10 / 35
第9話 魔法
しおりを挟む
「フレイム・ボム!」
魔法騎士ライオネスが揺らめく炎の玉を頭上に掲げる。それを翼を持つ巨大なニワトリに投げつけた。
雄鶏の上半身と爬虫類の下半身を持つコカトリスと呼ばれるモンスターは、炎の玉を胴体に食らうと空に向かって、「ギャオオ」と苦悶の声を上げた。身体が後方へよろめく。ボッカが剣を突き出した状態で烈風を巻き起こしながら、そこへ猛スピードで突っ込んだ。
「剣よ、穿て!!」
コカトリスの胸に剣先が触れた途端に破裂音と共に爆発が起こった。剣先に収束した力が一度に噴き出す。
強力な一撃を食らった巨体はビクンと大きく震えると、頽れて動かなくなった。
「ボッカ、お疲れ様ー!」
ベルは油断なくコカトリスを見つめるボッカに嬉しげにふわふわと飛んで寄っていく。王都を出て緑に囲まれた街道を進むうちにベルの体調は自然と回復していた。
ボッカが肩を差し出すようにすると、ベルがそこへ止まる。剣を鞘に収め、上着についた土埃を叩く。
「ライオネスさん、凄い魔法の威力ですね。あなただけでも倒してしまいそうだ」
ライオネスは表情を崩さず、軽く頭を下げる。低く重々しい声で言った。
「ありがとうございます。どうか、自分のことはライオネスとお呼び下さい。あなたは国王様から勅命を受けた部隊長——すなわち自分の上官に当たります」
至極真面目な口振りにボッカは座り悪げに頬を掻く。
そこへ透き通った声が投げかけられた。
「お怪我はありませんか?」
ゆったりとした動きで修道女のクレアが離れた場所からやって来た。
ボッカたち討伐隊は魔王城に向かうべく北上していた。港町から船に乗り、同盟国へ向かう。そこから徒歩で進み、王国軍が魔王軍を引きつけている間に敵地に乗り込むという流れだ。
順調な旅というわけにもいかず、行く先々で活発化したモンスターたちが人間を襲っていた。ボッカは人々の悲鳴を見ない振りができない。危険地帯へ迷わず飛び込んだ。ライオネスも騎士道精神に反すると言って追随した。
ボッカが前衛を務め、ライオネスが魔法で援護をする。ベルがボッカを強化し、クレアが防御と回復の魔法をかける。隙のない布陣だ。モンスターを容易く倒していった。
ライオネスは朴訥とした男で忠義に篤く、信頼のできる人物だ。クレアは物腰が柔らかく、場を和ませる雰囲気がある。出発をしてすぐにボッカたちは気を許す仲になった。王宮の人選は正しかったのだ。
*
「ライオネスほどの腕でも魔族は倒せない?!」
ボッカは丸太に腰かけたまま、驚きの声を上げた。ちゃぽんと手に持った椀の中身が揺れる。
一行は森の中で見つけた開けた場所に焚き火を起こし、野営をすることにした。焚き火を囲み、野生動物を狩って簡単にスープを作った。
「はい」
ライオネスは小枝を焚き火に放り込む。明かりが落ち着いた顔を照らしている。
「まず、魔法とは何かという話になります。これは一般に知られていないことですが、実は誰しも魔力を持っています。魔力量は人によって異なる上に、学ぶ機会がなければ扱えません。魔法を行使するのに充分な魔力を持っていても、本人が気づかずに一生を終えてしまうこともよくあります」
ボッカは食事の手を止め、ライオネスの話に聞き入っていた。
ベルはその横で丸太の上にちょこんと座っている。この世界に来て初めて聞く話なので興味深くしていた。魔法に関しては人間より長けている種族というのは理解はしているが、根本的な知識はまだない。
クレアはそんな二人を眺めてにこやかにしている。
「自分の場合は運がよかった。たまたま熟練の魔道士に幼くして見出されました。魔法には長い鍛錬が必要です。早くから学ぶことで騎士団に入団できる力を得られました」
ライオネスは炎を見つめて淡々と話す。炎がパチパチと音を鳴らして揺らぐ。
「確かに俺もベルに教えてもらうまで気がつかなかったもんなあ。それでも、いまだに魔法弾を打ち出すことはできないよ」
斜め上に視線を送って考え込むボッカにベルは首を縦に振って頷いた。
「ボッカ殿は魔力を物理的な力に変えていらっしゃいますね。魔法辞典にも載っている使い方です。魔力を扱えるようになるまでは、時間がかかります。魔力を具現化して外に打ち出すのは、さらに専門的な指導を必要とします。魔法学校に通わずして身につけたのは、ボッカ殿の鍛練の賜物です」
ライオネスは言葉を区切り、本題へと入る。
「魔力とは体内エネルギー。魔力の性質は人によって異なります。それを四種に分類しています。火・風・土・水です。自分は火の属性を持っています。これは火の魔法と相性がいいということ。他の魔法も使えますが、基本的には火の魔法を中心に鍛練します。ボッカ殿は恐らく風ですね」
「俺が?」
「魔法を身につけることが難しいのはそこです。魔力鑑定のできる魔道士は多くありません。魔力の属性が分からなければ、学びようがないですから」
ボッカのスープは椀になみなみと注がれたまま減っていない。少し温度が低くなっていた。ライオネスは人差し指に小さな炎を灯す。そして、指を縦に振り、その椀へと魔法をぶつける。一瞬にしてスープが温まった。
「自分の得意分野を知れば、効率よく魔法の錬度を上げられます。ボッカ殿は膨大な魔力量を無意識に風の魔法を使うことを選び、今の力を得たのでしょう」
パキン——。焚き火に焼べた枝が炎の中で爆ぜる。
「戦闘では属性は重要です。水は火に強く、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強い。魔道士なら誰でも意識することです。しかし、魔族に対しては例外になる。魔族は人間とは異なる性質の魔力を持っているらしく、人間の魔法はほとんど通用しないのです。その上、人間とは比較にならない魔力量がある。高位の魔族とでは勝負になりません。威力の高い魔法を使い、魔族の中で最下層になるモンスターを倒すのが自分ではやっとなのです」
ライオネスの話が終わり、ボッカもベルも押し黙ったことで、静寂が訪れた。場に流れるのは夜行性の小動物が出す葉音や虫の声だけ。それを打ち破ったのは、穏やかな声のクレアだった。
「だから、王様は期待されているのです。ボッカ様のように強力なモンスターを単独で容易く倒せることなど、一般的にまずありません。ボッカ様が魔王討伐の鍵だというのが王宮の総意でしょう。わたしたちは全力でサポートします。ボッカ様を必ずや魔王の元までお送りします」
ライオネスは深く頷き、胸に手を置く。
「露払いはお任せ下さい」
二人の決意ある表情にボッカは少し戸惑いを見せる。心を落ち着かせるために目を閉じ、次に開いたときには迷いの色はなかった。
「分かった。俺の力がどこまで魔王に通用するか分からないけど、やるよ!」
三人の間でパチパチと焚き火が勢いよく燃えていた。
「ボッカ、わたしも手伝うからね!」
ベルがボッカの周りを全身を使って鼓舞するように上下に舞う。ふと疑問が浮かび、首を傾げる。
「わたしの魔法って何なのかな? 特に今まで属性とか気にしたことないよ」
魔法に詳しいはずの二人に問いかけるも、返ってきたのは困ったような顔だった。
「申し訳ありません、妖精殿。魔法の性質についてはあくまで人間のものなので、神属の方々には当て嵌まりません。記録も残っていないのです。我々より高度な魔法を使うことしか分かりません」
「教会でも同じですね。神に仕えるといっても、結局のところわたしたちもただの人間ですから……。お役に立てなくて、ごめんなさい」
ベルは首を横に振る。
「ううん。自分でも分からないことだもの。仕方がないよ」
魔王討伐隊は馬車を使いながらゆっくりと北上し、計画通りに港町に出た。王室の印が押された旅券を見せれば、苦労なく船まで案内されたのだった。
*****
北の大地では、海に小さな小島が出現した。海底から地面が隆起し、地図にはない土地へと変じたのだ。
大陸の岬に立って島を眺めているのは二人。魔王と炎のような髪をした側近。
『さすがは我が主。こうでなければ、俺が降った意味がない』
目上に対する丁寧な物言いではなかったが、魔王本人は眉も動かさず、淡々とした口調で返した。
『あとは任せる。子どもと年寄りから先に移動させろ』
風に吹かれて長い黒髪が靡く。整った顔立ちだけに、思考が読めない。
『御意』
赤の側近は形式的に頭を上げる。顔を上げたときは不適な笑みを浮かべていた。
『主も大変だな。本来ならば前線に立ちたいだろう。まとめ役となったが故に窮屈な思いをするとはな』
その言葉に少しだけ魔王の口元が緩む。
『私が選んだ道だ。個人主義の我らには重しが必要だろう。そして、損な役回りもな』
赤の側近が大口を開けてからから笑う。
『ならば、主の側近である俺は、身を削って主に尽くさなくてはな。この場はこの俺に任せるがいい』
それから表情豊かだった顔に冷ややかな表情が浮かび、
『もし、人間どもに知られた場合はどうする?』
それまで変化に乏しかった魔王の顔が一変する。瞳孔が縦長になり、鋭い牙が剥き出しになった。
『見つけ次第、消せ。一人も残すな』
『御意』
魔法騎士ライオネスが揺らめく炎の玉を頭上に掲げる。それを翼を持つ巨大なニワトリに投げつけた。
雄鶏の上半身と爬虫類の下半身を持つコカトリスと呼ばれるモンスターは、炎の玉を胴体に食らうと空に向かって、「ギャオオ」と苦悶の声を上げた。身体が後方へよろめく。ボッカが剣を突き出した状態で烈風を巻き起こしながら、そこへ猛スピードで突っ込んだ。
「剣よ、穿て!!」
コカトリスの胸に剣先が触れた途端に破裂音と共に爆発が起こった。剣先に収束した力が一度に噴き出す。
強力な一撃を食らった巨体はビクンと大きく震えると、頽れて動かなくなった。
「ボッカ、お疲れ様ー!」
ベルは油断なくコカトリスを見つめるボッカに嬉しげにふわふわと飛んで寄っていく。王都を出て緑に囲まれた街道を進むうちにベルの体調は自然と回復していた。
ボッカが肩を差し出すようにすると、ベルがそこへ止まる。剣を鞘に収め、上着についた土埃を叩く。
「ライオネスさん、凄い魔法の威力ですね。あなただけでも倒してしまいそうだ」
ライオネスは表情を崩さず、軽く頭を下げる。低く重々しい声で言った。
「ありがとうございます。どうか、自分のことはライオネスとお呼び下さい。あなたは国王様から勅命を受けた部隊長——すなわち自分の上官に当たります」
至極真面目な口振りにボッカは座り悪げに頬を掻く。
そこへ透き通った声が投げかけられた。
「お怪我はありませんか?」
ゆったりとした動きで修道女のクレアが離れた場所からやって来た。
ボッカたち討伐隊は魔王城に向かうべく北上していた。港町から船に乗り、同盟国へ向かう。そこから徒歩で進み、王国軍が魔王軍を引きつけている間に敵地に乗り込むという流れだ。
順調な旅というわけにもいかず、行く先々で活発化したモンスターたちが人間を襲っていた。ボッカは人々の悲鳴を見ない振りができない。危険地帯へ迷わず飛び込んだ。ライオネスも騎士道精神に反すると言って追随した。
ボッカが前衛を務め、ライオネスが魔法で援護をする。ベルがボッカを強化し、クレアが防御と回復の魔法をかける。隙のない布陣だ。モンスターを容易く倒していった。
ライオネスは朴訥とした男で忠義に篤く、信頼のできる人物だ。クレアは物腰が柔らかく、場を和ませる雰囲気がある。出発をしてすぐにボッカたちは気を許す仲になった。王宮の人選は正しかったのだ。
*
「ライオネスほどの腕でも魔族は倒せない?!」
ボッカは丸太に腰かけたまま、驚きの声を上げた。ちゃぽんと手に持った椀の中身が揺れる。
一行は森の中で見つけた開けた場所に焚き火を起こし、野営をすることにした。焚き火を囲み、野生動物を狩って簡単にスープを作った。
「はい」
ライオネスは小枝を焚き火に放り込む。明かりが落ち着いた顔を照らしている。
「まず、魔法とは何かという話になります。これは一般に知られていないことですが、実は誰しも魔力を持っています。魔力量は人によって異なる上に、学ぶ機会がなければ扱えません。魔法を行使するのに充分な魔力を持っていても、本人が気づかずに一生を終えてしまうこともよくあります」
ボッカは食事の手を止め、ライオネスの話に聞き入っていた。
ベルはその横で丸太の上にちょこんと座っている。この世界に来て初めて聞く話なので興味深くしていた。魔法に関しては人間より長けている種族というのは理解はしているが、根本的な知識はまだない。
クレアはそんな二人を眺めてにこやかにしている。
「自分の場合は運がよかった。たまたま熟練の魔道士に幼くして見出されました。魔法には長い鍛錬が必要です。早くから学ぶことで騎士団に入団できる力を得られました」
ライオネスは炎を見つめて淡々と話す。炎がパチパチと音を鳴らして揺らぐ。
「確かに俺もベルに教えてもらうまで気がつかなかったもんなあ。それでも、いまだに魔法弾を打ち出すことはできないよ」
斜め上に視線を送って考え込むボッカにベルは首を縦に振って頷いた。
「ボッカ殿は魔力を物理的な力に変えていらっしゃいますね。魔法辞典にも載っている使い方です。魔力を扱えるようになるまでは、時間がかかります。魔力を具現化して外に打ち出すのは、さらに専門的な指導を必要とします。魔法学校に通わずして身につけたのは、ボッカ殿の鍛練の賜物です」
ライオネスは言葉を区切り、本題へと入る。
「魔力とは体内エネルギー。魔力の性質は人によって異なります。それを四種に分類しています。火・風・土・水です。自分は火の属性を持っています。これは火の魔法と相性がいいということ。他の魔法も使えますが、基本的には火の魔法を中心に鍛練します。ボッカ殿は恐らく風ですね」
「俺が?」
「魔法を身につけることが難しいのはそこです。魔力鑑定のできる魔道士は多くありません。魔力の属性が分からなければ、学びようがないですから」
ボッカのスープは椀になみなみと注がれたまま減っていない。少し温度が低くなっていた。ライオネスは人差し指に小さな炎を灯す。そして、指を縦に振り、その椀へと魔法をぶつける。一瞬にしてスープが温まった。
「自分の得意分野を知れば、効率よく魔法の錬度を上げられます。ボッカ殿は膨大な魔力量を無意識に風の魔法を使うことを選び、今の力を得たのでしょう」
パキン——。焚き火に焼べた枝が炎の中で爆ぜる。
「戦闘では属性は重要です。水は火に強く、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強い。魔道士なら誰でも意識することです。しかし、魔族に対しては例外になる。魔族は人間とは異なる性質の魔力を持っているらしく、人間の魔法はほとんど通用しないのです。その上、人間とは比較にならない魔力量がある。高位の魔族とでは勝負になりません。威力の高い魔法を使い、魔族の中で最下層になるモンスターを倒すのが自分ではやっとなのです」
ライオネスの話が終わり、ボッカもベルも押し黙ったことで、静寂が訪れた。場に流れるのは夜行性の小動物が出す葉音や虫の声だけ。それを打ち破ったのは、穏やかな声のクレアだった。
「だから、王様は期待されているのです。ボッカ様のように強力なモンスターを単独で容易く倒せることなど、一般的にまずありません。ボッカ様が魔王討伐の鍵だというのが王宮の総意でしょう。わたしたちは全力でサポートします。ボッカ様を必ずや魔王の元までお送りします」
ライオネスは深く頷き、胸に手を置く。
「露払いはお任せ下さい」
二人の決意ある表情にボッカは少し戸惑いを見せる。心を落ち着かせるために目を閉じ、次に開いたときには迷いの色はなかった。
「分かった。俺の力がどこまで魔王に通用するか分からないけど、やるよ!」
三人の間でパチパチと焚き火が勢いよく燃えていた。
「ボッカ、わたしも手伝うからね!」
ベルがボッカの周りを全身を使って鼓舞するように上下に舞う。ふと疑問が浮かび、首を傾げる。
「わたしの魔法って何なのかな? 特に今まで属性とか気にしたことないよ」
魔法に詳しいはずの二人に問いかけるも、返ってきたのは困ったような顔だった。
「申し訳ありません、妖精殿。魔法の性質についてはあくまで人間のものなので、神属の方々には当て嵌まりません。記録も残っていないのです。我々より高度な魔法を使うことしか分かりません」
「教会でも同じですね。神に仕えるといっても、結局のところわたしたちもただの人間ですから……。お役に立てなくて、ごめんなさい」
ベルは首を横に振る。
「ううん。自分でも分からないことだもの。仕方がないよ」
魔王討伐隊は馬車を使いながらゆっくりと北上し、計画通りに港町に出た。王室の印が押された旅券を見せれば、苦労なく船まで案内されたのだった。
*****
北の大地では、海に小さな小島が出現した。海底から地面が隆起し、地図にはない土地へと変じたのだ。
大陸の岬に立って島を眺めているのは二人。魔王と炎のような髪をした側近。
『さすがは我が主。こうでなければ、俺が降った意味がない』
目上に対する丁寧な物言いではなかったが、魔王本人は眉も動かさず、淡々とした口調で返した。
『あとは任せる。子どもと年寄りから先に移動させろ』
風に吹かれて長い黒髪が靡く。整った顔立ちだけに、思考が読めない。
『御意』
赤の側近は形式的に頭を上げる。顔を上げたときは不適な笑みを浮かべていた。
『主も大変だな。本来ならば前線に立ちたいだろう。まとめ役となったが故に窮屈な思いをするとはな』
その言葉に少しだけ魔王の口元が緩む。
『私が選んだ道だ。個人主義の我らには重しが必要だろう。そして、損な役回りもな』
赤の側近が大口を開けてからから笑う。
『ならば、主の側近である俺は、身を削って主に尽くさなくてはな。この場はこの俺に任せるがいい』
それから表情豊かだった顔に冷ややかな表情が浮かび、
『もし、人間どもに知られた場合はどうする?』
それまで変化に乏しかった魔王の顔が一変する。瞳孔が縦長になり、鋭い牙が剥き出しになった。
『見つけ次第、消せ。一人も残すな』
『御意』
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
追放から始まる新婚生活 【追放された2人が出会って結婚したら大陸有数の有名人夫婦になっていきました】
眼鏡の似合う女性の眼鏡が好きなんです
ファンタジー
役に立たないと言われて、血盟を追放された男性アベル。
同じく役に立たないと言われて、血盟を解雇された女性ルナ。
そんな2人が出会って結婚をする。
結婚した事で、役に立たないスキルだと思っていた、家事手伝いと、錬金術師。
実は、トンデモなく便利なスキルでした。
最底辺、大陸商業組合ライセンス所持者から。
一転して、大陸有数の有名人に。
これは、不幸な2人が出会って幸せになっていく物語。
極度の、ざまぁ展開はありません。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
最後の大陸
斎藤直
ファンタジー
黄昏を迎えつつある世界。最後の大陸に同居する人類は、それでもなお共生する道を選ばず、醜い争いを続ける。
レイ・カヅラキは誰の言葉も信じないと断言する。
嘘、虚飾、嫉妬そして自尊心を嫌う彼の信念は、歪められた世界に風穴を開けることができるだろうか。
魔法も超絶パワーも奇跡もご都合主義もない世界。等身大の人間たちの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる