224 / 253
5章 第4部 幽霊少女のウワサ
218話 荒野の街と酒場での出会い
しおりを挟む
空を見上げれば炎天下の空が。ここはクリフォトエリアのとある荒野地帯。岩山があちこちにたたずみ、乾いた大地がどこまでも広がっている場所だ。そしてレイジとゆきがいるのはそんな荒野の中にある、シティゾーン。荒れ果てた大地の上に、無理やり建物を建てた感じの街であった。
「暑い、疲れたぁ。こんな炎天下の荒野の街中とか、引きこもりのゆきにとって地獄すぎるだろぉ」
ゆきは歩きながらぐったりうなだれる。
「おいおい、ゆきが聞き込み側に参加してから、まだほとんど時間がたってないぞ」
さんざん歩き回っているような彼女だが、実際のところまだ三十分ぐらいしかたっていない。さっきからずっと歩き回っているレイジならまだしも、根を上げるのが早すぎではないだろうか。
「うるさいなぁ。ゆきはくおんみたいに肉体労働派じゃなく、頭を使って働くタイプなのぉ。だから体力がないのはあたり前なんだもん!」
ゆきはぷいっとそっぽを向いて主張を。
「ならマナのところに残ってればよかったんじゃ?」
「だってゆきがいても、とくに手伝えることがなさそうだったしさぁ。まずは原因の場所をある程度特定しないと、調べようがないって話ー。だからゆきの出番は、まなにもう少し場所の特定をしてもらってからだねぇ」
肩をすくめながら、マナがいるであろう廃墟のビルの屋上に視線を向けるゆき。
現在、バグについて調査しているのだが、かなり難航しているみたいなのだ。なんでも肝心のバグが発生している場所の特定が、うまくいかないとのこと。そのため今はマナ待ち。ある程度場所を絞れてから、レイジたちとゆきの出番というわけだ。
「まあ、闇雲に探しても、疲れるだけだもんな。肝心な時に動けないと、意味がないし」
「それにくおんと一緒に歩きたいなぁって」
ふとゆきがレイジの上着をつかみ、チラチラと上目づかいをしてくる。
「え?」
「っ!? く、くおんが一人だとさびしいと思って、ついてきてあげたんだもん! ありがたくおもってよねぇ!」
だがそれもつかの間、ゆきはビシッと指を突き付けて必死にうったえてくる。
「はぁ、それはどうも」
「でもこれだと残ってた方がよかったかもぉ。とくになにもなかったし、ムダにつかれたぁ」
そしてまたもやぐったりしだすゆき。
「たまには足を使って動くのも、いいものだぞ。いろいろな発見とかできて、楽しいしさ」
「たとえばぁ?」
「うーん、ケンカで強いやつとやりあえるとか?」
「それは戦闘狂のくおんだけだろぉ!」
レイジの正直な答えに、ゆきは両腕をあげながら文句を。
「ははは、それは冗談として、こういった時のだいご味といえば出会いとかじゃないのか?」
「出会いねぇ。人見知りだから、あまりほかの人とは関わりたくないんだけどぉ」
ゆきはみるからに嫌そうな表情をして、目をふせた。
「ははは、そういうなって。物は試しにこういうときの定番、酒場にでも行ってみようぜ」
そんな彼女の肩にポンポン手を置き、酒場の店を指さした。
酒場は出会いはもちろん、なにより情報が集まる場所。そこで聞き込みをすれば、もしかするとレイジたちがほしい情報が手に入るかもしれない。
「ああいうところ苦手なんだけどねぇ。でも、休むならちょうどいい場所だし、しかたなくつきあってあげるよぉ」
あまり乗り気じゃないゆきであったが、休息できるとあってしぶしぶついてくるのであった。
レイジたちが入った店は、まるで西部劇にあるような酒場。古びた木製のテーブル席が並び、カウンター後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。廃墟ふうのためあちこち廃れているが、そこがいい感じに雰囲気を出しているといっていい。そんな店内には物騒な雰囲気をただよわせる者たちが、テーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしてガヤガヤしていた。
レイジとゆきは空いたテーブル席に座り、さっそく一息つくことに。
「あー、生き返るー。歩き回ったあとのドリンクは格別だよぉ」
ゆきは注文したミルクをぐびぐびと飲み干す。
まさかエデンでもミルクとは、よほど身長関係を気にしているのだろう。ただ現実で飲まなければ、まったく意味がない話だが。
「ゆきの場合、そんなにもだけどな」
「うるさいなぁ。今労働後の至福の一杯を味わってるんだから、水を差さないでよねぇ」
ゆきはコップを勢いよくテーブルに置き、文句を言ってくる。
「ははは、わるい、わるい。とりあえず休憩がてら、状況の整理でもするか。まず今回のバグに関しては、いつもと少し違うらしいな。そのせいで発生源の特定がかなり難しいとか。でだ、ほかに手掛かりがないか現地で情報収集したところ、幽霊の目撃情報があったんだよな」
街で情報を集めたところ、一つ興味深いことが分かったのだ。それこそここ最近の出来事である幽霊の目撃情報。なんでもすぐ近くの荒野のあちこちで、小さい女の子の幽霊が姿を現しているらしい。彼女はふわふわと浮いており、遊ぼうとささやいてすぐ消えてしまうのだとか。
「幽霊なんてエデンにいるわけないし、見間違いじゃないのぉ?」
ゆきはバカらしいと、切り捨てる。
「でもどの目撃者も小さい女の子の幽霊だったって言ってるし、信ぴょう性は高いだろ」
「アビリティを使った、いたずらとかの可能性もあるけどねぇ」
「うっ、確かにその可能性はすてきれないか」
「そうそう、本物の幽霊なんているわけない! いるわけないんだからぁ!」
ゆきは腕を組み、うんうんと深くうなづきながら力説する。
ただ自分に言い聞かせようとしているみたいなのは、気のせいだろうか。
「すごい否定だな。あ、もしかしてお化けが怖いとか?」
「そんなわけがあるかぁ! ゆきは剣閃の魔女さまだぞぉ! お化けが怖いなんてそんな子供みたいな話、あるわけないだろぉ! ふ、ふふん」
つつましい胸をどんっとたたき、少しひきつった顔で主張するゆき。あと目もちょっと泳いでいたといっていい。もしかすると本当は苦手なのかもしれない。
「やっほー、ゆきにレイジ、こんなところで会うなんて、奇遇じゃん!」
そうこうしていると白神相馬の私兵でもある花火が、手を上げてあいさつしてきた。
「あ、はなびだぁ」
「花火? なんでここに?」
「ちょっと相馬さんからのオーダーでさー。エデン財団の動向を追ってるところなんだよねー」
花火はレイジたちの席に腰を下ろし、軽い感じで答えてくる。
「エデン財団だって!?」
「そう、相馬さん、今少しエデン財団上層部に探りを入れていてさー。ここでやつらがなにかを調査していることを、突き止めたんだよねー。それで花火さんが派遣されたってわけ」
「相馬さんも裏で動いているということか」
「そうまにいさん」
「でもまさかこのタイミングでエデン財団上層部が出てくるとはな。ゆき、これってもしかして?」
「うん、ただの偶然とは考えにくいなぁ」
現在この場所周辺は、バグの問題が発生している。こうなってくると彼らの狙いはレイジたちと同じ可能性がでてくるのだ。それにたとえ目的が違ったとしても、それはそれで彼らの動向を探る手がかりとなる。決して無視できるものではなかった。
「きゃはは、ビンゴ! どうやらウチがにらんだ通り、ゆきたちにはやつらの狙いに心あたりがあるみたいだねー。それって白神コンシェルンの最重要機密とも、なにか関係があったりしてー」
鋭い瞳を向けながら、ニヤニヤと笑みを浮かべる花火。
これにはゆきととぼけるしかない。
「ははは、なんのことだ? な、ゆき」
「そうだよぉ。ここには剣閃の魔女の仕事で偶然きただけでぇ」
「きゃはは、とぼけてももう遅いって! というわけでゆきたちに同行させてもらうから、よろしくー」
花火はケラケラ笑いながら、得意げにウィンクしてくる。
「おいおい、なんでそうなる?」
「当然の判断っしょ! 今すごい核心をついてるかもしれない手がかりが、目の前にあるんだから! これに乗らない手はないじゃん!」
「そっちがよくても、こっちになんの得があるんだよ」
「一つは戦力。向こうと目的が同じだった場合、ぶつかる可能性がある。そうなった場合少しでも戦力が多いことに越したことはないっしょ!」
「上層部のエージェントがいるかもしれないし、一理はあるな」
上層部のエージェントである咲、さらにパイロンと名乗っていた化け物じみた青年のことが思い出す。彼女たちにはほとんど歯が立たなかったため、少しでも戦力を増やして対策しておくのは確かに理にかなっていた。
「二つ目。相馬さんに情報を与えておくのも、そうわるくないってこと。相馬さん、最近保守派側に疑念を抱き始めてるから、もしかすると内部からいろいろ対策をとってくれるかもしれないよ?」
「確かに、相馬さんならもしもの時に備えて、いろいろ手を打つはず」
相馬は非常に優秀でさらに極度の野心家。そのため常にさまざまな手を考え、機を狙っているのだ。そんな彼ゆえうまいこと情報を渡せば、こちらのいいように動いてくれる可能性も高かった。
「あまり信用しすぎるのは危険な気がするけど、はなびの言う通りかもしれないねぇ」
「どうするゆき?」
「ここはついてきてもらおうかなぁ。はなびにはSSランクの電子の導き手のウデもあるし、調査が一気にはかどると思うからぁ」
ゆきは考えた結果、花火についてきてもらうことにしたらしい。
確かに彼女は戦力になるだけでなく、SSランクの電子の導き手の力を持つため非常に心強い味方といっていい。
「さっすがゆき、話がわっかるー」
「でもいいのか? 向こうとぶつかることになった場合、相馬さん側の人間がこっちにいてさ」
「きゃはは、そこはどうとでもなるっしょ! ウチは完全にオフで、なにもしらない。ここに来たのもゆきに依頼されて、ただ力を貸してるだけってね!」
花火はとぼけたように肩をすくめ、豪快に笑う。
「それなら大丈夫か」
「じゃあ、よろしくねぇ、はなび」
「まっ、ウチにまかせとけば、万事オッケーってね!」
親指を立てながら、明るい笑顔でウィンクする花火。
こうしてバグの調査に、花火が加わるのであった。
「暑い、疲れたぁ。こんな炎天下の荒野の街中とか、引きこもりのゆきにとって地獄すぎるだろぉ」
ゆきは歩きながらぐったりうなだれる。
「おいおい、ゆきが聞き込み側に参加してから、まだほとんど時間がたってないぞ」
さんざん歩き回っているような彼女だが、実際のところまだ三十分ぐらいしかたっていない。さっきからずっと歩き回っているレイジならまだしも、根を上げるのが早すぎではないだろうか。
「うるさいなぁ。ゆきはくおんみたいに肉体労働派じゃなく、頭を使って働くタイプなのぉ。だから体力がないのはあたり前なんだもん!」
ゆきはぷいっとそっぽを向いて主張を。
「ならマナのところに残ってればよかったんじゃ?」
「だってゆきがいても、とくに手伝えることがなさそうだったしさぁ。まずは原因の場所をある程度特定しないと、調べようがないって話ー。だからゆきの出番は、まなにもう少し場所の特定をしてもらってからだねぇ」
肩をすくめながら、マナがいるであろう廃墟のビルの屋上に視線を向けるゆき。
現在、バグについて調査しているのだが、かなり難航しているみたいなのだ。なんでも肝心のバグが発生している場所の特定が、うまくいかないとのこと。そのため今はマナ待ち。ある程度場所を絞れてから、レイジたちとゆきの出番というわけだ。
「まあ、闇雲に探しても、疲れるだけだもんな。肝心な時に動けないと、意味がないし」
「それにくおんと一緒に歩きたいなぁって」
ふとゆきがレイジの上着をつかみ、チラチラと上目づかいをしてくる。
「え?」
「っ!? く、くおんが一人だとさびしいと思って、ついてきてあげたんだもん! ありがたくおもってよねぇ!」
だがそれもつかの間、ゆきはビシッと指を突き付けて必死にうったえてくる。
「はぁ、それはどうも」
「でもこれだと残ってた方がよかったかもぉ。とくになにもなかったし、ムダにつかれたぁ」
そしてまたもやぐったりしだすゆき。
「たまには足を使って動くのも、いいものだぞ。いろいろな発見とかできて、楽しいしさ」
「たとえばぁ?」
「うーん、ケンカで強いやつとやりあえるとか?」
「それは戦闘狂のくおんだけだろぉ!」
レイジの正直な答えに、ゆきは両腕をあげながら文句を。
「ははは、それは冗談として、こういった時のだいご味といえば出会いとかじゃないのか?」
「出会いねぇ。人見知りだから、あまりほかの人とは関わりたくないんだけどぉ」
ゆきはみるからに嫌そうな表情をして、目をふせた。
「ははは、そういうなって。物は試しにこういうときの定番、酒場にでも行ってみようぜ」
そんな彼女の肩にポンポン手を置き、酒場の店を指さした。
酒場は出会いはもちろん、なにより情報が集まる場所。そこで聞き込みをすれば、もしかするとレイジたちがほしい情報が手に入るかもしれない。
「ああいうところ苦手なんだけどねぇ。でも、休むならちょうどいい場所だし、しかたなくつきあってあげるよぉ」
あまり乗り気じゃないゆきであったが、休息できるとあってしぶしぶついてくるのであった。
レイジたちが入った店は、まるで西部劇にあるような酒場。古びた木製のテーブル席が並び、カウンター後ろには様々な酒のボトルが立ち並んでいる。廃墟ふうのためあちこち廃れているが、そこがいい感じに雰囲気を出しているといっていい。そんな店内には物騒な雰囲気をただよわせる者たちが、テーブル席で軽い飲食物を取りながら仕事の話や談笑などをしてガヤガヤしていた。
レイジとゆきは空いたテーブル席に座り、さっそく一息つくことに。
「あー、生き返るー。歩き回ったあとのドリンクは格別だよぉ」
ゆきは注文したミルクをぐびぐびと飲み干す。
まさかエデンでもミルクとは、よほど身長関係を気にしているのだろう。ただ現実で飲まなければ、まったく意味がない話だが。
「ゆきの場合、そんなにもだけどな」
「うるさいなぁ。今労働後の至福の一杯を味わってるんだから、水を差さないでよねぇ」
ゆきはコップを勢いよくテーブルに置き、文句を言ってくる。
「ははは、わるい、わるい。とりあえず休憩がてら、状況の整理でもするか。まず今回のバグに関しては、いつもと少し違うらしいな。そのせいで発生源の特定がかなり難しいとか。でだ、ほかに手掛かりがないか現地で情報収集したところ、幽霊の目撃情報があったんだよな」
街で情報を集めたところ、一つ興味深いことが分かったのだ。それこそここ最近の出来事である幽霊の目撃情報。なんでもすぐ近くの荒野のあちこちで、小さい女の子の幽霊が姿を現しているらしい。彼女はふわふわと浮いており、遊ぼうとささやいてすぐ消えてしまうのだとか。
「幽霊なんてエデンにいるわけないし、見間違いじゃないのぉ?」
ゆきはバカらしいと、切り捨てる。
「でもどの目撃者も小さい女の子の幽霊だったって言ってるし、信ぴょう性は高いだろ」
「アビリティを使った、いたずらとかの可能性もあるけどねぇ」
「うっ、確かにその可能性はすてきれないか」
「そうそう、本物の幽霊なんているわけない! いるわけないんだからぁ!」
ゆきは腕を組み、うんうんと深くうなづきながら力説する。
ただ自分に言い聞かせようとしているみたいなのは、気のせいだろうか。
「すごい否定だな。あ、もしかしてお化けが怖いとか?」
「そんなわけがあるかぁ! ゆきは剣閃の魔女さまだぞぉ! お化けが怖いなんてそんな子供みたいな話、あるわけないだろぉ! ふ、ふふん」
つつましい胸をどんっとたたき、少しひきつった顔で主張するゆき。あと目もちょっと泳いでいたといっていい。もしかすると本当は苦手なのかもしれない。
「やっほー、ゆきにレイジ、こんなところで会うなんて、奇遇じゃん!」
そうこうしていると白神相馬の私兵でもある花火が、手を上げてあいさつしてきた。
「あ、はなびだぁ」
「花火? なんでここに?」
「ちょっと相馬さんからのオーダーでさー。エデン財団の動向を追ってるところなんだよねー」
花火はレイジたちの席に腰を下ろし、軽い感じで答えてくる。
「エデン財団だって!?」
「そう、相馬さん、今少しエデン財団上層部に探りを入れていてさー。ここでやつらがなにかを調査していることを、突き止めたんだよねー。それで花火さんが派遣されたってわけ」
「相馬さんも裏で動いているということか」
「そうまにいさん」
「でもまさかこのタイミングでエデン財団上層部が出てくるとはな。ゆき、これってもしかして?」
「うん、ただの偶然とは考えにくいなぁ」
現在この場所周辺は、バグの問題が発生している。こうなってくると彼らの狙いはレイジたちと同じ可能性がでてくるのだ。それにたとえ目的が違ったとしても、それはそれで彼らの動向を探る手がかりとなる。決して無視できるものではなかった。
「きゃはは、ビンゴ! どうやらウチがにらんだ通り、ゆきたちにはやつらの狙いに心あたりがあるみたいだねー。それって白神コンシェルンの最重要機密とも、なにか関係があったりしてー」
鋭い瞳を向けながら、ニヤニヤと笑みを浮かべる花火。
これにはゆきととぼけるしかない。
「ははは、なんのことだ? な、ゆき」
「そうだよぉ。ここには剣閃の魔女の仕事で偶然きただけでぇ」
「きゃはは、とぼけてももう遅いって! というわけでゆきたちに同行させてもらうから、よろしくー」
花火はケラケラ笑いながら、得意げにウィンクしてくる。
「おいおい、なんでそうなる?」
「当然の判断っしょ! 今すごい核心をついてるかもしれない手がかりが、目の前にあるんだから! これに乗らない手はないじゃん!」
「そっちがよくても、こっちになんの得があるんだよ」
「一つは戦力。向こうと目的が同じだった場合、ぶつかる可能性がある。そうなった場合少しでも戦力が多いことに越したことはないっしょ!」
「上層部のエージェントがいるかもしれないし、一理はあるな」
上層部のエージェントである咲、さらにパイロンと名乗っていた化け物じみた青年のことが思い出す。彼女たちにはほとんど歯が立たなかったため、少しでも戦力を増やして対策しておくのは確かに理にかなっていた。
「二つ目。相馬さんに情報を与えておくのも、そうわるくないってこと。相馬さん、最近保守派側に疑念を抱き始めてるから、もしかすると内部からいろいろ対策をとってくれるかもしれないよ?」
「確かに、相馬さんならもしもの時に備えて、いろいろ手を打つはず」
相馬は非常に優秀でさらに極度の野心家。そのため常にさまざまな手を考え、機を狙っているのだ。そんな彼ゆえうまいこと情報を渡せば、こちらのいいように動いてくれる可能性も高かった。
「あまり信用しすぎるのは危険な気がするけど、はなびの言う通りかもしれないねぇ」
「どうするゆき?」
「ここはついてきてもらおうかなぁ。はなびにはSSランクの電子の導き手のウデもあるし、調査が一気にはかどると思うからぁ」
ゆきは考えた結果、花火についてきてもらうことにしたらしい。
確かに彼女は戦力になるだけでなく、SSランクの電子の導き手の力を持つため非常に心強い味方といっていい。
「さっすがゆき、話がわっかるー」
「でもいいのか? 向こうとぶつかることになった場合、相馬さん側の人間がこっちにいてさ」
「きゃはは、そこはどうとでもなるっしょ! ウチは完全にオフで、なにもしらない。ここに来たのもゆきに依頼されて、ただ力を貸してるだけってね!」
花火はとぼけたように肩をすくめ、豪快に笑う。
「それなら大丈夫か」
「じゃあ、よろしくねぇ、はなび」
「まっ、ウチにまかせとけば、万事オッケーってね!」
親指を立てながら、明るい笑顔でウィンクする花火。
こうしてバグの調査に、花火が加わるのであった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヒトの世界にて
ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」
西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。
その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。
そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており……
SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。
ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。
どうぞお楽しみ下さい。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる