11 / 109
11. 令嬢、慰められる4
しおりを挟む
「お前宛にね、何通か手紙が届いてるんだよ。読むかい?」
そう言って、アルバートは懐から三通の封書を取り出した。
「私に届いた手紙ならば読むのは当たり前でしょう?一体どなたからですか?」
アイリーシャは兄の不思議な言い回し方を怪訝に思ったが、その事には深く触れず、アルバートが手に持つ三通の封書に目をやった。
「ここにあるのは、
ロアンダ侯爵家のショーン様
ユベール侯爵家のアルヴァン様
エイモズ侯爵家のギュスターヴ様
以上3名からの手紙だ。」
「……誰ですの……?」
兄の口から出たのは、全く存じ上げない方の名前だったのだ。
いや、名前位は聞いたことがあるものの、面識が全くないというのが正しい。そのような殿方からの手紙にアイリーシャは困惑した。
見て取れるほど困惑している妹を前にしても、アルバートは構わずに続けた。
「余りにも届く手紙が多いのでね、こちらで少し選別させてもらったよ。だからとりあえずはこの3通。まぁ、読んでみたら分かるよ。」
そう言ってアルバートは妹に持っていた手紙を手渡した。
そして、兄に促されてアイリーシャは3通の手紙に目を通してみたのだが、その手紙は3通とも似たり寄ったりな文面で、要約すると
夜会で見かけたアイリーシャの容姿に惹かれた。
お近付きになりたかったが王太子殿下の婚約者候補ということで、近寄れなかった。
婚約者候補ではなくなったアイリーシャと交流が持ちたい。
このような事が三者三様の言葉で綴られていたのだった。
「お兄様、私頭が痛くなってまいりました……」
見知らぬ方からのアプローチに、戸惑うしかなかった。自身の想像の範疇になかった事態に、アイリーシャは軽く目眩さえ覚えた。
「これからもっと、こういうのが届くと思うよ。」
兄は真顔で告げる。
「いいかいリーシャ。お前は余り分かってないようだけども、公爵家に所縁のある王太子の婚約者候補だった侯爵令嬢っていうのはね、非常に政治的価値が高いんだよ。」
だから、お前とお近づきになりたいと思ってる男が、必死にお前の興味を惹こうとあれやこれやと仕掛けてくるのだと兄が教えてくれた。
「そのようなものなのでしょうか?それに、お兄様のおっしゃる通りならば、私自身というより、皆様私の肩書きに魅力を感じているみたいだわ。」
(お前は見目麗しいから、お前自身…お前の外見に惚れている男性は結構居るけどね。)
アルバートはあえて、そこは言わないでいた。
「貴族の婚姻なんて、大なり小なり思惑があるものだよ。ただ兄としては可愛い妹には幸せになって欲しいから、良くない噂がある奴は選別してるよ。リーシャ、君は今選べる立場なんだから、少しでも好きになれそうな人を選ぶと良いよ。」
貴族の家の娘に生まれたからには、自身が自由に婚姻できるとは思っていなかった。家と家との結びつきが重要視される貴族の婚姻で、アイリーシャもいずれはどこか家柄の良い公子に嫁ぐだろうことは分かっていた。
しかし、王太子殿下の婚約者候補から外れてわずか数日で、面識のない殿方からの沢山のお誘いが届くこの環境の変化には戸惑うしかなかった。
「この中から選ばなければいけないのでしょうか?」
事態について行けず、アイリーシャはおそるおそる兄に尋ねると、アルバートは実に呆気なくそれを否定したのだった。
「いいや、全然。」
平然と兄がそう即答したので、アイリーシャはいささか拍子抜けして、そして安堵した。
「リーシャが気乗りしないなら断っても良いよ。この手の話はこれからどんどん届くだろうしね、今回リーシャが気にいる人がいなくても、また次があるからね。」
兄がそう言ってくれて、アイリーシャはホッとした。正直、急な展開について行けないでいたからだ。
「それでしたら、今回は全てお断りさせてください。」
そう言って目の前の妹が頭を下げたので、アルバートは彼女に渡した三通の封書を引き取った。
「承知したよ。それならば今回は全てこちらで断っておくよ。」
妹を安心させる為に、彼は柔かに微笑みかけた。
(まぁ、こちらは初めから断るだろうなと思ってたからね。本題はこれからだよ。)
表情を1ミリも変えずアルバート優しく微笑んでいたのでアイリーシャは全く気付いていなかったが、彼は目論見通りに次の本題へと事を進めていたのだ。
「それより、これとは別件で僕はもう1通お前に手紙を持ってきたよ。メイフィール家のミハイル様からだ。」
そう言って、アルバートは一通の封筒を取り出して、アイリーシャに手渡した。
「こっちはなんと花束付きだよ。」
そう言うと、アルバートは自分の従者を呼んだ。すると、ドアの外に待機させていたアルバートの従者ヨリクが花束を持って現れて、その手に持つ薔薇のミニブーケをアイリーシャに手渡したのだった。
「まぁ、ミハイル様が私にこれを?!」
色鮮やかな深紅の薔薇の可愛らしいミニブーケにアイリーシャは目を見張った。それから、兄から渡された手紙に目を通す。
~~~
アイリーシャ・マイヨール様
その後、お加減は如何でしょうか?
お贈りした薔薇は、我が家の庭に今咲いているものです。
見事に咲き誇っている我が家の薔薇を一度見にいらっしゃいませんか。
優美な我が家の薔薇園をみれば、貴女の心の慰めになるかと思います。
ミハイル・メイフィール
~~~
「まぁ、ミハイル様がここまで私を気遣ってくださるなんて、思いもよらなかったわ。本当に律儀な方ですわね。」
手紙を読み終えて、アイリーシャはただただミハイルの人となりを感心した。
そのような妹の様子をアルバートは残念そうに見つめた。
(違う、そうじゃない。)
そう思ってはいたが、彼は心の中を声には出さずに、別の言葉を紡いだ。
「確か、メイフィール家の薔薇園は華やかで美しく、我が国の中でも一二を争う庭園だと評判だからね。そうそう見れる機会なんてないし、良いお誘いじゃないか。」
「えぇ。丁度良かったですわ、もう直ぐこの刺繍が出来上がるのですが、どのようにお渡ししようかと迷っていましたの。ですが、お家にご招待されたのならば直接お礼が渡せますわね。」
ミハイルからの誘いに、前向きなアイリーシャを見て、アルバートは内心ほくそ笑んだ。
「そうか。じゃあミハイル様にはお前が返事を書くんだぞ。その他のお断りの文は僕が引き受けてあげるよ。」
「有難うございますお兄様。」
面倒な事は兄が引き受けてくれたので、アイリーシャは気が楽になり、腕の中にある薔薇の花を再び愛でた。そして、侍女に指示を出す。
「エレノア、この薔薇を生けてくれないかしら?」
「かしこまりました。」
エレノアは薔薇を受け取り、花瓶に生けるために部屋を出て行く。
退出する時に、アイリーシャの側に立っているアルバートをチラリと盗み見た。
(恐ろしい人だ……)
今回の件、アイリーシャがミハイルの誘いを受け入れやすくする為に、あえて最初に見ず知らずの御人からの招待を見せたのだろう。
その流れで次の別件と言うことで、他の誘いとは意味合いが違うと印象付けて、結果アイリーシャは実に自然にミハイルに対してだけ良い返事をすることとなったのだ。
(まぁ、この方が次期侯爵だと思えばマイヨール家は安泰だわね……)
強引な所があるが、アルバートがアイリーシャの事をとても可愛がっているのはエレノアもよく分かっている。
だからきっと彼の策略は、単に公爵家の繋がりを求めるだけではなくてお嬢様の為でもあるのだろう。
そんな事を考えながら、エレノアは薔薇の花束を持って部屋を出て行った。
そう言って、アルバートは懐から三通の封書を取り出した。
「私に届いた手紙ならば読むのは当たり前でしょう?一体どなたからですか?」
アイリーシャは兄の不思議な言い回し方を怪訝に思ったが、その事には深く触れず、アルバートが手に持つ三通の封書に目をやった。
「ここにあるのは、
ロアンダ侯爵家のショーン様
ユベール侯爵家のアルヴァン様
エイモズ侯爵家のギュスターヴ様
以上3名からの手紙だ。」
「……誰ですの……?」
兄の口から出たのは、全く存じ上げない方の名前だったのだ。
いや、名前位は聞いたことがあるものの、面識が全くないというのが正しい。そのような殿方からの手紙にアイリーシャは困惑した。
見て取れるほど困惑している妹を前にしても、アルバートは構わずに続けた。
「余りにも届く手紙が多いのでね、こちらで少し選別させてもらったよ。だからとりあえずはこの3通。まぁ、読んでみたら分かるよ。」
そう言ってアルバートは妹に持っていた手紙を手渡した。
そして、兄に促されてアイリーシャは3通の手紙に目を通してみたのだが、その手紙は3通とも似たり寄ったりな文面で、要約すると
夜会で見かけたアイリーシャの容姿に惹かれた。
お近付きになりたかったが王太子殿下の婚約者候補ということで、近寄れなかった。
婚約者候補ではなくなったアイリーシャと交流が持ちたい。
このような事が三者三様の言葉で綴られていたのだった。
「お兄様、私頭が痛くなってまいりました……」
見知らぬ方からのアプローチに、戸惑うしかなかった。自身の想像の範疇になかった事態に、アイリーシャは軽く目眩さえ覚えた。
「これからもっと、こういうのが届くと思うよ。」
兄は真顔で告げる。
「いいかいリーシャ。お前は余り分かってないようだけども、公爵家に所縁のある王太子の婚約者候補だった侯爵令嬢っていうのはね、非常に政治的価値が高いんだよ。」
だから、お前とお近づきになりたいと思ってる男が、必死にお前の興味を惹こうとあれやこれやと仕掛けてくるのだと兄が教えてくれた。
「そのようなものなのでしょうか?それに、お兄様のおっしゃる通りならば、私自身というより、皆様私の肩書きに魅力を感じているみたいだわ。」
(お前は見目麗しいから、お前自身…お前の外見に惚れている男性は結構居るけどね。)
アルバートはあえて、そこは言わないでいた。
「貴族の婚姻なんて、大なり小なり思惑があるものだよ。ただ兄としては可愛い妹には幸せになって欲しいから、良くない噂がある奴は選別してるよ。リーシャ、君は今選べる立場なんだから、少しでも好きになれそうな人を選ぶと良いよ。」
貴族の家の娘に生まれたからには、自身が自由に婚姻できるとは思っていなかった。家と家との結びつきが重要視される貴族の婚姻で、アイリーシャもいずれはどこか家柄の良い公子に嫁ぐだろうことは分かっていた。
しかし、王太子殿下の婚約者候補から外れてわずか数日で、面識のない殿方からの沢山のお誘いが届くこの環境の変化には戸惑うしかなかった。
「この中から選ばなければいけないのでしょうか?」
事態について行けず、アイリーシャはおそるおそる兄に尋ねると、アルバートは実に呆気なくそれを否定したのだった。
「いいや、全然。」
平然と兄がそう即答したので、アイリーシャはいささか拍子抜けして、そして安堵した。
「リーシャが気乗りしないなら断っても良いよ。この手の話はこれからどんどん届くだろうしね、今回リーシャが気にいる人がいなくても、また次があるからね。」
兄がそう言ってくれて、アイリーシャはホッとした。正直、急な展開について行けないでいたからだ。
「それでしたら、今回は全てお断りさせてください。」
そう言って目の前の妹が頭を下げたので、アルバートは彼女に渡した三通の封書を引き取った。
「承知したよ。それならば今回は全てこちらで断っておくよ。」
妹を安心させる為に、彼は柔かに微笑みかけた。
(まぁ、こちらは初めから断るだろうなと思ってたからね。本題はこれからだよ。)
表情を1ミリも変えずアルバート優しく微笑んでいたのでアイリーシャは全く気付いていなかったが、彼は目論見通りに次の本題へと事を進めていたのだ。
「それより、これとは別件で僕はもう1通お前に手紙を持ってきたよ。メイフィール家のミハイル様からだ。」
そう言って、アルバートは一通の封筒を取り出して、アイリーシャに手渡した。
「こっちはなんと花束付きだよ。」
そう言うと、アルバートは自分の従者を呼んだ。すると、ドアの外に待機させていたアルバートの従者ヨリクが花束を持って現れて、その手に持つ薔薇のミニブーケをアイリーシャに手渡したのだった。
「まぁ、ミハイル様が私にこれを?!」
色鮮やかな深紅の薔薇の可愛らしいミニブーケにアイリーシャは目を見張った。それから、兄から渡された手紙に目を通す。
~~~
アイリーシャ・マイヨール様
その後、お加減は如何でしょうか?
お贈りした薔薇は、我が家の庭に今咲いているものです。
見事に咲き誇っている我が家の薔薇を一度見にいらっしゃいませんか。
優美な我が家の薔薇園をみれば、貴女の心の慰めになるかと思います。
ミハイル・メイフィール
~~~
「まぁ、ミハイル様がここまで私を気遣ってくださるなんて、思いもよらなかったわ。本当に律儀な方ですわね。」
手紙を読み終えて、アイリーシャはただただミハイルの人となりを感心した。
そのような妹の様子をアルバートは残念そうに見つめた。
(違う、そうじゃない。)
そう思ってはいたが、彼は心の中を声には出さずに、別の言葉を紡いだ。
「確か、メイフィール家の薔薇園は華やかで美しく、我が国の中でも一二を争う庭園だと評判だからね。そうそう見れる機会なんてないし、良いお誘いじゃないか。」
「えぇ。丁度良かったですわ、もう直ぐこの刺繍が出来上がるのですが、どのようにお渡ししようかと迷っていましたの。ですが、お家にご招待されたのならば直接お礼が渡せますわね。」
ミハイルからの誘いに、前向きなアイリーシャを見て、アルバートは内心ほくそ笑んだ。
「そうか。じゃあミハイル様にはお前が返事を書くんだぞ。その他のお断りの文は僕が引き受けてあげるよ。」
「有難うございますお兄様。」
面倒な事は兄が引き受けてくれたので、アイリーシャは気が楽になり、腕の中にある薔薇の花を再び愛でた。そして、侍女に指示を出す。
「エレノア、この薔薇を生けてくれないかしら?」
「かしこまりました。」
エレノアは薔薇を受け取り、花瓶に生けるために部屋を出て行く。
退出する時に、アイリーシャの側に立っているアルバートをチラリと盗み見た。
(恐ろしい人だ……)
今回の件、アイリーシャがミハイルの誘いを受け入れやすくする為に、あえて最初に見ず知らずの御人からの招待を見せたのだろう。
その流れで次の別件と言うことで、他の誘いとは意味合いが違うと印象付けて、結果アイリーシャは実に自然にミハイルに対してだけ良い返事をすることとなったのだ。
(まぁ、この方が次期侯爵だと思えばマイヨール家は安泰だわね……)
強引な所があるが、アルバートがアイリーシャの事をとても可愛がっているのはエレノアもよく分かっている。
だからきっと彼の策略は、単に公爵家の繋がりを求めるだけではなくてお嬢様の為でもあるのだろう。
そんな事を考えながら、エレノアは薔薇の花束を持って部屋を出て行った。
1
お気に入りに追加
1,438
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる