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軌跡~【メアリ・ロード】~黒兎

第三羽

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俺は今在る状況を、ありのままにナイトに話した。

「……ほう?
では貴方は悪魔であり、ワタクシと外見が似ているのはまったくの偶然、ということですね?」

「ああ、俺はお前が言う不思議なぬいぐるみとかではない」

「そう、ですかぁ」

何か符に落ちない、といった感じでため息をつくナイト。

「とにかく俺は一刻も早く、もとの姿に戻りたい」

「ねね、それってミュウでもできる?」

ずっと隣りで話を聞いていた女が、ひょいっと首を突っ込んでくる。

「……まさかミュウ様、こいつに接吻する、とか言うつもりデスか?」

「だって女の子にキスしてもらえば、もとにもどれるんでしょ?」

確かに、どんな女にしてもらわなければならない、という決まりはない。
こんな子供みたいな女でも……いいのか?

「っ……ミュウ様は駄目ですっ」

「ふえ~? どうしてぇ~?」

ミュウとかいう女がナイトの体を、ひょいっと持ち上げる。

……――。

……よく見ると、ナイトの背中に羽が生えている……。

「ミュウ様は既にワタクシとしていますから、メアリには効かない可能性があります」

「そうかなぁ……? でも、してみないとわかんないよ?」

真っ白な翼……。

「とにかく駄目デスっ」

「ふえ~」

何だか嫌な予感がする……。

「ナイト……」

俺の言葉がふたりの会話をさえぎる。

「お前、天使なのか?」

一瞬、ピリリと空気が張り詰めた気がした。

もしそうなら、こいつは俺の敵だ。

…………。

「……ちがいますよ。
この背中の羽は、彼女が勝手に縫いつけたレプリカです」

今の言葉で全てが通じたかのように、

「天使でもなければ悪魔でもありません。
ワタクシは、そう―――」

だが、何かがおかしい。

「ただの、とても不思議なぬいぐるみです」

ナイトが微笑む。

微笑んでいるのに。
……何故だかとても気分が悪い……。

「ねえ、ナイト!」

女、ミュウが急にすくっと立ち上がる。

「やっぱりミュウ、メアリちゃんとキスするよ!」

!?

いきなり何を言い出すんだ。 この女は。

「だってかわいそうだもんっ! はやくもとの姿にもどしてあげたいよ!」

「……さっきも言ったように、それは駄目ですっ。
させませんよ。」

ナイトがやたら不機嫌になって、口をとがらせる。

「むぅ~~~」

ミュウがむくれる。
かと思いきや、俺の体をガシッとわし掴みにしてきた。

なっ、何する気だ!! この女!!

おもむろに顔を近づけてくる。

オイ!! ヤメロッッッ!!

ぶちゅうぅぅ~~~………

…………。

ちゅううぅ~~

……

しぃーーーーん。

「…………」

「…………」

「……何も起きませんね」

…………。

「っぷはあ!」

苦しっ!! 息がっ!!

「だっ、ダメ?」

「だから言ったじゃないデスか」

「ゲホッゲホッ……おううげろええぇーーー」

「消毒が必要デスね」

「ふざけるなーーーwww俺は汚くな…………」

!!??

今度はナイトが、ミュウに唇を寄せる。

……と、思った途端、急にナイトの体が異常な光を放ち始める。

辺りが真っ白になって、何も見えなくなってしまった。



「~~~ったく。 なんだって……」

――!!??

……サラサラとなびく、きらびやかな金髪が見えた。

「おぃえおヴいえッッッ!!??」

「おや、驚かせてしまいましたか?」

目の前にいたはずの白いうさぎのぬいぐるみが、金髪の端麗な少年へと姿を変えていた。

マテ、コラ……オイ。

……そりゃあ驚くに決まってるだろ!?

そういえばさっき、ワタクシと既にしてるとかなんとか言ってたな……。

やっぱり何かが変だ。
っていうか、これで驚かないほうがどうかしている。

「消毒完了☆デスね♪」

唇の前に人差し指をあてて、にんまり笑うナイト。

「あれっ、よく考えたら間接キスじゃないデスか。 気色の悪い」

もう叫ぶ気にもなれん……。

「それでは、行きましょうか」

「ふえ?」

「何処へ?」

ナイトがふわりっと青いマントをひるがえす。

「さっきはメアリに邪魔されてしまいましたからね。
これからパレード見物と洒落込みましょう!」

とても綺麗な笑顔だった。

それなのに……

……その瞬間目眩がして、嫌な感じは一層強くなった……。
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