上 下
14 / 38
あるソート師の誕生

魔女アメリアとの戦い

しおりを挟む
 私は、テレポートサークルを作り、コミーと中に入ると、バンドルが森に向かって、手を翳していた。
私は、バンドルが手を翳している方向を見た。

 森の中の木々が、竜巻でなぎ倒されていた。
コミーが叫んだ。
「この竜巻は、魔女が魔術で操っているんだ。ジェロ、あのバンドルは、魔女だ。早く行って魔女を止めなければ……」
私は、溜め息をついた。
ーまた、魔女が森を壊しているのかー

 私は、念のため、ルーペでバンドルを覗いた。
やはり、バンドルの周りには、黒い霧やモヤのようなものがかかっていた。
私は、言った。
「コミー。魔女のところへ行こう!」
私は、魔女に近付いていき、話しかけた。
「おい、お前! 何で森の中に竜巻を起こしている?」
「私は、『お前』という名前では、ない。魔女の〈アメリア〉だ。何で起こしているかって? それは、私のことを馬鹿呼ばわりしたヤツが森の中に隠れたから、吹き飛ばすためだ」
「それだけのためか。そのバンドルのためだけに、森の木々をなぎ倒しているのか?」
「そうだ。悪いか。許せぬ!!」

 そう言いながらも、アメリアは、森に手を翳すことを止めなかった。
コミーが、言った。
「この魔女を止めても無駄だ、ジェロ。アメリアが手を翳すことを止めても、しばらくは、竜巻が木々をなぎ倒し続け、そのバンドルも吹き飛ばされてしまう。先に、バンドルを救出しよう」
「わかったよ、コミー。待ってろよ! アメリア!!」
「ハッハッハ!! 私は、竜巻を起こし続けるまでだ」

 私達は、森の中に入った。
私は、何回かテレポートサークルを作り、中を覗き込んでは、バンドルに訊いた。
「お前は、魔女に馬鹿呼ばわりしたバンドルか?」
「いいえ、それより、竜巻が恐ろしくて、お助けを……」
皆、救済を求めてきたために、ルーペで覗き込み、黒い霧やモヤのようなものがかかっていなかったため、テレポートサークルを作り、魂をディヴァイド師サニーの元へ、放り込んでいった。

 5、6回繰り返した時、サークルの中を覗き込むと10歳位の少女のバンドルが木に寄りかかり座り込んで泣いていた。

 私とコミーは、急いでサークルの中へ入った。
「どうした。お嬢ちゃん?」
「ママとはぐれちゃったの。ママのこと、お姉ちゃんがいじめるから、グレタ、お姉ちゃんにバーカ、って言っちゃったの。そしたら、ママのこと、なんか手を向けて、吹き飛ばしちゃって、そしたら、グレタのことも追いかけるから、森の中に逃げちゃったの。お兄ちゃん、ママのこと、助けてあげて!」
ーこの子がアメリアを馬鹿呼ばわりしたバンドルかー

 私は、念のため、そのバンドルをルーペで覗いてみたら、やはり、黒い霧やモヤのようなものは、なかった。

 私は、コミーに訊いた。
「コミー。このバン……グレタをどうする?」
コミーも困った様子で小さな声で言った。
「グレタのことは、ディヴァイド師サニーに預けよう。この子は、きっと、母親が一緒では、ないと駄目だ。魔女を倒し、母親を見つけてから、一緒に、おそらく、ヘブンだろうが、行かせよう」
「わかったよ。コミー」

 その時、グレタが話しかけてきた。
「お兄ちゃん、このネズミ、お兄ちゃんが飼ってるの? 可愛いね」
私は、コミーにこっそり言った。
「どうする? グレタにお前のこと、魔獣であることとか言うか?」
コミーは、更に小さな声で言った。
「すまん、ジェロ。私は、子の相手は、苦手だ」
私も小さな声で言った。
「わかったよ。ジェロ」

 私は、グレタに言った。
「グレタ。コイツは、砂ネズミって言うんだよ。コミー、っていう名前だ。よろしくな」
グレタは、嬉しそうに、コミーを撫でた。
「コミーよろしくね」
「チュー! チュー!」
コミーが、砂ネズミのフリをしているから、内心、私は、大笑いした。

 その時だった。竜巻が私達のところへ向かってきた。
 私は、空に魔剣で四角を描き、エヴァケーションで作った空間の中に慌てて、グレタとコミーを入れて、私も入り、竜巻から逃れることができた。

 コミーは、こっそり私に言った。
「さぁ、サニーのところへグレタを連れて行こう」
私は、テレポートサークルを作り、優しくグレタをサークルの中に置いた。

 ディヴァイド師サニーは、相変わらず冷静な表情だった。
私は、サニーに頼み込んだ。
「サニー、頼む。この子をヘルかヘブンへ行かせるのを、少し待ってくれ。この子は、母親と一緒では、ないと駄目なんだ」
「駄目だ。すぐにヘルかヘブンへ行ってもらう」
「そんなこと言わずに頼むよ。サニー」

 その時、グレタが大泣きした。
「エーン!! エーン!!」
サニーは、観念したように言った。
「仕方あるまい。この砂時計の砂が全て落ちるまでは、待つぞ」
そう言うと、砂時計をひっくり返した。
私は、言った。
「じゃあな、グレタ!! ママのこと、必ず連れてくるから、ここで待っててな!」
すると、またグレタが大泣きした。
「エーン!! エーン!!」

 私は、困って咄嗟に言った。
「では、コミーと一緒に居てくれるのは、いいかい?」
グレタは、泣き止んで喜んだ。
「うん。コミーと待ってる! ママのこと、助けてね」
「チュー! チュー!」
私は、コミーの砂ネズミのフリをしていることに、内心、大笑いしてしまった。

 私は、急いでテレポートサークルを作り、すぐに先程の魔女アメリアの目の前に来た。

 そして、アメリアに言った。
「残念だったな、アメリア。お前が探していたバンドルは、安全な所に送った」
「クソッ!! 邪魔しおって!!」

 そう言うと、アメリアは、私の方に手を握り向けてきたので、黒いマントを顔まで覆った。
すると、大量の枯れ葉がこちらに向かってきた。
「逃げる気だな!! シャックルだ!!」
私は、そう言うと、八の字を空に描き、アメリアの手と足が、拘束され、倒れ込んだ。

 私は、アメリアを置いたまま、グレタの母親を探した。
森の中を少し、歩いた所で、意識を失っている女性のバンドルに出会った。
ルーペを覗いてみたが、黒い霧やモヤのようなものもなかった。

「お前は?」
「グレタは? グレタは、どこ……」
消え入りそうな声で意識が戻った女性の魂が言った。
「あなたは、グレタの母親か?」
「そうです。私は、グレタの母ジュリアです。早くグレタの元へ!」
「わかった。今、連れて行く」
私は、急いでテレポートサークルを作り、ジュリアを抱き上げて、中へ放り込んだ。

 それから、またテレポートサークルを作り、アメリアの目の前に現れた。
新たなテレポートサークルを作り、サークルの中へアメリアを放り込んだ。

 私も中に入ると、サニーの意外な姿を見た。
笑顔でグレタに接していた。
 ーあんなに優しく笑うサニーは、見たことない。ー
コミーは、相変わらず、砂ネズミのフリをしている。
「チュー! チュー!」

 アメリアは、拘束されながらグレタを睨み付けた。
「お前ここにいたのか!!」
アメリアを見ると、グレタは、謝った。
「お姉ちゃん。バカ、って言ってごめんなさい。ママに言われたの。バカ、って言っては、駄目だって」
ジュリアも謝った。
「すみません。この子には、言い聞かせましたので」

 私は、その様子を見て思った。
 ー随分、この親子、人が……あ、魂がいいな。あんなことをされた相手に謝るとはー
 
 アメリアは、そっぽを向いた。
「フンッ!!」

 ディヴァイド師サニーは、私に言った。
「ジェロ。グレタとジュリアの人生を聞き取ったよ。もちろん、ヘブン行きだ」

 コミーが、私にこっそり言った。
「サニーのやつ、何回も砂時計をひっくり返してたぞ」

 ディヴァイド師サニーは、グレタとジュリアに言った。
「ヘブン行きの名簿にサインしてくれるか」
ジュリアは、言った。
「では、グレタの分は、私の代筆でよろしいですか」
「えっ? ママ、私、書けるよ!」
〈グレタ〉
少し、下手な字だが、書けた。
その後、母親のジュリアが書いた。
〈ジュリア〉

 サニーは、テレポートサークルを作ると、サニーが慌てて止めたが、グレタが、ヘブン行きのサークルの中に飛び込んだ。
「お兄ちゃん達、コミー。バイバイ! 楽しかった」
ジュリアも、その後を追って、ヘブン行きのサークルに飛び込んだ。
「お世話になりました」

 サニーは、一瞬、困った表情をしたが、すぐに、いつもの冷静な表情に戻った。
 そして、アメリアの方を向いた。
サニーは、名簿とペンに手を翳した。
そして、アメリアの手中に収めさせ、呪文を唱えた。
「ドラクイエ、ドラクイエ……」
すると、アメリアの指は、勝手に動き、名簿にサインさせた。
〈アメリア〉
「アメリア。さぁ、ヘルへ行け!!」
そして、テレポートサークルを作り、アメリアに手を翳し、浮かし、サークルの中へ放り込んだ。
「フンッ!! グレタを許したわけでは、ないぞ!!」
アメリアは、ヘルへ堕ちた。

 私は、コミーに言った。
「コミー。砂ネズミのフリ上手かったぞ。チュー! チュー!」
「うるさい!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

魔銃士(ガンナー)とフェンリル ~最強殺し屋が異世界転移して冒険者ライフを満喫します~

三田村優希(または南雲天音)
ファンタジー
依頼完遂率100%の牧野颯太は凄腕の暗殺者。世界を股にかけて依頼をこなしていたがある日、暗殺しようとした瞬間に落雷に見舞われた。意識を手放す颯太。しかし次に目覚めたとき、彼は異様な光景を目にする。 眼前には巨大な狼と蛇が戦っており、子狼が悲痛な遠吠えをあげている。 暗殺者だが犬好きな颯太は、コルト・ガバメントを引き抜き蛇の眉間に向けて撃つ。しかし蛇は弾丸などかすり傷にもならない。 吹き飛ばされた颯太が宝箱を目にし、武器はないかと開ける。そこには大ぶりな回転式拳銃(リボルバー)があるが弾がない。 「氷魔法を撃って! 水色に合わせて、早く!」 巨大な狼の思念が頭に流れ、颯太は色づけされたチャンバーを合わせ撃つ。蛇を一撃で倒したが巨大な狼はそのまま絶命し、子狼となりゆきで主従契約してしまった。 異世界転移した暗殺者は魔銃士(ガンナー)として冒険者ギルドに登録し、相棒の子フェンリルと共に様々なダンジョン踏破を目指す。 【他サイト掲載】カクヨム・エブリスタ

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...