蒼白のリヴァイアサン

真相開示編

零れ落ちる夢

　落ち込んでいても仕方が無いと切り替え、私は海流の先へと泳ぐ。そうして到着した階層には、端末の痕跡は疎か何かがいた跡一つ存在して居なかった。

　先回りしてしまったかと端末へ帰投の指示を出しながら暫く待っていたが、いつまで経っても端末は流れて来ず、代わりに現れたのは未知の生成生物達だった。

「……？  こんな魚は初期のパッケージに存在しないはず……まさかッ！？」

　生成生物が新しく生まれる等、あることを除いて存在しない。ティア・マリア。生成生物の元となるデートをヨクトマシンを使って生成するプリンター。それが動いたということだ。

「ッ～～～～誰だッ！  誰がティア・マリアを動かしたッ！！」

　異次元拡張型体感アクアリウムにおいて、ファースト・プリントは所有者にしか味わえない生命誕生の神秘を味わえる貴重なコンテンツだ。このエルセラリウムにもそれは当てはまり、ファースト・プリントの名の通り最初の一度しか見ることは叶わない。

「私の目的を、新たな楽しみを……あの害虫があぁぁぁぁぁあぁ！！！！」

　端末を使わなければ起動しないティア・マリアが動いたと言うことは、端末が意思ある存在とファースト・プリントをやったということ。奪われた夢、零れ落ちた未来、大切な端末に害虫が付いた事が確定した。損失感に悲しみが溢れ、同時に怒りが湧き出す。このままでは収まらない。必ずあの害虫を排除しなければ。
　怒りに鈍って入るが、思考は回る。ティア・マリアのある階層を思い出し、奴が通るであろう海流を目指し、私は泳ぎ出した。



「クソ害虫ーーーー～～～～！！！！」

　海流に乗って奴を追う私は、遂に端末と害虫を見付けた。堪らず怒りの声を轟かせ、身体にヨクトマシンを纏い排除に取り掛かろうとした。

「シールド！？  端末の物か！」

　しかし、奴ごと端末がシールドを張ると、生成生物の群れに突入したではないか。しかし私は、端末が自己防御の為シールドを張ったのだと理解した。

「……むう……これに手を入れたくはないな……」

　そこには小さな生成生物が大きな群れとなり、嵐の如く渦を巻いていたのだ。その中に大中の魚が捕食の為突入しているので、危険性は更に上がっていることだろう。
　とは言え、端末も奴もこの群れの中で動けないだろう。周囲を泳ぎ観察するが、端末と奴が外側に出て来る様子は見られない。

　そうして近くで見つめていたのが悪かったのだろう。群れの中から、大型の黒い魚マグロが私の目に向かって突撃したのだ。

「グアアア～～～～～ッ！？」

　不意の弱点への衝撃に目を覆い、下手魚を怒りに任せて切り裂いた。

　少し気の晴れた私は、あまり近くで見ていては危ないと理解し離れようとした。その時だった。

「ッ！？  何だ！？」

　あれだけ騒がしかった魚達が、一瞬とは言え静止したのだ。嫌な予感がした私は、その感覚が正しかったと理解した。
　小魚の群れから一匹、ヨクトマシンの塊て私に向かって泳いできたのだ。それだけでも理解のできない現象だったが、なんと他の魚がその小魚を追い、私を包み込んだのだ。

「グオッ……！！」

　案の定、ダメージこそ無いものの、口や鰓に小魚が入り込み、それを狙って大中の魚が突撃してくる。
　腕を払い魚を散らすが、次々と突撃してくる魚達。周囲を泳ぐ大型の魚を警戒していると、不意に頭上からヨクトマシンの粒がマリンスノーの如く降ってきた。

「何だ……？  ウオッ！？」

　呆然と眺めていると、魚達がより激しく周囲を囲みだした。そこでようやく理解した。あのヨクトマシンの粒は魚達にとっての餌であると。そして、私は奴を見付けた。私の頭上で何かを手に持つ害虫と端末の姿を。

「害虫がァーーーー！！！！」

　怒りに任せ光弾を撒き散らす。そこ攻撃によって、魚達は塵となって沈んで行く。私は害虫を排除する為、鰭に力を入れた。