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第22話 誰が為の拳(クーSide:後編)
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「クーは畑に穴が開いちゃったのを、さっきは失敗だって言っていたけどさ」
「……はい」
「でも俺はそうは思わない。むしろ大成功だって思っているぞ」
「どうしてですか……?」
僕が訊ねると、兄さんは自慢げに鼻を鳴らした。そして満面の笑みで答えてくれる。
「だってさ、こんなにでっかい穴を空けて温泉を掘り当てたんだ。こんなの、クー以外にできる奴なんていないぜ?」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ、もちろんだ! たしかに畑は駄目になっちゃったけどな、アハハハ」
ストラ兄さんは自信満々な様子で頷いた。
えっと……それは褒めているのかな?
「結果なんて、結局は人がどう受け止めるかの問題なんだよ。たぶん今のクーは自分に自信が無いから、何をやっても悪い方向にしか行かないって思い込んでいるだけでさ」
「……でも僕は人を傷付けてばかりでっ!」
「もちろん反省することは大事だよ。でも『自分のせいだ』って落ち込んで思考を止めたら、それこそ失敗のまま終わっちまうだろ? そこで諦めて足を止めるより、次に生かすための糧にしてやろうぜ」
「次に、生かす……」
なんだかストンと腑に落ちた気がした。
たしかに僕は「この力があるせいだ」って言い訳をして、いつも逃げていた気がする。この力さえなければ、僕はちゃんと生きていけたはずなのにって。
「クーはさ。過去の大きな失敗が、ずっと心残りなんだろ。だから自分の力で他人を傷付けちゃうんじゃないかって、常に不安になっている」
兄さんの言葉に、僕はコクリと頷く。
「でも、フシたちを見てみろよ。今回クーが力を使ったことで、誰か怒ったり悲しんだりしているか?」
辺りを見渡すと、溶けたお餅みたいになって浮いているフシや、ホッとした顔で目を閉じるリディカ姉さんが視界に入ってくる。そして興奮した様子で僕を見るストラ兄さん。
みんな違う表情だけど、僕の目には幸せそうに映っていた。
「な? 役に立ってるって実感ができただろ。これを続けたら、きっとそのうち自信もついてくるはずだ」
「僕が、役に立った……?」
「そうだ。その力を、皆のために使っていこうぜ」
僕が皆のために……そんな考えは全くなかった。
「でも、どうやったらもっと皆のお役に立てるのですか?」
そんな僕の問いに対し、ストラ兄さんは腕を組んで答えてくれる。
「んー、そうだな。皆が喜ぶ姿をイメージしてみるのもいいかもな」
「みんなが喜ぶこと……」
そう言われて、僕はハッと思い出した。
フシやピイたちが、僕の捕まえてきた獲物を美味しそうに食べている姿を。僕に抱き着きながら、スヤスヤと安心して眠る夜を。
そんな光景を、僕は守りたい――。
「お、なんか思い付いたみたいだな。そうだぜ、クー。力の使い道は何も、誰かを倒すことだけじゃないんだ」
兄さんの言う通りだ。
僕は壊すことしか知らなかったから、守るためっていう発想が無かった。
「ま、答えは一つだけじゃない。だからゆっくり考えればいい」
「はい、そうするのです」
「おう!」
兄さんは視線を僕から外して立ち上がり、そしてそのまま空に向かって手を伸ばした。
「俺のこの力は、皆を守るために使いたい。そして幸せな人をできる限り増やしたいんだ。もちろん、種族なんか関係なくな!」
その優しい横顔は、僕の記憶に残っている父さんの笑顔とそっくりだった。
あぁ、そうか……僕も父さんやストラ兄さんみたいになりたかったんだ。困っている人を助けられる、そんな格好いい人に!
「ぼ、僕も! 僕もみんなを守れる人になりたいです!!」
気付けば僕は叫んでいた。
ストラ兄さんがゆっくりと振り返って、優しげな微笑みを向けてくれる。
「なろうぜ、一緒にさ!」
「……はい」
「でも俺はそうは思わない。むしろ大成功だって思っているぞ」
「どうしてですか……?」
僕が訊ねると、兄さんは自慢げに鼻を鳴らした。そして満面の笑みで答えてくれる。
「だってさ、こんなにでっかい穴を空けて温泉を掘り当てたんだ。こんなの、クー以外にできる奴なんていないぜ?」
「そ、そうなんですか?」
「あぁ、もちろんだ! たしかに畑は駄目になっちゃったけどな、アハハハ」
ストラ兄さんは自信満々な様子で頷いた。
えっと……それは褒めているのかな?
「結果なんて、結局は人がどう受け止めるかの問題なんだよ。たぶん今のクーは自分に自信が無いから、何をやっても悪い方向にしか行かないって思い込んでいるだけでさ」
「……でも僕は人を傷付けてばかりでっ!」
「もちろん反省することは大事だよ。でも『自分のせいだ』って落ち込んで思考を止めたら、それこそ失敗のまま終わっちまうだろ? そこで諦めて足を止めるより、次に生かすための糧にしてやろうぜ」
「次に、生かす……」
なんだかストンと腑に落ちた気がした。
たしかに僕は「この力があるせいだ」って言い訳をして、いつも逃げていた気がする。この力さえなければ、僕はちゃんと生きていけたはずなのにって。
「クーはさ。過去の大きな失敗が、ずっと心残りなんだろ。だから自分の力で他人を傷付けちゃうんじゃないかって、常に不安になっている」
兄さんの言葉に、僕はコクリと頷く。
「でも、フシたちを見てみろよ。今回クーが力を使ったことで、誰か怒ったり悲しんだりしているか?」
辺りを見渡すと、溶けたお餅みたいになって浮いているフシや、ホッとした顔で目を閉じるリディカ姉さんが視界に入ってくる。そして興奮した様子で僕を見るストラ兄さん。
みんな違う表情だけど、僕の目には幸せそうに映っていた。
「な? 役に立ってるって実感ができただろ。これを続けたら、きっとそのうち自信もついてくるはずだ」
「僕が、役に立った……?」
「そうだ。その力を、皆のために使っていこうぜ」
僕が皆のために……そんな考えは全くなかった。
「でも、どうやったらもっと皆のお役に立てるのですか?」
そんな僕の問いに対し、ストラ兄さんは腕を組んで答えてくれる。
「んー、そうだな。皆が喜ぶ姿をイメージしてみるのもいいかもな」
「みんなが喜ぶこと……」
そう言われて、僕はハッと思い出した。
フシやピイたちが、僕の捕まえてきた獲物を美味しそうに食べている姿を。僕に抱き着きながら、スヤスヤと安心して眠る夜を。
そんな光景を、僕は守りたい――。
「お、なんか思い付いたみたいだな。そうだぜ、クー。力の使い道は何も、誰かを倒すことだけじゃないんだ」
兄さんの言う通りだ。
僕は壊すことしか知らなかったから、守るためっていう発想が無かった。
「ま、答えは一つだけじゃない。だからゆっくり考えればいい」
「はい、そうするのです」
「おう!」
兄さんは視線を僕から外して立ち上がり、そしてそのまま空に向かって手を伸ばした。
「俺のこの力は、皆を守るために使いたい。そして幸せな人をできる限り増やしたいんだ。もちろん、種族なんか関係なくな!」
その優しい横顔は、僕の記憶に残っている父さんの笑顔とそっくりだった。
あぁ、そうか……僕も父さんやストラ兄さんみたいになりたかったんだ。困っている人を助けられる、そんな格好いい人に!
「ぼ、僕も! 僕もみんなを守れる人になりたいです!!」
気付けば僕は叫んでいた。
ストラ兄さんがゆっくりと振り返って、優しげな微笑みを向けてくれる。
「なろうぜ、一緒にさ!」
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