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蒼白のリヴァイアサン

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 シエラは力を溜める様にして踏ん張ると、身体からソナーの様な音波を放った。

「うお、いったい何をッ!?」
「──モード【リヴァイアサン】を発動します」

 言うと、流児とシエラの背後に海洋生物達が集まり始めた。生成生物達は流児に触れ、その列をどんどんと伸ばして行き、やがて一匹の大きな生き物の姿が浮かび上がる。白い身体の蛇の様なシルエット。蒼い鰭を持つ水掻き付きの手足。牙の並んだ口と、水に揺らめく長い髭。

「──エネルギーの同期を開始します」
「……何だか分かんないけど、いけそうだなッ!」

 流児は、何故か不思議な安心感に包まれた気がした。
 海洋生物達は自らのエネルギーを二人へと流し込み、その力を増幅させて行く。

「──【多接式直列光子加速砲】の発射許可を求めます」
「……ああ、許可する。終わらせよう!」
「──了解。発射します!」

 直後、光線の勢いが増し、その破壊力を上げて行く。
 拮抗は崩れ、その破壊の光がヴォズマーへと迫る。

「■■ッ!?  ■■■■~~~~!!!?」

 ヴォズマーが、何処か悲哀を誘う呻き声の様な音を漏らす。
 その深紅に染まった満月の様な瞳には、彼が信仰する海龍が──蒼白のリヴァイアサンが自身を討ち滅ぼさんと睨みつける姿が映っていたのだ。

「うおおおおおおー!!!」
「──リミッター解除。エネルギー、全開……!」
「■■~~!  ──■ッ!?」

 破壊の光がヴォズマーへと迫る。
 悲鳴に似た音を出しながら逃げようとするが、それは海洋生物達が許さない。
 表皮を押す程度の小さな攻撃だが、それは確りとヴォズマーをその場に縛り付け逃走の妨害している。

「■■ッ!?  ■■■■ーー!!?  ■■■■■■ーーーー────」

 やがて、破壊の光がヴォズマーを包む。全身を焼かれ、腕を消し飛ばされ、破れた喉袋その更に奥を撃ち抜かれたヴォズマー。

 やがてその身体から光が離散すると、ヴォズマーだったものは海底へと沈んで行き、大爆発を巻き起こした。衝撃波が流児達を襲う。

「うおおっ!?」
「──対ショック姿勢」
「……!」

 強烈な波が流児達を飲み込もうとしたその瞬間、二人と一匹を青白い光が包み込んだ。

「……ん、何だ──おおおっ!」
「──海龍様」
「……!!!」
『────』

 流児達を包む青白い光の珠が、海龍の手に収まる。すると海龍は二人と一匹を導く様に、光の指す方へ向けて泳ぎ出した。

「……終わったんだね……」
「──脅威の排除を確認。通常モードへ移行します」
「……そうか……ねえ、シエラ」
「──何でしょうか?」

 静かになった海中。陽の光に照らされる最中さなか、流児は勇気を振り絞り、改めてシエラへと想いを伝える。

「俺は、君が好きだ」
「──はい」
「君を愛してる」
「──はい」

 シエラは答える。その表情が、段々と柔らかくなって行くのが分かる。

「……俺と一緒に、これからを生きてくれないか……?」
「──はい。私は──シエラは、貴方と共に生きて行きます」

 流児の告白に、シエラは暖かな笑顔で答えてくれた。

「……ッ!  良かった……ありがとう……ありがとう……シエラ……!」



 こうして、二人の旅は終わりを迎えた。

『────』

 抱き合う二人を海龍は尊い者を見るようにして紺碧の龍眼を細め、その時を守る様にゆっくりと泳いで行く。

 その周囲で、二人を祝福するように今まで出会ってきた様々な海洋生物達が周囲を囲み、共に泳いで行った。





 とある砂浜。そこには、共に歩む仲睦まじい様子の足跡があった。
 そして離れ行く二人の背中に向けて、何時までも何時までも、ガザミはハサミを振っている。
 そして、二人が見えなくなると、そのままへと帰っていった。
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