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32. 冒険者のルール
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「……そうか、お前たち苦労してるんだな……」
ティルミオから事情を聞いたジェラミーは、先程までとは打って変わって彼を憐れむような目で見て同情を寄せていた。
「まぁ、まだ始まったばかりだから。苦労するのはこれからだと思うよ。」
「なるほど。だからあの娘も病弱なのに無理してお店に立ってるのか……」
「えっ……あぁ、うん……そうだね。」
ティルミオは、ジェラミーがティティルナの事を病弱だと完全に思い込んでいることに少々戸惑いを覚えたのだが、しかし、錬金術の事は言えなかったので、その事については特に訂正をしないまま、曖昧に頷いた。
すると、そんなティルミオの様子に気づくことなく、ジェラミーはうんうんと頷きながら腕を組み何かを勝手に納得すると、今度はティルミオに向かってこう提案をしたのだった。
「よし!お前の覚悟は良く分かった。そう言うことならオレも出来る限り協力してやるよ!」
「えっ?それってどういう事?」
いきなりそんな事を言われても、ティルミオには全く意味が分からなかった。するとジェラミーはそんなティルミオに対してビシッと人差し指を突き付けて宣言したのだった。
「だから!オレが冒険者としてのルールをお前に教えてやるよ!」
どうやら彼は、情が厚くこう言った話に弱いみたいで、可哀想なカーステン兄妹の境遇を聞いて、何か力になってあげなければと、心の底から思ったのだ。
「お、おぉ。有難う……よろしく頼むよ。」
そんな彼の急な変化にティルミオは若干ついて行けてなかったが、それでも右も左も分からない冒険者初心者にとっては、ジェラミーここの申し出は大変有り難かったので素直にお願いすることにしたのだった。
「いいか、先ずギルドに来る時間なんだけど、毎日朝と昼に依頼が張り出されるんだ。割りの良い仕事を探したかったら、この時間に合わせてギルドに来るんだな。」
「何時が良いんだ?」
「朝は8時、昼は13時だな。あと、それとは別にごく稀に緊急クエストなんてのもあるけど、まぁ、それは今のお前には関係ないか。」
「緊急クエストって?」
「文字通り、一刻を争う緊急の依頼ってことだな。例えば、凶暴な魔物の群れが現れたから、冒険者が集結してそれを退治しないといけないとかだと、時間関係なく募集がかかる。」
「なるほど……確かに俺には関係なさそうだな。」
ジェラミーは先ず手始めに、冒険者同士の基本的なルールからティルミオに分かりやすく説明していた。
「次に掲示板を見るときのルールなんだけど……」
「えっ?!そんなのにもルールがあるのか?!」
「ルールって言うか、上下関係が厳しいんだ。ランクが上の冒険者が掲示板を見ていたら、下のランクは邪魔をしてはいけないんだよ。」
「上のランクの人から、依頼が選べるってことか?」
「そう言うことだな。」
その説明に、ティルミオはなんだか腑に落ちなかった。
「そんな!それじゃあランクの低い俺なんかが見る頃には、やれる仕事が残ってないじゃないのか?」
そうなのだ。ティルミオは、もし本当にジェラミーが言うようにランクが高い冒険者たちから依頼を決めていったら、自分の出来る仕事まで取られてしまうと思ったのだ。
けれども、そんな彼の憂鬱は直ぐにジェラミーが否定した。
「そんなことないぞ。高ランク者は低ランクの仕事なんて滅多にやらないからな。稼ぎが全然違う。だから採取とか採掘とかの依頼は割と残ってるぞ。」
「そ、そうなのか、……良かった。」
それを聞いてティルミオはひとまずは安堵していた。
折角冒険者になったのに、暗黙のルールって奴の所為でやれる依頼が一つもなかったら意味がないのだが、どうやらその心配は無さそうだと分かって安心したのだ。
けれども、その後のジェラミーの言葉で、彼はまた直ぐに不安になったのだった。
「まぁ、でもそうやって住み分けてても高ランクの奴に絡まれる事はあるから気を付けろよ。」
「……えっ!絡んで来るのか?!」
ティルミオが驚いてそう尋ねると、ジェラミーは当たり前の事を諭すように説明を始めた。
「あのなぁ。冒険者ってのは基本実力社会なんだし、しかもここは王国内で一番大きな街だぞ?自分より弱そうな奴がいたら、難癖をつける奴は多いし舐めた態度をとって来るやつはどこにでも居るんだ。冒険者ってのはどんな奴でもなれるからかな。」
「そういうものなのか……」
ティルミオは、ジェラミーからの言葉に自分が想像していた冒険者像よりも現実の冒険者社会は厳しい所なのだと思い知らされていた。
だから、これから先のことを思うと少し不安になってしまったのだが、しかしジェラミーが、そんな怖気付いてるティルミオの様子に気付いて、彼の背中をバンと叩いて元気付けたのだった。
「と、まぁとりあえず必要最低限の暗黙のルールって奴はこんな所なんだけど、そんなに難しく考えるなよ。普通にしてる分にはトラブルなんて滅多に起こらないから。ただ、冒険者っていうのは一見バラバラに仕事をしていて他人に無関心のように見えるけど、冒険者同士の横の繋がりって馬鹿にならないんだ。何かいざこざを起こしたら、直ぐに居場所が無くなるから、そこは十分気をつけるんだぞ。」
「なるほどな……ありがとうジェラミー。色々と教えてくれて助かるよ!」
「まぁ、このくらいは先輩冒険者として当然さ!何か困った事があったらいつでも相談にのってやるよ!」
そう言って、ジェラミーはティルミオに向かって満面の笑顔で親指を立てて見せた。その姿は、ティルミオにとって本当に頼れる先輩といった感じでとても頼もしいと思った。
それと同時にティルミオは、昨日ジェラミーを無銭飲食だと疑ってしまったことを、こっそり反省したのだった。
ティルミオから事情を聞いたジェラミーは、先程までとは打って変わって彼を憐れむような目で見て同情を寄せていた。
「まぁ、まだ始まったばかりだから。苦労するのはこれからだと思うよ。」
「なるほど。だからあの娘も病弱なのに無理してお店に立ってるのか……」
「えっ……あぁ、うん……そうだね。」
ティルミオは、ジェラミーがティティルナの事を病弱だと完全に思い込んでいることに少々戸惑いを覚えたのだが、しかし、錬金術の事は言えなかったので、その事については特に訂正をしないまま、曖昧に頷いた。
すると、そんなティルミオの様子に気づくことなく、ジェラミーはうんうんと頷きながら腕を組み何かを勝手に納得すると、今度はティルミオに向かってこう提案をしたのだった。
「よし!お前の覚悟は良く分かった。そう言うことならオレも出来る限り協力してやるよ!」
「えっ?それってどういう事?」
いきなりそんな事を言われても、ティルミオには全く意味が分からなかった。するとジェラミーはそんなティルミオに対してビシッと人差し指を突き付けて宣言したのだった。
「だから!オレが冒険者としてのルールをお前に教えてやるよ!」
どうやら彼は、情が厚くこう言った話に弱いみたいで、可哀想なカーステン兄妹の境遇を聞いて、何か力になってあげなければと、心の底から思ったのだ。
「お、おぉ。有難う……よろしく頼むよ。」
そんな彼の急な変化にティルミオは若干ついて行けてなかったが、それでも右も左も分からない冒険者初心者にとっては、ジェラミーここの申し出は大変有り難かったので素直にお願いすることにしたのだった。
「いいか、先ずギルドに来る時間なんだけど、毎日朝と昼に依頼が張り出されるんだ。割りの良い仕事を探したかったら、この時間に合わせてギルドに来るんだな。」
「何時が良いんだ?」
「朝は8時、昼は13時だな。あと、それとは別にごく稀に緊急クエストなんてのもあるけど、まぁ、それは今のお前には関係ないか。」
「緊急クエストって?」
「文字通り、一刻を争う緊急の依頼ってことだな。例えば、凶暴な魔物の群れが現れたから、冒険者が集結してそれを退治しないといけないとかだと、時間関係なく募集がかかる。」
「なるほど……確かに俺には関係なさそうだな。」
ジェラミーは先ず手始めに、冒険者同士の基本的なルールからティルミオに分かりやすく説明していた。
「次に掲示板を見るときのルールなんだけど……」
「えっ?!そんなのにもルールがあるのか?!」
「ルールって言うか、上下関係が厳しいんだ。ランクが上の冒険者が掲示板を見ていたら、下のランクは邪魔をしてはいけないんだよ。」
「上のランクの人から、依頼が選べるってことか?」
「そう言うことだな。」
その説明に、ティルミオはなんだか腑に落ちなかった。
「そんな!それじゃあランクの低い俺なんかが見る頃には、やれる仕事が残ってないじゃないのか?」
そうなのだ。ティルミオは、もし本当にジェラミーが言うようにランクが高い冒険者たちから依頼を決めていったら、自分の出来る仕事まで取られてしまうと思ったのだ。
けれども、そんな彼の憂鬱は直ぐにジェラミーが否定した。
「そんなことないぞ。高ランク者は低ランクの仕事なんて滅多にやらないからな。稼ぎが全然違う。だから採取とか採掘とかの依頼は割と残ってるぞ。」
「そ、そうなのか、……良かった。」
それを聞いてティルミオはひとまずは安堵していた。
折角冒険者になったのに、暗黙のルールって奴の所為でやれる依頼が一つもなかったら意味がないのだが、どうやらその心配は無さそうだと分かって安心したのだ。
けれども、その後のジェラミーの言葉で、彼はまた直ぐに不安になったのだった。
「まぁ、でもそうやって住み分けてても高ランクの奴に絡まれる事はあるから気を付けろよ。」
「……えっ!絡んで来るのか?!」
ティルミオが驚いてそう尋ねると、ジェラミーは当たり前の事を諭すように説明を始めた。
「あのなぁ。冒険者ってのは基本実力社会なんだし、しかもここは王国内で一番大きな街だぞ?自分より弱そうな奴がいたら、難癖をつける奴は多いし舐めた態度をとって来るやつはどこにでも居るんだ。冒険者ってのはどんな奴でもなれるからかな。」
「そういうものなのか……」
ティルミオは、ジェラミーからの言葉に自分が想像していた冒険者像よりも現実の冒険者社会は厳しい所なのだと思い知らされていた。
だから、これから先のことを思うと少し不安になってしまったのだが、しかしジェラミーが、そんな怖気付いてるティルミオの様子に気付いて、彼の背中をバンと叩いて元気付けたのだった。
「と、まぁとりあえず必要最低限の暗黙のルールって奴はこんな所なんだけど、そんなに難しく考えるなよ。普通にしてる分にはトラブルなんて滅多に起こらないから。ただ、冒険者っていうのは一見バラバラに仕事をしていて他人に無関心のように見えるけど、冒険者同士の横の繋がりって馬鹿にならないんだ。何かいざこざを起こしたら、直ぐに居場所が無くなるから、そこは十分気をつけるんだぞ。」
「なるほどな……ありがとうジェラミー。色々と教えてくれて助かるよ!」
「まぁ、このくらいは先輩冒険者として当然さ!何か困った事があったらいつでも相談にのってやるよ!」
そう言って、ジェラミーはティルミオに向かって満面の笑顔で親指を立てて見せた。その姿は、ティルミオにとって本当に頼れる先輩といった感じでとても頼もしいと思った。
それと同時にティルミオは、昨日ジェラミーを無銭飲食だと疑ってしまったことを、こっそり反省したのだった。
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