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[16]もうひとつの魔導書チェス
-168-:再び天使たちが現れるかもしれない
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大好きなイチゴは最後に食べると決めている。
クレハはイチゴを頬張ると、とても幸せそうな笑みを浮かべた。
そんなクレハを眺めて、ベルタは優しい笑みを向ける。
「ところでベルタ」
優しい笑みから一転、ハッと我を取り戻し、声を掛けてきたリョーマへと向いた。
「アルマンダルの天使たち、何故彼らは僕たちの前に姿を現したのだ?」
「お前がそれを訊くんかい!?」
反射的にクレハ。
「いや、彼ら本人に理由を訊こうとしたら、そこのせっかちな男が、いきなり彼らと戦闘状態に入ってしまったのでね。おかげで、理由を聞きそびれてしまったよ」
やれやれと肩をすくめて見せる。
「仕方ないだろう。ベルタでいられる時間が、たった3分間しか無かったから、1秒も無駄にしたくなかったんだよ」
言い分は理解できる。
しかし、敵が話している最中にいきなり攻撃を仕掛けるのは、やはり褒められたものではない。
「もうひとつの魔導書チェスが行われているのは、詳しくは知り得ていませんが、東欧のどこかとだけ把握しています。そんなに遠くから遠路はるばるやって来たのには、彼らなりに何か理由があるはずなのですが…。現在、ココミの姉上のラーナ様とは連絡が取れないので、詳細は掴めていません」
連絡が『着かない』のではなく、『取れない』とベルタは言った。
「取れない?」
すかさずヒューゴが言い間違いなのでは?と訊き返す。
「ええ。電話番号を知っていれば話は別ですが、魔導書を通して、他のプレイヤーと会話や情報のやり取りをする事は出来ないようになっているのです。この日本で魔導書チェスを行っているココミとライクも、あちらの情報は何一つ掴んでいません」
随分とザルな情報網なのね…。
そこは魔者のひとりでも現地へ派遣して、情報収集に当たらせるべきだろう。
おそらく、ラーナにしろ、その対戦相手にしろ、こちらで行っている魔導書チェスの情勢を掴んでいるからこそ、今回何らかのアクションを起こしたのではないか。
その理由を知りたかったのだが。
そもそも、この王位継承戦は全体的に戦争と呼ぶには、基本が成っていない箇所が目に余るくらいにあり過ぎる。
情報戦の不備も然ることながら、ことココミに至っては、戦力を整えないまま戦争に突入している有様。
今でこそ戦力比は縮まってきてはいるが…。
ヒューゴは懸念は止まない。
「アイツらだけで終わるとは、とても思えないな…。再び天使たちが現れるかもしれない。草間、しばらくは用心を欠かないよう心掛けてくれ」
「魔者を手元に置かない君に言われたくはないね」
素直に注意を聞き入れてくれないリョーマに苛立ちを覚える。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
明けて翌日―。
―天馬学府高等部1年生棟にて―
学園へ通う叫霊のツウラが近づこうとさえしない校舎。
時限間に用を足し終えた御手洗・達郎がトイレから出てきた。
少々急いでいる事もあり、ハンカチで手を拭きながら。
その時―。
「いやあぁぁ!―」
悲鳴が!しかも途中で途切れてしまったような悲鳴が聞こえた。
声が聞こえた先は…。
隣の女子トイレ!?
「ど、どうしよう…」
悲鳴が聞こえたという事は、誰かが助けを求めている事。
だけど、しかし!
そこは女子トイレ。
確かめなければと使命感を抱くも、果たして中に入って良いものなのか?…ためらってしまう。
「ダメだろう。男の僕が、女子のトレイに入ったら」
人を呼ぼうと一歩歩き出すも。
「でも、今、途中で悲鳴が途切れてしまったな…口を塞がれてしまったのかな?」
脚が止まった。
「だけど、入って、もしも、ただじゃれ合っているだけだったら…」
立派な犯罪者にされてしまう。
やはり、人を呼んだ方が得策かも。
再び歩き出す。
が、しかし。
「もしかしてナイフとかで刺されたりでもしていたら、助かるかもしれないのに、このまま離れてしまったら、助かる命も助からない」
極端な発想に至り、振り向いた。
でも。
どうしよう…。
タツローは究極の選択を迫られた。
クレハはイチゴを頬張ると、とても幸せそうな笑みを浮かべた。
そんなクレハを眺めて、ベルタは優しい笑みを向ける。
「ところでベルタ」
優しい笑みから一転、ハッと我を取り戻し、声を掛けてきたリョーマへと向いた。
「アルマンダルの天使たち、何故彼らは僕たちの前に姿を現したのだ?」
「お前がそれを訊くんかい!?」
反射的にクレハ。
「いや、彼ら本人に理由を訊こうとしたら、そこのせっかちな男が、いきなり彼らと戦闘状態に入ってしまったのでね。おかげで、理由を聞きそびれてしまったよ」
やれやれと肩をすくめて見せる。
「仕方ないだろう。ベルタでいられる時間が、たった3分間しか無かったから、1秒も無駄にしたくなかったんだよ」
言い分は理解できる。
しかし、敵が話している最中にいきなり攻撃を仕掛けるのは、やはり褒められたものではない。
「もうひとつの魔導書チェスが行われているのは、詳しくは知り得ていませんが、東欧のどこかとだけ把握しています。そんなに遠くから遠路はるばるやって来たのには、彼らなりに何か理由があるはずなのですが…。現在、ココミの姉上のラーナ様とは連絡が取れないので、詳細は掴めていません」
連絡が『着かない』のではなく、『取れない』とベルタは言った。
「取れない?」
すかさずヒューゴが言い間違いなのでは?と訊き返す。
「ええ。電話番号を知っていれば話は別ですが、魔導書を通して、他のプレイヤーと会話や情報のやり取りをする事は出来ないようになっているのです。この日本で魔導書チェスを行っているココミとライクも、あちらの情報は何一つ掴んでいません」
随分とザルな情報網なのね…。
そこは魔者のひとりでも現地へ派遣して、情報収集に当たらせるべきだろう。
おそらく、ラーナにしろ、その対戦相手にしろ、こちらで行っている魔導書チェスの情勢を掴んでいるからこそ、今回何らかのアクションを起こしたのではないか。
その理由を知りたかったのだが。
そもそも、この王位継承戦は全体的に戦争と呼ぶには、基本が成っていない箇所が目に余るくらいにあり過ぎる。
情報戦の不備も然ることながら、ことココミに至っては、戦力を整えないまま戦争に突入している有様。
今でこそ戦力比は縮まってきてはいるが…。
ヒューゴは懸念は止まない。
「アイツらだけで終わるとは、とても思えないな…。再び天使たちが現れるかもしれない。草間、しばらくは用心を欠かないよう心掛けてくれ」
「魔者を手元に置かない君に言われたくはないね」
素直に注意を聞き入れてくれないリョーマに苛立ちを覚える。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
明けて翌日―。
―天馬学府高等部1年生棟にて―
学園へ通う叫霊のツウラが近づこうとさえしない校舎。
時限間に用を足し終えた御手洗・達郎がトイレから出てきた。
少々急いでいる事もあり、ハンカチで手を拭きながら。
その時―。
「いやあぁぁ!―」
悲鳴が!しかも途中で途切れてしまったような悲鳴が聞こえた。
声が聞こえた先は…。
隣の女子トイレ!?
「ど、どうしよう…」
悲鳴が聞こえたという事は、誰かが助けを求めている事。
だけど、しかし!
そこは女子トイレ。
確かめなければと使命感を抱くも、果たして中に入って良いものなのか?…ためらってしまう。
「ダメだろう。男の僕が、女子のトレイに入ったら」
人を呼ぼうと一歩歩き出すも。
「でも、今、途中で悲鳴が途切れてしまったな…口を塞がれてしまったのかな?」
脚が止まった。
「だけど、入って、もしも、ただじゃれ合っているだけだったら…」
立派な犯罪者にされてしまう。
やはり、人を呼んだ方が得策かも。
再び歩き出す。
が、しかし。
「もしかしてナイフとかで刺されたりでもしていたら、助かるかもしれないのに、このまま離れてしまったら、助かる命も助からない」
極端な発想に至り、振り向いた。
でも。
どうしよう…。
タツローは究極の選択を迫られた。
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