上 下
21 / 50
第1章 転生

17話 特異個体

しおりを挟む
 スキル【ナビゲーター】のレベルが上がり色々設定ができると知ったジンはさっそく設定の確認を始めた。

『それじゃあ、自分で意識しなくてもレイに条件を言えばアラートを出したりできるのかな』

『はい、音声及び複数の音によるアラートが設定できます』

『それは便利だな、じゃあ、こんな設定できるかな。
探しているものが見つかったらトースターのタイマーの『チン』っていう音。
害意を持ったものが近づいたら『キュイッキュイッ』っていうアラート音をだすっていう設定なんだけど』

『可能です。アラート音を二つ設定しました』

『ヤブヒゲとヘビランを捜索対象に設定』

『設定を完了しました』

よし、これでマップとにらめっこしなくても近づけばわかるようになった。
マップの空白を埋めるように歩きながら薬草の探索をしていると腹の虫が鳴き出したので森の入り口まで引き返して弁当を食べることにした。
森の入り口にある大きな石の上に座って弁当を食べていると、突然『キュイッキュイッ』というアラート音が聞こえてくる。

『何?』

『害意のある魔獣が感知範囲に入りました』

開いたままのマップを見るとすぐ後ろに赤い光点が1つ表示されていた。

『・・・って、おい!すぐそこじゃないか?!』

びっくりして、食べかけの弁当をひっくり返しながら立ち上がった。
日本での平和ボケが抜けていなかったのか、不用心にも森を背にして食事をしていたのだ。
後ろに振り返りマップを確認すると、光点の主は狼だった。
入り口近くの藪を注視すると身を伏せてこちらを狙っている狼と目が合う。
弁当の匂いに誘われて出てきたのだろう、俺が気づかなかったら背後から襲われていたに違いない。
美味しい弁当を食べかけでひっくり返した事に腹が立ってきた。

「このやろう弁当の恨みだ!」

腰の刀を抜き、じわりじわりと狼に近づいていく。
それを見たウルフは後ずさりながらも目を離す事は無い。ジンが森の中に踏み込むと下がるのを止め、刀を持っていない方向へ回り始めた。
刀を狼から見難い角度に構え、すり足でじりじりと間合いを詰めていきながら鑑定を使う。
というのも、感知能力が未熟なのでマップでは確認できなかったからだ。

「鑑定」

【種族】     ワーウルフ
【レベル】    17
【状態】     興奮

『レイ、こいつって平均的な狼なのか?』

『ワーウルフの平均的なレベルは4~6です。レベル17であるこの個体は特異個体ですね』

(なるほど、狼が単独で狩をするのに違和感を感じたが特異個体だったか)

 戦闘体勢だったから細かいところまで見られなかったが、鑑定にもワーウルフって表示していた気がした。
特異個体がどんなものか解く知らないので、できれば戦闘を避けたいのだがこの状態ではもう逃げることも叶わない。

(こうなったら、やるしかないか)

ジンが覚悟をきめたちょくご目の前のワーウルフが動きを止めた。牙を剥いて唸り声をあげ、飛びかかるために体勢を低くして力をためている。
ジリッと足を動かすと次の瞬間飛びついてきたので刀で斬りつけたが手応えはあまりなかった。
もう一太刀浴びせようと思い振り返ると、着地した狼が立木を利用して反転し噛み付こうと襲いかかってきた。
致命傷だけは避けようと首をガードした左腕に噛み付かれてしまったが、堪えることができず押し倒されてしまった。
肘に牙が思い切り食い込み、ゴリゴリ異音が聞こえてくる。
だが、なぜか思っているほどの痛みや恐怖はなかった。
右手の刀は倒された拍子に手から離してしまったので右手で鼻や目を殴りつけたが体勢が悪いので全くと言っていいほど効いていないようだ

「あ!」

少し冷静になれたのかアイテムボックスの事を思い出し、今の状態でも攻撃可能なダガーを取り出して狼を滅多刺しにした。

「この野郎、くたばれ!」

ギャンッ

首筋を集中的に刺していると、やっと左肘を口から抜く事ができたが変な具合に腕がぷらぷらしているので千切れかけているかもしれない。
離れ際にワーウルフの横っ腹にダガーを叩き込み、落とした刀を拾ってヨタヨタしている魔狼の首を三度斬りつけると、やっと切り落とす事ができた。

『レベルアップしました。スキル【気配感知】を取得しました』

レイのアナウンスが聞こえた。
ワーウルフを倒した事でレベルアップしたようだ。
左手の肘が思った以上にひどいようなのでステータスを見たいのを後回しにして腕の状態を確認する。
シャツが真っ赤になっている。めくって見るとひどい状態で、試しに動かそうとしたがピクリともしない。
このままの状態で何かに襲われたらひとたまりもない。
考える時間が勿体無いので身を守る方法が無いか聞いてみる。

『レイ、何か身を守る方法は無い?』

『アイテムボックスの中にある結界石を起動させれば身を守れます』

 こんなに良い物を持っていたのを忘れていた、アイテムボックスから結界石を取り出し右手に載せると木々を巻き込むようにして結界が広がっていった。
それを見てジンは足元に結界石を置くと急いで3級ポーションを取り出し、栓を口で開けると中身を一気に飲み干した。

「うげっ! まずい…」

味は最悪であったが効果は素晴らしく、骨が見えるほどの深い傷がみるみるうちに良くなっていく。

『もう1本ポーションを飲んだほうがいいかな?』

『ポーションは必要ありません。ジン様は自動回復のスキルがありますので非常時以外はポーションが無くても全てのダメージが自動回復します』

ジンはスキルの事をすっかり忘れていたが時間短縮ができた事で良しとした。
倒した狼からダガーを抜き、首の離れた狼をアイテムボックスに入れる。
刀はというと、最後に意地になって首を切り落としたのが悪かったのか大きな刃こぼれができていた。
仕方がないので町に帰ったら研ぎ直してくれるところを探して修理することにした。
気に入っていた武器が刃こぼれしてしまった事で少し落ち込み依頼を一つ残したままだが一度町に帰る事にした。

 帰りながらステータスの確認をする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】  ジン・オキタ
【年齢】  15
【種族】  ヒューマン
【称号】  旅人
【レベル】             5
【HP】      1896/1896
【MP】      6813/6813
【STR(力)         651
【AGI(敏捷性)】      532
【CON(体力)】       586
【INT(知能)】       499
【DEX(器用)】       513
【LUC(運)】         70
【状態】             正常
【魔法】(全属性適応)

【スキル】
  鑑定Lv5  状態異常耐性Lv5
  心身異常耐性Lv5 身体強化Lv3
  思考加速 Lv2 気配感知
  剣術(居合・二刀) 格闘術 投擲術    
【ユニークスキル】
  偽装LvMAX アイテムボックス∞
  自動回復Lv5 ナビゲーターLv2
  マップLv1 
【加護】創造神の加護 エンデ主神の加護
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レベルとステータスが上がっている、他の人と比較していないのでなんとも言えないが数日前に比べれば倍以上になっている。
レベルアップしたことによってますますこの数値がおかしな事になってきた気がした。

『レイ、俺のステータス値の増え方は他の人と比べるとどんな感じなんだ?』

『この世界の人に比べる増加した数値は多いです。レベル相応の数値に偽装しますか?』

『頼む。ついでに偽装したステータスも見せてくれ』

『偽装後のステータスです』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】ジン・オキタ
【年齢】15
【種族】ヒューマン
【称号】冒険者
【レベル】5
【HP】       90/90
【MP】       81/81
【STR】         65
【AGI】         53
【CON】         59
【INT】         50
【DEX】         51
【LUC】         70
【状態】          正常
【魔法】
【スキル】鑑定Lv1
【加護】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『そういえば、気配感知ってレベルはないのか?』

『気配感知にレベルはありません、INT値に比例して感度と範囲が増えていきます』

『マップに影響はある?』

『マップされていない部分も感知範囲内であれば光点が表示されます』

これで随分安全に探索ができるようになったはず。
でも一人だと限界がある、仲間を増やしたいけどどうしよう。

『レイ、仲間を増やしたいんだけどどうすればいい?』

『冒険者ギルドでパーティ募集をするしかありませんね』

『そうか・・・』

まだ友達さえいないジンにとってパーティーを組むのは難題である。

  (早く友達を作らないとな~)

ジンは物思いにふけりながら北門へと歩いていくのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

「≪最悪の迷宮≫? いいえ、≪至高の楽園≫です!!」~元皇女は引き籠り生活を満喫しつつ、無自覚ざまぁもしていたようです。~

ファンタジー
ありがちな悪役令嬢っぽい断罪シーンでの記憶の覚醒、追放された少女が国を去り、祖国は窮地にさらされる……そんなよくある、だけどあまりないタイプの展開。追放された先で異国の王子様と愛を育んだり……は、しません。困難に立ち向かいながら周囲と絆を築いたり……も、しません。これは一人の少女が転生前の記憶を思い出し、迷宮という引き籠り空間で最高のヒッキー生活をエンジョイする、そんな休暇万歳!自由万歳!!な軽いノリのお話しです。一話はかなり短めなのでサクッとお暇つぶしにどうぞ。【本編完結済】

その最弱冒険者、実は査定不能の規格外~カースト最底辺のG級冒険者ですが、実力を知った周りの人たちが俺を放っておいてくれません~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
※おかげさまでコミカライズが決定致しました!  時は魔法適正を査定することによって冒険者ランクが決まっていた時代。  冒険者である少年ランスはたった一人の魔法適正Gの最弱冒険者としてギルドでは逆の意味で有名人だった。なのでランスはパーティーにも誘われず、常に一人でクエストをこなし、ひっそりと冒険者をやっていた。    実はあまりの魔力数値に測定不可能だったということを知らずに。  しかしある日のこと。ランスはある少女を偶然助けたことで、魔法を教えてほしいと頼まれる。自分の力に無自覚だったランスは困惑するが、この出来事こそ彼の伝説の始まりだった。 「是非とも我がパーティーに!」 「我が貴族家の護衛魔術師にならぬか!?」  彼の真の実力を知り、次第にランスの周りには色々な人たちが。  そしてどんどんと広がっている波紋。  もちろん、ランスにはそれを止められるわけもなく……。  彼はG級冒険者でありながらいつしかとんでもない地位になっていく。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...