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3章 第2部 学園生活の始まり
95話 クラスメイト
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「平和だな」
教室でクラスメイト達が、わいわい楽しそうに過ごしているのを見渡す。
その中には同じクラスになった奈月と灯里の姿も。灯里は陣が購買で買ってあげた朝食セット。メロンパンを食べ終え、イチゴミルクの紙パックを片手に奈月とおしゃべりしていた。
「やあ、陣、いつも通りそうでなによりだ」
そこへ雨宮カナメが気さくに話しかけてくる。
ちなみに彼とも同じクラスだったという。
「カナメか。どういう意味だ?」
「求めていた輝きを手に入れて、人が変わったかのように魔道へのめり込んでたらどうしようかと思ってたよ」
「そうしたいのは山々だが、あいつらがいるからそうもいかないんだよな」
奈月と灯里の方を感慨深く見つめる。
登校時にも思ったが、どうやら最近の陣は灯里に毒されているらしい。求めて止まない輝きを手に入れてもなお、なにげない日常にいようとするとは自分でも驚きだ。それほどまでに同類であり、陣とは対極の陽だまりの道を選んだ灯里に魅せられ、影響を受けてしまっているのだろう。
「ハハハ、いいじゃないか。ボクとしてもまた学園でダルがらみできるのは、うれしいことだ。魔道の求道はあせらず、ゆっくりやっていけばいいさ」
カナメが陣の肩を組んで、涼やかな笑みを浮かべてきた。
「離れろ暑苦しい」
「テレなくてもいいじゃないか。ボクたちの仲だろ?」
「おまえとそんな深い関係になった覚えはないが」
カナメを押しのけていると、灯里と奈月が陣たちの方へとやってきた。
「ねー、ねー、陣くんから熱い視線を感じたんだけど!」
「いったいどうしたのかしら?」
「陣がね、このなにげない日常にいられるのは、二人がつなぎ止めてくれているからだって感謝してたよ」
「そうなの! 陣くん!」
「あら、陣がまさかそんなふうに思っていただなんて。普段はあんなに、しかたないからみたいな感じなのにね」
灯里と奈月が、どこか感動したようなまなざしを向けてくる。
「いや、そこまで言ってないからな! カナメが変な解釈して、大げさに言ってるだけだ!」
「そうかい? ボクは陣の心の中を代弁しただけなんだけど? その証拠に、陣の必死に否定する反応。それって図星ってことだよね?」
「わー、陣くん、テレ隠しかわいいねー!」
「陣、観念したほうがいいんじゃない? 墓穴をほるだけよ」
陣の反応に、ニヤニヤしてくる三人。
実際のところ、カナメの言う通りのところもあるため、悔しいがこれ以上言い返せなかった。
「――くっ……」
「そういえば水無瀬さんだったね、ボクは陣の親友の雨宮カナメ」
「それは奇遇だね! 実はわたしも陣くんの親友なんだ!」
するとカナメと灯里があいさつしだす。
「へー、ついでに言っておくと、ボクたち幼馴染で昔から深い深い仲でさ」
「あはは、でも仲っていうのは、時間の長さだけじゃ計れないよね! どれだけ気が合い、濃密な時間を過ごしたかだと思うの! そしてわたしたち多大な葛藤と苦難を乗り越え、かたいかたい絆で結ばれているんだなー、これが!」
「なるほど。でも小さいころからずっと仲がいいのは、かなり補正が高いと思うんだけどね」
「なにどうでもいいことを張り合ってるんだ?」
なにやらマウントを取り合う二人へ、ツッコミを。
「あはは、どうせなら一番の親友を名乗りたいなーと思って! あとノリで!」
「ハハハ、右に同じく」
「あー、そうかい」
「あはは、それにしても陣くんたちと同じクラスで本当によかったよ! これでいつでも気軽にかまいにいけるからねー!」
灯里が目をキラキラさせ、はしゃぎだす。
「まあ、退屈しなさそうなメンツが集まったのは、いいことだな」
「フフッ、運命に感謝しないとね」
奈月も満足げにほほえむ。
「運命って、どうせいつものように、奈月が神代の権力で裏から手を回したんだろ?」
奈月と学園へ通い出してから、これまでずっと同じクラスなのだ。もはやここまでくると運命じみたものを感じるが、実は彼女が神代の権力でずっと手を回していたという。
「あら、なんのことかしら? もしかしたら陣と同じクラスがいいというアタシの一途な願いが、毎回奇跡を呼び起こしてるのかもしれないわね」
祈るように手を組み、お茶目にウィンクしてくる奈月。
「あ! クレハだ! ちょっと行ってくるね!」
そうこうしていると灯里が、教室に入ってきたクレハ・レイヴァースを見つけてあいさつしに行く。
なんと彼女も陣と同じクラスなのだ。おそらく奈月がクレハの動きを監視しやすいように、裏で手を引いたのだろう。
「そういえばクレハとも同じクラスだったな。にしてもあいつ、なんか動きがぎこちなくないか?」
なんとクレハは明らかに挙動不審。きょろきょろして、動きがとてもおそるおそる。すごく目立っていたという。
「ハハハ、緊張してるんじゃないかな。ボクたちも行こう」
「ああ」
シンヤとカナメもクレハのところへ向かおうと。
「ク、レ、ハ! おはよ!」
灯里は気づかれないように、クレハの後ろへ回り込む。そして彼女の両肩に手を置き、元気よくあいさつした。
「あ、灯里!? いきなり声を掛けないでよ!? びっくりするじゃない!?」
これにはビクンと身体を震わせ、目を丸くするクレハ。
「だってクレハとも同じクラスになれたからね! うれしくて、つい、はしゃいじゃってさ!」
「――うっ、まあ、そういうことならしかたないか。わたしも、灯里と同じクラスだってわかったときは、うれしかったし」
「ほんとに? クレハー! 大好きー!」
ほおを赤らめ本音を漏らすクレハへ、ガバっと抱き着きにいく灯里。
「ちょっと!? 灯里、みんな見てるから……」
困惑しながら引き離そうとするクレハだが、内心うれしそう。まんざらでもないみたいだ。
「おはよう、クレハ」
「よっ、クレハ。さっきのオロオロ具合、実に笑えたぞ」
「ッ!? うるさい! しかたないでしょ! ワタシ、学園に通うの始めてで、慣れてないのはもちろん、勝手とかわからなかったんだから!」
陣のツッコミに、クレハが必死に弁解してくる。
「そうなのか?」
「ええ、レイヴァース家の当主として、いろいろ準備しないといけなかったから学園とかに通ってるヒマはなかったの。そういうのは全部、専属の家庭教師任せだったのよ」
「へー、それなのによく学園へ通う決心がついたな」
「ここがちゃんとうまく運営できてるかの、視察のためよ。――まあ、幼馴染のみんながワタシを残して学園へ行ってしまって、さみしかったのもあるけど……」
クレハは手をもじもじさせ、目を伏せる。
「なによりここに来れば、陣とも顔を会わせられるかもしれなかったし」
そして彼女は陣の方をチラチラ見ながら、ぽつりとつぶやく。
「なんだ? もしかしてクレハ、オレを追ってここに来たのか?」
「ッ!? 話を聞いてなかったの!? 前半部分が主な理由よ!? 最後の陣のはついでのついで! 全然意識とかしてないんだからね!」
顔を真っ赤にし、ぷいっとそっぽを向くクレハ。
「クレハ、陣くんを追って来たんだね……。なんていじらしい子! 灯里さん、精一杯応援するからね!」
すると灯里が大げさに感動し、いじらしく応援を。
「灯里!? 変な勘違いを生むから、その妙に暖かい目はやめて! 違うから、違うからね!」
「クレハー、そんな強調しすぎると逆に怪しく見えちゃうよー」
詰め寄り必死に抗議するクレハへ、灯里がニヤニヤしだす。
「もー、と! に! か! く! ワタシは学園に慣れていないの! だから陣! しっかりサポートしなさいよね!」
クレハは陣へビシッと指差し、顔を赤くしながら命令する。
「いや、なんでオレが?」
「幼馴染でしょ! 腐れ縁でしょ! 心配かけまくったんだから、それぐらいめんどうみなさいよ!」
「ほらー、ほらー、陣くーん、熱いラブコールだよー」
「陣、お姫様のご指名だ。がんばらないとさ」
灯里とカナメが楽しそうに茶々を入れてくる。
「――おまえらな……」
「あら、クレハさん、申しわけないのだけど、陣はアタシとの学園生活で忙しいの。だからほかを当たってくれないかしら」
だんだん収拾がつかなくなっていると、奈月が会話に加わってくる。彼女は陣の腕を抱き寄せ、自分のものとアピールし始めた。
そんな奈月に食って掛かるクレハ。
「ふん、そんなの奈月さんが勝手に言ってるだけでしょ。学園でどう過ごすのかは、陣が決めること。でしゃばってこないでくれる?」
「ふーん、言うじゃない。くす、だってさ、陣。あなたはアタシとクレハさん、どっちを選ぶのかしら?」
奈月が意味ありげな視線を向けてくる。完全におもしろがっている様子だ。
「陣、そんな性悪女放っておいて、アタシの面倒をみてよ。困ってる幼馴染を見捨てる気?」
クレハが陣の空いている腕を引っ張り、助けを求めてくる。
結果、二人の美少女から取り合われる状況に。
「おいおい、前にもこんな展開なかったか?」
「修羅場! 修羅場!」
「ハハハ、モテモテだね、陣。どちらのお姫様を選ぶんだい?」
灯里とカナメがニヤニヤしてくる。
「おまえら楽しそうにしやがって……。――あのな、奈月もクレハも同じクラスになったんだから、仲よくしろよ」
「ふん、いくらクラスメイトだからといって、神代の人間と馴れ合うつもりなんてさらさらないから!」
「あら、アタシは大人だから、表面上は仲よくする気よ」
「相変わらず、癪にさわる女ね。アンタの魔の手から、絶対陣を解放してやるんだから!」
「くす、なんのことかしらね」
突っかかるクレハに、涼しい顔で言い返す奈月。相変わらず仲が悪い二人である。
「オレも美少女に取り合われてー」
「奈月様という方がいながら、あんなかわいい子にまで」
「許すまじ、四条陣!」
ここでの問題は、ほかの男子たちの嫉妬に燃えるまなざしが突き刺さること。あと奈月のファンクラブの人間からは、殺意まで飛んでくる始末。
「朝っぱらから、まじで勘弁してくれ……」
もはや天を仰ぎ見る陣なのであった。
教室でクラスメイト達が、わいわい楽しそうに過ごしているのを見渡す。
その中には同じクラスになった奈月と灯里の姿も。灯里は陣が購買で買ってあげた朝食セット。メロンパンを食べ終え、イチゴミルクの紙パックを片手に奈月とおしゃべりしていた。
「やあ、陣、いつも通りそうでなによりだ」
そこへ雨宮カナメが気さくに話しかけてくる。
ちなみに彼とも同じクラスだったという。
「カナメか。どういう意味だ?」
「求めていた輝きを手に入れて、人が変わったかのように魔道へのめり込んでたらどうしようかと思ってたよ」
「そうしたいのは山々だが、あいつらがいるからそうもいかないんだよな」
奈月と灯里の方を感慨深く見つめる。
登校時にも思ったが、どうやら最近の陣は灯里に毒されているらしい。求めて止まない輝きを手に入れてもなお、なにげない日常にいようとするとは自分でも驚きだ。それほどまでに同類であり、陣とは対極の陽だまりの道を選んだ灯里に魅せられ、影響を受けてしまっているのだろう。
「ハハハ、いいじゃないか。ボクとしてもまた学園でダルがらみできるのは、うれしいことだ。魔道の求道はあせらず、ゆっくりやっていけばいいさ」
カナメが陣の肩を組んで、涼やかな笑みを浮かべてきた。
「離れろ暑苦しい」
「テレなくてもいいじゃないか。ボクたちの仲だろ?」
「おまえとそんな深い関係になった覚えはないが」
カナメを押しのけていると、灯里と奈月が陣たちの方へとやってきた。
「ねー、ねー、陣くんから熱い視線を感じたんだけど!」
「いったいどうしたのかしら?」
「陣がね、このなにげない日常にいられるのは、二人がつなぎ止めてくれているからだって感謝してたよ」
「そうなの! 陣くん!」
「あら、陣がまさかそんなふうに思っていただなんて。普段はあんなに、しかたないからみたいな感じなのにね」
灯里と奈月が、どこか感動したようなまなざしを向けてくる。
「いや、そこまで言ってないからな! カナメが変な解釈して、大げさに言ってるだけだ!」
「そうかい? ボクは陣の心の中を代弁しただけなんだけど? その証拠に、陣の必死に否定する反応。それって図星ってことだよね?」
「わー、陣くん、テレ隠しかわいいねー!」
「陣、観念したほうがいいんじゃない? 墓穴をほるだけよ」
陣の反応に、ニヤニヤしてくる三人。
実際のところ、カナメの言う通りのところもあるため、悔しいがこれ以上言い返せなかった。
「――くっ……」
「そういえば水無瀬さんだったね、ボクは陣の親友の雨宮カナメ」
「それは奇遇だね! 実はわたしも陣くんの親友なんだ!」
するとカナメと灯里があいさつしだす。
「へー、ついでに言っておくと、ボクたち幼馴染で昔から深い深い仲でさ」
「あはは、でも仲っていうのは、時間の長さだけじゃ計れないよね! どれだけ気が合い、濃密な時間を過ごしたかだと思うの! そしてわたしたち多大な葛藤と苦難を乗り越え、かたいかたい絆で結ばれているんだなー、これが!」
「なるほど。でも小さいころからずっと仲がいいのは、かなり補正が高いと思うんだけどね」
「なにどうでもいいことを張り合ってるんだ?」
なにやらマウントを取り合う二人へ、ツッコミを。
「あはは、どうせなら一番の親友を名乗りたいなーと思って! あとノリで!」
「ハハハ、右に同じく」
「あー、そうかい」
「あはは、それにしても陣くんたちと同じクラスで本当によかったよ! これでいつでも気軽にかまいにいけるからねー!」
灯里が目をキラキラさせ、はしゃぎだす。
「まあ、退屈しなさそうなメンツが集まったのは、いいことだな」
「フフッ、運命に感謝しないとね」
奈月も満足げにほほえむ。
「運命って、どうせいつものように、奈月が神代の権力で裏から手を回したんだろ?」
奈月と学園へ通い出してから、これまでずっと同じクラスなのだ。もはやここまでくると運命じみたものを感じるが、実は彼女が神代の権力でずっと手を回していたという。
「あら、なんのことかしら? もしかしたら陣と同じクラスがいいというアタシの一途な願いが、毎回奇跡を呼び起こしてるのかもしれないわね」
祈るように手を組み、お茶目にウィンクしてくる奈月。
「あ! クレハだ! ちょっと行ってくるね!」
そうこうしていると灯里が、教室に入ってきたクレハ・レイヴァースを見つけてあいさつしに行く。
なんと彼女も陣と同じクラスなのだ。おそらく奈月がクレハの動きを監視しやすいように、裏で手を引いたのだろう。
「そういえばクレハとも同じクラスだったな。にしてもあいつ、なんか動きがぎこちなくないか?」
なんとクレハは明らかに挙動不審。きょろきょろして、動きがとてもおそるおそる。すごく目立っていたという。
「ハハハ、緊張してるんじゃないかな。ボクたちも行こう」
「ああ」
シンヤとカナメもクレハのところへ向かおうと。
「ク、レ、ハ! おはよ!」
灯里は気づかれないように、クレハの後ろへ回り込む。そして彼女の両肩に手を置き、元気よくあいさつした。
「あ、灯里!? いきなり声を掛けないでよ!? びっくりするじゃない!?」
これにはビクンと身体を震わせ、目を丸くするクレハ。
「だってクレハとも同じクラスになれたからね! うれしくて、つい、はしゃいじゃってさ!」
「――うっ、まあ、そういうことならしかたないか。わたしも、灯里と同じクラスだってわかったときは、うれしかったし」
「ほんとに? クレハー! 大好きー!」
ほおを赤らめ本音を漏らすクレハへ、ガバっと抱き着きにいく灯里。
「ちょっと!? 灯里、みんな見てるから……」
困惑しながら引き離そうとするクレハだが、内心うれしそう。まんざらでもないみたいだ。
「おはよう、クレハ」
「よっ、クレハ。さっきのオロオロ具合、実に笑えたぞ」
「ッ!? うるさい! しかたないでしょ! ワタシ、学園に通うの始めてで、慣れてないのはもちろん、勝手とかわからなかったんだから!」
陣のツッコミに、クレハが必死に弁解してくる。
「そうなのか?」
「ええ、レイヴァース家の当主として、いろいろ準備しないといけなかったから学園とかに通ってるヒマはなかったの。そういうのは全部、専属の家庭教師任せだったのよ」
「へー、それなのによく学園へ通う決心がついたな」
「ここがちゃんとうまく運営できてるかの、視察のためよ。――まあ、幼馴染のみんながワタシを残して学園へ行ってしまって、さみしかったのもあるけど……」
クレハは手をもじもじさせ、目を伏せる。
「なによりここに来れば、陣とも顔を会わせられるかもしれなかったし」
そして彼女は陣の方をチラチラ見ながら、ぽつりとつぶやく。
「なんだ? もしかしてクレハ、オレを追ってここに来たのか?」
「ッ!? 話を聞いてなかったの!? 前半部分が主な理由よ!? 最後の陣のはついでのついで! 全然意識とかしてないんだからね!」
顔を真っ赤にし、ぷいっとそっぽを向くクレハ。
「クレハ、陣くんを追って来たんだね……。なんていじらしい子! 灯里さん、精一杯応援するからね!」
すると灯里が大げさに感動し、いじらしく応援を。
「灯里!? 変な勘違いを生むから、その妙に暖かい目はやめて! 違うから、違うからね!」
「クレハー、そんな強調しすぎると逆に怪しく見えちゃうよー」
詰め寄り必死に抗議するクレハへ、灯里がニヤニヤしだす。
「もー、と! に! か! く! ワタシは学園に慣れていないの! だから陣! しっかりサポートしなさいよね!」
クレハは陣へビシッと指差し、顔を赤くしながら命令する。
「いや、なんでオレが?」
「幼馴染でしょ! 腐れ縁でしょ! 心配かけまくったんだから、それぐらいめんどうみなさいよ!」
「ほらー、ほらー、陣くーん、熱いラブコールだよー」
「陣、お姫様のご指名だ。がんばらないとさ」
灯里とカナメが楽しそうに茶々を入れてくる。
「――おまえらな……」
「あら、クレハさん、申しわけないのだけど、陣はアタシとの学園生活で忙しいの。だからほかを当たってくれないかしら」
だんだん収拾がつかなくなっていると、奈月が会話に加わってくる。彼女は陣の腕を抱き寄せ、自分のものとアピールし始めた。
そんな奈月に食って掛かるクレハ。
「ふん、そんなの奈月さんが勝手に言ってるだけでしょ。学園でどう過ごすのかは、陣が決めること。でしゃばってこないでくれる?」
「ふーん、言うじゃない。くす、だってさ、陣。あなたはアタシとクレハさん、どっちを選ぶのかしら?」
奈月が意味ありげな視線を向けてくる。完全におもしろがっている様子だ。
「陣、そんな性悪女放っておいて、アタシの面倒をみてよ。困ってる幼馴染を見捨てる気?」
クレハが陣の空いている腕を引っ張り、助けを求めてくる。
結果、二人の美少女から取り合われる状況に。
「おいおい、前にもこんな展開なかったか?」
「修羅場! 修羅場!」
「ハハハ、モテモテだね、陣。どちらのお姫様を選ぶんだい?」
灯里とカナメがニヤニヤしてくる。
「おまえら楽しそうにしやがって……。――あのな、奈月もクレハも同じクラスになったんだから、仲よくしろよ」
「ふん、いくらクラスメイトだからといって、神代の人間と馴れ合うつもりなんてさらさらないから!」
「あら、アタシは大人だから、表面上は仲よくする気よ」
「相変わらず、癪にさわる女ね。アンタの魔の手から、絶対陣を解放してやるんだから!」
「くす、なんのことかしらね」
突っかかるクレハに、涼しい顔で言い返す奈月。相変わらず仲が悪い二人である。
「オレも美少女に取り合われてー」
「奈月様という方がいながら、あんなかわいい子にまで」
「許すまじ、四条陣!」
ここでの問題は、ほかの男子たちの嫉妬に燃えるまなざしが突き刺さること。あと奈月のファンクラブの人間からは、殺意まで飛んでくる始末。
「朝っぱらから、まじで勘弁してくれ……」
もはや天を仰ぎ見る陣なのであった。
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