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4章 第4部 それぞれの想い

198話 今後

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 とおる、ルナたちとの戦いから一日がたち、レイジたちは現実のアイギスの事務所に集まっていた。
 相変わらず現実での事務所内は、那由多がロマンを求めたせいかおんぼろ。ここはさびれた四階建ての小さなテナントビルの一フロア。一応給湯室や小スペースの部屋があるが事務所内はけっこう狭く、さらに古い建物のためか床や壁が痛んでいる。それゆえかなりみずほらしく見えてしまうのだ。実際今来ているかえでも、よくこんなところで働けるわねと酷評の嵐。いやいや事務所内に入っていったという。
 ちなみに中にいるのはカノン、那由他、結月。さらには今後の方針を確認するためと、白神しらかみ楓と東條とうじょう冬華ふゆか。さらには楓に無理やり連れてこられたゆきの姿も。レーシスはあちこち駆け回っているらしく、来ていなかった。
 テーブルには料理やお菓子が。現在カノンが自由になれたことへの、ささやかなパーティも平行してやっているのであった。

「――うぅ、カノンが自由になれて、本当によかったよー。これで好きなだけ一緒にいられるね」

 結月はうれし泣きをしながら、カノンへと寄り添う。

「いやー、一時はどうなることかと思いましたが、こんなにもうまくいくとは! もう、大万歳ですねー!
「ははは、まったくだ」
「えへへ、これもみんなのおかげなんだよ。本当にありがとう」

 カノンは結月の頭をやさしくなでながら、みなに心からのお礼を。

「でも那由他ちゃんの出番が少なかったのは、気のせいでしょうかねー。後半ずっとお留守番るすばんだった気が……」

 ほおに指を当てながら、あれれーと首をかしげだす那由多。

「はっ!? もしやこれはカノンが加わったことで、メインヒロインの座が危うくなってる前兆ぜんちょうでは!?」

 そして那由多は両手で口元を押さえながら絶句し、よくわからんことを口に。

「いや、メインヒロインって、それただの自称だろ」
「うわーん、マジレスしないでくださいよー!」

 そんなするどいツッコミに、那由他は涙目でレイジの胸板をトントンたたいてくる。

「――はぁ……、それよりなんでゆきまでここに呼ばれてるのぉ? ゆきはアイギスメンバーでもなんでも、ないのにさぁ」

 そんな中ゆきがぐったりテーブルにふせながら、深いため息を。
 彼女は根っからの引きこもりのため、現実では基本外に出たくない。なのでいつもよりテンション低めのようだ。

「ははは、そういえばゆきは、楓さんに連れてこられたんだっけ?」
「無理やりねぇ。ああ、今日はずっとごろごろしていたい気分だったのになぁ」
「さて、みなさん。いつまでもよろこんでる暇はありませんよ! ここからが正念場しょうねんば! 革新派、保守派の野望を止めながら、カノンさんの株を上げていかなければなりません! そのためにも我々巫女派、一丸いちがんとなってがんばりましょう!」

 ゆきがぼやいていると、冬華が手をたたきみなの注目を集める。そして今後のことについて熱くかたり始めた。
 これからレイジたちが目指すのは、カノンの巫女の権限でアポルオンの方針を変えること。そのためにも革新派や保守派の野望を食い止めつつ、発生する問題を解決して功績を築き上げていかなければならない。こうすることで賛同者を増やし、カノンの案が通るようにするのだ。

「うん、そうだね。みんなの力、今一度貸してほしいんだよ」

 カノンの心からのお願いに、レイジ、那由他、結月は迷わずうなづく。
 ゆきは仕方ないなと、楓は相変わらずお菓子を食べ話を聞いていた。

「うふふふ、カノンさんの道はこの東條家新当主、東條冬華が照らしますので大船に乗った気でいてください!」
「それにしてもまさか冬華が、東條家の当主になってるとは……」

 胸をどんっとたたき力強く宣言する冬華に、驚きの感想を伝える。
 そう、冬華は昨日レイジたちと別れてから、東條家当主の座についたのである。そして正式にアポルオン内で、カノンとの同盟を公言したそうだ。

「うふふふ、これからカノンさんをプロデュースするにあたり、権力が多いのに越したことはないでしょう? それに東條の新当主がアポルオンの巫女と組んだという方が、与えるインパクトも大きいでしょうし! だからいろいろがんばっちゃいました!」
「確かに、言われてみればそうだな」

 こんな早い段階で前東條家当主が、冬華にその座をゆずったという事実。どうやら東條家は、それほどまでにカノンとの同盟に賭けているのかもしれない。だから冬華の案をこんなにもすんなり受け入れたのかも。
 思考していると、さっきまでお菓子をもくもくと食べていた楓が話に加わってきた。

「とりあえず今のところは順調というわけね。ゆきもうかうかしてられないわよ。カノンさんや東條冬華に負けないように、頑張らないと」
「え? かえでねえさん、どういうことぉ?」

 ゆきには心当たりがないのか、ちょこんと首をかしげる。
 すると楓が先程までとは別人のような、真剣なおもむきで告げ始めた。

「あら、そういえばまだ言ってなかった? じゃあ、この場を借りて言わせてもらうわね。ゆき、あなたには白神家次期当主になってもらうわよ」
「――え? えぇーーーーーー!?」

 楓のオーダーに、ゆきの驚愕きょうがくの声が事務所内にひびくのであった。
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