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[14]騎士と兵士

-136-:恋は盲目とは良く言ったもの

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 アンデスィデが始まる3時間前―。

「本気で言っているのですか!?ライク」
 ココミは、彼女らしからぬほどに声を荒げた。

「大丈夫だよ、ココミ。心配は無いよ。彼は絶対に死ぬことにはならないよ」
 なだめるようにライクはココミに告げる。

「いい加減な事は言わないで!そんな事をして、彼にもしもの事があれば、私は…」
 握りしめる拳に、さらに力が込められた。

「ココミさぁ、君のその想いは否定したい気持ちでいっぱいだろうけど、現実を知る君は、彼が多重契約をしても大丈夫な理由をすでに知り得ているはずだろう?」
 ライクの言葉に、ココミは驚いた表情を見せる。

「現実を知る私??私が多重人格者とでもおっしゃりたいのですか?」
 訊ねるココミに、ライクは肩をすくめて見せた。

「恋は盲目とは良く言ったもの。いや、この際、天然と言ったほうが妥当かな。いいかい?ココミ。説明する僕だって滅茶苦茶恥ずかしいんだから、一回で理解してよね」
 前置きを添えて。

 ライクは咳払い一つすると。

「君は高砂・飛遊午に想いを寄せている」告げた瞬間「プッ」とココミは吹いた。

「そんなワケ『いいから聞きなさい!』」横槍は一切受け付けません。

「その一方で、彼にはすでに“鈴木・くれは”という彼女カノジョがいる事を知っている」

「あの二人がそんなに親密な仲だとは『だから、黙っていて』」再度口を挟んだ事に厳重注意を受けた。

「あのね、僕は、ヒューゴとクレハの間に入る余地なんて無い理由を言っているんだが。君だって、すでに気付いているハズだよ。クレハが時折ヒューゴに霊力を供給しているコトを」

「う…」
 ココミは思わず目を逸らしてしまった。

「クレハの霊力は女王クィーンに準ずるほどの、とても強力なものだよ。だから2騎目の兵士ポーンと契約を結んだくらいでは、どうという事はないと思うよ」

「“思う”だなんて不確定じゃないですか。クィックフォワードと契約を結んだ瞬間に死ぬかもしれない可能性もまだ残されているのに」
 即否定して見せた。

 たとえ可能性がゼロだったとしても、ヒューゴにこれ以上負担を強いる事なんてできない。

「しょうがないね。だったら、こうしよう」
 ライクはため息をつくと、新たな条件を提示した。

「今日、天馬学府の上空に盤上戦騎ディザスターを召喚させる。ヒューゴが戦ってくれるのならば、この地域で最も被害の少ない場所に戦場を移すよ。もしも、彼以外のマスターを立ててくると言うのなら、そのまま学園で戦闘を続行する」
 それは条件というよりも、むしろ脅迫であった。

 睨みつけてくるココミを見やり、ため息をつくと。

「しょうがないだろ。そうしないと、シンシアが無差別テロを行うって、僕を脅してきたんだから。僕だって被害者なんだよ。協力してよ」
 態度を一変させて、今度はすがるように頼み込んできた。

「私たちが行っているのは、あくまでもクリモワールチェスです。それ以外の争い事を引き入れる訳にはいきません」
 断じてテロ行為など介入させたりはしない。

 脅迫に屈するカタチとなってしまったが、ヒューゴを参戦させる以外、手は無さそうだ。

 だけど、ココミはこの条件に“穴”が存在する事に気付いた。


 もう1騎のディザスターの存在がすっぽりと抜け落ちている。


 手は無い事もない。

 ヒューゴには取り敢えずクィックフォワードと契約してもらう。

 だけど、彼には戦ってもらう必要は無い。

 騎士ナイトのダナに戦ってもらうことにしよう。


 しかし、そもそも、その考えが甘かった。


 
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