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[30]終焉~エンドゲーム~

-322-:残念だったな。ジョーカァーッ!!

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「聞かせてもらおうか、草間・涼馬。どんなトリックを使って戻って来たのかを!」

 ガトリングガンによって撃ち抜かれ、地面へと落下した腕に、再生ケーブルが接続されて、またもや治癒回復されてしまった。

 やはり分断した箇所を破壊しなければ。

「さあ、答えてよ」
 答えを催促してきた。

「フハハハハハハーッ!!」
 もはや荒野となり果てた市松市市街地に男性の声が木霊する。

「ん?」
 どこからともなく聞こえてくる声に、妲己が辺りをキョロキョロと探りをいれるも、声の主を探し当てる事ができない。

「浅はかな奴よ。鈴木・くれはと草間・涼馬を分断するためとはいえ、御陵・御伽をエサとしたのは迂闊であったな」
 声はすれども姿は見えず。

「誰だッ!姿を見せろ!」
 姿を見せぬ相手に、ジョーカーは苛立ちを隠せない。

(何者だ?この男は。声の位置をソナー探知しても、次々と場所を変えている…。まるで瞬間移動を繰り返しているかのように、あっという間に遠くに移動を果たしている)
 有り得ない移動速度に、動揺していた。

「肝心要の御陵・御伽さえ保護してやれば、草間・涼馬は晴れて戦線復帰よ。残念だったな。ジョーカァーッ!!」
 この芝居がかった話口調にジョーカーは底知れぬ嫌悪を抱いた。

「何を勝ち誇っているのか知らないケド、部外者が横から口を挟まないでよね!」

「フフフ。ハハハハ!ワシが部外者とな?これは面白い事をほざいてくれるわッ!」
 クレハもリョーマも、この戦いを見守る誰もがこの話し口調から男性の正体を把握した。

 知らぬは当のジョーカーのみ。

 クレハと合流したリョーマは、早速ダナを人型形態へと変型させた。

 そして、ダナの頭部の傍に、魔法陣が描かれると、中から二人の人物が現れた。

 チーム戦国センゴクのリーダーであるノブナガこと明智・信長。そして彼が従える魔者、宿呪霊ポゼッションのナバリィの姿がそこにあった。

「ノブナガ!?どうして?」
 思わずクレハが訊ねた。

「呼び捨てするとは無礼な。敬称で呼ぶのが、せめてもの礼儀であるぞ。鈴木・くれは」
 咄嗟に呼び捨てしてしまった事には申し訳ないと思うけど、役にどっぷり浸かっていて大丈夫なの?生身で戦場に現れるなんて、なんて無謀な。

「ごめんなさい。つい。でも、どうして貴方たちが?」
 訊ねた。

「こやつのミエミエの罠を挫いてやるためよ。我の能力をもってすれば、御陵・御伽を玲音たちの下へと送り届けてやるくらい雑作も無い事」
 ナバリィが答えてくれた。…はいいけど、“玲音”て誰?

 鈴木くれはは黒玉門前教会の神父の名前を知らない。

「残念であったな、ジョーカー。貴様の野望はあえなく潰えた。観念するのだな」
 ちょんまげにどじょうヒゲと散々バカにしてきたノブナガであったが、彼が敵方のリーダーなのを、クレハは今になって納得した。

 これほどまでの度胸がある人間を今まで見たことが無い。

 流石といったところか。

「ありがとう。ノブナガくん。それにナバリィさん。オトギちゃんを助けてくれて」
 心から礼を言うのは何年ぶりだろう。こんなに清々しい気持ちで礼を言うのは初めてかもしれない。

「うむ。後はうぬたちに任せたぞ」
 それだけ告げると、ナバリィが展開してくれた魔法陣の中へと足を踏み入れて、二人は姿を消してしまった。

「?え?“うぬ”?どういうコト?」
 初めて呼ばれる呼称に、首を傾げる。

「だからとクレハ!キミたちを取り込めれば、ボクはそれでいい」
 妲己が突っ込んできた。

 すかさずダナが前へと躍り出る。が。

 ドスッ!ドスッ!ドスッ!

 真上からの攻撃がダナの足下に突き刺さる。


「貴様の相手は、この僕だぁ~」
 上空に目を移せば木乃伊マミーのアルルカンが。

 容赦なくアクティブバンテージによる攻撃を仕掛けてきたのだ。


 まだ倒していなかったっけ?そんな記憶を辿るよりも、どうしてミツナリこと皇・令恵がまたもや邪魔立てしてくるのか?

 先程骸骨亡者スケルトンのキャサリンと共に地獄へと追い返してやったはずなのに。

「現在声を発している皇・令恵はジョーカーが生み出したまやかしに過ぎません。彼はとっくの昔にこの世を去っています。彼の記憶を盗んだジョーカーによって生み出された傀儡くぐつごときに心を乱されてはなりません。マスター」
 ダナによる状況説明によって、リョーマは冷静さを取り戻した。

 先程は、言葉を話すという理由で完全破壊を躊躇してしまったが、今の言葉を聞いて覚悟を決める事ができた。

「ありがとう、ダナ。この敵に対してボクは、もう人間相手だとは思わない。仮想高砂・飛遊午と思って戦う事にするよ」

「マスターの思うままに」

「ちょ、ちょっと待てぃ!」
 二人の会話に、思わず口を挟んでしまうクレハ。

 この男をひと時でも信頼した自分が愚かに思えてならなかった。

 やはりこの男は敵だ。それ以外の何者でもない!!


「何をやっている!鈴木さん!」
 そんなリョーマからの通信に、注意が散漫になっている事に気付いた。

 気付いたのが遅すぎた。

 すでに、妲己がベルタを捕えようと手を伸ばしてきている。


 ザクッ!!

 伸ばした妲己の腕が宙を舞っていた。



 咄嗟の判断とはいえ。

 思わずやってしまった…。


 クレハは己の犯した失態に戦慄した。


 手にするミミックのカードを、カードリーダーに読み込ませてしまっていた。

 しかも、無意識のうちに近接戦特化仕様騎のベルタを選択していた。

 盤上戦騎ディザスターの操作は基本的に意志操作系。

 今まで戦ってきた誰もが、つい当たり前のようにしていたカードの効果発動の“宣言”なる行為はあくまでもポーズであって、する必要は全く無い。

「やべぇ…。つい、ベルタならと思ってしまったわ…」

 取り返しのつかない大失態だ。
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