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6章 第1部 アリスの来訪
234話 アリスとの出会い
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7歳の久遠レイジは育ての親になってくれたウォード・レイゼンベルトに連れられ、とある部屋に案内された。この部屋に彼の娘のアリスがいるらしく、あいさつして来いとのこと。
部屋に入ると、そこには一人の少女が立っていた。
(あの子がアリスか。きれいな子だ……)
輝く金色の髪に、整った顔立ちをした美人な女の子。どこか達観したような乾いた瞳に、誰も近づかせないような冷たい雰囲気を漂ただよわせている。
気づけばそんな彼女に、一瞬見惚れてしまっていた。
(――でも、なんだろう。この予感めいた確信は……)
しかしそれもつかの間、奇妙な感覚が押し寄せてくるという。
(この子は底知れない狂気をはらんでいる。そしてどこまでも堕ちていって、最後に待っているのは……)
これは予感だが、彼女はただひたすら自身の湧き出る衝動にしたがい続けるだろう。それはもはや狂気的に、それ以外なにもいらないと求め続ける。そこに他者が入る隙間などない。彼女は一人どこまでも堕ちていく。そんな生き方の先に待っているものが、いい結末とは到底思えなかった。
(オレはこの子の手を離しちゃいけない)
アリスのことを想うと、自身の内に確固たる衝動が湧き上がってくる。それは彼女を救わなければならないという、脅迫観念に似たなにか。決してアリスの手を離してはいけないと。でなければ彼女はどこまでも一人で堕ちて行って、いづれ取り返しのつかないことになってしまう。言葉では説明できない運命的な予感が、久遠レイジを駆り立てるのだ。
(――ああ、そうだ……。たとえ一緒に堕ちていくことになったとしても、オレは彼女を……)
一瞬、脳裏にかつて誓いを交わした女の子。カノン・アルスレインの姿が浮かぶ。そこへもしカノンとの誓いを果たすなら、アリスにかかわるべきではないという警告が脳内に鳴り響くが。
だが気づけばレイジはアリスのもとへ。そして脅迫観念に突き動かされるまま、彼女へと話しかけにいく。すべてはアリス・レイゼンベルトを一人にさせないために。そう決心しながら。
レイジが目を覚ますと、見慣れた天井が見える。カーテンの隙間から陽ざしが入り込んでおり、時計を確認すると8時ぐらいだろうか。
(なんだか懐かしい夢を見ていた気がする)
ここはレイジの借りているマンションの一室。少し前まで泊まっていたゆき、あと那由多はすでにもういない。ゆきは白神家の問題が一段落ついたため、家に戻っていった。本人は残りたそうにしていたが、さすがに女の子と一つ屋根の下で過ごすという精神的疲労があるため却下したという。那由多に関しては、ゆきが出ていったためレイジを見張る必要はもうない。そのため有無も言わさず、無理やり追い出したのであった。こうして晴れて一人になったはずなのだが、問題が。
(あれ? おかしい。ゆきは帰らせたし、那由多も追い出した。もうこの家には誰もいないはず。なのになんで腕に誰かのぬくもりが……)
そう、現在レイジの左腕が異様に重く、ほのかな温もりとむにっとした柔らかさとほどよい弾力が襲ってきているのだ。さらにあまりにも近いので吐息と、女の子特有のいい香りまでとどいてくる始末。どうやら左腕を、抱き枕のように扱われているらしい。
「――もしかして……、いや、まさかそんなはずは……」
おそるおそる視線を横に向けると、そこには。
「ア、アリス!?」
レイジを抱き枕にしていたのは、黒い双翼の刃として共に戦いつづけた戦友であり、小さいころからずっと一緒にいた家族といっていい少女。アリス・レイゼンベルト。一体なぜ、彼女がレイジの家に上がりこみ、そしてベットで寝ているのだろうか。昨日の寝る前には、確実にいなかったはずなのに。
「――どうしてここに……。というかなんて恰好してるんだよ」
さらに問題なのは、上がぶかぶかのレイジのワイシャツ一枚で、下はパンツだけという彼女の姿だろう。ボタンをきちんと上までかけていないせいで見えてしまう彼女の大きい胸の谷間や、きわどく見える生足の部分など。もはや思春期の男子には目の毒としかいいようがなかった。
「こんな光景、誰かに見られたら、あらぬ誤解を生むぞ。とくに那由多なんかに見つかったら……」
那由多に目撃されたら、ものすごく面倒なことになるのは確実。いなくてよかったと心から安堵するしかない。
だがいつまでもこうしているわけにはいかない。那由多が朝食を作りに来る可能性があるのだ。ゆえに早くアリスを起こし、とりあえず着替えさせなければ。
「はっ!?」
しかしそこで緊急事態が。なんと玄関の扉が開く音がしたのだ。
「まさか那由多のやつが来た!? くそ、こんな時に! アリス! 頼むから起きてくれ!」
慌ててアリスの身体を揺さぶりながら、起こそうと。
「あら? おはよう、レージ」
すると彼女は上半身を起こし、眠そうに目をこすりながらあいさつしてくる。
「アリス、とにかくいったんどこかに隠れてくれ!」
「なにいってるのかしら? それよりまだ眠いわ……。もうひと眠りさせてちょうだい……」
アリスはレイジの首元に両腕を回し、そのまま抱きつく形でもたれかかってきた。
その結果彼女のナイスバディーな胸のやわらかさが、どっと押し寄せてくる。
「おい、こら! 寝るんじゃない! 早く隠れないと、那由多が!?」
状況はさらに悪化。アリスはレイジに抱き着きながら、再び寝てしまう。
そこへ。
「レイジ! かわいい、かわいい通い妻、那由多ちゃんが起こしに来てあげましたよー!」
玄関からダッシュして、勢いよく中に入って来る那由多。
「起きて……、ください……、え?」
「あっ」
そして那由多と目が合う。
朝からテンション高くルンルンだった彼女は、今のレイジたちの姿を見て硬直してしまう。まるで目の前で起こっている現実が理解できず、脳がフリーズしてしまっているかのように。
「はっ!? れ、れ、レイジ! 那由多ちゃんというものがありながら、一体なにをしてるんですかー!!!」
気まずすぎる沈黙が続くこと数十秒、那由多がハッと我に返り、拳をわなわな震わせながら怒鳴ってくるのであった。
部屋に入ると、そこには一人の少女が立っていた。
(あの子がアリスか。きれいな子だ……)
輝く金色の髪に、整った顔立ちをした美人な女の子。どこか達観したような乾いた瞳に、誰も近づかせないような冷たい雰囲気を漂ただよわせている。
気づけばそんな彼女に、一瞬見惚れてしまっていた。
(――でも、なんだろう。この予感めいた確信は……)
しかしそれもつかの間、奇妙な感覚が押し寄せてくるという。
(この子は底知れない狂気をはらんでいる。そしてどこまでも堕ちていって、最後に待っているのは……)
これは予感だが、彼女はただひたすら自身の湧き出る衝動にしたがい続けるだろう。それはもはや狂気的に、それ以外なにもいらないと求め続ける。そこに他者が入る隙間などない。彼女は一人どこまでも堕ちていく。そんな生き方の先に待っているものが、いい結末とは到底思えなかった。
(オレはこの子の手を離しちゃいけない)
アリスのことを想うと、自身の内に確固たる衝動が湧き上がってくる。それは彼女を救わなければならないという、脅迫観念に似たなにか。決してアリスの手を離してはいけないと。でなければ彼女はどこまでも一人で堕ちて行って、いづれ取り返しのつかないことになってしまう。言葉では説明できない運命的な予感が、久遠レイジを駆り立てるのだ。
(――ああ、そうだ……。たとえ一緒に堕ちていくことになったとしても、オレは彼女を……)
一瞬、脳裏にかつて誓いを交わした女の子。カノン・アルスレインの姿が浮かぶ。そこへもしカノンとの誓いを果たすなら、アリスにかかわるべきではないという警告が脳内に鳴り響くが。
だが気づけばレイジはアリスのもとへ。そして脅迫観念に突き動かされるまま、彼女へと話しかけにいく。すべてはアリス・レイゼンベルトを一人にさせないために。そう決心しながら。
レイジが目を覚ますと、見慣れた天井が見える。カーテンの隙間から陽ざしが入り込んでおり、時計を確認すると8時ぐらいだろうか。
(なんだか懐かしい夢を見ていた気がする)
ここはレイジの借りているマンションの一室。少し前まで泊まっていたゆき、あと那由多はすでにもういない。ゆきは白神家の問題が一段落ついたため、家に戻っていった。本人は残りたそうにしていたが、さすがに女の子と一つ屋根の下で過ごすという精神的疲労があるため却下したという。那由多に関しては、ゆきが出ていったためレイジを見張る必要はもうない。そのため有無も言わさず、無理やり追い出したのであった。こうして晴れて一人になったはずなのだが、問題が。
(あれ? おかしい。ゆきは帰らせたし、那由多も追い出した。もうこの家には誰もいないはず。なのになんで腕に誰かのぬくもりが……)
そう、現在レイジの左腕が異様に重く、ほのかな温もりとむにっとした柔らかさとほどよい弾力が襲ってきているのだ。さらにあまりにも近いので吐息と、女の子特有のいい香りまでとどいてくる始末。どうやら左腕を、抱き枕のように扱われているらしい。
「――もしかして……、いや、まさかそんなはずは……」
おそるおそる視線を横に向けると、そこには。
「ア、アリス!?」
レイジを抱き枕にしていたのは、黒い双翼の刃として共に戦いつづけた戦友であり、小さいころからずっと一緒にいた家族といっていい少女。アリス・レイゼンベルト。一体なぜ、彼女がレイジの家に上がりこみ、そしてベットで寝ているのだろうか。昨日の寝る前には、確実にいなかったはずなのに。
「――どうしてここに……。というかなんて恰好してるんだよ」
さらに問題なのは、上がぶかぶかのレイジのワイシャツ一枚で、下はパンツだけという彼女の姿だろう。ボタンをきちんと上までかけていないせいで見えてしまう彼女の大きい胸の谷間や、きわどく見える生足の部分など。もはや思春期の男子には目の毒としかいいようがなかった。
「こんな光景、誰かに見られたら、あらぬ誤解を生むぞ。とくに那由多なんかに見つかったら……」
那由多に目撃されたら、ものすごく面倒なことになるのは確実。いなくてよかったと心から安堵するしかない。
だがいつまでもこうしているわけにはいかない。那由多が朝食を作りに来る可能性があるのだ。ゆえに早くアリスを起こし、とりあえず着替えさせなければ。
「はっ!?」
しかしそこで緊急事態が。なんと玄関の扉が開く音がしたのだ。
「まさか那由多のやつが来た!? くそ、こんな時に! アリス! 頼むから起きてくれ!」
慌ててアリスの身体を揺さぶりながら、起こそうと。
「あら? おはよう、レージ」
すると彼女は上半身を起こし、眠そうに目をこすりながらあいさつしてくる。
「アリス、とにかくいったんどこかに隠れてくれ!」
「なにいってるのかしら? それよりまだ眠いわ……。もうひと眠りさせてちょうだい……」
アリスはレイジの首元に両腕を回し、そのまま抱きつく形でもたれかかってきた。
その結果彼女のナイスバディーな胸のやわらかさが、どっと押し寄せてくる。
「おい、こら! 寝るんじゃない! 早く隠れないと、那由多が!?」
状況はさらに悪化。アリスはレイジに抱き着きながら、再び寝てしまう。
そこへ。
「レイジ! かわいい、かわいい通い妻、那由多ちゃんが起こしに来てあげましたよー!」
玄関からダッシュして、勢いよく中に入って来る那由多。
「起きて……、ください……、え?」
「あっ」
そして那由多と目が合う。
朝からテンション高くルンルンだった彼女は、今のレイジたちの姿を見て硬直してしまう。まるで目の前で起こっている現実が理解できず、脳がフリーズしてしまっているかのように。
「はっ!? れ、れ、レイジ! 那由多ちゃんというものがありながら、一体なにをしてるんですかー!!!」
気まずすぎる沈黙が続くこと数十秒、那由多がハッと我に返り、拳をわなわな震わせながら怒鳴ってくるのであった。
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