む
 可愛い女の子が遊びに来ると言われて俺はとても嬉しかった。歳の近い遊び相手たちは俺を見てくれてはいない。俺の背後にある王族という血しか見ていないから。
俺の望むままにしてくれていた。

ミリアムだけが魔女の血が流れているということで唯一差別も何もせずに俺に接してくれていた。

絵本で読んだようなお姫様に会えると俺は嬉しかった。隣国のお姫様の噂は聞いていた。黙っていればお人形のように可愛い。いうことは全て的を得ているため、それが相手にとって不快に思われてしまうこともあり「悪役姫様」と呼ばれていることを。
本当はどれほど可愛いのかを、自分だけが知っている優越感があったのに。

「貴方はね、本当はこれっぽっちも愛されていないのよ」

「どうしてそんなことが言えるの?」

可愛らしい声で放つ言葉がチクリと俺の胸を刺した。

次期王として育てられ、友人さえも選ばれた子が連れてこられる。

隣国の姫だから俺はこの子と会うことができた。それだけな関係。

言われたくなかった言葉を平気で吐いてくる。

「どれだけ守られているか分かっているの?貴方が危険な目に合わないように皆気を遣っているのよ。自分はなんでもできるって思っちゃって、貴方バカなの?自覚を持ちなさいよ」

 同い年の女の子。可愛い見た目とは裏腹にしっかりと僕の目を見ている。

友人も大人たちに連れてこられたから、僕が心から友達になりたいと思った子はいない。友達にならないと、連れてこられた子たちが責められてしまう。

僕がいい子にならないといけない。顔色を窺われて話すことも自分の興味のないことも、僕に全部合わせて。

「君だってお姫様じゃないか」

「そうよ、私もお姫様よ」

 目には力が宿り、幼いながらも人に指示を出すことに慣れている雰囲気の女の子。俺とは正反対の性格。いい子にしなきゃと顔色を窺っている僕とは違う。

 国王と聖女の子供である僕はみんなの見本にならないといけない。

 望まれない答えを口にしてはいけない。

 剣を握るより魔法を使うほうが好き。

「愛されているなんて幻想なのよ。自分でつかみ取っていかないといけないの」

 自分に言い聞かせているような女の子の姿。

 愛されたいのは君も同じなの?

「ふん、わたくしにこの城を案内する権利をあげるわ」

 父上にお願いをされていたことなので、僕は笑いながら彼女の手を取った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

彼女はいなかった。

豆狸
恋愛
「……興奮した辺境伯令嬢が勝手に落ちたのだ。あの場所に彼女はいなかった」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...