39 / 253
1章 第2部 電子の世界エデン
36話 アーカイブポイント
しおりを挟む
あれからしばらく廃虚の街中を歩き、ようやく目的の場所に到着。見渡せば廃れた高層マンションがずらりと立ち並んでいる。そして今レイジたちがいるのは、そんなマンション街の中心付近にそびえたつバカでかい高層マンション前であった。
ちなみにあれからワシのガーディアンは、レイジたちに追従していない。一応ゆきのことだから、少し離れたところで周辺を索敵しながら待機させてあるのだろう。
「やっとゆきのアーカイブポイントにたどり着いたか」
アーカイブポイント。それはクリフォトエリアで、アーカイブスフィアやメモリースフィアを守るために必要不可欠な要塞だ。用意するにはまずクリフォトエリアに広がる地上のどこかに起点となる穴を開け、その内部の空間へデータによる建造物を建てる流れ。言葉では大変そうな気もするが、実際のところ白神コンシェルンや改ざんを使える者に力を貸してもらえば、ものの数時間ですべての作業をおえることができるといっていい。所詮データで出来た電子の世界の中なので、内部構造を作り変えるなど知識さえあれば造作もないらしい。
アーカイブポイントを作った後はその場所に、個人が好きなだけセキュリティをほどこしていく流れである。そのメインは主にアーカイブポイントに入るための入口であるセキュリティーゾーンと、建物内のアーカイブスフィアなどを実際に保管しておく区画部分の二つ。特にセキュリュティゾーンは防衛の要になるので、より厳重にセキュリティーがほどこされていた。
「え? この場所がそうなの? さっきまで見てきたアーカイブポイントみたいに、半透明の建物が見えないんだけど」
ここに来る途中、アーカイブポイントがある場所を何度か目にしていた。明らかに他の建造物とは違う青白い半透
明の建物が、デュエルアバター使いたちに守られている光景を。
これはアーカイブポイントという要塞の弱点の一つで、空間内部の建物が青白い半透明で見えてしまうというもの。しかもその青白い半透明の建物に重なるクリフォトエリアに元々あった建造物などは消えてしまうので、かなり目立ってしまうのだ。よってクリフォトエリアを歩き回っていれば、自然に目に付くのであった。
「半透明に見える部分を丸ごと、用意した建造物で覆い隠し偽装してるからな。ほかにもここら一帯に厳重な監視網や、電子の導き手の目に引っかからないようにしてるらしいぞ」
ゆきの場合は見つかって襲撃されたくないので、自身の電子の導き手の才能をフルに使い、反則技ギリギリのこういった偽装をほどこしているのである。この偽装工作はほかの電子の導き手が直接近くを通らない限り、発見は難しいらしい。実際ここまで偽装をするのには骨が折れるらしく、そう何度もやるのは御免だそうだ。それゆえ一番発見されやすいであろう、電子の導き手相手の対策も万全に済ませているとのこと。
「なるほどね。それでこれからどうする? もう中に入っちゃっていい感じ?」
「周りの警戒はゆきがしてるはずだし、たぶん大丈夫だろ。中に入ったら内部の空間へとばされるから気を付けてな」
二人が中に入ると、急に座標移動した時のような感覚が。これはアーカイブポイント内に入ろうとした時起こるもので、内部の空間へと自動的にとばされているのだ。
気づくとレイジたちは、ゆきのアーカイブポイントの中にある建物内にいた。中はマンション内ではなく、高級感あふれる立派なお屋敷のエントランス。天井にはきらびやかなシャンデリア。床は重厚感あふれるカーペットが敷かれ、あちこちに手の込んでいそうな銅像や、騎士の鎧といったオブジェが飾られている。そしてここで普通と違うのは、建物内の広さだろう。このエントランスだけでなく、通路もまた幅、高さともに広々としている。そう、どこもかしくも全体的に一回りでかい仕様になっているのだ。ゆえに室内はもちろん、通路内でも思う存分戦闘が行えるのであった。
こうなっているのもこの場所が住居ではなく、アーカイブスフィアなどを守る要塞だから。ゆえに侵入者を排除するための戦闘を考慮して作られており、あちこちにトラップやバリケード、敵を迎え撃つ防衛ラインなどがいくつも用意されているのである。あと建物内の天井や壁などはどこも強固な材質で作られており、そうそう壊れはしない。なので突き破って進むことは難しく、できてもかなり時間がかかってしまうのだ。基本アーカイブポイント内の建物はこんなふうにバカでかく作られており、中はバリバリに防備を固めているのが一般的であった。
ちなみにこのアーカイブポイント内に建てられているのは、三階建てのバカでかい洋館とのこと。ただこれはどこのアーカイブポイントにもいえることなのだが、基本建物内から出ることは不可能となっていた。そのため外から屋上に向かい、上から侵入といったルートはとれないのである。
「わぁ、すごい広いお屋敷! 私の予想ではもっと、現代風の建物かと思ってたよ!」
結月は物珍しそうに辺りを見渡し、はしゃいでいる。
「ここは三階建てのバカでかい洋館だ。建物はゆきの趣味でこうなってるだけで、ほかのところは基本そんな感じだな」
「そっか。データの建物だから好きなようにできるものね」
「――一応アーカイブポイントに入った時の補足をしとくと、ここに直接来れたのはゆきが許可してくれたからだ。
もし許可がなかったら今ごろ、侵入者対策用のセキュリティゾーンへとばされてた」
許可を与えられていない者は必ず、厳重なセキュリティがほどこされた外敵撃退用のセキュリティゾーンへと向かうことになるのだ。それ以外にアーカイブポイント内部への侵入経路はなく、侵入者は罠が敷き詰められている通路をあえて進むしかないのであった。
セキュリュティゾーンの部分はここだけ独立した特殊な空間になっており、この場所の最奥にたどり着けば目的のアーカイブポイントの内部に出れるという仕組み。その構造はというと複雑で巨大な迷路状になっており、ゲームでよくあるダンジョンのようなもの。ここにセキュリティ用の障壁や、警備用の自動人形であるガーディアンを設置。さらに私兵やエデン協会の人間などの増員を呼んだりして、侵入者の妨害を行う流れだ。ただいくら防備を固めたとしても、凄腕のデュエルアバター使いが来れば時間稼ぎ程度にしかならないといっていい。それゆえ異変を察知したらすぐにエデン協会に依頼して増援を呼びまくり、物量によって侵入者を撃退させるのが一般的なやり方。なのでいち早く敵を察知する必要があり、企業や財閥はアーカイブポイント周辺に私兵やエデン協会の者を警護につけるのが一般的であった。
ちなみにアーカイブポイントの所有者なら、セキュリティゾーンに入ろうとする友軍を好きな地点に送り込むことができた。よってゴール地点手前に送り、防備を固めつつ迎え打たせるということも。あとセキュリティゾーンに侵入者が入った場合、アーカイブポイントの所有者のところへ警告がくるらしい。それは現実にいようが、クリフォトエリア内のどこにいようが知らせが入るため、すぐに防衛行動に移れるのであった。
「確かゲームでよくあるダンジョンみたいなところだよね。そこで時間を稼いでる間に戦力をかき集めたり、持ち出すメモリースフィアの準備をしたりするんだっけ」
「ああ、だから少しでも早く敵が攻めてきたのを察知するため、アーカイブポイントを事前に警護する人間を雇っておくわけだ。本来ならここも軍が警備する手はずだったんだが、ゆきが目立つからって断ったらしい」
「軍が?」
「剣閃の魔女と軍はいろいろつながりがあるからな。――さて、ゆきも待ってることだし先を急ごう」
「うん、でもこの洋館の広さから見て、かなり歩かないといけないんじゃ?」
「そこんとこは大丈夫。ゆきがいる、三階に続く隠し通路があるからそこを通ればすぐだ」
「へぇ、そんなのがあるんだ。それは楽でいいけど、少し残念。この洋館、内装とかすごく凝ってるみたいだし、ちょっとした観光気分で回れると思ったんだけど」
結月はくるっと周りを見渡し、肩を落とす。
「あー、それはマジでおすすめできないな。ゆきの話によると一、二階は外敵用のトラップが大量に設置されてるらしい。しかもそのいくつかは剣閃の魔女お墨付きで、デュエルアバターであろうともひとたまりもないとか……」
そう、この洋館が無駄にでかいのは主に外敵用のため。様々なトラップはもちろん、内部構造が迷路状になっていたりして、侵入者が中心部に易々とたどり着けなくしていた。そのため正しいルートを知っておかないと、三階にたどり着くまで一苦労するのだ。
「あはは、さあ、久遠くん。寄り道せずに隠し通路を使おう!」
さすがにそんな道を行くのはごめんだと、考えをすぐさま改める結月。
「ははは、懸命な判断だ」
レイジはさっそく隠し扉の仕掛けがある壁に、手を当てる。するとすぐ隣の壁が開き、その中には上の階へと続くらせん階段が。これが三階へとショートカットする通路であり、
ゆきが許可をだしている時限定でいける場所なのだ。
「おっ、そうだ。一応那由他に、ついたことを連絡してと」
「そっか、アーカイブポイント内だと、外との連絡がつくんだったね」
「ああ、クリフォトエリアは基本外部と連絡は取れないけど、アーカイブポイント内なら大丈夫なんだ」
本来クリフォトエリアにいる時は外部とのやりとりができない。なので現実やほかのエリアと切り離された状態になり、非常に不便なのだ。しかしアーカイブポイント内だと、その制限が当てはまらず可能に。だからクリフォトエリアに入る前、ゆきに送った連絡が無事彼女に届いたのであった。
「ちなみにアーカイブスフィアが保管されているアーカイブポイント内だと、普通にネットにつながるぞ。アーカイブスフィアに関しては、保管されてるものだけつながれるって感じだ」
「ほんとだ。普通にネットで調べられるね」
結月は画面を開き、実際に試し始める。
本来なら情報といったたぐいから、完全に切り離されてしまうクリフォトエリア。しかしアーカイブスフィアがあるアーカイブポイント限定で、ネット回線に。さらにはアーカイブスフィアの方も、その場所に保管されているやつだけにならつながることができるのだ。これにより外と切り離されることなく、安心して仕事ができる。なのでゆきはたいてい自身のアーカイブポイントにこもり、電子の導き手の仕事をしているのだ。これこそゆきが常に本命のアーカイブポイントにいる理由なのであった。
「よし、連絡も入れたことだし、さっさと用件を済ましに行くか」
そして連絡をおえ、レイジたちはゆきがいるであろう三階の仕事場に向かった。
ちなみにあれからワシのガーディアンは、レイジたちに追従していない。一応ゆきのことだから、少し離れたところで周辺を索敵しながら待機させてあるのだろう。
「やっとゆきのアーカイブポイントにたどり着いたか」
アーカイブポイント。それはクリフォトエリアで、アーカイブスフィアやメモリースフィアを守るために必要不可欠な要塞だ。用意するにはまずクリフォトエリアに広がる地上のどこかに起点となる穴を開け、その内部の空間へデータによる建造物を建てる流れ。言葉では大変そうな気もするが、実際のところ白神コンシェルンや改ざんを使える者に力を貸してもらえば、ものの数時間ですべての作業をおえることができるといっていい。所詮データで出来た電子の世界の中なので、内部構造を作り変えるなど知識さえあれば造作もないらしい。
アーカイブポイントを作った後はその場所に、個人が好きなだけセキュリティをほどこしていく流れである。そのメインは主にアーカイブポイントに入るための入口であるセキュリティーゾーンと、建物内のアーカイブスフィアなどを実際に保管しておく区画部分の二つ。特にセキュリュティゾーンは防衛の要になるので、より厳重にセキュリティーがほどこされていた。
「え? この場所がそうなの? さっきまで見てきたアーカイブポイントみたいに、半透明の建物が見えないんだけど」
ここに来る途中、アーカイブポイントがある場所を何度か目にしていた。明らかに他の建造物とは違う青白い半透
明の建物が、デュエルアバター使いたちに守られている光景を。
これはアーカイブポイントという要塞の弱点の一つで、空間内部の建物が青白い半透明で見えてしまうというもの。しかもその青白い半透明の建物に重なるクリフォトエリアに元々あった建造物などは消えてしまうので、かなり目立ってしまうのだ。よってクリフォトエリアを歩き回っていれば、自然に目に付くのであった。
「半透明に見える部分を丸ごと、用意した建造物で覆い隠し偽装してるからな。ほかにもここら一帯に厳重な監視網や、電子の導き手の目に引っかからないようにしてるらしいぞ」
ゆきの場合は見つかって襲撃されたくないので、自身の電子の導き手の才能をフルに使い、反則技ギリギリのこういった偽装をほどこしているのである。この偽装工作はほかの電子の導き手が直接近くを通らない限り、発見は難しいらしい。実際ここまで偽装をするのには骨が折れるらしく、そう何度もやるのは御免だそうだ。それゆえ一番発見されやすいであろう、電子の導き手相手の対策も万全に済ませているとのこと。
「なるほどね。それでこれからどうする? もう中に入っちゃっていい感じ?」
「周りの警戒はゆきがしてるはずだし、たぶん大丈夫だろ。中に入ったら内部の空間へとばされるから気を付けてな」
二人が中に入ると、急に座標移動した時のような感覚が。これはアーカイブポイント内に入ろうとした時起こるもので、内部の空間へと自動的にとばされているのだ。
気づくとレイジたちは、ゆきのアーカイブポイントの中にある建物内にいた。中はマンション内ではなく、高級感あふれる立派なお屋敷のエントランス。天井にはきらびやかなシャンデリア。床は重厚感あふれるカーペットが敷かれ、あちこちに手の込んでいそうな銅像や、騎士の鎧といったオブジェが飾られている。そしてここで普通と違うのは、建物内の広さだろう。このエントランスだけでなく、通路もまた幅、高さともに広々としている。そう、どこもかしくも全体的に一回りでかい仕様になっているのだ。ゆえに室内はもちろん、通路内でも思う存分戦闘が行えるのであった。
こうなっているのもこの場所が住居ではなく、アーカイブスフィアなどを守る要塞だから。ゆえに侵入者を排除するための戦闘を考慮して作られており、あちこちにトラップやバリケード、敵を迎え撃つ防衛ラインなどがいくつも用意されているのである。あと建物内の天井や壁などはどこも強固な材質で作られており、そうそう壊れはしない。なので突き破って進むことは難しく、できてもかなり時間がかかってしまうのだ。基本アーカイブポイント内の建物はこんなふうにバカでかく作られており、中はバリバリに防備を固めているのが一般的であった。
ちなみにこのアーカイブポイント内に建てられているのは、三階建てのバカでかい洋館とのこと。ただこれはどこのアーカイブポイントにもいえることなのだが、基本建物内から出ることは不可能となっていた。そのため外から屋上に向かい、上から侵入といったルートはとれないのである。
「わぁ、すごい広いお屋敷! 私の予想ではもっと、現代風の建物かと思ってたよ!」
結月は物珍しそうに辺りを見渡し、はしゃいでいる。
「ここは三階建てのバカでかい洋館だ。建物はゆきの趣味でこうなってるだけで、ほかのところは基本そんな感じだな」
「そっか。データの建物だから好きなようにできるものね」
「――一応アーカイブポイントに入った時の補足をしとくと、ここに直接来れたのはゆきが許可してくれたからだ。
もし許可がなかったら今ごろ、侵入者対策用のセキュリティゾーンへとばされてた」
許可を与えられていない者は必ず、厳重なセキュリティがほどこされた外敵撃退用のセキュリティゾーンへと向かうことになるのだ。それ以外にアーカイブポイント内部への侵入経路はなく、侵入者は罠が敷き詰められている通路をあえて進むしかないのであった。
セキュリュティゾーンの部分はここだけ独立した特殊な空間になっており、この場所の最奥にたどり着けば目的のアーカイブポイントの内部に出れるという仕組み。その構造はというと複雑で巨大な迷路状になっており、ゲームでよくあるダンジョンのようなもの。ここにセキュリティ用の障壁や、警備用の自動人形であるガーディアンを設置。さらに私兵やエデン協会の人間などの増員を呼んだりして、侵入者の妨害を行う流れだ。ただいくら防備を固めたとしても、凄腕のデュエルアバター使いが来れば時間稼ぎ程度にしかならないといっていい。それゆえ異変を察知したらすぐにエデン協会に依頼して増援を呼びまくり、物量によって侵入者を撃退させるのが一般的なやり方。なのでいち早く敵を察知する必要があり、企業や財閥はアーカイブポイント周辺に私兵やエデン協会の者を警護につけるのが一般的であった。
ちなみにアーカイブポイントの所有者なら、セキュリティゾーンに入ろうとする友軍を好きな地点に送り込むことができた。よってゴール地点手前に送り、防備を固めつつ迎え打たせるということも。あとセキュリティゾーンに侵入者が入った場合、アーカイブポイントの所有者のところへ警告がくるらしい。それは現実にいようが、クリフォトエリア内のどこにいようが知らせが入るため、すぐに防衛行動に移れるのであった。
「確かゲームでよくあるダンジョンみたいなところだよね。そこで時間を稼いでる間に戦力をかき集めたり、持ち出すメモリースフィアの準備をしたりするんだっけ」
「ああ、だから少しでも早く敵が攻めてきたのを察知するため、アーカイブポイントを事前に警護する人間を雇っておくわけだ。本来ならここも軍が警備する手はずだったんだが、ゆきが目立つからって断ったらしい」
「軍が?」
「剣閃の魔女と軍はいろいろつながりがあるからな。――さて、ゆきも待ってることだし先を急ごう」
「うん、でもこの洋館の広さから見て、かなり歩かないといけないんじゃ?」
「そこんとこは大丈夫。ゆきがいる、三階に続く隠し通路があるからそこを通ればすぐだ」
「へぇ、そんなのがあるんだ。それは楽でいいけど、少し残念。この洋館、内装とかすごく凝ってるみたいだし、ちょっとした観光気分で回れると思ったんだけど」
結月はくるっと周りを見渡し、肩を落とす。
「あー、それはマジでおすすめできないな。ゆきの話によると一、二階は外敵用のトラップが大量に設置されてるらしい。しかもそのいくつかは剣閃の魔女お墨付きで、デュエルアバターであろうともひとたまりもないとか……」
そう、この洋館が無駄にでかいのは主に外敵用のため。様々なトラップはもちろん、内部構造が迷路状になっていたりして、侵入者が中心部に易々とたどり着けなくしていた。そのため正しいルートを知っておかないと、三階にたどり着くまで一苦労するのだ。
「あはは、さあ、久遠くん。寄り道せずに隠し通路を使おう!」
さすがにそんな道を行くのはごめんだと、考えをすぐさま改める結月。
「ははは、懸命な判断だ」
レイジはさっそく隠し扉の仕掛けがある壁に、手を当てる。するとすぐ隣の壁が開き、その中には上の階へと続くらせん階段が。これが三階へとショートカットする通路であり、
ゆきが許可をだしている時限定でいける場所なのだ。
「おっ、そうだ。一応那由他に、ついたことを連絡してと」
「そっか、アーカイブポイント内だと、外との連絡がつくんだったね」
「ああ、クリフォトエリアは基本外部と連絡は取れないけど、アーカイブポイント内なら大丈夫なんだ」
本来クリフォトエリアにいる時は外部とのやりとりができない。なので現実やほかのエリアと切り離された状態になり、非常に不便なのだ。しかしアーカイブポイント内だと、その制限が当てはまらず可能に。だからクリフォトエリアに入る前、ゆきに送った連絡が無事彼女に届いたのであった。
「ちなみにアーカイブスフィアが保管されているアーカイブポイント内だと、普通にネットにつながるぞ。アーカイブスフィアに関しては、保管されてるものだけつながれるって感じだ」
「ほんとだ。普通にネットで調べられるね」
結月は画面を開き、実際に試し始める。
本来なら情報といったたぐいから、完全に切り離されてしまうクリフォトエリア。しかしアーカイブスフィアがあるアーカイブポイント限定で、ネット回線に。さらにはアーカイブスフィアの方も、その場所に保管されているやつだけにならつながることができるのだ。これにより外と切り離されることなく、安心して仕事ができる。なのでゆきはたいてい自身のアーカイブポイントにこもり、電子の導き手の仕事をしているのだ。これこそゆきが常に本命のアーカイブポイントにいる理由なのであった。
「よし、連絡も入れたことだし、さっさと用件を済ましに行くか」
そして連絡をおえ、レイジたちはゆきがいるであろう三階の仕事場に向かった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~
ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。
それは現地人(NPC)だった。
その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。
「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」
「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」
こんなヤバいやつの話。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ヒトの世界にて
ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」
西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。
その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。
そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており……
SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。
ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。
どうぞお楽しみ下さい。
鉄錆の女王機兵
荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。
荒廃した世界。
暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。
恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。
ミュータントに攫われた少女は
闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ
絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。
奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。
死に場所を求めた男によって助け出されたが
美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。
慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。
その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは
戦車と一体化し、戦い続ける宿命。
愛だけが、か細い未来を照らし出す。
【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、pixivにも投稿中。
※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。
※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる