95 / 115
93. 魔導士登録へのお誘い(2回目)
しおりを挟む
「お断りします!!」
地面に大の字に寝っ転がりながら、ティルミオはディランの申し出に即答した。
国への魔導士登録の話は、前にティティルナに持ちかけられた時にオデールから色々聞いていたので、ティルミオは即座にその申し出を断った。
登録する事に、余りメリットが感じられないし、むしろ制約が増えそうで嫌だったのだ。
けれどもディランは、無下に断られても諦めずにティルミオに食い下がったのだった。
「断るだなんて勿体無い!君の力は国の為に役立てるべきだ!!」
しかしティルミオは、難色を示しながらディランに問い返した。
「……それって兵士になれって事だろ?」
「無論、そうだ。」
「じゃあ、やっぱり無理。妹と約束したんだ。危険なことはしないって。」
それはティルミオにとって大事な約束であった。
既に何度も危険な目に遭っているので、ちゃんと約束を守れているかと言ったら怪しいが、それでも、こればっかりは譲れなかったのだ。
けれども、ディランはそれでも諦めずにティルミオを説得したのだった。
「冒険者だって、十分危険な仕事じゃ無いか?」
「う……それは、そうだけど……」
ど正論な反撃に、ティルミオは思わず言葉に詰まってしまった。
するとディランは、ティルミオが反論しないのを良い事に、更に畳み掛けて、ティルミオの説得を続けた。
「同じ危険な仕事でも、国所属になれば、毎月安定して給金が貰えるぞ。冒険者だと稼ぎが安定しないだろ?君は借金があると聞くし、悪い話じゃ無いだろう?」
「確かにそうだけど……」
積み重ねられる正論に、ティルミオは返す言葉に困ってしまった。
確かに、ディランが言っていることはその通りだとは思うのだ。
けれどもティルミオは、そんな理屈では無く、それでも今の冒険者家業を辞めたく無かったのだった。
「でも、冒険者にはロマンがある!ほら、今回みたいにレアな魔物素材で一攫千金だってあるし!」
これが、ティルミオが冒険者を続ける一番の理由であった。莫大な借金がある以上、一攫千金を諦められなかったのだ。
観察眼と武具錬金という稀有なスキルを手に入れたからこそ、その可能性を諦めたく無かったのだ。
だからティルミオは、冒険者を辞めたくないと反論したのだが、その反論の途中で、急に大切な事を思い出して、切迫した声でディランにある事を確認したのだった。
「あ……そうだ、俺の無実が証明されたから、あの宝玉って換金してもらえるよな?!」
それはとても重要なことだった。これでもし、あの宝玉は没収されたままであったら、溜まったもんじゃないのだ。
するとディランは、少しだけ困った様な顔をしたが、それでもティルミオの質問に、彼が望んでる答えを返したのだった。
「まぁ、管轄外なんで確実な事は言えないが、恐らくはそうだろうな。」
「良かった!!」
それを聞いてティルミオは、心の底から安堵して、その場で仰向けに寝転がったまま目を閉じて胸を撫で下ろした。
(あぁ、良かった……これで税金の支払いはなんとかなりそうだ……)
心配事が片付いて、ティルミオはすっかり安心した表情で地面に寝転がっていたのだが、しかしそんなティルミオの顔を、ディランは顰めっ面で覗き込んだのだった。
「……ところで、君はいつまでそうしてるんだ?」
「ん……?」
「とっとと立ってくれよ。早く帰るぞ。」
ディランはティルミオがただ怠けて地面に寝転がってると思っていたのだ。
だから彼は、早く街に帰りたくて、ティルミオに立ち上がる様に促したのだが、けれども、それは無理な話であった。
「えっ、いや……無理……魔力切れで動けない……」
そう、ティルミオは魔力を使い切ってしまって、未だ全く動けないのだ。
「……」
「……」
二人は顔を見合ったまま、お互いに押し黙った。
「……そういうのいいから……」
「いや、だから本当に動けないんだって!俺、魔力量少ないから、あの魔法一回で魔力切れを起こすんだよ!」
すると、ようやくディランもこれがティルミオがふざけている訳ではなく、本当に動けないのだと察した。
「……前言撤回。君程度では、国の役に立ちませんね。」
「……そりゃどーも……」
こうして、ティルミオへの魔導士登録のお誘いは、僅か数分で撤回されたのだった。
地面に大の字に寝っ転がりながら、ティルミオはディランの申し出に即答した。
国への魔導士登録の話は、前にティティルナに持ちかけられた時にオデールから色々聞いていたので、ティルミオは即座にその申し出を断った。
登録する事に、余りメリットが感じられないし、むしろ制約が増えそうで嫌だったのだ。
けれどもディランは、無下に断られても諦めずにティルミオに食い下がったのだった。
「断るだなんて勿体無い!君の力は国の為に役立てるべきだ!!」
しかしティルミオは、難色を示しながらディランに問い返した。
「……それって兵士になれって事だろ?」
「無論、そうだ。」
「じゃあ、やっぱり無理。妹と約束したんだ。危険なことはしないって。」
それはティルミオにとって大事な約束であった。
既に何度も危険な目に遭っているので、ちゃんと約束を守れているかと言ったら怪しいが、それでも、こればっかりは譲れなかったのだ。
けれども、ディランはそれでも諦めずにティルミオを説得したのだった。
「冒険者だって、十分危険な仕事じゃ無いか?」
「う……それは、そうだけど……」
ど正論な反撃に、ティルミオは思わず言葉に詰まってしまった。
するとディランは、ティルミオが反論しないのを良い事に、更に畳み掛けて、ティルミオの説得を続けた。
「同じ危険な仕事でも、国所属になれば、毎月安定して給金が貰えるぞ。冒険者だと稼ぎが安定しないだろ?君は借金があると聞くし、悪い話じゃ無いだろう?」
「確かにそうだけど……」
積み重ねられる正論に、ティルミオは返す言葉に困ってしまった。
確かに、ディランが言っていることはその通りだとは思うのだ。
けれどもティルミオは、そんな理屈では無く、それでも今の冒険者家業を辞めたく無かったのだった。
「でも、冒険者にはロマンがある!ほら、今回みたいにレアな魔物素材で一攫千金だってあるし!」
これが、ティルミオが冒険者を続ける一番の理由であった。莫大な借金がある以上、一攫千金を諦められなかったのだ。
観察眼と武具錬金という稀有なスキルを手に入れたからこそ、その可能性を諦めたく無かったのだ。
だからティルミオは、冒険者を辞めたくないと反論したのだが、その反論の途中で、急に大切な事を思い出して、切迫した声でディランにある事を確認したのだった。
「あ……そうだ、俺の無実が証明されたから、あの宝玉って換金してもらえるよな?!」
それはとても重要なことだった。これでもし、あの宝玉は没収されたままであったら、溜まったもんじゃないのだ。
するとディランは、少しだけ困った様な顔をしたが、それでもティルミオの質問に、彼が望んでる答えを返したのだった。
「まぁ、管轄外なんで確実な事は言えないが、恐らくはそうだろうな。」
「良かった!!」
それを聞いてティルミオは、心の底から安堵して、その場で仰向けに寝転がったまま目を閉じて胸を撫で下ろした。
(あぁ、良かった……これで税金の支払いはなんとかなりそうだ……)
心配事が片付いて、ティルミオはすっかり安心した表情で地面に寝転がっていたのだが、しかしそんなティルミオの顔を、ディランは顰めっ面で覗き込んだのだった。
「……ところで、君はいつまでそうしてるんだ?」
「ん……?」
「とっとと立ってくれよ。早く帰るぞ。」
ディランはティルミオがただ怠けて地面に寝転がってると思っていたのだ。
だから彼は、早く街に帰りたくて、ティルミオに立ち上がる様に促したのだが、けれども、それは無理な話であった。
「えっ、いや……無理……魔力切れで動けない……」
そう、ティルミオは魔力を使い切ってしまって、未だ全く動けないのだ。
「……」
「……」
二人は顔を見合ったまま、お互いに押し黙った。
「……そういうのいいから……」
「いや、だから本当に動けないんだって!俺、魔力量少ないから、あの魔法一回で魔力切れを起こすんだよ!」
すると、ようやくディランもこれがティルミオがふざけている訳ではなく、本当に動けないのだと察した。
「……前言撤回。君程度では、国の役に立ちませんね。」
「……そりゃどーも……」
こうして、ティルミオへの魔導士登録のお誘いは、僅か数分で撤回されたのだった。
10
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
収納持ちのコレクターは、仲間と幸せに暮らしたい。~スキルがなくて追放された自称「か弱い女の子」の元辺境伯令嬢。実は無自覚チートで世界最強⁉~
SHEILA
ファンタジー
生まれた時から、両親に嫌われていた。
物心ついた時には、毎日両親から暴力を受けていた。
4年後に生まれた妹は、生まれた時から、両親に可愛がられた。
そして、物心ついた妹からも、虐めや暴力を受けるようになった。
現代日本では考えられないような環境で育った私は、ある日妹に殺され、<選択の間>に呼ばれた。
異世界の創造神に、地球の輪廻の輪に戻るか異世界に転生するかを選べると言われ、迷わず転生することを選んだ。
けれど、転生先でも両親に愛されることはなくて……
お読みいただきありがとうございます。
のんびり不定期更新です。
異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです
かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。
そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。
とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする?
パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。
そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。
目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。
とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
女神様にスキルを貰って自由に生きていいよと異世界転生させてもらった……けれども、まわりが放っておいてくれません
剣伎 竜星
ファンタジー
不幸が重なって失職した契約社員だった俺はトラックに轢き殺されそうになった子供の身代わりとなって死んでしまった……らしい。助けた子供が実は世界管理のための視察に来ていた異世界の女神様。俺の死は神様にとって予定外の死亡であったため、俺は地球世界の輪廻から外れてしまい、地球世界に転生できなくなってしまったとか。しかし、女神様の暗殺を防いだ俺はファンタジーRPGじみた剣と魔法とスキルのある彼女が管理している異世界に転生することになった。女神様から8つのスキルを貰って、俺は転生した。それから、17年。いろいろあったけれども俺は王立学園を卒業して、王立魔術大学に進学。卒業資格を得てから、腐れ縁に引きずられる形で王宮魔術師の試験を受けたのだが……。
現在、ストック切れるまで毎日12時更新予定です。
神々の娯楽に巻き込まれて強制異世界転生ー1番長生きした人にご褒美有ります
ぐるぐる
ファンタジー
□お休みします□
すみません…風邪ひきました…
無理です…
お休みさせてください…
異世界大好きおばあちゃん。
死んだらテンプレ神様の部屋で、神々の娯楽に付き合えと巻き込まれて、強制的に異世界転生させられちゃったお話です。
すぐに死ぬのはつまらないから、転生後の能力について希望を叶えてやろう、よく考えろ、と言われて願い事3つ考えたよ。
転生者は全部で10人。
異世界はまた作れるから好きにして良い、滅ぼしても良い、1番長生きした人にご褒美を考えてる、とにかく退屈している神々を楽しませてくれ。
神々の楽しいことってなんぞやと思いながら不本意にも異世界転生ゴー!
※採取品についての情報は好き勝手にアレンジしてます。
実在するものをちょっと変えてるだけです。
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる