上 下
39 / 48
真相開示編

魚達の襲撃

しおりを挟む
 端末達の痕跡を追い、私は海流に乗り次のフロアへと向かって泳いでいた。痕跡を辿った先がこの海流が流れる道しかなかったので、このまま進めば追い付くだろうと思っていた。しかし、そう思い通りに行かないのが世の常だ。

「そこを退けーーッ!」

 前方を泳ぐ回遊魚の群れ。このままではぶつかると思い警告した。その後だった。まるい頭の魚シイラが、私の口の中へと飛び込んできたのだ。

「グホオエッ~~~~!?」

 噎せて吐き出そうとするもヒレつっかえて吐き出せず、致し方無く飲み込んだ。素材がヨクトマシンとは言え、あまり過剰に摂取しても良いことは無いというのに。
 その後もまるい頭の魚は私に突撃して来る。衝撃は大したことがなくとも、肌を張る感覚は気分が悪い。それだけにもとどまらず、まるい頭の魚は私のエラに挟まってきた。

「オノレェ……!!」

 たまらず泳ぐ速度を落として魚に対象する。いく私が頑丈で相手は魚とは言え、鰓に異物が挟まるのはマズイ。鰓から飛び出た魚の頭を潰し、ゆっくりと押し込むことで鰓に傷を付けずに魚を除去した。

 問題も解決したので再び加速。すると、前方から細長い魚サワラが突っ込んできた。

「同じ手は食わん……!!」

 また口の中か鰓を狙われてはかなわんと口を閉じるが、細長い魚はそのまま加速し、あろうことか私に牙を突き立てた。

「何ィ~~~~!??」
(か、噛み付くだと~~~~ッ!?  貴族であるこの私に!?  アクアリウムの生成物ごときが!?)

 あまりにもあり得ない出来事に身体が硬直する。例えるなら自分の端末が持ち主を通報するとか、銃が勝手に動いて所有者を撃つ様な出来事だ。そんな奇妙な現象が今、私に対して起きているッ!!

 驚愕に硬直した隙を突き、細長い魚は私の鰓や目を狙って噛み付こうとしてくる。

「ッ私に近寄るなあぁぁぁぁぁあぁッ!!!!」

 頭を振り、腕を払い、身体を捻る。それだけで魚は砕け散るが、今度は視界を白いモヤが覆い隠す。

「何だ……?」

 進行方向から漂う白く生臭いモヤ。見ると所々にオレンジ色の小さな粒が紛れている。

「ええい、まったくなんなん──」

 白いモヤを払い、その元凶を見付けた。するとそこに居たのは、白く生臭いモヤとオレンジ色の粒を排泄孔から放つ、銀色の太い魚シャケの群れだった。

 それを見て私は気付きたくもない真実を知る。この白く生臭いモヤとオレンジ色粒は、銀色の太い魚の精子と卵だと。

「──おのれぇ~~ーー!!!!」

 生成物ごときが所有者の私に向かって精と卵をひっかけたのだッ!  怒りに興奮を抑えられず、怒声を上げてしまう。そうして開いた口と鰓に向かって、凶悪な顔の魚バラクーダが襲来する。

「痛ッ!?」

 不意に走る痛みに怒りのボルテージが上がる。見ると、凶悪な顔の魚が剥き出しの鰓に噛み付いていた。体液こそ漏れ出てはいないものの、鰓という急所を傷付けられたのだ。

「貴様らぁーーーー!!!!」

 遂に怒りが限界まで達した私は、本気を出して生成物共を殺す事にした。周囲のヨクトマシンに思念を飛ばし、操る。嘗て戦場で【赤雷】と畏れられた赤光が全身を覆い、纏わりつく魚達を弾き飛ばし。
 しかし、それだけで終わらない。全身を纏う赤光が一つの珠へと達すると、それを爆散させて周囲への無差別攻撃を行う。

「クククク……ハーッハッハッハッ!」

 慌てた様子で逃げ惑い、光弾に当たり弾ける生成物の無様な姿に溜飲が下がる。それどころか、何かを守る様にして身体盾にし、そのくせに耐えられず四散する滑稽な姿に笑いが止まらない。

「ハァ~~~~…………やってしまった……」

 冷静になって周りを見れば、上等な景色だったであろう建造物達が、生成物と同様に塵になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜

柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。 ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。 「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」 これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。 時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。 遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。 〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜 https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

女子竹槍攻撃隊

みらいつりびと
SF
 えいえいおう、えいえいおうと声をあげながら、私たちは竹槍を突く訓練をつづけています。  約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。  訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。 「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。 「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」  かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました……。  日米戦争の偽史SF短編です。全4話。

処理中です...