30 / 48
死闘
しおりを挟む
蒼き輝きを放ち、流児は流星が如く海を駆ける。
「ヴォズマァァァァーーー!!!」
「■■……!? ──■■■■ーーーー!!!」
その姿に、数瞬の間硬直するヴォズマー。
しかし直ぐに正気を取り戻し、流児に向かって咆哮を放つと、再び流児を撃ち落とさんと距離を取りながら攻撃を開始する。
「クソッ攻撃が激しいッ……! そんなに抵抗するなら、シエラを離してんじゃねぇよッ!!」
「■■■■!!」
より激しくなったヴォズマーの攻撃。放たれる紅い光線。鰭から光の刃を発生させて薙ぎ払い。流児に向けた腕──その指から、光弾を放ち撒き散らす。
流児はそれを避け、ヨクトマシンを腕に纏うことで攻撃を弾き、受け流す。
(ええい、クソッ! あと一歩が届かないッ! ……これでもダメなのかッ……!?)
後少しと言う所でその一歩が届かず焦る流児。
ヴォズマーは巨体であるにも関わらず俊敏。
懐に飛び込もうとする流児に向けて、鰭より発生する紅い光刃を振るい、その接近を許さない。
こちらを見つめて手を伸ばすシエラの姿も相まって、流児はより焦燥に駆られる。
「ッ……一か八かだ……オオオオッ!!」
ヴォズマーの懐へ強引に飛び込み、シエラに手を伸ばす。
──それが、大きな隙となった。
「届け──うおあっ!? 」
シエラへと手を伸ばす流児を、突如下から巻き上がった海流が襲う。
それは、ヴォズマーが内へと尾を巻くことで起こされた、意図的な波だ。
波に揉まれ、流児は身動きが取れない。
そんな流児を仕留めるべく、ヴォズマーは口を大きく開け、その喉元に殺意の光を溜め──放つ。
「マズッ──ガアアッ!?」
紅い光流が流児を撃つ。
流児は腕に蒼い光を集め、体を守るよう交差させるが、しかしそれでも攻撃を完全に防ぐことができず、ジリジリと体は焼け、海底へと押し込まれてしまう。
「グハァッ!」
勢いをそのままに、壁に叩き付けられる流児。
ヴォズマーは流児に止めの刺すため、再び喉に光を集める。
「……シエラッ……!」
深紅の光が海を照らす。
死にかけている自身ではなく、捕らわれているシエラを案じて手を伸ばす。
(もうダメなのかッ……!?)
流児が諦めかけた──その時だった。
「……!」
「ガザミ……!?」
伸ばした手の上に、これまでずっと一緒にいたガザミが降りて来たのだ。
そして、ガザミはハサミを振って何かを呼び出した。
ヴォズマーが深紅の光を吐き出す──その瞬間、黒い影の群れがヴォズマーへと突撃し、光線をあらぬ方角へと反らした。
「……あれは……!?」
影の群れへと目を向ける流児。
その正体は、海流を流れた際に餌を上げた、クロマグロの群れだった。
「■■■■ーー!!」
クロマグロに向けて怒りの咆哮を放つと、ヴォズマーは再び流児を仕留めるため、深紅の光を溜めようとする。
「マズイっ……動け体ァ!」
「……!」
しかしそれも、顎を何かに強引に閉じられ失敗する。光線が口内を乱反射し、爆発を引き起こした。
「■■■■!?!?」
「ッ!? 今度はなんだ!」
ヴォズマーの顎をかち上げたのは、流児と盛大な鬼ごっこをして、群れと泳いで行ったバンドウイルカの子イルカ達だった。
「お前達っ……!」
「ピュイィー!!」
「ギー、ギー!」
子イルカが司令塔となり、ヴォズマーの攻撃を妨害していたのだ。
尚もヴォズマーへの妨害が続く。
「■■ーー!」
クロマグロの群れがヴォズマーへと突撃。気を散らし、隙を生み出す。
「ピー!」
「キュイィ!」
「■■!?」
そこへ、イルカやシャチが眼下から加速し、下顎に向かって体当たりをする。
「■■ーー! ■■!?」
ヴォズマーがイルカやシャチに狙いを変えようとすれば、その眼前でイカやタコが墨の煙幕を張る。
「■■~~~~!」
ヴォズマーが煙幕を晴らそうと腕を振る最中、シイラやカツオ、オニカマスに乗ったカニやエビ達がヴォズマーの喉袋へと取り付く。そしてヨクトマシンによって強化されたハサミで喉袋を傷突けて行く。
「みんな、あの時の……助けてくれるのか……!?」
まるで流児を助けるかのような動きで、恐ろしい異形の存在であるヴォズマーを囲い攻撃や妨害をする海洋生物達。
その全てが、流児が旅をする道中で餌をやり、触れ合ってきた者達だった。
「っ……このまま寝てる訳にはいかない……ん、どうした?」
その光景に感動する流児は、傷だらけの身体を無視して立つ。すると、自身の周りに戦いに向かないような小さな魚達が集まって来ていることに気付いた。
「……、……!!」
目の前で遊泳脚を動かしホバリングするガザミがハサミを掲げる。すると、周囲に集まった魚達から蒼い光が集い、ガザミのハサミの間に蒼い光の珠が出来上がった。
「この光は……」
「……!!」
その蒼い光は、この海に産まれた存在の命の光。ヨクトマシンが優しさの意思を感知して表す光だった。
それを掲げるガザミは、流児に期待するような視線を向け、命の光を差し出してくる。
「……ああ、ありがとう……オオオッ!」
表情を引き締め、傷だらけの手を無理矢理動かして光を受けとる。
すると、光が傷に沁みるように身体へと溶け込み、傷を治し体力を戻し、更に力を引き上げる。
周囲の海洋生物達もそれに呼応するように、流児に向けて命の光を放ち、力を託す。
身体に満ちるエネルギー。それを確認すると、流児は海底を蹴り、ヴォズマーへと突撃する。
「ヴォズマァァァァーーー!!!」
「■■……!? ──■■■■ーーーー!!!」
その姿に、数瞬の間硬直するヴォズマー。
しかし直ぐに正気を取り戻し、流児に向かって咆哮を放つと、再び流児を撃ち落とさんと距離を取りながら攻撃を開始する。
「クソッ攻撃が激しいッ……! そんなに抵抗するなら、シエラを離してんじゃねぇよッ!!」
「■■■■!!」
より激しくなったヴォズマーの攻撃。放たれる紅い光線。鰭から光の刃を発生させて薙ぎ払い。流児に向けた腕──その指から、光弾を放ち撒き散らす。
流児はそれを避け、ヨクトマシンを腕に纏うことで攻撃を弾き、受け流す。
(ええい、クソッ! あと一歩が届かないッ! ……これでもダメなのかッ……!?)
後少しと言う所でその一歩が届かず焦る流児。
ヴォズマーは巨体であるにも関わらず俊敏。
懐に飛び込もうとする流児に向けて、鰭より発生する紅い光刃を振るい、その接近を許さない。
こちらを見つめて手を伸ばすシエラの姿も相まって、流児はより焦燥に駆られる。
「ッ……一か八かだ……オオオオッ!!」
ヴォズマーの懐へ強引に飛び込み、シエラに手を伸ばす。
──それが、大きな隙となった。
「届け──うおあっ!? 」
シエラへと手を伸ばす流児を、突如下から巻き上がった海流が襲う。
それは、ヴォズマーが内へと尾を巻くことで起こされた、意図的な波だ。
波に揉まれ、流児は身動きが取れない。
そんな流児を仕留めるべく、ヴォズマーは口を大きく開け、その喉元に殺意の光を溜め──放つ。
「マズッ──ガアアッ!?」
紅い光流が流児を撃つ。
流児は腕に蒼い光を集め、体を守るよう交差させるが、しかしそれでも攻撃を完全に防ぐことができず、ジリジリと体は焼け、海底へと押し込まれてしまう。
「グハァッ!」
勢いをそのままに、壁に叩き付けられる流児。
ヴォズマーは流児に止めの刺すため、再び喉に光を集める。
「……シエラッ……!」
深紅の光が海を照らす。
死にかけている自身ではなく、捕らわれているシエラを案じて手を伸ばす。
(もうダメなのかッ……!?)
流児が諦めかけた──その時だった。
「……!」
「ガザミ……!?」
伸ばした手の上に、これまでずっと一緒にいたガザミが降りて来たのだ。
そして、ガザミはハサミを振って何かを呼び出した。
ヴォズマーが深紅の光を吐き出す──その瞬間、黒い影の群れがヴォズマーへと突撃し、光線をあらぬ方角へと反らした。
「……あれは……!?」
影の群れへと目を向ける流児。
その正体は、海流を流れた際に餌を上げた、クロマグロの群れだった。
「■■■■ーー!!」
クロマグロに向けて怒りの咆哮を放つと、ヴォズマーは再び流児を仕留めるため、深紅の光を溜めようとする。
「マズイっ……動け体ァ!」
「……!」
しかしそれも、顎を何かに強引に閉じられ失敗する。光線が口内を乱反射し、爆発を引き起こした。
「■■■■!?!?」
「ッ!? 今度はなんだ!」
ヴォズマーの顎をかち上げたのは、流児と盛大な鬼ごっこをして、群れと泳いで行ったバンドウイルカの子イルカ達だった。
「お前達っ……!」
「ピュイィー!!」
「ギー、ギー!」
子イルカが司令塔となり、ヴォズマーの攻撃を妨害していたのだ。
尚もヴォズマーへの妨害が続く。
「■■ーー!」
クロマグロの群れがヴォズマーへと突撃。気を散らし、隙を生み出す。
「ピー!」
「キュイィ!」
「■■!?」
そこへ、イルカやシャチが眼下から加速し、下顎に向かって体当たりをする。
「■■ーー! ■■!?」
ヴォズマーがイルカやシャチに狙いを変えようとすれば、その眼前でイカやタコが墨の煙幕を張る。
「■■~~~~!」
ヴォズマーが煙幕を晴らそうと腕を振る最中、シイラやカツオ、オニカマスに乗ったカニやエビ達がヴォズマーの喉袋へと取り付く。そしてヨクトマシンによって強化されたハサミで喉袋を傷突けて行く。
「みんな、あの時の……助けてくれるのか……!?」
まるで流児を助けるかのような動きで、恐ろしい異形の存在であるヴォズマーを囲い攻撃や妨害をする海洋生物達。
その全てが、流児が旅をする道中で餌をやり、触れ合ってきた者達だった。
「っ……このまま寝てる訳にはいかない……ん、どうした?」
その光景に感動する流児は、傷だらけの身体を無視して立つ。すると、自身の周りに戦いに向かないような小さな魚達が集まって来ていることに気付いた。
「……、……!!」
目の前で遊泳脚を動かしホバリングするガザミがハサミを掲げる。すると、周囲に集まった魚達から蒼い光が集い、ガザミのハサミの間に蒼い光の珠が出来上がった。
「この光は……」
「……!!」
その蒼い光は、この海に産まれた存在の命の光。ヨクトマシンが優しさの意思を感知して表す光だった。
それを掲げるガザミは、流児に期待するような視線を向け、命の光を差し出してくる。
「……ああ、ありがとう……オオオッ!」
表情を引き締め、傷だらけの手を無理矢理動かして光を受けとる。
すると、光が傷に沁みるように身体へと溶け込み、傷を治し体力を戻し、更に力を引き上げる。
周囲の海洋生物達もそれに呼応するように、流児に向けて命の光を放ち、力を託す。
身体に満ちるエネルギー。それを確認すると、流児は海底を蹴り、ヴォズマーへと突撃する。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜
柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。
ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。
「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
女子竹槍攻撃隊
みらいつりびと
SF
えいえいおう、えいえいおうと声をあげながら、私たちは竹槍を突く訓練をつづけています。
約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。
訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。
「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。
「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」
かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました……。
日米戦争の偽史SF短編です。全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる