上 下
159 / 351
[15]アルマンダルの天使たち

-154-:有難味も何も無ぇわ…again

しおりを挟む
 天使を思わせるオフィエルの姿に、“サイ”と“ウシ”を見たクレハの抱いた第一印象は…。

「有難味も何も無ぇわ…」

 一方の、オフィエルの自己紹介を受けたリョーマは。

超音速飛龍スーパーソニックドラゴンのダナ!そして、そのマスターの草間・涼馬くさま・りょうま
 礼を欠く事無く名乗りを上げる。

 そして、ダナの身丈程もある野太刀をオフィエルに向けて正眼に構える。

「良い構えだ」
 ダナとリョーマを褒めつつ、擱座状態にあるシンシア駆るウッズェへと顔を向けると。

16番目シンシア、この体の昔の好として、ここはひとつお前たちを助けてやるとしよう。俺達がお前たちの代わりに、コイツら白側のドラゴンたちを討伐してやろう」

 豪語して見せるとオフィエルは、カイトシールドで前面を覆うように防御を固めてダナに対峙する。

 “討伐”などと、言っている事自体不快でならないが。

 当然と言えば、当然の構え。

 あれほどの大きさの大鉈(刃はギザギザ)では、自ずと“振り下ろす”攻撃に限定される。

 つまりは重量級の得物なのだ。

「相手の攻撃を防いでから攻撃に移る構えか」
 そう、見越していたら。

 先に動いたのはオフィエルの方だった。

 カイトシールドで防御しつつ突進!しかも、初速が異常に速い。

 体当たりを食らわせる突撃か?違う!

「敵の機動力は確実にこちらを追尾してきます。ご注意を」
 ダナの的確で有難い忠告。

 突撃を避けたら避けたで、即追尾攻撃に入られる。

 右か?左か?それとも剣で敵の動きを止めるか?

 しかし、剣を放とうものなら、それこそ敵の思うつぼ。確実に大鉈の一撃の餌食となる。

 だったら。

 リョーマはダナを急速上昇させて、さらに!両肩のガトリングポッドでオフィエルを捉えつつ後ろへと回り込む。

 オフィエルはガトリングガンの攻撃に対応せざるを得ず、カイトシールドを上方へと向きを変えて行く。

 それこそがリョーマの狙い。

「真後ろへと回り込まれたら、何で僕たちに対応する?」
 オフィエルが気づいた時には、大鉈の切っ先はダナへと向けられた状態であった。

 大振りこそが攻撃手段だというのに、切っ先が相手に向いていては、剣を振るう事は叶わない。

 野太刀の峰に左手を添えて、リョーマは突きの構えに入っている!

 まるで、ビリヤードのショットを打つかの如く、ダナの刺突攻撃が放たれた。

「この男!」
 剣撃を払いのけようと咄嗟に大鉈を振るうも、間に合わず、しかし、頭部に備え付けられている角を野太刀の切っ先にぶつける事によって直撃を回避。
 だが、ただで済むはずもなく、オフィエルの左頬は大きく切り傷を負う事になる。

 この瞬間!リョーマはオフィエルなる者が、“肉を切らせて骨を断つ”を実践できる者だと判断した。

 おかげで、油断する事無く、オフィエルの次の手に対応する事ができた。

 オフィエルはカイトシールドで護ることはせずに、盾の先をダナに向けていた。一瞬とはいえ、間合いが広がった今、彼の取った構えはシールドバッシュのものではない。

 明らかに。

 カイトシールドの裏面には炎熱弾カルバリンの発射口が覗いていた。

 射撃攻撃だ。

 カルバリンが放たれる。もはやこの距離、回避は不可能。


 両者の間に赤く爆炎が広がる。


 態勢を整えるべく、立ち込める黒煙の中から緊急後退を行ったオフィエルが目にしたものは。

 黒煙の中に光る緑色の小さな球体。

 風に流され、黒煙が晴れて行く。

 野太刀の峰に添えた左手を拳に変えて前へと突き出しているダナ。そして。

 拳を握るダナの手の先には、緑色に光り輝く玉が。

 *ピンポイントバリアー*

 ダナは極小範囲の防御壁バリアーを備えた盤上戦騎だった。

「楽しませてくれる」
 オフィエルは胸の高ぶりを抑えきれない。

「同感だ」
 それはリョーマも同じ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

無記名戦旗 - no named warbanner -

重土 浄
SF
世界全てと重なり合うようにして存在する電子空間メタアース内では、今日も仮想通貨の覇権戦争が行われている そこで戦うのは全ての市民、インセンティブにつられて戦うギグソルジャー(臨時雇い傭兵)たちだ オンラインARゲームが戦争の手段となったこの時代で、いまだ純粋なプロゲーマーを目指す少年、一色空是はその卓越した技能ゆえに戦火に巻き込まれていく… オンラインと現実の境界線上で起こる新しい世界戦争。それを制するのは、ゲームの強さだけだ! (他サイトでも連載中)

Re-volution-ムサシ、起動。

逢神天景
ファンタジー
「俺は兄の出涸らしだ」 優秀な兄と比べられ、ずっと絶望してきた主人公、ユーヤ。 彼が唯一兄に勝てたのは、テレビゲームの腕前だけだった。 そんなある日、彼がテレビゲームの大会で優勝すると……その賞品として、異世界へ連れ去られてしまった。 なんの説明もなく放り出され、絶望するユーヤ。諦めようとしたその瞬間、彼の前に現れたのは蒼い巨大ロボットだった――。 蒼いロボットの操縦方法は彼が元の世界で愛していたゲームとそっくりだった! 唯一の武器は、ゲームで培った操縦技術のみ。 これは彼が、戦場で出会った王女を救うためにロボットで戦う物語。

私の召喚獣が、どう考えてもファンタジーじゃないんですけど? 〜もふもふ? いいえ……カッチカチです!〜

空クジラ
SF
 愛犬の死をキッカケに、最新VRMMOをはじめた女子高生 犬飼 鈴 (いぬかい すず)は、ゲーム内でも最弱お荷物と名高い不遇職『召喚士』を選んでしまった。  右も左も分からぬまま、始まるチュートリアル……だが戦いの最中、召喚スキルを使った鈴に奇跡が起こる。  ご主人様のピンチに、死んだはずの愛犬コタロウが召喚されたのだ! 「この声? まさかコタロウ! ……なの?」 「ワン」  召喚された愛犬は、明らかにファンタジーをぶっちぎる姿に変わり果てていた。  これはどこからどう見ても犬ではないが、ご主人様を守るために転生した犬(?)と、お荷物職業とバカにされながらも、いつの間にか世界を救っていた主人公との、愛と笑いとツッコミの……ほのぼの物語である。  注意:この物語にモフモフ要素はありません。カッチカチ要素満載です! 口に物を入れながらお読みにならないよう、ご注意ください。  この小説は『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...