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[21]はじめてのアンデスィデ

―208-:こちらへと足を運ばれた理由をお聞かせ下さい

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 ココミ・コロネ・ドラコットとミュッセ・ペンドラゴンの会談が始まった。

 小駒(兵士・騎士・僧正)とそのマスターは部外者扱いとして、会談に同席を許されなかった。

 結果。


 悪魔たちを率いるミュッセは城砦ルークのフェネクスを、龍たちを従えるココミはルーティをそれぞれ同席させた。

「まさか、僕たち全員が外に追いやられてしまうとは」
 リョーマが眼鏡を中指で押し上げながら呟いた。

「全くです」
 同感と言わんばかりのコールブランドの周囲には、やたらとキラキラ光るものが見える。

 どうやら髪のワイヤーソーで結界を張っている模様。とても物騒だ。

 ヒューゴはこの状況に、ふとため息を漏らした。

 ベルタとダナに少年少女たちを送らせておいて正解だった。それに、クィックフォワードにはアメリカ人撮影スタッフを任せておいて。

 皆して甲冑モードなので、途中まで送れば、後は全員今日の出来事を忘れ去ってくれるだろう。

 道場へと目を戻す。


 彼ら亜世界の住人達がどんな話をしているのか?など微塵も興味が湧かない。


 そもそも、コロコロ名前を変える男など最初から信用できない上に、ミュッセという人物は見た目からして胡散臭い。どこのカードゲームマンガのボスキャラなんだよ…。


 それに。


 中学生のルーティを同席させて、どんな意味があるのだろうか?

 あの中で、悪魔のフェネクスが一番まともに思える時点で、彼らが何を話していようが、知った事ではない。



 そうとも知らない彼らは、鶏冠井道場の中で会談に臨んでいる。


「ミュッセ。姉上と直接顔を合わせる事はあるのですか?」
 会談早々に、ココミは姉ラーナ・ファント・ドラコットの近況を伺った。

 敵対しているとはいえ、直接戦ったとしても、お互い決して死ぬ心配は無いので、どこかで会っているものと期待しての質問であった。

 事実、ココミはライクと、毎回のようにアンデスィデが行われる度に顔を合わせている。

 ところが、返ってきた答えはNo。

 一度も顔を合わせた事が無いと言う。

「どうやらラーナはアンデスィデをビジネスに用いているようで、こちらからのコンタクトをことごとく拒否なさっているのデース」

「??ビジネス??」
 ココミは首を傾げた。

「ラーナが手を組んだクレイモアなる組織は、依頼を受けて戦場を作り、戦火を広げては復興事業を展開しているマッチポンプ請負組織なのデース」
 それは、ヒューゴが懸念したアンデスィデの悪用例そのものだった。

 国家としては、テロ組織に資金援助するよりもはるかに効率が良く、なおかつ他国に浸透できる。そして、証拠は一切残さない上に発生さえもしない。

「そうですか」吐き気をもよおす悪事の片棒を担いでいると思うと、遣り切れない気持ちになる。

「で、ミュッセ」
 気持ちと共に話題を切り替える。

「はるばる東欧から、こちらへと足を運ばれた理由をお聞かせ下さい」

「オー。懐かしい昔の話を交えながらと思っていたのデスが…。よろしいでしょう」
 ミュッセは改まって本題に入った。

「どうか、ココミに共闘をお願いしたいのデース」
 ミュッセの申し出は、ココミにとって想定内の内容だった。

 そして、辺りを見回す。

 なるほどと頷いた。

 ラーナの陣営も、恐らくミュッセが共闘を申し出る事を見越して、ヒューゴたちドラゴンの騎士の抹殺を目論んだのだろう。

 ライフィング・ピースの魔者を倒した所で、アンデスィデに突入すれば盤上戦騎として戦場に投入されてしまう。

 それならば、いっその事マスターを抹殺すれば、アンデスィデへは参戦できずに、ただの的となる。それでは何の援軍にもならない。

 それにしても。

 金星のハギトは何故、ヒューゴとリョーマの両名を、さっさと始末しなかったのだろう?

 ココミはひとり思案する。

 もしかして。

 ココミは、鶏冠井道場へと向かう途中に、ベルタたちと出会った事が理由なのでは?と考えた。

 本来ならば、マスターであるヒューゴたちを護るのが魔者にとって最優先事項のはず。

 フムフムとココミは自らの推理の出来栄えに感心し、クスリと笑う。


 魔者の身体能力は、人間をはるかに凌駕している。

 それすなわち、人間には魔者を倒せない構図となる。

 そこにハギトの油断があったのだろう。

 草間・涼馬はココミもビックリの、音速剣の使い手。しかも高砂・飛遊午は攻撃魔法まで使える(二天撃を魔法と解釈してしまっている)。

 どちらも想定外の出来事だったのだろ。


 含み笑いは、やがて肩を上下させるくらいに。そして、つい笑い過ぎて出てしまった涙を指で拭った。

「ごめんなさい、ミュッセ。貴方のその申し出、受けると致しましょう」
 口約束ではあるが、ココミはミュッセとの共闘を受け入れる事にした。

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