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焦燥の狂宴
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ああ、愛されたかったな。
愛兄さま、僕は、たとえ憎まれてでもいい、貴方の傍にいたかったんです。
さようなら、僕の愛しい愛しい、魂の番さん。
さようなら、そして、
ーーーごめんなさい。
身体の奥が痺れて潤み出す。ほどかれていく甘い匂いに、狂い出しそうになる。花びらがはらり、はらり、散り始めた。疼く肌が火照り出す。
再び舐め上げられた首筋が、今度は快感に震えた。もう少しで快楽に手が届く。愉悦から恍惚へと導かれて、目の前が白く濁る。誰にも暴かれたことのない秘められた場所に、ごつごつとした指が当てられて、喉がひくりと動いた。
ああ、これでもう終わりだ。ようやく『私』は解放される。後に残るのはきっと、惨めな僕、それだけ。やわやわと触れられるだけの動きに、力がこもる。首筋に息がかかる。覚悟は出来た。どうにでもするがいい。
「……兄さま」
せめて最後に呼ぶのは、貴方の名前でありたい。
愛していたよ、愛兄さま。
目を、心を、そっと、閉じた。
ーーージャリ。
すぐ側で、土を踏む音がした。急速に意識が引き戻される。
「…あらま。見つかっちゃったかな?」
悪びれもせず、手はまだドレスの下の肌に這わせながら密兄さまが笑う。幾分挑発的な色を滲ませながら。
月の光を浴びながら、此方を見詰めていたのは、
どうして…
こんな時に、今更…
どうして…
「…愛、兄さまっ」
心が溢れ出してしまいそうだった。
「…泣いている」
表情からは何も読み取れないのはいつも通りだったが、心なしか声が低い。少し不機嫌そうにも見える。
「これからが“お楽しみ”なんだよねぇ。ちょっと外してくれるか?」
応える密兄さまはいつもの通り軽い調子ながら、その声は低く、抗うことを許さない。
「お前たちが要らないなら、俺がこの子を貰う。こんな匂いを振り撒いてるのに野放しにするなんて、自殺行為もいいとこだ」
咎める声音で愛兄さまを責め立てるけれど、見当違いも甚だしい。兄さまたちには何の責があるものか。全ては僕がΩだから悪いのだ。僕の存在のせいで枷を嵌められているのは兄さまたち。僕さえいなければ兄さまたちはもっと自由に羽搏ける。そう、僕さえいなければ。
僕から解放してあげられる。今がまさにその時かもしれない。
「…密兄さま、はやく、お願い」
密兄さまに番われてしまえば、少なくとも本家の兄さまたちは僕のΩ性に惑わされることなく、好きな相手と愛し合うことが出来る。僕の存在さえなければ。
手を離すなら、今だ。それならば今すぐ、とにかくこの首筋を噛んで、
アナタノモノニシテクダサイーーー
「ん?…もう待てないんだね?分かったよ、『泉』」
ぺろりと舐め上げられた首筋に、
時が、止まった。
心が、凍った。
だが、幾ら待っても、噛み付かれる感触は訪れなかった。
代わりに温かな手が首筋を覆っている。目を開けると、
怒りに震えた顔の
愛兄さまがいた。
愛兄さま、僕は、たとえ憎まれてでもいい、貴方の傍にいたかったんです。
さようなら、僕の愛しい愛しい、魂の番さん。
さようなら、そして、
ーーーごめんなさい。
身体の奥が痺れて潤み出す。ほどかれていく甘い匂いに、狂い出しそうになる。花びらがはらり、はらり、散り始めた。疼く肌が火照り出す。
再び舐め上げられた首筋が、今度は快感に震えた。もう少しで快楽に手が届く。愉悦から恍惚へと導かれて、目の前が白く濁る。誰にも暴かれたことのない秘められた場所に、ごつごつとした指が当てられて、喉がひくりと動いた。
ああ、これでもう終わりだ。ようやく『私』は解放される。後に残るのはきっと、惨めな僕、それだけ。やわやわと触れられるだけの動きに、力がこもる。首筋に息がかかる。覚悟は出来た。どうにでもするがいい。
「……兄さま」
せめて最後に呼ぶのは、貴方の名前でありたい。
愛していたよ、愛兄さま。
目を、心を、そっと、閉じた。
ーーージャリ。
すぐ側で、土を踏む音がした。急速に意識が引き戻される。
「…あらま。見つかっちゃったかな?」
悪びれもせず、手はまだドレスの下の肌に這わせながら密兄さまが笑う。幾分挑発的な色を滲ませながら。
月の光を浴びながら、此方を見詰めていたのは、
どうして…
こんな時に、今更…
どうして…
「…愛、兄さまっ」
心が溢れ出してしまいそうだった。
「…泣いている」
表情からは何も読み取れないのはいつも通りだったが、心なしか声が低い。少し不機嫌そうにも見える。
「これからが“お楽しみ”なんだよねぇ。ちょっと外してくれるか?」
応える密兄さまはいつもの通り軽い調子ながら、その声は低く、抗うことを許さない。
「お前たちが要らないなら、俺がこの子を貰う。こんな匂いを振り撒いてるのに野放しにするなんて、自殺行為もいいとこだ」
咎める声音で愛兄さまを責め立てるけれど、見当違いも甚だしい。兄さまたちには何の責があるものか。全ては僕がΩだから悪いのだ。僕の存在のせいで枷を嵌められているのは兄さまたち。僕さえいなければ兄さまたちはもっと自由に羽搏ける。そう、僕さえいなければ。
僕から解放してあげられる。今がまさにその時かもしれない。
「…密兄さま、はやく、お願い」
密兄さまに番われてしまえば、少なくとも本家の兄さまたちは僕のΩ性に惑わされることなく、好きな相手と愛し合うことが出来る。僕の存在さえなければ。
手を離すなら、今だ。それならば今すぐ、とにかくこの首筋を噛んで、
アナタノモノニシテクダサイーーー
「ん?…もう待てないんだね?分かったよ、『泉』」
ぺろりと舐め上げられた首筋に、
時が、止まった。
心が、凍った。
だが、幾ら待っても、噛み付かれる感触は訪れなかった。
代わりに温かな手が首筋を覆っている。目を開けると、
怒りに震えた顔の
愛兄さまがいた。
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