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小さなヒーロー
13:捉えた悪意
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首相襲撃を阻止するべく監視態勢に入ってから、早くも2時間が経過しようとしている。
東西南北、国際会議場に配備されたどの方面にも、今のところ不審者は見当たらない。
残り2時間、本当に襲撃は行われるのだろうか?
バッテリーの加減で、長時間の稼働ができないAP黒影は、2度目のバッテリーチャージに入った。
各機体が、生け垣や自動販売機の後ろに隠しておいたモバイルバッテリーに繋いで充電作業を開始。
チャージに要する時間は、およそ5分。
その間に不審者に国際会議場へと入られたら、任務は失敗に終わる→→→だから、後は警察組織が責任をおっ被ってくれ。
そんな逃げ道を用意しながらの警戒態勢。
「素人の僕たちが、不審者とそうでない人たちを見分けられるのかな?」
誰もが抱く疑問を、森下が投げかけた。
「よく分んないけど、『コイツが怪しい!」て思うヤツを見つければ良いんだよね」
やはり縁は適当だった。
そんな会話さえもモニターしている飛鳥は、すでに襲撃者に侵入を許しているのでは?との疑念を胸に抱きつつも、残り時間までは監視せねばと使命感にとらわれていた。
各AP、バッテリーチャージ完了。
再び監視態勢に入る。
「社長、ピザ屋の店員が表玄関前に現れました」
早速、杉田から連絡が入った。
「おかしいわね・・・。普通は受付のある表からじゃなくて、搬入口とか利用しないかしら」
飛鳥の疑問は、あからさま過ぎる不穏な動きに向けられた。だが、それもすぐに解消された。
ピザ屋の店員は、警備員に促されて、搬入口へと向かった。どうやら、搬入口を訊ねに、受付に立ち寄っただけのようだ。
「こちらバルゴ。北側にスケボーをしている少年たちが、警備員に注意されて、ふてくされているよ」
送られてきた画像をチェックする限り、ただのスケボー少年たちのようだ。しかも格好だけキメた、レベルの低い連中だと見抜いた瞬間、腹立たしく思えてきた。
さらに。
注意を受けている身でありながらスマホで電話をしている。
ただTV車輌が多く来ているので、映りに来ただけの程度の低い野次馬。
そんな仕事の邪魔をしでかす連中に、飛鳥はすかさず舌打ちを鳴らすと。
「ブン殴ってやれ」
怒りのつぶやき。
それだけに留まらず、架空アカウントを作成して彼らの画像をアップした。
いわゆる”晒し”というヤツだ。
飛鳥は椅子の背もたれに背を預けて伸びをすると、小さく笑った。
(ふふふ。ヤツラも本望だろうよ。お望み通り世間にそのマヌケな顔と愚行を露出出来たのだから)
仕事の邪魔をされた怒りは悪意へと難なく変わった。
「森下・令治!画像が動いていないわよ!しっかりと監視する!」
すべてのAPからの画像をモニターしている飛鳥は、部下たちのサボタージュを許さない。
注意を受けた森下のAP画像が左右にスライドする。
単調で適当な動きに、再び飛鳥は舌打ちを鳴らした。
「そろそろマスコミの動きも多くなってきましたね」
伶桜からの通信。
送られてきた画像には、"報道”の腕章を付けた男性が颯爽と歩いている姿が映し出されていた。
「伶桜さん、その男を追って」
飛鳥は椅子に座り直すと、画面に食いつくようにして、男性の映像を拡大させた。
「え?彼は報道関係の―」「良いから、追って!」
不審なところは見当たらないのに、どうして男性の追跡を指示するのか?
伶桜は疑問に思いつつも、飛鳥の指示に従い、男性をロック・オン。
黒影で追跡を開始した。
背筋よくスタスタと歩く男性。
上着はまとわず、ワイシャツ姿で、手荷物は何も持ち合わせていない。
周りを警戒する様子も無い。
本当に彼が不審者なのだろうか?
「社長、どう見ても、やっぱり彼は普通の報道関係者ですよ。腕章には、有名どころの新聞社の名前も記載されてあるし」
ここは飛鳥の、単なる見当違いに過ぎない。理由も添えた。
しかし。
「あのね、この手の、取るに足らない下らない国際会議に送り込まれるマスコミの記者はね、大体が”使えないヤツ”が送り込まれるものなのよ。大手の新聞社に入ってくる大学生は、それは国立大学卒の者がほとんどで、なのに、記者会見のテーブルにボイスレコーダーを置くだけのしょうもない仕事しかさせてもらえないヤツが、あんなに颯爽と歩いているハズが無いでしょう?」
大人しく聞いていれば、とんでもなく偏見に満ちた理由だった。
大丈夫か?
そんな思い込みで追跡を続けていて。
すると、突然、飛鳥から通信が入った。
「伶桜さん、気をつけて。ヤツに気付かれているわ」
「え?彼は一度も振り返っていないぞ」
「ヤツとの距離が縮まっている。気付かないの!?」
男性の移動速度に合わせて追跡していたはずなのに、どういう訳か、男性との距離は縮まっていた。
男性は歩く速度を緩めていたのだ。
それだけではない。
男性がいきなりバック転をした。
「何なのコイツ!気を付けて!そいつの狙いは伶桜さんの黒影よ」
飛鳥は注意を促しつつ、先程まで送られてきた画像をチェック。ある事に気付いた。
周囲には誰もいない!
もしも、伶桜のAPが破壊され、ヤツが姿をくらましたら、完全に姿を見失ってしまう。
「伶桜さん以外の全社員に通達します。今すぐに私の部屋に来て。伶桜さん
のバックアップ準備に入ります」
緊急招集を掛けた。と、同事に。
「伶桜さん、これは命令です。絶対に黒影を破壊されないで」
飛鳥からの命令が下される中、連続バック転で距離を縮めてきた男性の回し蹴りが、伶桜の黒影に向けて放たれた。
東西南北、国際会議場に配備されたどの方面にも、今のところ不審者は見当たらない。
残り2時間、本当に襲撃は行われるのだろうか?
バッテリーの加減で、長時間の稼働ができないAP黒影は、2度目のバッテリーチャージに入った。
各機体が、生け垣や自動販売機の後ろに隠しておいたモバイルバッテリーに繋いで充電作業を開始。
チャージに要する時間は、およそ5分。
その間に不審者に国際会議場へと入られたら、任務は失敗に終わる→→→だから、後は警察組織が責任をおっ被ってくれ。
そんな逃げ道を用意しながらの警戒態勢。
「素人の僕たちが、不審者とそうでない人たちを見分けられるのかな?」
誰もが抱く疑問を、森下が投げかけた。
「よく分んないけど、『コイツが怪しい!」て思うヤツを見つければ良いんだよね」
やはり縁は適当だった。
そんな会話さえもモニターしている飛鳥は、すでに襲撃者に侵入を許しているのでは?との疑念を胸に抱きつつも、残り時間までは監視せねばと使命感にとらわれていた。
各AP、バッテリーチャージ完了。
再び監視態勢に入る。
「社長、ピザ屋の店員が表玄関前に現れました」
早速、杉田から連絡が入った。
「おかしいわね・・・。普通は受付のある表からじゃなくて、搬入口とか利用しないかしら」
飛鳥の疑問は、あからさま過ぎる不穏な動きに向けられた。だが、それもすぐに解消された。
ピザ屋の店員は、警備員に促されて、搬入口へと向かった。どうやら、搬入口を訊ねに、受付に立ち寄っただけのようだ。
「こちらバルゴ。北側にスケボーをしている少年たちが、警備員に注意されて、ふてくされているよ」
送られてきた画像をチェックする限り、ただのスケボー少年たちのようだ。しかも格好だけキメた、レベルの低い連中だと見抜いた瞬間、腹立たしく思えてきた。
さらに。
注意を受けている身でありながらスマホで電話をしている。
ただTV車輌が多く来ているので、映りに来ただけの程度の低い野次馬。
そんな仕事の邪魔をしでかす連中に、飛鳥はすかさず舌打ちを鳴らすと。
「ブン殴ってやれ」
怒りのつぶやき。
それだけに留まらず、架空アカウントを作成して彼らの画像をアップした。
いわゆる”晒し”というヤツだ。
飛鳥は椅子の背もたれに背を預けて伸びをすると、小さく笑った。
(ふふふ。ヤツラも本望だろうよ。お望み通り世間にそのマヌケな顔と愚行を露出出来たのだから)
仕事の邪魔をされた怒りは悪意へと難なく変わった。
「森下・令治!画像が動いていないわよ!しっかりと監視する!」
すべてのAPからの画像をモニターしている飛鳥は、部下たちのサボタージュを許さない。
注意を受けた森下のAP画像が左右にスライドする。
単調で適当な動きに、再び飛鳥は舌打ちを鳴らした。
「そろそろマスコミの動きも多くなってきましたね」
伶桜からの通信。
送られてきた画像には、"報道”の腕章を付けた男性が颯爽と歩いている姿が映し出されていた。
「伶桜さん、その男を追って」
飛鳥は椅子に座り直すと、画面に食いつくようにして、男性の映像を拡大させた。
「え?彼は報道関係の―」「良いから、追って!」
不審なところは見当たらないのに、どうして男性の追跡を指示するのか?
伶桜は疑問に思いつつも、飛鳥の指示に従い、男性をロック・オン。
黒影で追跡を開始した。
背筋よくスタスタと歩く男性。
上着はまとわず、ワイシャツ姿で、手荷物は何も持ち合わせていない。
周りを警戒する様子も無い。
本当に彼が不審者なのだろうか?
「社長、どう見ても、やっぱり彼は普通の報道関係者ですよ。腕章には、有名どころの新聞社の名前も記載されてあるし」
ここは飛鳥の、単なる見当違いに過ぎない。理由も添えた。
しかし。
「あのね、この手の、取るに足らない下らない国際会議に送り込まれるマスコミの記者はね、大体が”使えないヤツ”が送り込まれるものなのよ。大手の新聞社に入ってくる大学生は、それは国立大学卒の者がほとんどで、なのに、記者会見のテーブルにボイスレコーダーを置くだけのしょうもない仕事しかさせてもらえないヤツが、あんなに颯爽と歩いているハズが無いでしょう?」
大人しく聞いていれば、とんでもなく偏見に満ちた理由だった。
大丈夫か?
そんな思い込みで追跡を続けていて。
すると、突然、飛鳥から通信が入った。
「伶桜さん、気をつけて。ヤツに気付かれているわ」
「え?彼は一度も振り返っていないぞ」
「ヤツとの距離が縮まっている。気付かないの!?」
男性の移動速度に合わせて追跡していたはずなのに、どういう訳か、男性との距離は縮まっていた。
男性は歩く速度を緩めていたのだ。
それだけではない。
男性がいきなりバック転をした。
「何なのコイツ!気を付けて!そいつの狙いは伶桜さんの黒影よ」
飛鳥は注意を促しつつ、先程まで送られてきた画像をチェック。ある事に気付いた。
周囲には誰もいない!
もしも、伶桜のAPが破壊され、ヤツが姿をくらましたら、完全に姿を見失ってしまう。
「伶桜さん以外の全社員に通達します。今すぐに私の部屋に来て。伶桜さん
のバックアップ準備に入ります」
緊急招集を掛けた。と、同事に。
「伶桜さん、これは命令です。絶対に黒影を破壊されないで」
飛鳥からの命令が下される中、連続バック転で距離を縮めてきた男性の回し蹴りが、伶桜の黒影に向けて放たれた。
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