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アリレザの生活は基本的に大学に通い、帰ったら部屋の中にただ閉じこもる。そんなことの繰り返し。大学までは馬車で向かい、中では単独行動だ。
赤茶色を基調とした建物の名門貴族が通う私立大学であり、セキュリティはしっかりしている。その為単独行動ができるのだ。
「あー、あれがフィダナハースの?」
「変な服だな」
講義室に向かうまでの間だけでも様々な人に見られる。
フィダナハース人は褐色の肌に空色の瞳、そして程度は違えど癖のある黒髪という外見の特徴がある。それに比べデモンテ人は青白い陶器のような肌に金色の瞳、ストレートな金髪または銀髪という特徴があり、アリレザは良く目立つ。
身長は178センチとどちらかと言えば大きい方くらいの身長。腰の辺りまで伸びた髪は一つに束ねている。男性にしては珍しい髪の長さなのもあり、余計に人目に付くのだ。
「アルフォンス、今日も素敵だったわ」
「あの容姿で王子様なんて……」
「あの朴念仁とは大違いよね。研究も素晴らしい物だと聞いてるわ」
学校を歩けば定期的に名前を聞く『アルフォンス』。デモンテの第一王子。お互い第一王子同士だが、立場の違いというのは明白だ。
自らの意志ではないしにしろ22歳にして大学生という立場になったアリレザとは違い、19歳ながら飛び級をして大学院で薬についての研究を行っている。
(……あと三年我慢すれば、終わる)
果たしてそれが良いのだろうか。国に戻ったところで好転することがないことは目に見えている。
どこにいたって比較される。来賓という立場である以上は殺されることはない。そんなことがあれば戦争の火種になるし、なんならフィダナハース自体がそれを望んでいる節もある。ずっと負けたことを引き摺っていて、いずれ反旗を翻そうとしているのだ。
(死ぬことだってできない)
はぁ、と小さなため息をついてから講義に向かう。
一コマだけアルフォンスと被っている講義があるが、彼の周りは大体埋まっている。大学にいる間は王子ではなく一学生として扱わせているというのも相まって、彼にお近づきになりたい人が沢山寄ってきている。
出来るだけ遠い位置を毎度陣取って彼とは極力関わらないようにしている。彼は最後列の一番左の席に座るので、必然的に最前列かそれに近いところに席を取る。
(薬学に関する講義でもないのに、何で取ってるんだ……)
彼はどうやら大学院で研究するのと同時に大学卒業へ必要な単位を取って行っているらしい。
アリレザは経済学、アルフォンスは薬学で本来全く被りようもないはずの分野なのだが、歴史の講義だけ一緒の者を取っていたらしい。歴史の授業は『一般教養』という区分で必要となる。
何故アリレザが取っているかというと、「他国から見た自国の歴史が気になる」という理由からだ。初めはそんな純粋な興味だったというのに、傷つく機会というのもあった。それが今回の授業。
「こうして59年前にフィダナハースに記念すべき勝利を収めたわけですね。ああ、アリレザ君に関しては悲劇だったかもしれないがね。我々は寛大ですから、フィダナハースの復興に手助けをしてあげたりもしましたね。次のページを開いてください」
フィダナハースの建築様式は、かつての戦争でほぼ失われた。今の城は完全にデモンテの様式で建てられていて、そのことに怒りを覚えている人も多い。民家だってそうだ。かつての木々を活かした作りの建物はほぼ消えさり、レンガ調の建物になっている。
(デモンテ側からしてみれば、善行か……)
どうせならデモンテの事を知りたいと思うのに、こうした認識の違いや「どうせお前にはわかるまい」という態度が目に見えている態度を取る講師も多いせいで日に日に精神が参ってくる。
アリレザは俯いて、目頭を両手で抑えた。
赤茶色を基調とした建物の名門貴族が通う私立大学であり、セキュリティはしっかりしている。その為単独行動ができるのだ。
「あー、あれがフィダナハースの?」
「変な服だな」
講義室に向かうまでの間だけでも様々な人に見られる。
フィダナハース人は褐色の肌に空色の瞳、そして程度は違えど癖のある黒髪という外見の特徴がある。それに比べデモンテ人は青白い陶器のような肌に金色の瞳、ストレートな金髪または銀髪という特徴があり、アリレザは良く目立つ。
身長は178センチとどちらかと言えば大きい方くらいの身長。腰の辺りまで伸びた髪は一つに束ねている。男性にしては珍しい髪の長さなのもあり、余計に人目に付くのだ。
「アルフォンス、今日も素敵だったわ」
「あの容姿で王子様なんて……」
「あの朴念仁とは大違いよね。研究も素晴らしい物だと聞いてるわ」
学校を歩けば定期的に名前を聞く『アルフォンス』。デモンテの第一王子。お互い第一王子同士だが、立場の違いというのは明白だ。
自らの意志ではないしにしろ22歳にして大学生という立場になったアリレザとは違い、19歳ながら飛び級をして大学院で薬についての研究を行っている。
(……あと三年我慢すれば、終わる)
果たしてそれが良いのだろうか。国に戻ったところで好転することがないことは目に見えている。
どこにいたって比較される。来賓という立場である以上は殺されることはない。そんなことがあれば戦争の火種になるし、なんならフィダナハース自体がそれを望んでいる節もある。ずっと負けたことを引き摺っていて、いずれ反旗を翻そうとしているのだ。
(死ぬことだってできない)
はぁ、と小さなため息をついてから講義に向かう。
一コマだけアルフォンスと被っている講義があるが、彼の周りは大体埋まっている。大学にいる間は王子ではなく一学生として扱わせているというのも相まって、彼にお近づきになりたい人が沢山寄ってきている。
出来るだけ遠い位置を毎度陣取って彼とは極力関わらないようにしている。彼は最後列の一番左の席に座るので、必然的に最前列かそれに近いところに席を取る。
(薬学に関する講義でもないのに、何で取ってるんだ……)
彼はどうやら大学院で研究するのと同時に大学卒業へ必要な単位を取って行っているらしい。
アリレザは経済学、アルフォンスは薬学で本来全く被りようもないはずの分野なのだが、歴史の講義だけ一緒の者を取っていたらしい。歴史の授業は『一般教養』という区分で必要となる。
何故アリレザが取っているかというと、「他国から見た自国の歴史が気になる」という理由からだ。初めはそんな純粋な興味だったというのに、傷つく機会というのもあった。それが今回の授業。
「こうして59年前にフィダナハースに記念すべき勝利を収めたわけですね。ああ、アリレザ君に関しては悲劇だったかもしれないがね。我々は寛大ですから、フィダナハースの復興に手助けをしてあげたりもしましたね。次のページを開いてください」
フィダナハースの建築様式は、かつての戦争でほぼ失われた。今の城は完全にデモンテの様式で建てられていて、そのことに怒りを覚えている人も多い。民家だってそうだ。かつての木々を活かした作りの建物はほぼ消えさり、レンガ調の建物になっている。
(デモンテ側からしてみれば、善行か……)
どうせならデモンテの事を知りたいと思うのに、こうした認識の違いや「どうせお前にはわかるまい」という態度が目に見えている態度を取る講師も多いせいで日に日に精神が参ってくる。
アリレザは俯いて、目頭を両手で抑えた。
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