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迷子案内
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変わらず此方を見つめながら首を傾げる少女に「俺の言葉は分かる?」と問うが、少女は変わらず「はい」と答えるのみ。
「言葉は通じるけど、意味が伝わらないのか……? なら、勝手に君のことをシエラ呼ばせて貰うよ」
服の裾に刻まれた単語。ローマ字の様に見えるそれを呼んでみれば、文字の隙間から『シエラ』と読み取れる。
相手を呼ぶのに名前がないのは不便だ。そう思い流児がシエラに言えば、シエラは頷いた。
「──しえら……シエラ。了解しました」
「あー……それじゃあ、出口は分かるかな? 俺、迷子みたいで……あの、ここの外に出たいって──どう伝えればいいんだ……」
そう流児が言うと、シエラの様子が一変した。
「──迷い子を確認、最優先事案発生。解決案を確認中……確定。道案内を開始します」
「え、迷い子──なに? これは伝わったのか? あ、ちょっ!」
色々とジェスチャーを交えて“元の世界へ帰りたい”と伝えようとする流児だったが、シエラはそれを“迷子”と理解したらしい。
シエラは流児の手を取ると、微笑みを浮かべて案内を初めるのであった。
(シエラ……不思議な喋り方をする女の子……何なんだろう……)
日の光によって輝くエメラルドグリーンの海。
そこに立ち並ぶコンクリートの残骸。
黒いアスファルトと白い砂の混じる海底を、流児はシエラに手を引かれながら共に歩み、時に泳いで行く。
(シエラもそうだが、この海も不思議だ……海かどうかすら怪しいな……)
泳ぎながら、流児は周囲の観察を始める。
帰れる可能性が出てきたからか、先までの塞ぎ様が嘘のように元気だ。
(水温は少し……いや、快適な程に暖かい。なのに魚が泳いで居る……海藻や珊瑚も問題なく生えてるし……滅茶苦茶だ……)
過去、海洋学者の両親に語り続けられた蘊蓄や知識が、視界に映るモノを自然に分析していく。
流児が感じているように、この海の温度は人が快適に過ごせる温度。しかし、それは魚などの水生生物には火傷するほど──とはいかないものの、過ごし辛い程に熱い筈だ。
何なら海面との温度差で蓋が出来、海底付近の酸素が枯渇する現象もある。
流児の隣を魚の群れが泳いで行くが、その一匹一匹を観察しても弱ってい様子も、ましてや酸欠に苦しむ様子も見て取れない。
(むしろ、頗る元気そうだ)
見れば分かる。体長、体高共に大きく、不意に見えた厚みもあってか、脂乗りも良いだろうと想像が付く。
鱗の艶も良く、鰭も含め、どこにも傷や欠けが見えない。それもまた、この海の不自然さを加速さを見せる要因になっているのだが。
「……うわ、なんだこれ……」
魚に向けていた視線を前に戻した流児の目に、違和感剥き出しのものが飛び込んできた。
それは、アスファルトに規則的に生える不自然な珊瑚礁と、コンクリートの残骸から生える海藻の壁だった。
「──これは珊瑚礁と言って、大きくなった珊瑚が作り出した地形です」
「え……ああ、説明ありがとう……」
流児の出した声と向けられた視線の先から、事態を把握したシエラが解説を始める。
それに驚きつつ礼を言うと、二人はどこか規則的に生える不自然な珊瑚礁を越え、海藻の壁の中を進む。
(……やっぱ海藻も変だ)
感じた違和感に従い海藻の根を見れば、無駄に等間隔に生えていることが解った。
(まるで作り物みたいだ。畑じゃないってのに……)
そんな違和感まみれな海藻郡を越え、流児達は広い砂地に出た。
(……凄い綺麗だ。……そして滅茶苦茶でバラバラだ……)
美しい光景に感動していた流児の視線の先には、無数の色とりどりな魚達がヤシの木の下を泳いでいた。
その様相もさることながら、魚達の生息域はそれぞれが全く別の場所の筈。
片や沖縄等を主な生息地とする魚だが、もう片方はハワイの魚。
更に先を見ると、インド洋に生息する魚も泳いでいる。
まるで“南国の魚”と分類して魚を一ヶ所に放った様な海。流児はこの海をそう捉えた。
「……それはお前もか」
「……?」
流児の頭の上には、いつの間にか一匹のワタリガニ──ガザミが乗っていた。
降ろそうとしても髪を挟んで離さないので、流児は仕方無く乗せたままにしている。
「いや、ガザミはいいか」
「……!?」
流児は、ガザミなどのワタリガニの生息域を思いだし、いても問題ないと流した。
頭の上で“それでいいのか?!”と言わんばかりに脚を動かすガザミをよそに、流児達は先へと進む。
「言葉は通じるけど、意味が伝わらないのか……? なら、勝手に君のことをシエラ呼ばせて貰うよ」
服の裾に刻まれた単語。ローマ字の様に見えるそれを呼んでみれば、文字の隙間から『シエラ』と読み取れる。
相手を呼ぶのに名前がないのは不便だ。そう思い流児がシエラに言えば、シエラは頷いた。
「──しえら……シエラ。了解しました」
「あー……それじゃあ、出口は分かるかな? 俺、迷子みたいで……あの、ここの外に出たいって──どう伝えればいいんだ……」
そう流児が言うと、シエラの様子が一変した。
「──迷い子を確認、最優先事案発生。解決案を確認中……確定。道案内を開始します」
「え、迷い子──なに? これは伝わったのか? あ、ちょっ!」
色々とジェスチャーを交えて“元の世界へ帰りたい”と伝えようとする流児だったが、シエラはそれを“迷子”と理解したらしい。
シエラは流児の手を取ると、微笑みを浮かべて案内を初めるのであった。
(シエラ……不思議な喋り方をする女の子……何なんだろう……)
日の光によって輝くエメラルドグリーンの海。
そこに立ち並ぶコンクリートの残骸。
黒いアスファルトと白い砂の混じる海底を、流児はシエラに手を引かれながら共に歩み、時に泳いで行く。
(シエラもそうだが、この海も不思議だ……海かどうかすら怪しいな……)
泳ぎながら、流児は周囲の観察を始める。
帰れる可能性が出てきたからか、先までの塞ぎ様が嘘のように元気だ。
(水温は少し……いや、快適な程に暖かい。なのに魚が泳いで居る……海藻や珊瑚も問題なく生えてるし……滅茶苦茶だ……)
過去、海洋学者の両親に語り続けられた蘊蓄や知識が、視界に映るモノを自然に分析していく。
流児が感じているように、この海の温度は人が快適に過ごせる温度。しかし、それは魚などの水生生物には火傷するほど──とはいかないものの、過ごし辛い程に熱い筈だ。
何なら海面との温度差で蓋が出来、海底付近の酸素が枯渇する現象もある。
流児の隣を魚の群れが泳いで行くが、その一匹一匹を観察しても弱ってい様子も、ましてや酸欠に苦しむ様子も見て取れない。
(むしろ、頗る元気そうだ)
見れば分かる。体長、体高共に大きく、不意に見えた厚みもあってか、脂乗りも良いだろうと想像が付く。
鱗の艶も良く、鰭も含め、どこにも傷や欠けが見えない。それもまた、この海の不自然さを加速さを見せる要因になっているのだが。
「……うわ、なんだこれ……」
魚に向けていた視線を前に戻した流児の目に、違和感剥き出しのものが飛び込んできた。
それは、アスファルトに規則的に生える不自然な珊瑚礁と、コンクリートの残骸から生える海藻の壁だった。
「──これは珊瑚礁と言って、大きくなった珊瑚が作り出した地形です」
「え……ああ、説明ありがとう……」
流児の出した声と向けられた視線の先から、事態を把握したシエラが解説を始める。
それに驚きつつ礼を言うと、二人はどこか規則的に生える不自然な珊瑚礁を越え、海藻の壁の中を進む。
(……やっぱ海藻も変だ)
感じた違和感に従い海藻の根を見れば、無駄に等間隔に生えていることが解った。
(まるで作り物みたいだ。畑じゃないってのに……)
そんな違和感まみれな海藻郡を越え、流児達は広い砂地に出た。
(……凄い綺麗だ。……そして滅茶苦茶でバラバラだ……)
美しい光景に感動していた流児の視線の先には、無数の色とりどりな魚達がヤシの木の下を泳いでいた。
その様相もさることながら、魚達の生息域はそれぞれが全く別の場所の筈。
片や沖縄等を主な生息地とする魚だが、もう片方はハワイの魚。
更に先を見ると、インド洋に生息する魚も泳いでいる。
まるで“南国の魚”と分類して魚を一ヶ所に放った様な海。流児はこの海をそう捉えた。
「……それはお前もか」
「……?」
流児の頭の上には、いつの間にか一匹のワタリガニ──ガザミが乗っていた。
降ろそうとしても髪を挟んで離さないので、流児は仕方無く乗せたままにしている。
「いや、ガザミはいいか」
「……!?」
流児は、ガザミなどのワタリガニの生息域を思いだし、いても問題ないと流した。
頭の上で“それでいいのか?!”と言わんばかりに脚を動かすガザミをよそに、流児達は先へと進む。
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