31 / 109
閑話. アルバート、世話を焼く
しおりを挟む
##[令嬢、決意する1 ]の直前のアルバート側の話です。短いです。
———
今日も、サロンで何かに取り憑かれた様に机に向かって一心不乱にペンを走らせている妹の姿を見つけて、アルバートは深い溜息を吐いていた。
妹のアイリーシャは、真面目で、実直で、そしてとても素直な性格である。
それがあの子の良い所でもあり、彼女の魅力の一つだが、その性格が、どうして恋愛方面だとこうもポンコツに作用するのかと、兄であるアルバートは内心呆れていたのだ。
お前のやるべき事は、そうじゃ無いだろうと。
この妹は、どうやったら本当に今自分がやるべき事に気付くのか。
そんな風に自室で人知れず頭を抱えていたアルバートの元へ、買い物に行かせていた従者のヨリクが帰ってきたのだった。
「アルバート様、ただいま戻りました。」
「ヨリク、ご苦労だったね。して、品物は?」
「はい、こちらでございます。」
そう言って、従者のヨリクはアルバートに頼まれていた物を渡した。
彼が従者に買いに行かせていたのは、いくつかのタイと、ハンカチーフであった。
「うーん……。ハンカチーフはこの前贈っていたからな。ここはやはりタイだな。」
そう言ってアルバートは、いくつかあるタイを一つづつ手に取って確かめ始めた。買ってきて貰ったタイトさは。どれも上等な品で、肌触りが良く、縫製がしっかりしていた。
「うん。これなら贈り物としても申し分ないだろう。」
それからアルバートは、複数あるタイの中から一つのタイを選んだ。真っ白いタイだ。
「リーシャがモチーフを刺すのに何色を使うかまでは予測できないけれども、まぁ、ここは無難に白だよな。それにこのデザインなら、僕が持っていても不自然ではないし。」
そう言ってアルバートは残りのタイとハンカチーフを片付けさせると、「さてと」と小さく呟いて徐に立ち上がった。
これから、サロンで今日も執筆をしている妹に会いにいくつもりだ。
アルバートは、打算こそあれど兄として妹の幸せを本当に願っていたのだ。
だからこそ、手助けをしてやるつもりだった。
あのどこか抜けている所がある妹なのだ。これくらい分かりやすくアシストしてやらないと、いつまで経っても進展しないだろう。
そう思って、買ってきて貰った新品のタイを隠し持ちながら、サロンに居る妹の元へと向かったのだった。
———
今日も、サロンで何かに取り憑かれた様に机に向かって一心不乱にペンを走らせている妹の姿を見つけて、アルバートは深い溜息を吐いていた。
妹のアイリーシャは、真面目で、実直で、そしてとても素直な性格である。
それがあの子の良い所でもあり、彼女の魅力の一つだが、その性格が、どうして恋愛方面だとこうもポンコツに作用するのかと、兄であるアルバートは内心呆れていたのだ。
お前のやるべき事は、そうじゃ無いだろうと。
この妹は、どうやったら本当に今自分がやるべき事に気付くのか。
そんな風に自室で人知れず頭を抱えていたアルバートの元へ、買い物に行かせていた従者のヨリクが帰ってきたのだった。
「アルバート様、ただいま戻りました。」
「ヨリク、ご苦労だったね。して、品物は?」
「はい、こちらでございます。」
そう言って、従者のヨリクはアルバートに頼まれていた物を渡した。
彼が従者に買いに行かせていたのは、いくつかのタイと、ハンカチーフであった。
「うーん……。ハンカチーフはこの前贈っていたからな。ここはやはりタイだな。」
そう言ってアルバートは、いくつかあるタイを一つづつ手に取って確かめ始めた。買ってきて貰ったタイトさは。どれも上等な品で、肌触りが良く、縫製がしっかりしていた。
「うん。これなら贈り物としても申し分ないだろう。」
それからアルバートは、複数あるタイの中から一つのタイを選んだ。真っ白いタイだ。
「リーシャがモチーフを刺すのに何色を使うかまでは予測できないけれども、まぁ、ここは無難に白だよな。それにこのデザインなら、僕が持っていても不自然ではないし。」
そう言ってアルバートは残りのタイとハンカチーフを片付けさせると、「さてと」と小さく呟いて徐に立ち上がった。
これから、サロンで今日も執筆をしている妹に会いにいくつもりだ。
アルバートは、打算こそあれど兄として妹の幸せを本当に願っていたのだ。
だからこそ、手助けをしてやるつもりだった。
あのどこか抜けている所がある妹なのだ。これくらい分かりやすくアシストしてやらないと、いつまで経っても進展しないだろう。
そう思って、買ってきて貰った新品のタイを隠し持ちながら、サロンに居る妹の元へと向かったのだった。
1
お気に入りに追加
1,438
あなたにおすすめの小説
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
お飾り王妃の受難〜陛下からの溺愛?!ちょっと意味がわからないのですが〜
湊未来
恋愛
王に見捨てられた王妃。それが、貴族社会の認識だった。
二脚並べられた玉座に座る王と王妃は、微笑み合う事も、会話を交わす事もなければ、目を合わす事すらしない。そんな二人の様子に王妃ティアナは、いつしか『お飾り王妃』と呼ばれるようになっていた。
そんな中、暗躍する貴族達。彼らの行動は徐々にエスカレートして行き、王妃が参加する夜会であろうとお構いなしに娘を王に、けしかける。
王の周りに沢山の美しい蝶が群がる様子を見つめ、ティアナは考えていた。
『よっしゃ‼︎ お飾り王妃なら、何したって良いわよね。だって、私の存在は空気みたいなものだから………』
1年後……
王宮で働く侍女達の間で囁かれるある噂。
『王妃の間には恋のキューピッドがいる』
王妃付き侍女の間に届けられる大量の手紙を前に侍女頭は頭を抱えていた。
「ティアナ様!この手紙の山どうするんですか⁈ 流石に、さばききれませんよ‼︎」
「まぁまぁ。そんなに怒らないの。皆様、色々とお悩みがあるようだし、昔も今も恋愛事は有益な情報を得る糧よ。あと、ここでは王妃ティアナではなく新人侍女ティナでしょ」
……あら?
この筆跡、陛下のものではなくって?
まさかね……
一通の手紙から始まる恋物語。いや、違う……
お飾り王妃による無自覚プチざまぁが始まる。
愛しい王妃を前にすると無口になってしまう王と、お飾り王妃と勘違いしたティアナのすれ違いラブコメディ&ミステリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる