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[19]悪魔の王
-194-:失礼の無いようにオネガイね
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金星のハギト。
姿を現したかと思えば、ベルタやダナ同様に、ソシャゲの女騎士のような姿。
どちらかと言えば、ダナ寄りの、しかももっと過激なお色気姉さんタイプ。
ダナが現れた時は、彼女が醸し出す色気に胸がときめいたものだが、艶めかしい太腿が深いスリットから覗くも、目の前のハギトには何の感情も抱かない。
それはヒューゴ、リョーマ揃って同じ違和感を覚えた。
「なぁ、クサマ。俺、あの女に全然、心が躍らんわ」
ヒューゴが告げようものなら。
「僕もだ。たぶん、彼女から発せられる殺気が、そういった感覚を吹き飛ばしてしまっているのだろう」
冷静に分析していやがる…。確かに、彼の言っている事は正しいと思う。
だけど、彼女が手にする短槍斧の刃が放つ光が、二人の幻想とやらを斬り捨てているのだろう。
「お前たちには荷が重すぎる。ここは私に任せて、彼女を連れて逃げるんだ」
甲冑姿へと変身を遂げたクィックフォワードが二人の前に立つ。
「行け!早く!」
ハギトを見据えたままヒューゴたちに命令する。
しかし、「ダメだ!」即刻ヒューゴによって拒まれてしまった。
「お前の武器、やっぱり籠手剣じゃないか」
一度使って知っている。あれほど使いにくい武器は無い。しかも、相手は長柄武器。取り回しの悪い武器では相性が悪過ぎる。
「しかし!」
「しかしも、へったくれも無いわ!お前は先輩を連れて逃げるんだ」
それでも!なおもクィックフォワードは食い下がる。
「クィックフォワード。手負いの、しかも気を失っている彼女を連れて逃げる事が、どれだけ大変か、理解してくれ。とてもじゃないけど、僕たちには無理なんだ」
そう言われてしまうと、渋々ではあるが、納得せざるを得ない。
クィックフォワードはミサキをお姫様抱っこで抱え上げると、シュタッ!と素早く道場を後にした。
「これで心置きなく、お前たちを始末できる」
クククと笑いながらハギトが告げる。
「彼らを見過ごしてくれるなんて、思ったよりも慈悲深いんだな。君は」
リョーマが左手首に巻いている時計に隠したアミュレットに触れると、彼の手にしている長丈の木刀が物質変換して真剣へと変化を遂げた。
「な、何!?」
隣で驚くヒューゴ。
「お前、その武器、どうしたんだ?」
訊ねた。
「ココミから貰い受けた。あ、そうか。君は一度脱退しているから、貰い損ねていたのだね」
眼鏡を中指でクィッと上げる。
カツンッ!
ハルバートの石突が床に叩きつけられた。
「貴様ら!訊ねておいて、内々で話をするな!」
置いてけぼりを食らった事にご立腹。ハギトは咳払いひとつして。
「誰もみすみす連中を見過ごしたりはしてないさ。お前たちの作戦は見事だが、しかし!どちらも逃しはしないよ」
紺碧色の瞳があざ笑う。
どちらも!?
対応に甘さは無い。とはいえ、どちらかが安全に逃げ遂せてくれる事を祈っての作戦だったが、どうやら、そうは問屋が卸さないらしい。
「さぁて、ここでお前たちを一捻りてのも悪くないけど、逃がした者たちが始末される報せをゆっくりと待つなんてのも、一興かもね」
何て悪趣味な。
そんな中。
ヒューゴのスマホが鳴った。
「どうせ待つってんなら、電話に出ても良いよな?」
お伺いを立てると、ハギトは見下した笑みを浮かべながら顎でOKをくれた。
ヒューゴがスマホ画面を見やり。
(掃部・颯稀?)
同じ鶏冠井流剣道場の門弟で、ヒューゴの姉弟子に当たる。ヒューゴと同じく天馬学府高等部に通う先輩で、同じく剣道部に所属しているものの、彼と同じく、ほとんど練習に顔を出さない。
彼女曰く。
”練習したら弱くなっちゃう”との事。
最近は鶏冠井道場にも姿を見せていない。
「どうした?早く出てやれよ」
ハギトが急かす。が、ヒューゴはためらった。
彼女は、出来る事ならば話しすらもしたくない相手。
それは、昨年の県大会予選にて。
剣道のルールを把握していない事を理由に、相手を必要以上に滅多打ちしてケガをさせた事による(悪質な反則行為と見なされ、反則負けを喫している)。
それ以前にも彼女は、この道場が実戦剣道を教えているとはいえ、確実に相手を殺す急所狙いを行う事。それが、ヒューゴには危険に思えてならなかった。
彼女の飄々とした態度から、“証拠は挙がっていないが、確実に人を殺している”とヒューゴは睨んでいる。
「も、もしもし」
気が乗らないまま電話に出る。
「どーしたの?ヒューゴ。遅いよ。ナニ?うんこでもしていたの?」
この、ふざけた態度、声を聞いただけでイラッと来る。
「今、取り込み中なんだ。後で電話を掛け直す」
用件だけ伝えて電話を切ろうとしたら。
「わー、待って待って。ヒューゴの慌てん坊さん。で、今からね、そっちにお客さんがお見えになるから、お茶の準備などしておいて」
「そんなの断れよ!」
いきなり来客は困る。それに、今から刃傷沙汰が始まろうというのに。
しかし。
「ダーメ!はるばる東欧から来て下さってんだから。あと10分くらいで着くから、失礼の無いようにオネガイね」
言ってサツキは電話を切ってしまった。「もしもし!もしもし!」
「何の電話だ」
リョーマガ訊ねた。
「今からこっちに客が来るんだってよ。断る前に電話を切られた」
リダイヤルをするも、サツキは電源を切った模様。これから10分の範囲内で電波が届かない訳が無い。
二人はハギトを見据えて、それぞれ得物を構えて見せた。
もう、ほとんど猶予は無い。
あと、10分以内にハギトを倒さなければ。
ハギトも、そんな二人の姿に興奮を隠せず。
「じゃあ、お前たちの屍を狛犬のように入り口に飾って、そのお客さんとやらを出迎えようじゃないか」
悪趣味極まりない台詞を吐きながら、ハギトは嬉々としてハルバートを構えて見せた。
姿を現したかと思えば、ベルタやダナ同様に、ソシャゲの女騎士のような姿。
どちらかと言えば、ダナ寄りの、しかももっと過激なお色気姉さんタイプ。
ダナが現れた時は、彼女が醸し出す色気に胸がときめいたものだが、艶めかしい太腿が深いスリットから覗くも、目の前のハギトには何の感情も抱かない。
それはヒューゴ、リョーマ揃って同じ違和感を覚えた。
「なぁ、クサマ。俺、あの女に全然、心が躍らんわ」
ヒューゴが告げようものなら。
「僕もだ。たぶん、彼女から発せられる殺気が、そういった感覚を吹き飛ばしてしまっているのだろう」
冷静に分析していやがる…。確かに、彼の言っている事は正しいと思う。
だけど、彼女が手にする短槍斧の刃が放つ光が、二人の幻想とやらを斬り捨てているのだろう。
「お前たちには荷が重すぎる。ここは私に任せて、彼女を連れて逃げるんだ」
甲冑姿へと変身を遂げたクィックフォワードが二人の前に立つ。
「行け!早く!」
ハギトを見据えたままヒューゴたちに命令する。
しかし、「ダメだ!」即刻ヒューゴによって拒まれてしまった。
「お前の武器、やっぱり籠手剣じゃないか」
一度使って知っている。あれほど使いにくい武器は無い。しかも、相手は長柄武器。取り回しの悪い武器では相性が悪過ぎる。
「しかし!」
「しかしも、へったくれも無いわ!お前は先輩を連れて逃げるんだ」
それでも!なおもクィックフォワードは食い下がる。
「クィックフォワード。手負いの、しかも気を失っている彼女を連れて逃げる事が、どれだけ大変か、理解してくれ。とてもじゃないけど、僕たちには無理なんだ」
そう言われてしまうと、渋々ではあるが、納得せざるを得ない。
クィックフォワードはミサキをお姫様抱っこで抱え上げると、シュタッ!と素早く道場を後にした。
「これで心置きなく、お前たちを始末できる」
クククと笑いながらハギトが告げる。
「彼らを見過ごしてくれるなんて、思ったよりも慈悲深いんだな。君は」
リョーマが左手首に巻いている時計に隠したアミュレットに触れると、彼の手にしている長丈の木刀が物質変換して真剣へと変化を遂げた。
「な、何!?」
隣で驚くヒューゴ。
「お前、その武器、どうしたんだ?」
訊ねた。
「ココミから貰い受けた。あ、そうか。君は一度脱退しているから、貰い損ねていたのだね」
眼鏡を中指でクィッと上げる。
カツンッ!
ハルバートの石突が床に叩きつけられた。
「貴様ら!訊ねておいて、内々で話をするな!」
置いてけぼりを食らった事にご立腹。ハギトは咳払いひとつして。
「誰もみすみす連中を見過ごしたりはしてないさ。お前たちの作戦は見事だが、しかし!どちらも逃しはしないよ」
紺碧色の瞳があざ笑う。
どちらも!?
対応に甘さは無い。とはいえ、どちらかが安全に逃げ遂せてくれる事を祈っての作戦だったが、どうやら、そうは問屋が卸さないらしい。
「さぁて、ここでお前たちを一捻りてのも悪くないけど、逃がした者たちが始末される報せをゆっくりと待つなんてのも、一興かもね」
何て悪趣味な。
そんな中。
ヒューゴのスマホが鳴った。
「どうせ待つってんなら、電話に出ても良いよな?」
お伺いを立てると、ハギトは見下した笑みを浮かべながら顎でOKをくれた。
ヒューゴがスマホ画面を見やり。
(掃部・颯稀?)
同じ鶏冠井流剣道場の門弟で、ヒューゴの姉弟子に当たる。ヒューゴと同じく天馬学府高等部に通う先輩で、同じく剣道部に所属しているものの、彼と同じく、ほとんど練習に顔を出さない。
彼女曰く。
”練習したら弱くなっちゃう”との事。
最近は鶏冠井道場にも姿を見せていない。
「どうした?早く出てやれよ」
ハギトが急かす。が、ヒューゴはためらった。
彼女は、出来る事ならば話しすらもしたくない相手。
それは、昨年の県大会予選にて。
剣道のルールを把握していない事を理由に、相手を必要以上に滅多打ちしてケガをさせた事による(悪質な反則行為と見なされ、反則負けを喫している)。
それ以前にも彼女は、この道場が実戦剣道を教えているとはいえ、確実に相手を殺す急所狙いを行う事。それが、ヒューゴには危険に思えてならなかった。
彼女の飄々とした態度から、“証拠は挙がっていないが、確実に人を殺している”とヒューゴは睨んでいる。
「も、もしもし」
気が乗らないまま電話に出る。
「どーしたの?ヒューゴ。遅いよ。ナニ?うんこでもしていたの?」
この、ふざけた態度、声を聞いただけでイラッと来る。
「今、取り込み中なんだ。後で電話を掛け直す」
用件だけ伝えて電話を切ろうとしたら。
「わー、待って待って。ヒューゴの慌てん坊さん。で、今からね、そっちにお客さんがお見えになるから、お茶の準備などしておいて」
「そんなの断れよ!」
いきなり来客は困る。それに、今から刃傷沙汰が始まろうというのに。
しかし。
「ダーメ!はるばる東欧から来て下さってんだから。あと10分くらいで着くから、失礼の無いようにオネガイね」
言ってサツキは電話を切ってしまった。「もしもし!もしもし!」
「何の電話だ」
リョーマガ訊ねた。
「今からこっちに客が来るんだってよ。断る前に電話を切られた」
リダイヤルをするも、サツキは電源を切った模様。これから10分の範囲内で電波が届かない訳が無い。
二人はハギトを見据えて、それぞれ得物を構えて見せた。
もう、ほとんど猶予は無い。
あと、10分以内にハギトを倒さなければ。
ハギトも、そんな二人の姿に興奮を隠せず。
「じゃあ、お前たちの屍を狛犬のように入り口に飾って、そのお客さんとやらを出迎えようじゃないか」
悪趣味極まりない台詞を吐きながら、ハギトは嬉々としてハルバートを構えて見せた。
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