原初のヒーロー

七星北斗

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目的のための手段8

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 僕が車内で眠っている間に車は目的地に到着した。

「主君起きてください」

 影月は彼方を揺さぶって起こそうとする。

 しかし、起きない。

「むにゃむにゃ、ヒーローはいつだって弱者の味方だ」

 彼方の寝言に光莉はクスッと笑う。

 そして光莉は彼方に体を寄せると、耳元まで顔を近づけて囁く。

「主殿、起きてください。起きないと唇にキスしちゃいますよ」

 そう言って光莉は唇を彼方の唇に近づけた。

 互いの距離は、吐息を感じるほどに縮まった。彼方は目を覚ますと、光莉の顔の近さに驚いて顔を真っ赤にする。

「顔近いって」

「残念。起きちゃいましたね」

 赤くなった顔を隠すように、彼方は慌てて車から降りた。

「可愛いですね」

 光莉は小悪魔のように舌をペロッと出した。

 車が到着した場所は、水深30mのダイビングプールを備えた施設である。

 ずいぶん広い建物だな。

 施設の中に入ると30代くらいの長身の女性が出迎えてくれた。

「白羽様お久しう御座います。お待ちしておりました」

「ああ、突然プールを貸し切らせてしまって悪かったな」

「勿体ないお言葉。白羽一族様のお力になれるのなら光栄で御座います」

「変わらぬ忠義感謝する」

「いえいえ、ご用の際はいつでもお声がけください。それでは失礼致します」

 女性は深々とお辞儀をすると、奥の部屋へ入った。

 え!?白羽って凄い家柄なの?こいつらって一体何者?

 忍者兄妹を疑い始める僕をよそに、マイペースな兄妹を見ていると考えることが馬鹿らしくなってきた。

「さあ、主君。着替えに行きましょう」

「そうだね」

 男子更衣室と女子更衣室の前に忍者兄妹と僕……どんな状況?

 だけど、この二人と関わることでヤバイことに巻き込まれないよね?

 何か心配になってきた。だがしかし、背に腹はかえられぬ。

 とりあえず更衣室に行こう。そんなことを考えている間に、影月は男子更衣室へと先に入った。

「主殿また後で」

 光莉も手を振ると女子更衣室に入って行く。

 僕も更衣室に入ろう。

 更衣室に入ると、既に影月は着替え終わっていた。

 はやっ!……影月はどや顔で忍者ですからと自慢気に告げる。

 まぁ忍者だしな……。僕もこの忍者兄妹に毒されているな。

 とっとと水着に着替えよう。僕はロッカーに脱いだ服を入れ、用意されていた水着に着替えた。

 そして着替えを済ませた僕は影月に案内されてプールに移動した。

 今度はどんなトレーニングが待ち受けているのだろう?

 しかし、これも筆記試験を突破するため。

「光莉はまだ来てませんが、先に準備体操をしてましょう」

 彼方は、影月の言葉に不安げに頷いた。

 準備体操をする影月の横で、僕も真似して準備体操をする。

 しかし深いな………。

 僕は、プールの深さが心配になり、プールの中を覗き込んだ。

 深くていまいち底が見えない。怖い、ガクガクブルブル。
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