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あるソート師の誕生

ソート師 ジェロ・ウォードの誕生

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  ここは、死者が最初に来る境界の世界ルイヴァス。
私は、この、物語の主人公ジェロ・ウォードだ。
現代、失火で私の家は、燃え、私は、死んだ。

  私は、ルイヴァスに堕ちると、ある男の前に座っていた。
「我は、天国か地獄に分ける者、つまり、ディヴァイド(2つに分ける)師だ。お前は、ヘル行きだ。これだけ、分かりやすいヤツも珍しい。お前は、泥棒を生業としていたな。しかも、女、子供構わず鉢合わせすると、殺していたな。これ程の悪い奴は、いない。早く、このヘル行きの名簿にサインして、地獄へ堕ちるのだ。早くしろ!!」
私は、そのディヴァイド師に懇願した。
「頼む。頼むよ……私をヘルへ行かせないでくれ。私の事情もくんでくれ。私は、赤ん坊の頃から、親がいない。親戚をたらい回しにされ、生きてきたんだ。泥棒をするしか生きる術がなかった。どうかお願いだ。頼む。頼むよ……」
そのディヴァイド師は、ほくそ笑んで言った。
「確かに、酷い環境だったようだが、同じように育っても、悪事に手を染めない人間もいるのだ。だがなー。お前のしてきた事は、悪さばかり。どうしたものか。うーん……」
「なんだ。何か助かる方法でもあるのか。何でする。頼む! 頼む!!」
「仕方ない。お前は、生前、特別に、身体能力が高かったな。それだけは、認めてやろう。その力を買って、ある使命をお前に与えよう。お前に、力を与えてもらうように王に謁見するぞ」

 「王様、こやつめがジェロ・ウォードでございます」
ぼんやり、私が立っていると小さな声でディヴァイド師が言った。
「王様の御前だぞ。頭を下げて、ひざまづけ」
私は、言われた通りに膝まずいた。
「そうか。お前か。私は、この境界の世界ルイヴァスの裁判官であり、王であるハデスだ。お前がソート師になることを認めてやるぞ。あとは、そのディヴァイド師に聞け。マルス、教えてやれ。さぁ、下がれ!」
私は、そのディヴァイド師がマルスという名であることを知った。

 ーしかし、ソート師とは、何だ?ー

  私達が、王の元を去ると、マルスが口を開いた。
「お前には、ソート師になってもらう」
「すみません。ソート師とは、何ですか?」
「ソート師とは、振り分ける者だ。まぁ、聞け。これから、説明をする。長くなるが、よく聞けよ。」
「はい。わかりました。」
「お前がソート師として、やってもらうことは魔女狩りに遭ってルイヴァスに堕ちた者が結界を張った区域に囲い込まれているから、本物の魔女か、そうでないか、振り分けてもらう。それが、お前のソート師としての使命だ。中世から、今まで、実は、ずっと、魔女狩りは、続けられている。魔女と疑われた者は、火あぶり(焚刑)、絞首刑、溺死刑等で惨い殺され方をした。数万人~数百万人が魔女狩りによって殺された。無論、ほとんどの人間が無実であった。500年以上ここで無実の人間は、苦しんでいる。しかし、これが厄介なのだが、中には、本物の魔女がいた。魔女は、この世界でも悪さをする。お前は、その魔女を捕まえ……因みに男もいて、男魔女と呼ばれているから気を付けろ。うっ、うん!お前は、その魔女を捕まえ、ヘル行きにするか、倒して、消滅させるのだ。選ばれし、ソート師、ジェロ・ウォード!!」

 「しかと、承りました! ディヴァイド師、マルス様!!」

  こうして、私のソート師としての戦いが始まった。
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