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28. 不満爆発
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「お兄ちゃんと仲が悪い」ティティルナは、元気よくそう言って勢いでティルミオがパン作りをしない本当の理由を誤魔化そうとしたが、しかし、フィオンはそんなことでは誤魔化されなかった。
「えっ……君たち仲凄く良かっただろ……?」
今までのカーステン兄妹の仲の良さを知っているフィオンからしてみたら、ティティルナの言っている事は信じられないのだ。
だからフィオンはカーステン兄妹を物凄く困惑した顔で眺めていたが、しかし他に良い言い訳も思い付かないので、ティルミオも妹の言葉に乗っかって、ゴリ押す事にしたのだった。
「急に仲悪くなったんだよ。……そう、昨日から。」
「そうそう。だからお兄ちゃんと一緒にパン作りたくないのよ。嫌いだから。」
「そうそう。急に急激に一緒に働きたくないって思ったんだよ。昨日から。」
そう話す様子がとても息がぴったりで、到底仲が悪いようには見えないなと、フィオンは二人の言い訳の酷さに相変わらず困惑していたが、しかし、次第に二人の様子が変わってきたのだ。
「そうなのよ。お兄ちゃんは、朝なかなか起きてくれないくせに寝坊すると”何でもって強く起こしてくれなかったのか”ってこっちのせいにする所が本当に嫌なのよね。」
「えっ……?!」
具体的に兄の嫌なところを挙げ出したティティルナに、ティルミオは思わず驚きの声を上げて妹を見遣った。
コレはあくまでフィオンの追求を誤魔化すための喧嘩をしているフリだった筈なのに、いつのまにかティティルナは本当にティルミオに対しての不満を口に出していたのだ。
予想外の出来事にティルミオは狼狽えたが、しかし、ティティルナの不満は止まらなかった。
「それから、洗濯終わったと思ったら、これ出すの忘れてたって追加で平気で洗い物出してくるでしょう?アレもすごい嫌なのよね。他にも物は出しっぱなしにするし、飲みかけのコップとか平気でそのまま置いておくし……」
ティティルナの口からつらつらと出てくる兄の嫌な所を連ねる文句の言葉は、放っておいたらいつまででも出てきそうだった。
どうしてこうなってしまったのか。それが分からずにティルミオは困惑したままだったが、しかしこのままでは話が変な方向に行ってしまうので、彼は慌てて妹を止めにかかった。
「な、なぁティナ?」
「うん?何?」
「……お前それ、今言うことか?」
そうなのだ。今はあくまでフィオンからの追求を誤魔化さないといけないのだ。だからティルミオは今は兄妹で本気で言い争ってる場合では無いと妹に気づいて欲しかったのだが、けれどもティティルナは、ニッコリと笑うとキッパリと彼の期待を裏切る言葉を口にしたのだった。
「うん。良い機会だからね。」
ティティルナは兄の意図を分かった上で、敢えて無視をした。
そして彼女は、この際だからと今まで兄に溜め込んでいた小さな不満を全部口に出す勢いで言葉を続けたのだった。
「だいたいお兄ちゃんはずるいのよ。今日だってミッケと遊んでてお店の準備全然手を動かしてなかったじゃない。」
「あれは、ミッケが……」
邪魔をしたから仕方がなかった。そう言おうとしたティルミオの言葉は、予期せぬ人からの発言で遮られてしまった。
「まぁ、猫を言い訳に使だなんて、見苦しいですわね。年長者なのですから申し開きなどせずに、ティナの不平を甘んじて受け入れるべきですわ!」
何故かフィオネが参戦してきたのだ。
「それにさ、お兄ちゃん冒険者になるのだって一人で勝手に決めちゃうし……」
「まぁ!大事な事を妹と相談しないで決めるだなんて、なんて傲慢なのかしら!」
「借金の事も具体的には教えてくれないで秘密にするし……」
「まぁ!家族の間で隠し事は良く無いですわ!ティナが可哀想ですわ!!」
いつのまにか二対一の構図で、ティルミオは一方的に責め立てられていた。
本当に、どうしてこうなったのか分からずにティルミオは頭を抱えた。
ティティルナに責められるのはまだ分かる。彼女は小さな不満が積もりに積もっていたのだろう。それは自分に非がある事なので仕方がない事だと受け入れられる。
けれども何故フィオネにまで罵られなければいけないのか。そこが納得できずにティルミオは声を上げようとしたが、しかし、彼が何か口を挟もうとするのを許さないくらい、妹たちは止まらなかった。
「それにお兄ちゃんはねぇ……」
「ティオはティナの事を大事にしなさすぎですわ!!」
そしてティルミオが一言も反論できないまま二人は更にヒートアップしていって、いよいよどうにも出来なくなっていた。
こうなるともう止められない。ティルミオが心底困り果てて居たら、すると、今まで黙って成り行きを見守って居たフィオンが妹たちを止めるべく声を上げたのだった。
「うん、フィオネはちょっと黙ってようか。ややこしくなるから。」
混沌としてしまったこの状況に頭が痛くなったのはティルミオだけでは無かった。フィオンも同様にこの状況に頭を抱えて居たのだ。
「えっ……君たち仲凄く良かっただろ……?」
今までのカーステン兄妹の仲の良さを知っているフィオンからしてみたら、ティティルナの言っている事は信じられないのだ。
だからフィオンはカーステン兄妹を物凄く困惑した顔で眺めていたが、しかし他に良い言い訳も思い付かないので、ティルミオも妹の言葉に乗っかって、ゴリ押す事にしたのだった。
「急に仲悪くなったんだよ。……そう、昨日から。」
「そうそう。だからお兄ちゃんと一緒にパン作りたくないのよ。嫌いだから。」
「そうそう。急に急激に一緒に働きたくないって思ったんだよ。昨日から。」
そう話す様子がとても息がぴったりで、到底仲が悪いようには見えないなと、フィオンは二人の言い訳の酷さに相変わらず困惑していたが、しかし、次第に二人の様子が変わってきたのだ。
「そうなのよ。お兄ちゃんは、朝なかなか起きてくれないくせに寝坊すると”何でもって強く起こしてくれなかったのか”ってこっちのせいにする所が本当に嫌なのよね。」
「えっ……?!」
具体的に兄の嫌なところを挙げ出したティティルナに、ティルミオは思わず驚きの声を上げて妹を見遣った。
コレはあくまでフィオンの追求を誤魔化すための喧嘩をしているフリだった筈なのに、いつのまにかティティルナは本当にティルミオに対しての不満を口に出していたのだ。
予想外の出来事にティルミオは狼狽えたが、しかし、ティティルナの不満は止まらなかった。
「それから、洗濯終わったと思ったら、これ出すの忘れてたって追加で平気で洗い物出してくるでしょう?アレもすごい嫌なのよね。他にも物は出しっぱなしにするし、飲みかけのコップとか平気でそのまま置いておくし……」
ティティルナの口からつらつらと出てくる兄の嫌な所を連ねる文句の言葉は、放っておいたらいつまででも出てきそうだった。
どうしてこうなってしまったのか。それが分からずにティルミオは困惑したままだったが、しかしこのままでは話が変な方向に行ってしまうので、彼は慌てて妹を止めにかかった。
「な、なぁティナ?」
「うん?何?」
「……お前それ、今言うことか?」
そうなのだ。今はあくまでフィオンからの追求を誤魔化さないといけないのだ。だからティルミオは今は兄妹で本気で言い争ってる場合では無いと妹に気づいて欲しかったのだが、けれどもティティルナは、ニッコリと笑うとキッパリと彼の期待を裏切る言葉を口にしたのだった。
「うん。良い機会だからね。」
ティティルナは兄の意図を分かった上で、敢えて無視をした。
そして彼女は、この際だからと今まで兄に溜め込んでいた小さな不満を全部口に出す勢いで言葉を続けたのだった。
「だいたいお兄ちゃんはずるいのよ。今日だってミッケと遊んでてお店の準備全然手を動かしてなかったじゃない。」
「あれは、ミッケが……」
邪魔をしたから仕方がなかった。そう言おうとしたティルミオの言葉は、予期せぬ人からの発言で遮られてしまった。
「まぁ、猫を言い訳に使だなんて、見苦しいですわね。年長者なのですから申し開きなどせずに、ティナの不平を甘んじて受け入れるべきですわ!」
何故かフィオネが参戦してきたのだ。
「それにさ、お兄ちゃん冒険者になるのだって一人で勝手に決めちゃうし……」
「まぁ!大事な事を妹と相談しないで決めるだなんて、なんて傲慢なのかしら!」
「借金の事も具体的には教えてくれないで秘密にするし……」
「まぁ!家族の間で隠し事は良く無いですわ!ティナが可哀想ですわ!!」
いつのまにか二対一の構図で、ティルミオは一方的に責め立てられていた。
本当に、どうしてこうなったのか分からずにティルミオは頭を抱えた。
ティティルナに責められるのはまだ分かる。彼女は小さな不満が積もりに積もっていたのだろう。それは自分に非がある事なので仕方がない事だと受け入れられる。
けれども何故フィオネにまで罵られなければいけないのか。そこが納得できずにティルミオは声を上げようとしたが、しかし、彼が何か口を挟もうとするのを許さないくらい、妹たちは止まらなかった。
「それにお兄ちゃんはねぇ……」
「ティオはティナの事を大事にしなさすぎですわ!!」
そしてティルミオが一言も反論できないまま二人は更にヒートアップしていって、いよいよどうにも出来なくなっていた。
こうなるともう止められない。ティルミオが心底困り果てて居たら、すると、今まで黙って成り行きを見守って居たフィオンが妹たちを止めるべく声を上げたのだった。
「うん、フィオネはちょっと黙ってようか。ややこしくなるから。」
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