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商人親子は思いがけず踊る
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「陛下、私はこれで結構ですわ。ありがとうございました。」
クリスティーナはそういうと、美しいカーテシーをして下がっていく。
令嬢教育を受けた今、四人はその誰よりも美しいカーテシーがどれほど難しいものなのかを理解している。あれを身に着けるのに一体どれほど訓練をしたのか。
「あいわかった。
さて皆の衆。裁定の時間だ。ここから先も、真摯に受け答えをするように。調査はしておるからな。事実と異なることを申せば、罰はさらに重いものになる。わかったな?」
その言葉にその場に跪き、礼の姿勢を取った四人の間に緊張が走る。一体どんな裁きが下るのだろうか。
ちなみにシエナは、相変わらず猿轡をはめ、拘束されたまま転がされている。
「まあ…。カーテシーじゃないの…?。」
そんな、ちょっと残念そうな声が聞こえてきた。
四人は思う。声の主がミシェルであることは分かっている。つまり「カーテシーでやり直せ」、そういう事だ。逆らってはならない。全員で素直にカーテシーでやり直す。身体を起こせば満足そうに頷きながら「75点」と呟くミシェルと、目が死んでいる国王がそこにいた。
「75点か…まあまあだな…」なんて思うあたり、毒されていることは分かっているのだ。
「…さて、まずはジョージから聞いていこうか。始めろ。」
つくづく無かったことにし続ける国王がそう言うと、近くに控えていた文官に声をかける。文官は前に進み出て、ジョージに問いかけた。
「お前は騎士団の取り調べで、そこのシエナに頼まれ、ある薬を渡したと供述している。何の薬か、改めて述べろ。」
「…はい。媚薬と睡眠薬、しびれ薬です。」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」
シエナが唸り、身体をばたんばたんとすると、すぐに女騎士が近寄って、シエナに剣を向ける。切っ先に青ざめたシエナは黙り込んだ。
「それをシエナが誰に使おうとしていたか、お前は知っていたか?」
「媚薬はジルベルト殿下です。最初は何も言わずに使用したようです。試しに自分との閨でも使用しました。
睡眠薬は自分で使うと聞いていましたが本当かは分かりません。しびれ薬に関しては誰に使おうとしていたか、聞いても教えてもらえませんでしたが、何か含み笑いをしているように見えました。」
「そうか。ではその薬の仕入れはどこで行った?」
「…父の商会です。商会の取引先で、この国では使用されていない薬を取り扱っているところがありますので、そこから購入しました。」
「その取引は、誰が交渉した?」
「…父です。」
「おいっ!貴様何を言っている!嘘を言うんじゃない!!」
「黙れ。今はジョージに聞いている。許可もなく王の前で口を開くとは、不敬罪に処されたいか?」
「…ぐっ!」
ジョージの父は顔を真っ赤にしてジョージをにらみつけている。ジョージはその顔を見ても何の感情も浮かばないようで、静かに父を見返し、やがて何かを吹っ切ったように目を逸らした。
「では続けよう。その薬を取り寄せるにあたって、お前は父にその理由をどこまで話した?」
「シエナから求められたこと、媚薬の使い道は話しました。父は睡眠薬としびれ薬を余分に仕入れていたと記憶しています。」
「なるほど。ではお前の父は、王族に媚薬が盛られることを知っていた、ということだな。
睡眠薬としびれ薬を余分に購入していたとは?その用途を知っているか?」
「…父は、自分の気に入った女性に薬を盛って、自室に連れ込んで手を付けていました。恐らくそれに利用していたと思われます。」
「ほう…。」
ギロリと視線を向けられたジョージの父はなおも顔を真っ赤にしてジョージに怒りを向けているようだった。
「陛下、一つお耳に入れたい情報がございます。よろしいでしょうか?」
唐突にその言葉を差し込んだのは宰相であるジョルジュ。ハウゼン公爵家の一同は、その行動に驚いていないところを見ると、事前に知っていたようだ。
「ジョルジュ、なんだ?」
「ジョージの父は、シエナとも関係がありました。こちらが新たな報告書です。」
ジョルジュが国王と文官に手渡した冊子に見覚えがある四人はまさかと言う顔をする。まさか、あれもまた、あの詳細な挿絵付きの艶本風報告書なんだろうか。だとしても、おっさんと若い娘の閨の様子など全くもってみたくもない。何せ、ジョルジュのような美中年ではなく、毛髪がさみしく、腹が前に突き出た美とは程遠いおっさんなのだ。
国王と文官も同じものを見ていたため、同じく懸念を抱いたらしく、なんとも嫌そうな顔でその冊子を受け取り、薄ら笑いを浮かべるジョルジュと交互に見る。
とはいえ、これもまた目を通さねば話は進まない。えいやと覚悟を決めて冊子を開けば真っ先に、もはやグロいと言って過言ではない挿絵があった。観察する側ももうこれ辛いだろうよと思うレベルだと思うが、それでも先に受け取った冊子の挿絵よりは雑なことがわかる。
「開いてすぐこれはちょっと無理なんだけど…。」
思わず弱音をこぼした国王に、周囲の人々は興味深々の様子だ。
すると、その彼らの近くにいつの間にかマリーとエリンがいて、小冊子を配り始めた。何も知らずに受け取った面々が開くと、国王が見たと思われるものと同じ挿絵が目に飛び込み、思わずおえっと嘔吐いた。
なぜ自分たちまでこんな目にという声が聞こえてきそうだが、ジョシュアが、「製造責任だよねー。連帯責任だよー」と小声で呟いたのを聞いて黙り込む。
その冊子はもちろん、四人組にも渡されたのだが、先のことを思えば、絶対に開きたくない。けれども、ミシェルから何か圧を感じる。どうしても開かなくてはならないのか…。諦めて開けば他の出席者と同じく嘔吐いた。
肝心のジョージの父は、まさか自分のそんな絵が用意されているとはつゆ知らず、怪訝な顔を周囲に見せていたが、彼の目の前にもついにその挿絵が広げられた。みるみる目を見開いて、顔を真っ赤にしてうつむいた父を見て、ジョージは気持ち悪いとしか思えなかったし、それと繋がったシエナとまた繋がった自分に気持ち悪さが止まらない。
そんな折、四人はふと気づいてしまう。クリスティーナはどんな様子なのか?
ちらりとそちらに目をやれば、さすがに冊子は手にしておらず、なぜかほっとして詰まった息を吐きだした。
そんな視線に気づいたクリスティーナは四人に顔を向け、音を出さずに口を開く。何を言っているのだろうかと何とか読み取ろうと目を凝らして読み取った言葉に四人、いや、三人は終わっていたものがさらに終わった…と思い、ついがっくりと膝をついた。
そんな彼らにもまた、怪訝な目が一瞬向けられたが、何しろ、ジョージの父の挿絵が衝撃的過ぎて、すぐに関心は失われた。
けれども、彼らをみて、もう一人の人物の存在を思い出した参加者がシエナの様子を伺い見れば、彼女もまた挿絵を見せられたらしく、白目をむき、泡を吹いて気絶していた。
それをみて何となく胸がすく思いを抱いて、気を取り直して視線を国王に戻していった。
「あー…。とんでもなく気持ち悪いものを見せられてちょっと記憶が飛びかけたが、話を続けよう。続けてくれ。」
「…はい…。
つまり、スペンサー商会の会頭は、王族に薬が盛られることを知っていて調達した。その調達した薬が盛られるのはジルベルト殿下だけとは限らず、また媚薬だけ使用されるとも限らないにもかかわらず。つまりこれは、王族の暗殺未遂、反逆罪と言っても過言ではない。
さらに、会頭はシエナと愛人関係にあり、反逆の企みにおいて、協力関係にあったとみなされる。
挙句、婦女子への性的暴行が明らかになった。」
「ちょっ!ちょっと待ってください!私は反逆なんて…!」
「王族に薬が盛られることを知っていて調達したのだ。その時点で不敬罪と国家転覆罪だ。
さらに救いようがないのが、婦女暴行だ。これは看過することはできぬ。加えてお前は平民。騎士団ではすでにお前のこの罪に関する情報収集と検証は終わっている。余罪もありそうだからまだ調査はするがな。
――連れていけ。」
その腕一つでこの国一番の商会にのし上がった会頭は両脇を騎士に抱えられ、何かを騒ぎながら運ばれていく。自宅はすでに騎士団の調査が入っているだろう。彼が次に日の目を見るときは処刑台か、それとも国内に複数ある鉱山のうち、一番過酷な鉱山の奴隷として送られるかのいずれかになるだろう。
「さて…ジョージ。貴様も、平民の身で王族に薬が盛られることがわかっていながら片棒を担いだ。普通に使えば命を失うほどの薬ではなかったとしても、その盛られる量が過分であれば、命が失われていた可能性もあった。これは暗殺未遂と言っても過言ではない。さらに、公爵令嬢であるクリスティーナ嬢の名誉を著しく棄損した。
若く経験が乏しいと言っても、成人した身で思考を停止させていたことは問題だ。」
「…はい…。」
「とはいえ、若干の情状酌量の要素もあるのも確か。クリスティーナ嬢も先の仕置によって十分やり返したからと、貶められた分の処罰は要らぬと言われておるしな。
よって、十年間の鉱山奴隷を申し付ける。場所は後で知らせる。刑期が終わった後も監視をつけさせてもらう。その身元引受先の候補はあるが、それmlまたあとで知らせよう。」
国王が告げたその言葉に、思わぬ厚情を感じ取り、涙が流れる。
「陛下のご厚情に誠に感謝いたします。ありがとうございます…っ!
クリスティーナ嬢、この度は大変申し訳ございませんでした。この御恩は忘れません…!」
思いがけず重たい犯罪が思いがけない所から出てきたが、まずは一人片付いた。
最後にカーテシーをしたジョージはその後ろに一歩下がって俯いた。
クリスティーナはそういうと、美しいカーテシーをして下がっていく。
令嬢教育を受けた今、四人はその誰よりも美しいカーテシーがどれほど難しいものなのかを理解している。あれを身に着けるのに一体どれほど訓練をしたのか。
「あいわかった。
さて皆の衆。裁定の時間だ。ここから先も、真摯に受け答えをするように。調査はしておるからな。事実と異なることを申せば、罰はさらに重いものになる。わかったな?」
その言葉にその場に跪き、礼の姿勢を取った四人の間に緊張が走る。一体どんな裁きが下るのだろうか。
ちなみにシエナは、相変わらず猿轡をはめ、拘束されたまま転がされている。
「まあ…。カーテシーじゃないの…?。」
そんな、ちょっと残念そうな声が聞こえてきた。
四人は思う。声の主がミシェルであることは分かっている。つまり「カーテシーでやり直せ」、そういう事だ。逆らってはならない。全員で素直にカーテシーでやり直す。身体を起こせば満足そうに頷きながら「75点」と呟くミシェルと、目が死んでいる国王がそこにいた。
「75点か…まあまあだな…」なんて思うあたり、毒されていることは分かっているのだ。
「…さて、まずはジョージから聞いていこうか。始めろ。」
つくづく無かったことにし続ける国王がそう言うと、近くに控えていた文官に声をかける。文官は前に進み出て、ジョージに問いかけた。
「お前は騎士団の取り調べで、そこのシエナに頼まれ、ある薬を渡したと供述している。何の薬か、改めて述べろ。」
「…はい。媚薬と睡眠薬、しびれ薬です。」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」
シエナが唸り、身体をばたんばたんとすると、すぐに女騎士が近寄って、シエナに剣を向ける。切っ先に青ざめたシエナは黙り込んだ。
「それをシエナが誰に使おうとしていたか、お前は知っていたか?」
「媚薬はジルベルト殿下です。最初は何も言わずに使用したようです。試しに自分との閨でも使用しました。
睡眠薬は自分で使うと聞いていましたが本当かは分かりません。しびれ薬に関しては誰に使おうとしていたか、聞いても教えてもらえませんでしたが、何か含み笑いをしているように見えました。」
「そうか。ではその薬の仕入れはどこで行った?」
「…父の商会です。商会の取引先で、この国では使用されていない薬を取り扱っているところがありますので、そこから購入しました。」
「その取引は、誰が交渉した?」
「…父です。」
「おいっ!貴様何を言っている!嘘を言うんじゃない!!」
「黙れ。今はジョージに聞いている。許可もなく王の前で口を開くとは、不敬罪に処されたいか?」
「…ぐっ!」
ジョージの父は顔を真っ赤にしてジョージをにらみつけている。ジョージはその顔を見ても何の感情も浮かばないようで、静かに父を見返し、やがて何かを吹っ切ったように目を逸らした。
「では続けよう。その薬を取り寄せるにあたって、お前は父にその理由をどこまで話した?」
「シエナから求められたこと、媚薬の使い道は話しました。父は睡眠薬としびれ薬を余分に仕入れていたと記憶しています。」
「なるほど。ではお前の父は、王族に媚薬が盛られることを知っていた、ということだな。
睡眠薬としびれ薬を余分に購入していたとは?その用途を知っているか?」
「…父は、自分の気に入った女性に薬を盛って、自室に連れ込んで手を付けていました。恐らくそれに利用していたと思われます。」
「ほう…。」
ギロリと視線を向けられたジョージの父はなおも顔を真っ赤にしてジョージに怒りを向けているようだった。
「陛下、一つお耳に入れたい情報がございます。よろしいでしょうか?」
唐突にその言葉を差し込んだのは宰相であるジョルジュ。ハウゼン公爵家の一同は、その行動に驚いていないところを見ると、事前に知っていたようだ。
「ジョルジュ、なんだ?」
「ジョージの父は、シエナとも関係がありました。こちらが新たな報告書です。」
ジョルジュが国王と文官に手渡した冊子に見覚えがある四人はまさかと言う顔をする。まさか、あれもまた、あの詳細な挿絵付きの艶本風報告書なんだろうか。だとしても、おっさんと若い娘の閨の様子など全くもってみたくもない。何せ、ジョルジュのような美中年ではなく、毛髪がさみしく、腹が前に突き出た美とは程遠いおっさんなのだ。
国王と文官も同じものを見ていたため、同じく懸念を抱いたらしく、なんとも嫌そうな顔でその冊子を受け取り、薄ら笑いを浮かべるジョルジュと交互に見る。
とはいえ、これもまた目を通さねば話は進まない。えいやと覚悟を決めて冊子を開けば真っ先に、もはやグロいと言って過言ではない挿絵があった。観察する側ももうこれ辛いだろうよと思うレベルだと思うが、それでも先に受け取った冊子の挿絵よりは雑なことがわかる。
「開いてすぐこれはちょっと無理なんだけど…。」
思わず弱音をこぼした国王に、周囲の人々は興味深々の様子だ。
すると、その彼らの近くにいつの間にかマリーとエリンがいて、小冊子を配り始めた。何も知らずに受け取った面々が開くと、国王が見たと思われるものと同じ挿絵が目に飛び込み、思わずおえっと嘔吐いた。
なぜ自分たちまでこんな目にという声が聞こえてきそうだが、ジョシュアが、「製造責任だよねー。連帯責任だよー」と小声で呟いたのを聞いて黙り込む。
その冊子はもちろん、四人組にも渡されたのだが、先のことを思えば、絶対に開きたくない。けれども、ミシェルから何か圧を感じる。どうしても開かなくてはならないのか…。諦めて開けば他の出席者と同じく嘔吐いた。
肝心のジョージの父は、まさか自分のそんな絵が用意されているとはつゆ知らず、怪訝な顔を周囲に見せていたが、彼の目の前にもついにその挿絵が広げられた。みるみる目を見開いて、顔を真っ赤にしてうつむいた父を見て、ジョージは気持ち悪いとしか思えなかったし、それと繋がったシエナとまた繋がった自分に気持ち悪さが止まらない。
そんな折、四人はふと気づいてしまう。クリスティーナはどんな様子なのか?
ちらりとそちらに目をやれば、さすがに冊子は手にしておらず、なぜかほっとして詰まった息を吐きだした。
そんな視線に気づいたクリスティーナは四人に顔を向け、音を出さずに口を開く。何を言っているのだろうかと何とか読み取ろうと目を凝らして読み取った言葉に四人、いや、三人は終わっていたものがさらに終わった…と思い、ついがっくりと膝をついた。
そんな彼らにもまた、怪訝な目が一瞬向けられたが、何しろ、ジョージの父の挿絵が衝撃的過ぎて、すぐに関心は失われた。
けれども、彼らをみて、もう一人の人物の存在を思い出した参加者がシエナの様子を伺い見れば、彼女もまた挿絵を見せられたらしく、白目をむき、泡を吹いて気絶していた。
それをみて何となく胸がすく思いを抱いて、気を取り直して視線を国王に戻していった。
「あー…。とんでもなく気持ち悪いものを見せられてちょっと記憶が飛びかけたが、話を続けよう。続けてくれ。」
「…はい…。
つまり、スペンサー商会の会頭は、王族に薬が盛られることを知っていて調達した。その調達した薬が盛られるのはジルベルト殿下だけとは限らず、また媚薬だけ使用されるとも限らないにもかかわらず。つまりこれは、王族の暗殺未遂、反逆罪と言っても過言ではない。
さらに、会頭はシエナと愛人関係にあり、反逆の企みにおいて、協力関係にあったとみなされる。
挙句、婦女子への性的暴行が明らかになった。」
「ちょっ!ちょっと待ってください!私は反逆なんて…!」
「王族に薬が盛られることを知っていて調達したのだ。その時点で不敬罪と国家転覆罪だ。
さらに救いようがないのが、婦女暴行だ。これは看過することはできぬ。加えてお前は平民。騎士団ではすでにお前のこの罪に関する情報収集と検証は終わっている。余罪もありそうだからまだ調査はするがな。
――連れていけ。」
その腕一つでこの国一番の商会にのし上がった会頭は両脇を騎士に抱えられ、何かを騒ぎながら運ばれていく。自宅はすでに騎士団の調査が入っているだろう。彼が次に日の目を見るときは処刑台か、それとも国内に複数ある鉱山のうち、一番過酷な鉱山の奴隷として送られるかのいずれかになるだろう。
「さて…ジョージ。貴様も、平民の身で王族に薬が盛られることがわかっていながら片棒を担いだ。普通に使えば命を失うほどの薬ではなかったとしても、その盛られる量が過分であれば、命が失われていた可能性もあった。これは暗殺未遂と言っても過言ではない。さらに、公爵令嬢であるクリスティーナ嬢の名誉を著しく棄損した。
若く経験が乏しいと言っても、成人した身で思考を停止させていたことは問題だ。」
「…はい…。」
「とはいえ、若干の情状酌量の要素もあるのも確か。クリスティーナ嬢も先の仕置によって十分やり返したからと、貶められた分の処罰は要らぬと言われておるしな。
よって、十年間の鉱山奴隷を申し付ける。場所は後で知らせる。刑期が終わった後も監視をつけさせてもらう。その身元引受先の候補はあるが、それmlまたあとで知らせよう。」
国王が告げたその言葉に、思わぬ厚情を感じ取り、涙が流れる。
「陛下のご厚情に誠に感謝いたします。ありがとうございます…っ!
クリスティーナ嬢、この度は大変申し訳ございませんでした。この御恩は忘れません…!」
思いがけず重たい犯罪が思いがけない所から出てきたが、まずは一人片付いた。
最後にカーテシーをしたジョージはその後ろに一歩下がって俯いた。
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