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焦燥の狂宴
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軽やかに揺れる蝶の羽根を毟り取る強さで、文字通り抱き『締められる』と息苦しさに身悶えした。まるで細いピンに縫いとられて磔になる、標本の蝶のように。逃げ場もなく、なされるがままに、呼吸をしているだけ。
触れ合うだけの柔らかな感触が、徐々に舌の滑りに変わっていく。まるで甘い蜂蜜そのものにでもなったように、何度も執拗に口唇を舐めとられる。そして浅く、深く、体内へと侵食してくるのは愛情でもなく、欲望とも違う、不純な何か。濁って何も見通せない見透かせない、ただただ熱の塊に咥内を焼かれているようだ。
業火。
何故かそんな言葉が脳裡に浮かんだ。地獄の業火で焼かれるならば構わない。もしも、愛する人とたった一度でもいい、添い遂げられたなら。その後にどんな責め苦が待っていようとも潔くこの身を捧げようじゃないか。鬼でも悪魔でも来るがいい。あの人が手に入るのならば、魂だって売る。
こんな激情と強欲に塗れた塊を、恋などと呼んでいいはずがない。
それでも、あなたから愛されない、想いを還されない、この一方通行が未来永劫続くメビウスの輪の上を、延々と走り続けることしか許されない現状は他に、つけるべき名前がない。
するりと解かれるリボン。外界から遮断されたこの部屋には、衣擦れの音すら、空気を震わせる。
どうか、今だけ。今だけでいいから、僕だけを見て。僕を認めて。
この世界に僕が生きていることを、あなただけは知っていて。
そして、どうか本当の名前を呼んで。
そして、キスして。
触れられた場所も、触れ方も、指の動きも、髪をそっと払う仕草も。
何もかもを憶えていよう。たった一度だけでいい。
この記憶だけで、僕はこの先の人生に何があっても一人で生きていける。
あなたに抱かれた想い出だけでこんなに幸福になれるのだから。
柔らかく甘く、果実の汁を吸い取るように耳を喰む。鼓膜に触れそうなほど深くまで舌が分け入ってくる。もう立っていられない。ただ息を吸う、それだけのことが難しい。喘いでいるのか啼いているのか、意味のない音だけが唾液に誘われて溢れ落ちる。
まるで猫のようにざらりとした舌で首筋を舐められるだけで、腰椎が痺れて熱を溜め込んでいく。じんわりと頚をもたげるのは、僕が僕である証明。『美澄』にはなく『泉』にしかないもの。僕が男であることの証明。
触れ合うだけの柔らかな感触が、徐々に舌の滑りに変わっていく。まるで甘い蜂蜜そのものにでもなったように、何度も執拗に口唇を舐めとられる。そして浅く、深く、体内へと侵食してくるのは愛情でもなく、欲望とも違う、不純な何か。濁って何も見通せない見透かせない、ただただ熱の塊に咥内を焼かれているようだ。
業火。
何故かそんな言葉が脳裡に浮かんだ。地獄の業火で焼かれるならば構わない。もしも、愛する人とたった一度でもいい、添い遂げられたなら。その後にどんな責め苦が待っていようとも潔くこの身を捧げようじゃないか。鬼でも悪魔でも来るがいい。あの人が手に入るのならば、魂だって売る。
こんな激情と強欲に塗れた塊を、恋などと呼んでいいはずがない。
それでも、あなたから愛されない、想いを還されない、この一方通行が未来永劫続くメビウスの輪の上を、延々と走り続けることしか許されない現状は他に、つけるべき名前がない。
するりと解かれるリボン。外界から遮断されたこの部屋には、衣擦れの音すら、空気を震わせる。
どうか、今だけ。今だけでいいから、僕だけを見て。僕を認めて。
この世界に僕が生きていることを、あなただけは知っていて。
そして、どうか本当の名前を呼んで。
そして、キスして。
触れられた場所も、触れ方も、指の動きも、髪をそっと払う仕草も。
何もかもを憶えていよう。たった一度だけでいい。
この記憶だけで、僕はこの先の人生に何があっても一人で生きていける。
あなたに抱かれた想い出だけでこんなに幸福になれるのだから。
柔らかく甘く、果実の汁を吸い取るように耳を喰む。鼓膜に触れそうなほど深くまで舌が分け入ってくる。もう立っていられない。ただ息を吸う、それだけのことが難しい。喘いでいるのか啼いているのか、意味のない音だけが唾液に誘われて溢れ落ちる。
まるで猫のようにざらりとした舌で首筋を舐められるだけで、腰椎が痺れて熱を溜め込んでいく。じんわりと頚をもたげるのは、僕が僕である証明。『美澄』にはなく『泉』にしかないもの。僕が男であることの証明。
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