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[8]学園に潜む“魔”
-72-:私と一勝負してみない?
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「ジャーン」
教室へ着くなりクレハは驚きのアイテムをヒューゴに披露した。
それはポータブルチェスゲーム。
折り畳み式の盤は広げればタテ20センチ×ヨコ17センチのチェス盤になる。しかも駒にはマグネットが付いていて、逆さにしても駒が落っこちないスグレモノ。
「おぉー」
ヒューゴは思わず声を漏らした。そして「買って来たの?」
「この間、タツロー君と帰ったときに、どうしても私の事が心配だと言うので買い物に付き合ってもらったのよ。で、トイザまスに行って買ってきました」
ポータブルチェスをあらゆる角度から眺めながら。
「なかなか良いじゃん。でも、色々あって迷ったんじゃないか?」
問われるほど迷いはしなかった。と、言うか、選択肢は非常に限られたものとなっていた。確かに『良いな』と思える品は色々あったけれど…。
まず目に着いたのはクリスタル調のチェス盤。
人気TVドラマ『泥棒』シリーズでおなじみのヤツで、何故かしら?いつもアジトに置いてあるガラス製のもので透明ガラス(クリア)とスリガラス(フロスト)の駒に分かれているのだが、どちらが白で、どちらが黒に相当するのか?区別が付かないので却下(お値段はドラマの小道具とは思えないほどとてもリーズナブルだけど)。
タツローが勧めてきたのはチェス盤に加えて将棋・オセロ・バックギャモン・チェッカーと色々盛り沢山な商品。チェスに関しては『世界のスタンダード』と銘打たれているのだが、チェスをやっている人など見た事も聞いた事もない。
それに正直将棋とオセロしかルールを知らないので、これも却下。
二人の目を引いたのが、上半身人型をした駒のチェス盤。マンガやアニメに出てきそうな、とてもカッコイイ商品ではあったが、お値段6万円??んなもん買えるか!
と、まぁ、まるで通販番組内で展開されるようなやり取りを経て辿り着いたのがこのポータブルチェスゲームという訳。
なんだかんだ言っても結局はお値段なのよ。消費税入れても1000円しないしね。
「でも、何で急にチェスゲームなんて買って来たんだ?」
ヒューゴの問いに、クレハはニィと口元だけで笑うと「それはね」少し間を置いて。
「アンデスィデを発生させずに勝つ方法を考えるためだよ。ココミちゃんのように行き当たりばったりじゃなくて、常に相手にプレッシャーを与えながらチェック・メイトに持って行く方法を考えるの」
クレハは、ただの傍観者ではなく当事者になる道を選んだのであった。
一方のヒューゴは表面上感心して見せるも内心では『また無茶な・・』否定はしないものの、その驚くべきハードルの高さに頭を悩ませた。
昼休み―。
ヒューゴのスマホに残されていたアンデスィデ発生前のチェス盤を再現してみた。
これからの展開を考える前に。
クレハは駒を配されたチェス盤を目の高さまで持ち上げると、クルリと上下逆さまにしてみた。
「おぉー」「おー。落ちないねぇ」
ひっくり返した本人も一緒に驚いた。マグネット様様だわ。
「あら?貴方たち、チェスをするの?」
食堂から戻ってきた猪苗代・恐子が訊ねた。
「ココミちゃん達に逢ったのも縁だし、多少は知識を身に着けておこうかと」
さすがに本当の理由を言えば無謀だと思われるだろう。ここは謙虚に。
「へぇ、初心者って訳ね。ねぇ鈴木さん。私と一勝負してみない?」
キョウコの挑戦に、「ワタシ、ゼッタイ負けるよね?」ヒューゴへと向くも彼は「負けた方がカフェでおごりな」お気楽様にも条件を提示しているではないか!
「まぁ本来なら認めないところだけど、その条件、受けて立つわ!」
そこは委員長として認めないで欲しいのよ。しかもノリノリだなんて。
「カフェねぇ…」
キョウコとはプライベートの付き合いが全く無いので彼女の好みは謎だ。
世界展開している“ストロングバックスコーヒー”は困る。あそこは注文の仕方を知らない。広告でメニューを見たことがあるけど、『トール』が何の単位なのかも知らない。
有名小説家がいきつけにしていると噂の“ラビットハウス”はちょっと興味がある。確かラテアートが気合入りまくりとか…。
(ま、まさか!)
休日に私がバイトをしている『喫茶・栗林鹿之助珈琲店』に行きたいとか言い出すのではなかろうか?どうか、それだけは勘弁して欲しい。
勝負をする前から負けた後の事を考えてどうする?
圧し掛かる不安を振り払うようにクレハは頭を振ってチェス盤を初期配置へと並べ替えた。
初心者のクレハは白、キョウコは黒を担当。クレハは白なので当然先攻となる。
※注意!公式戦のチェスでは白側が先攻とルールで定められています。
ゲーム開始。
さて、どう攻めたものか?
教室へ着くなりクレハは驚きのアイテムをヒューゴに披露した。
それはポータブルチェスゲーム。
折り畳み式の盤は広げればタテ20センチ×ヨコ17センチのチェス盤になる。しかも駒にはマグネットが付いていて、逆さにしても駒が落っこちないスグレモノ。
「おぉー」
ヒューゴは思わず声を漏らした。そして「買って来たの?」
「この間、タツロー君と帰ったときに、どうしても私の事が心配だと言うので買い物に付き合ってもらったのよ。で、トイザまスに行って買ってきました」
ポータブルチェスをあらゆる角度から眺めながら。
「なかなか良いじゃん。でも、色々あって迷ったんじゃないか?」
問われるほど迷いはしなかった。と、言うか、選択肢は非常に限られたものとなっていた。確かに『良いな』と思える品は色々あったけれど…。
まず目に着いたのはクリスタル調のチェス盤。
人気TVドラマ『泥棒』シリーズでおなじみのヤツで、何故かしら?いつもアジトに置いてあるガラス製のもので透明ガラス(クリア)とスリガラス(フロスト)の駒に分かれているのだが、どちらが白で、どちらが黒に相当するのか?区別が付かないので却下(お値段はドラマの小道具とは思えないほどとてもリーズナブルだけど)。
タツローが勧めてきたのはチェス盤に加えて将棋・オセロ・バックギャモン・チェッカーと色々盛り沢山な商品。チェスに関しては『世界のスタンダード』と銘打たれているのだが、チェスをやっている人など見た事も聞いた事もない。
それに正直将棋とオセロしかルールを知らないので、これも却下。
二人の目を引いたのが、上半身人型をした駒のチェス盤。マンガやアニメに出てきそうな、とてもカッコイイ商品ではあったが、お値段6万円??んなもん買えるか!
と、まぁ、まるで通販番組内で展開されるようなやり取りを経て辿り着いたのがこのポータブルチェスゲームという訳。
なんだかんだ言っても結局はお値段なのよ。消費税入れても1000円しないしね。
「でも、何で急にチェスゲームなんて買って来たんだ?」
ヒューゴの問いに、クレハはニィと口元だけで笑うと「それはね」少し間を置いて。
「アンデスィデを発生させずに勝つ方法を考えるためだよ。ココミちゃんのように行き当たりばったりじゃなくて、常に相手にプレッシャーを与えながらチェック・メイトに持って行く方法を考えるの」
クレハは、ただの傍観者ではなく当事者になる道を選んだのであった。
一方のヒューゴは表面上感心して見せるも内心では『また無茶な・・』否定はしないものの、その驚くべきハードルの高さに頭を悩ませた。
昼休み―。
ヒューゴのスマホに残されていたアンデスィデ発生前のチェス盤を再現してみた。
これからの展開を考える前に。
クレハは駒を配されたチェス盤を目の高さまで持ち上げると、クルリと上下逆さまにしてみた。
「おぉー」「おー。落ちないねぇ」
ひっくり返した本人も一緒に驚いた。マグネット様様だわ。
「あら?貴方たち、チェスをするの?」
食堂から戻ってきた猪苗代・恐子が訊ねた。
「ココミちゃん達に逢ったのも縁だし、多少は知識を身に着けておこうかと」
さすがに本当の理由を言えば無謀だと思われるだろう。ここは謙虚に。
「へぇ、初心者って訳ね。ねぇ鈴木さん。私と一勝負してみない?」
キョウコの挑戦に、「ワタシ、ゼッタイ負けるよね?」ヒューゴへと向くも彼は「負けた方がカフェでおごりな」お気楽様にも条件を提示しているではないか!
「まぁ本来なら認めないところだけど、その条件、受けて立つわ!」
そこは委員長として認めないで欲しいのよ。しかもノリノリだなんて。
「カフェねぇ…」
キョウコとはプライベートの付き合いが全く無いので彼女の好みは謎だ。
世界展開している“ストロングバックスコーヒー”は困る。あそこは注文の仕方を知らない。広告でメニューを見たことがあるけど、『トール』が何の単位なのかも知らない。
有名小説家がいきつけにしていると噂の“ラビットハウス”はちょっと興味がある。確かラテアートが気合入りまくりとか…。
(ま、まさか!)
休日に私がバイトをしている『喫茶・栗林鹿之助珈琲店』に行きたいとか言い出すのではなかろうか?どうか、それだけは勘弁して欲しい。
勝負をする前から負けた後の事を考えてどうする?
圧し掛かる不安を振り払うようにクレハは頭を振ってチェス盤を初期配置へと並べ替えた。
初心者のクレハは白、キョウコは黒を担当。クレハは白なので当然先攻となる。
※注意!公式戦のチェスでは白側が先攻とルールで定められています。
ゲーム開始。
さて、どう攻めたものか?
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