上 下
123 / 351
[13]ミドルゲームスタート!!

-118-:こんな所で会えるなんてね。高砂・飛遊午

しおりを挟む
 時計の針は、ただひたすら時を刻み続ける…。

 人知れず繰り広げられているデスゲーム・魔導書グリモワールチェスのチェスクロックの針も、すでに次の戦いへと狙いを定めて、刻一刻と時を刻んでゆく。



 明けて6月16日―。

 “鈴木・くれは”の謹慎が解かれて、彼女は3日ぶりに学校へ。


 しかし。


 もはや日課となっている、草間・涼馬の待ち伏せを察知したクレハは、部屋から通学路へと向かう交差路に設けられたカーブミラーに目をやった。


 3階の窓から身の乗り出して覗きこむのは不自然と、鏡を駆使して様子をうかがう事にした。


 いた。

 今日もいやがった。


 アイツに構っていると、走って登校しなければならない。
 久しぶりの学校だというのに、走るのは体育の授業だけにしておきたい。


 クレハは決めた。


 違う道を通って学校へ行こう。



 ヘアクリップを鷲掴み、クレハは朝の準備に取り掛かった。

 家族が皆、目を丸くしている。

 母親が「雨でも降るんじゃない?」と冷やかし、それを気にも留めることなく、いつになくテキパキと準備を整える。

 いつも、こうだと良いのにこぼす親の期待などお構いなし。

 ただ。

 草間・涼馬との面倒に巻き込まれたくないだけ。


 いつもなら高砂・飛遊午が迎えにくるのだが、今日は逆に彼を迎えに行った。



「おはよー、タカサゴ!」

 元気よく朝の挨拶。

 が。

「大丈夫か?」

 それが朝の挨拶かいッ!?
 いつもと違うクレハに彼は戸惑いの色を隠せない。



 今日は少し遠回りをして、河川沿いの道を行くことに。

 いつもと違う道は、新たな発見をもたらしてくれる。


 世の中、暇な人が多いんだなぁ…。

 働き盛りの男性がジョギングしていたり、犬の散歩をしながら世間話に花を咲かせるおばさんたち。
 クレハは自身を常識の中心と捉えて、世の人たちの生活リズムに疑問を抱く。

 出勤時間や起床時間は人それぞれなのに。


 そんな色眼鏡に満ちたクレハたちは、河川沿いに敷設されているバスケットコートに差し掛かった。


 そこには、一人の少女の姿が。

 ドリブルをしながらスリーポイントラインに立つと、ふわりと後ろへと跳んでフェイダウェイシュートを放った。

 ストン!軽い音を立ててゴールをキメる。


 パチパチパチと拍手の鳴る方へと少女の顔が向けられた。


「上手いもんだなぁ」
 感心するヒューゴに。

「もう!失礼だよ。彼女、貝塚・真珠かいづか・しんじゅさんはプロバスケチームが目を付けている程のスゴイ選手なんだから」
 すかさずツッコミを入れるが如く、ヒューゴの胸を叩くクレハ。

「そんなに有名なのか」
 驚くヒューゴに、クレハは続ける。

「知らないと、天馬では生きて行けないよ。彼女、ヴァルキュリアのエースなんだよ」

「ヴァルキュリア?何だ?それ」

 ヒューゴの問いに、呆れたと天を仰いで。

「そんな事も知らないの!?ヴァルキュリアってのは、ウチの学校の女子バスケット部の正規メンバーの事だよ。トラちゃんも、その一人」

「トラが!アイツがか!?そんなにスゲーヤツだったのか」
 ヒューゴの驚きは止まらない。



「こんな所で会えるなんてね。高砂・飛遊午」
 シンジュが頬に流れる汗をタオルで拭きながら、クレハたちに寄ってきた。


「スゴイよ。タカサゴ!学園の超有名人に名前を憶えてもらっているなんて」
 感動を体全体で表現するクレハとは対照的に、シンジュはため息を漏らした。


「学年トップの成績保持者にして剣道の試合で顔面を割られた、ただでさえ目立つ上に隣のクラスとくれば知らないハズも無いでしょ?」

「えぇーッ!?シンジュちゃん、隣のクラスだったの!?」
 驚きを隠せないクレハに、シンジュは軽い目眩めまいを覚えた。

「…あのね…今さっき、私の事を“学園の超有名人”とか言っていたのに、私が隣のクラスなのを知らなかったの?トラの親友のくせに」
 あまりのツッコミどころ満載さに、あきれ果てるシンジュであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の相棒は元ワニ、今ドラゴン!?元飼育員の異世界スローライフ

ライカタイガ
ファンタジー
ワニ飼育員として働いていた俺は、ある日突然、異世界に転生することに。驚いたのはそれだけじゃない。俺の相棒である大好きなワニも一緒に転生していた!しかもそのワニ、異世界ではなんと、最強クラスのドラゴンになっていたのだ! 新たな世界でのんびりスローライフを楽しみたい俺と、圧倒的な力を誇るドラゴンに生まれ変わった相棒。しかし、異世界は一筋縄ではいかない。俺たちのスローライフには次々と騒動が巻き起こる…!? 異世界転生×ドラゴンのファンタジー!元飼育員と元ワニ(現ドラゴン)の絆を描く、まったり異世界ライフをお楽しみください!

転生ギフトでドラゴンを貰いました。

銀狐
ファンタジー
絵を描くのが好きな大学2年生の新崎亮。 バイトへ向かうときに交通事故に合い、死んでしまった。 気づいたら目の前に神様。 そこで転生ギフトがあると言われ、ドラゴンを選びました。 ※『カクヨム』『小説家になろう』で同時掲載をしております。

世界にダンジョンが発生した・死にたがりの男は・奪われたものを取り返すため深淵世界と対決する!

蒼衣翼
ファンタジー
正木光夜は探索者達の間で、死にたがりとして有名だった。 光夜は、十年前のダンジョン発生の際に、ダンジョンに呑み込まれつつも生還したが、それは見知らぬ小さな子どもを下敷きにしてのことだったのだ。 それ以来、死者の呼び声に惹かれるように、迷宮と呼ばれる最難関ダンジョンに潜り続けていた。 「まだ救われない奴がいるなら、俺が救う」それが光夜に出来るただ一つの償いなのだ。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまでも連載しています。

『突撃!東大阪産業大学ヒーロー部!』

M‐赤井翼
ライト文芸
今回の新作は「ヒーローもの」! いつもの「赤井作品」なので、「非科学的」な「超能力」や「武器」を持ったヒーローは出てきません。 先に謝っておきます。 「特撮ヒーローもの」や「アメリカンヒーロー」を求められていた皆さん! 「ごめんなさい」! 「霊能力「を持たない「除霊師」に続いて、「普通の大学生」が主人公です。 でも、「心」は「ヒーロー」そのものです。 「東大阪産業大学ヒーロー部」は門真のローカルヒーローとしてトップを走る2大グループ「ニコニコ商店街の門真の女神」、「やろうぜ会」の陰に隠れた「地味地元ヒーロー」でリーダーの「赤井比呂」は 「いつか大事件を解決して「地元一番のヒーロー」になりたいと夢を持っている。 「ミニスカートでのアクションで「招き猫のブルマ」丸見えでも気にしない「デカレッド」と「白鳥雛子」に憧れる主人公「赤井比呂」」を筆頭に、女兄妹唯一の男でいやいや「タキシード仮面役」に甘んじてきた「兜光司」好きで「メカマニア」の「青田一番」、元いじめられっ子の引きこもりで「東映版スパイダーマン」が好きな「情報系」技術者の「木居呂太」、「電人ザボーガー」と「大門豊」を理想とするバイクマニアの「緑崎大樹」、科学者の父を持ち、素材加工の匠でリアル「キューティーハニー」のも「桃池美津恵」、理想のヒーローは「セーラームーン」という青田一番の妹の「青田月子」の6人が9月の海合宿で音連れた「舞鶴」の「通称 ロシア病院」を舞台に「マフィア」相手に大暴れ! もちろん「通称 ロシア病院」舞台なんで「アレ」も登場しますよー! ミリオタの皆さんもお楽しみに! 心は「ヒーロー」! 身体は「常人」の6人組が頑張りますので、応援してやってくださーい! では、ゆるーく「ローカルヒーロー」の頑張りをお楽しみください! よーろーひーこー! (⋈◍>◡<◍)。✧♡

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

W職業持ちの異世界スローライフ

Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。 目が覚めるとそこは魂の世界だった。 橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。 転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。

異世界召喚巻き込まれ追放テイマー~最弱職と言われたスキルで魔物軍団を作ったら世界最強の町ができました~

九龍クロン
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれた女の話。 最弱職として有名なモンスターテイマーだったので国外に追放されたが、隠されたユニークスキルが最強すぎてイージーモードな異世界物語。 ご都合主義多め。気負わず読める軽さでお届けしております。

転生者ジンの異世界冒険譚(旧作品名:七天冒険譚 異世界冒険者 ジン!)

夏夢唯
ファンタジー
 男の名前は沖田仁、彼が気がつくとそこは天界であった。 現れた神により自分の不手際で仁が次元の狭間に落ちてしまい元の世界に戻れなくなってしまった事を告げられるが、お詫びとして新たな体を手に入れ異世界に転生することになる。 冒険者達が剣や魔法で活躍するファンタジー冒険物語。 誤字脱字等は気づき次第修正していきますので宜しくお願いします。

処理中です...