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[11]迫撃!トリプルポーン

-105-:黙ってないで何か言ってよ!

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「ダメージだと!?ベルタ、一体何をされた!?」

 敵騎は正面。しかし、背後からダメージを被った。

 コクピット内に設けられたサイドミラーや、後方モニターに目をやるも、何も映ってはいない。

 一体、何をされたのだ?


「今日はツイていると思ったのにねぇ」
 アラートが鳴る中、聞こえてきたのは残念がるカムロの声。

 カムロへと目を戻す。
 どういう事だ!?

 カムロが手にする三又槍の先には、ベルタのハンドチェーンガンが突き刺さっていた。

 背中のウェポンラックに掛けていたはずのハンドチェーンガンがどうして?

 突き刺さっていたハンドチェーンガンを振り飛ばすと、またもや三又槍の先端部が青白く光り出した。

 カムロが再び突きの構えに入り―。


 ガンッ!!

 またもや衝撃!

 今度は左脚のすね部分に真横から刺突攻撃を受けた。
 幸い、ベルタの脛部分は足首から延びた装甲なので、脚本体にはダメージは届いていない。


 何ィィ、今度は違う方向からの攻撃だと!?


 考えられる事は。

「アイツ、もしかして座標指定攻撃を仕掛けて来たのか?」
 遠く離れた相手にも任意の座標に攻撃を仕掛ける、まさに空想上の攻撃手段。
 マンガなどでは使い古された手段ではあるけれど。

 急に音楽がコクピット内に鳴り響いた。

 ヒューゴのスマホの着信音楽が鳴ったのだ。

 相手は“鈴木くれは”。
 状況は片時も気を抜くことは許されないが、とにかく電話に出よう。

「どうした?スズキ」

「どうしたも、こうしたも無いでしょ!!」
 電話に出るなり、いきなりの怒鳴り声。

「男子に聞いたんだから!タカサゴが屋上に向かいながら電話をしていたって。タカサゴの事だから、アンデスィデの要請が来たから参戦しているんでしょ!?」
 それはそうなのだが。一切反論は致しません。

「黙ってないで何か言ってよ!」
 つかの間の沈黙も許さない。

「ゴメンな。スズキ。今、手が離せないから、これで切るわ『いい加減にしてッ!!』」
 電話の向こうの相手は切る事さえも許してくれない。

 その声は次第に涙声へと変わりつつ。

「タカサゴのバカ!私にだって解るんだからねッ!3対1の無茶な戦いをしている事くらい。今、天馬教会に向かっているから、それまで無茶しないでいてよね!」
 告げて、クレハの方からの電話は切られた。



 雨が降り出した中、クレハは傘も差さずに、外履きのブーツに履き替えることさえもせずに校内履きのスニーカーのまま学園を飛び出し、天馬教会へと向かって走った。

 校門なんざ、直接通らなければ何の問題も無い。
 垂直に立つ塀を一歩踏み台にして駆け上がり、よじ登る。

 飛び降りた拍子に両手を地面に着こうが気にも留めない。


 再び天馬教会めざして走り出す。

 顔を打つ雨粒と両眼から流れ出る涙との区別がつかないくらい、顔をぐしゃぐしゃにして。



 ベルタを取り囲む、降りしきる雨はさらに激しさを増していた。

 座標指定攻撃を避ける方法は、ただひとつ。


 絶えず動き回ること。


 絶対に動きを止めてはならない。ひたすら動き回るしかない。

 そんな中。

 劣勢を強いられ、幾度となく回避を余儀なくされたベルタの回避運動推力はもう、底を尽きようとしていた…。





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