上 下
186 / 253
4章 第3部 謎の少女と追いかけっこ

181話 痛い視線

しおりを挟む
「さて、いろいろ聞き出したいところですが、その前に。お二人とも、誰もあそこまでやれとは言ってないのですが?」

 美月はやれやれと肩をすくめながら、なにやらレイジたちにイタイ視線を向けてくる。

「そうだよ! なにさきを放って、公衆こうしゅうの面々でイチャついてるの!」

 すると咲がまたもやテーブルをドンドンたたき、ふてくされたように抗議を。
 今レイジたちは全員カフェテラスの席に。咲も観念かんねんしたのか大人しく居座いすわり、買ってあげたドリンクを飲んでいた。

「いや、イチャついてるってなんだよ……」
「言いのがれできませんよ。もはや完全に、二人の世界に入っていましたからね。それはもう、周りが殺意の嵐を抱くほど。バカップルはぜろと、美月も思わず思ってしまうほどでした」

 ジト目でズケズケとレイジたちの痛いところをついてくる美月。
 どおりでさっきから周りの視線がイタイわけだ。こんな物騒な場所で場違いな甘々な空気を出していれば、嫌でも目立つというもの。おそらくかなりの嫉妬しっとの嵐を招いたに違いない。

「――ははは……、そんなことになってたのか……」
「――えっへへ、お恥ずかしいばかりなんだよ」

 もはや二人でしゅんとなりながら、テレ笑いするしかない。
 穴があったら入りたいとは、このことなのだろう。

「お姉さんだけずるい! 咲もお兄さんと、さっきのゲームやるー!」

 だがそこへまさかの発言が飛び込んできた。なんと咲がさっきのお菓子の箱をレイジに突き付け、ねだってきたのである。

「いや、やらないからな」
「ふふん、あれー、お兄さん、そんなこと言っていいのかなー? 咲の機嫌きげんをとっといた方が、有益な情報を聞き出せると思うけどなー?」

 すると咲はほおに指をポンポン当て、ニヤニヤと小悪魔っぽい笑みを向けてきた。

「おい、卑怯ひきょうだぞ」
「カノンさん、いいんですか? レイジさんがとられようとしてますよ?」
「レージくん、浮気うわきだね」

 咲にせまられるレイジの姿を見て、ジト目を向けてくるカノン。

「カノン、そのみょうにイタイ視線、やめてくれないか? 」
「ほらほらー、お兄さん、早くー、早くー。咲、待ちくたびれちゃうよー」

 レイジの気も知らず、咲はチョコの棒のお菓子をスタンバイして催促さいそくを。

「クス、ではおもしろそうなので、美月も参戦させてもらいましょうか。あとで姉さんをからかうのに、使えそうですし」

 そこへなぜか美月も加わりだす。
 彼女のよからぬことを考えてそうな表情をみるに、愉快犯的な行動だろう。しかも今だけじゃなく、そのあとにまで被害を拡大させようとするタチの悪さだ。

「美月、なにしれっとまざってきてるんだ? それあとで結月に怒られるパターンのやつだろ?」
「クス、いいじゃないですか。その分いい思いができるんですから。さあ、レイジさん、お願いします」
「ねえ、お兄さんまだー」

 美月と咲はチョコの棒をくわえ、詰めよってくる。

「わぁー、レージくんモテモテだねー」

 そしてそこへカノンのジト目でのツッコミが。もはやその口調は笑っていなかったといっていい。
 さらに気付けば通行人からもイタイ視線が。今やレイジはかなりヘイトを集める事態に、おちいってしまっていたのだ。

「――あー、どうしてこんなことに……」

 もはやお手上げ状態。天を見上げ、現実逃避するしかない。
 ただいつまでもこうしているわけにはいかないので、どうしようか迷っていると。

「あっ、もうこんな時間なんだ」

 咲がふとなにかに気付いた。

「どうした咲?」
「ごめんね! お兄さんたち! 咲、そろそろお仕事の時間だから、お別れの時間だよ!」
「おい、つかまえたら話してくれるんじゃなかったのか!」
「ふふん、あれは卑怯ひきょうな作戦を使ったから、ノーカンでしょ! 第一、あれはお兄さん一人での話だったしね!」

 咲は指をクルクルと振り、小悪魔な笑みで正論を口に。そして立ち上がり、この場から去ろうと。

「クッ!?」
「今日は楽しかったよ! また遊ぼうね! お兄さん!」
「逃がすか!」

 つかまえようとするが、咲はかろやかに跳躍ちょうやく。カフェの屋根の上に。

「ふふん、残念! ばいばーい!」

 それから咲は満足げな笑顔で手を振り、そのまま逃げていく。

「咲のやろう……」
「どうしよう、レージくん!? 追いかけるかな?」
「あの速度について行くのは至難だが、やるしかないな。貴重な情報源をみすみす逃がすわけにはいかない」

 彼女は現在エデン財団上層部につながる、今のところ唯一の手掛かり。ここまできて収穫なしとはいかないのだ。よってすぐさま追いかけようとするが、そこへ美月の静止の声が。

「クス、そうあわてずに。こうなることは想定済みですよ」
「美月、もしかしてなにか策があるのか」
「美月をなめないでください。すでに手は打っていますよ。リネット、首尾しゅびの方はどうですか?」

 美月はなにやら通話で確認をとる。
  その通話から聞こえてくる声には、聞き覚えがあった。

「誰にモノを言ってる? この幻惑げんわくの人形師にかかれば、追跡ついせきぐらいよゆう」
「え? その子は確か……」

 そう、革新派との戦いで、何度か目にしたことがある少女。白神しらかみゆきのライバル的存在で、電子のみちびき手SSランク幻惑の人形師。リネット・アンバーであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお
SF
姉と言うのは年上ときまったものですが、友子の場合はちょっと……かなり違います。

NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。 それは現地人(NPC)だった。 その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。 「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」 「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」 こんなヤバいやつの話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ヒトの世界にて

ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」 西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。 その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。 そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており…… SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。 ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。 どうぞお楽しみ下さい。

鉄錆の女王機兵

荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。 荒廃した世界。 暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。 恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。 ミュータントに攫われた少女は 闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ 絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。 奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。 死に場所を求めた男によって助け出されたが 美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。 慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。 その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは 戦車と一体化し、戦い続ける宿命。 愛だけが、か細い未来を照らし出す。

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...