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第1章 転生

15話 テンプレその2

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 登録が完了したジンは依頼ボードの前まで行くとカウンターにいるソフィーに確認する。

「登録が済んだので依頼を受けても大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ、低ランクの依頼は複数受けないと効率が悪いので常時以来を3つくらい同時進行したほうが良いですよ。
ジン君はFランクだから一番右のEとFのボードから探してね」

「わかりました」

そう言ってボードに貼られている依頼内容を確認し、ちょうど良さそうな依頼を2つ見つけた。

依頼レベルF 常時依頼項目 薬草採取 ヤブヒゲ または ヘビラン 葉を10枚 
  報酬:葉10枚につき 金貨1枚
依頼レベルF 常時依頼項目 薬草採取 アカホ 若芽を10本
  報酬:若芽10本につき 金貨1枚

依頼表を引き剥がすとカウンターに持っていき提出する。

「これをお願いします」

「Fレベルの依頼ですね。タグを機械の差し込み口に入れて、そこの水晶の下」

言われるままに水晶の下にあるタグの差し込み口に入れる。

チン!

依頼受付完了の音は、まるでトースターのタイマーのようであった。

「受付完了!常時依頼で沢山採ってくればその分だけ報酬が出るから頑張ってね。
スライムは倒すと登録票が自動的に記録するから何も持って帰らなくても大丈夫よ。
時々魔石が出るからそれも拾っとくとお小遣いになるから、見落とさないようにね」

「気をつけます」

返事をしてギルドハウスの外に出ようとするジンをソフィーが引き止める。

「ジンくん、今日はもうすぐ門が閉まる時間だから依頼は明日からのほうがいいわよ。
それからあの人たちが外で待ち構えていると思うから裏からこっそり出る?」

「大丈夫です、問題ありません」

そう言って機械から取り出したタグを首にかけウェスタンドアを押して外へと進んだ。
入り口の前には狼の牙の3人の姿があり、首に下がったギルドタグを見るとニヤニヤしながら近寄ってきた。

「冒険者登録が済んだってことはこれからは冒険者同士の問題だ、誰にも邪魔させねえ。
ガキがいい気になりやがって、本物の冒険者ってやつを教えてやる、覚悟しろ」
「今更泣きを入れても遅えからな、お前の冒険者人生も1日限りでお終いにしてやる。
お前の装備や金は俺達がいただいて、きっちり使ってやるから安心しな」
「自分が強いと思っている初心者の勘違いが間違っているって言うことを教えてやるぜ」

狼の牙のメンバーは随分頭にきているようで、周囲で見ていた者達は抜かれた剣を見て距離を取る。
ジンはこの程度でやられてしまうようならこの先も無いと感じた。
だからこの機会に自分の実力がこの世界でどれだけ通用するのか確認することにしたのだ。

「えーと、さっき聞いたばかりなのに思い出さないな。なんてクラン名だったっけ?
あ、そうだ思い出した。ゴブリンの鼻くそだ、あんたたちにぴったりな名前だな」

ジンの挑発に乗せられ先頭にいた男がいきなり切りかかり、他の者たちもそれに続く。

「ざけやがって、てめえ生かしちゃおかねえ」

頭にきて切りかかってくる人の動作は力任せで単調になりやすい。
先頭の男の剣を避け、後ろに続く男の懐に潜り込み掌底を顎に叩き込むと、その流れでダガーを構えた男の膝を蹴り、体勢が崩れて低くなった頭に軽く膝蹴りを見舞って2人の意識を刈り取る。

「なっ! 畜生」

それを見た男が両手剣で切りかかってくる、その両手剣を抜刀ざまに中央から切り落とし、返した峰で首筋を峰打ちにして意識を刈り取った。

「あら、ジンくんって結構やるのね。感心してる暇はないわ、このことを早くマスターに知らせなくっちゃ」

入り口で事の顛末を見ていたソフィーが慌ててギルドハウスに駆け込んでいく。
そんなギルドハウスの前には通りがかりの冒険者や、職員達が野次馬となっていた。

「おい、あれって狼の牙のメンバーじゃないのか」
「あいつは誰だ、なんて名前だ?」
「あいつは冒険者登録してた新人だ」
「あーあ、やっちまった。面倒なことにならなきゃいいな」

ジンは野次馬の声を背中で聞きながら倒れた男たちに近づいて行くと懐を漁り戦利品とばかりに金の入った巾着や武器などを取り上げてマジックバッグに放り込んでいく。

「あいつ何してんだ、倒したやつらの装備を剥がしてるぞ」
「うわっ!ひでえ、パンツ1丁残して全部剥ぎ取った」
「鬼だ!」「悪魔だ!」
「Dランク1人とEランク2人を瞬殺かよ、あいつ並みの新人じゃねーな」

周りにいた野次馬の声を聞き流しながら次々と装備を剥ぎ取っていく

「ちょっ!ジン君何してるの?」

いつの間にかギルドマスターに伝達を出したソフィーが戻ってきていて、後ろから声がした。

「ん、盗賊や魔物を倒したらなんらかの利益があるでしょ。襲ってきたんだから戦利品をいただいてるんですよ。
俺の身ぐるみ剥ぐって言っていたんだからお互い様ですよね、何かまずいですか?」

「状況から見て問題ないと思うけど、狼の牙っていうクランはそれなりに人数もいるしあまり良い噂を聞かないから気をつけたほうが良いわよ。
まあ、いざとなったらマスターがなんとかしてくれると思うけど」

「いや、自分に降りかかる火の粉は自分でなんとかしますよ。
こいつら通行の邪魔になるから端に転がしておいたほうが良いですよね」

ジンは気を失っている男達を担いで端に転がし、何もなかったようにその場所を後にした。

 ギルドの前から屋台の方へ歩いて行くと南門広場に出ている沢山の屋台の中からお土産になる物を探し始めた。
フルーツや木ノ実など色々あったが、お菓子と言えるようなものはなかなか目に入らない。
甘い匂いがしたので行ってみると、りんごパイのようなお菓子があったのでそれを買うことにした。

「おっちゃん、それを4個おくれ」

「おいおい、まだおっちゃんじゃねーよ。お兄さんと言いな!」

顔が笑っているから冗談であろうが、こういう時は

「かっこいいお兄さん4個くださいな」

「おっ、わかってるじゃねーか、1個おまけだ!大銀貨2枚でいいぞ」

「ありがとう」

4個分の代金で5個買うことができたので1個を食べながら宿へ向かうと着く頃には日が暮れていた。

「ただいまー」

扉をあけて宿に入って行くと宿の食堂は狩から戻った冒険者たちで喧騒に包まれていた。

「おかえりなさーい」

アンナちゃんが走ってお出迎えに出てきた。

「はい、お土産。お父さんお母さんと食べてね」

そう言って手に持った紙袋を渡し、空いている二人がけの席に座ると周りにいる冒険者のギルドタグが目に入る。
いかつい顔のおっさんはDランク、こっちの楽しそうに話しているグループのお姉さんはBランク、こっちのペアの若い男の子はEランクか、他の人は服の中に隠れていて見えそうにない。
低ランクの人がいたらどこに行けば薬草が採れるのか聞こうと思ったが、聞けそうな冒険者は見つからなかった。

「はいどうぞ、今日はヒラメのムニエルとレッドブルのテールスープよ。アーロン自慢の一品よ」

そう言ってメルさんはテーブルに夕食を置いた。

「アーロンさんって?」

「あれ、紹介してなかったかな? うちの旦那よ、厨房ばかりで滅多にフロアに出てこないから今度暇な時に紹介するわね。
そうそうアンナにお土産ありがとうね、私たちも1つずつもらったけど良かったのかしら。いつも食堂の残り物しかあげてないから、嬉しそうにしてたわ。これサービスね」

そう言ってエールを1杯テーブルに置いてメルさんは忙しそうにフロアの注文取りと配膳に戻って行った。

(今夜のテールスープはすごく美味しいな。
神様がそんなに期待するなって言っていたけど、こんなに美味しいなら地球に負けてないんじゃないかな)

テールスープを食べながら金の麦亭を常宿にしようと決め、仕留めた魔獣などの食材も提供することにした。
アーロンの腕が確かなので、提供した食材が美味しくなるのは間違いないと思ったからだ。
食事を食べ終わり厨房の入り口に顔を出して、声をかけた。

「アーロンさん、ちょっと入っても良いですか」

「ジン君だったかな、今は手が空いてるから良いよ。
アンナが気に入ってるみたいで、まとわりついて邪魔をしていないかい。
迷惑だったら言ってくれ」

「いえいえ、俺は兄弟がいませんから妹ができたみたいで嬉しいですよ。
ところでアーロンさん、料理で使いたい食材なんてありませんか?」

「いろいろ有るんだけど何せ旨い食材は希少だからね。市場に出ていたとして高くてもうちのような小さな店じゃ厳しいかな」

「そうなんですか、冒険者登録をしたので俺になんとかできる物は協力させてくださいね」

「気を使ってくれてすまない、俺も腕に縒をかけて旨いものを作ってやるから期待してくれ」

そう言いながらアーロンは次々とはいる注文をこなしている。

「それは楽しみです、邪魔しちゃ悪いのでそろそろ部屋へ戻りますね、ごちそうさまでした」

そう言うと部屋へと向かうのであった。
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