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第17話 魔王様、謝罪する

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「調子に乗ってごめんなさい……」

 ティリングの街から帰還後。
 俺は領主館の食堂で土下座していた。


「無駄遣いはしないから、買い出しは俺に任せろって言いましたよね? なのにこの大量の商品は何なんですか!?」

 両手を腰に当て、悪戯をした子供を叱る母親のようなポーズのリディカ姫が、俺を見下ろしている。

 ちなみに共犯であるはずのピィは、フシとクーと一緒に外へ遊びに行ってしまった。プレゼント(賄賂)をしたっていうのに、あの薄情者め。


「聞いてますか!?」
「は、はい! 誠にすみませんでしたッッ!」
「もう、いい大人なんですから。しっかりしてください!!」

 う、うぅ……返す言葉もございません。
 珍しい種類の野菜があったものだから、領主という立場も忘れて、つい大人買いしてしまったんです。

 でもトマトもナスも美味しいよ? スパイスの苗も手に入ったし、上手く作れたら夏野菜カレーも作れるよ??


「はぁ、買ってしまったものは仕方ありません。責任をもって育ててくださいよ?」
「はい! もちろんです!!」
「……まったく、調子がいいんですから。ふふっ」

 怒りの表情から、少し困ったような笑みへと変わったリディカ姫に、ホッと胸を撫でおろす。
 でも良かった……どうやら機嫌は治ってくれたみたいだ。

 すると食堂の扉が開き、ピィたちが帰ってきたようだった。

「たっだいまなのニャー!」
「楽しかったのー」

 いつも感情が薄いピィの声がやや弾んでいる。
 フシやクーにせがまれて、俺があげた魔道具で空を飛んできたらしい。上手く使えたようでなによりだ。


「みんなが集まったことだし、畑をどうするか説明しようと思う」

 食堂のテーブルで、それぞれの定位置に座った仲間たちを見回し、俺は話を始めた。

「まずは、俺たちで管理できる広さを開墾しよう」

 元々この村には、百人ほどが住んでいたらしい。
 つまり畑は、それだけの人数が生活できるだけの規模があったわけで。草だらけになってしまった畑を全て元通りにしてしまうと、今の少人数で扱いきれない。


「ストラ兄が魔法を使えば不可能じゃないのニャ?」
「そうしてもいいんだが、あくまでも領主のメイン業務は管理と運営だからな。できるかぎり、そこで生活する村人に手入れをしてもらいたい」

 もちろん、将来は村人を増やして、それに合わせて畑もどんどん広くする予定だ。だけど現段階でそれをやってしまうと……。


「川や井戸は作物以外に、人も使いますからね。しかも簡単には移動できないので、無計画にやってしまうと凄く不便な目に遭ってしまいます」
「おぉ、さすがリディカ姫。そういうことも学んでいるんだな」
「えへへへ。社交界に出してもらえなかったので、お城の図書館に引き篭もってずっと本を読んでいましたから……」

 おっと、リディカ姫の瞳から光が消えてしまったぞ。触れてはいけない過去を掘り起こしてしまったらしい。


「と、ともかく。畑は全部で三つ作ろうと思う。一つ目が麦用の畑だ」

 俺の領地では、小麦や野菜を自給自足できる体制を整えるつもりだ。そのためにはまず、主食となる作物の育成が必要になる。

「二つ目は薬草用の畑だ。これはピィに一任したい」

 彼女には、村の周りで自生している薬草を集めてきてもらう予定だ。

 遠くからでも目当ての物を発見できるほどの視力持ち。さらには、いつも虫の集まる植物のところにいたので薬草にも詳しい。ピィほどの適任は居ないだろう。

 計算も得意なので経理も任せたいところだが、残念ながら計算する収入がまだ無いし。


「三つめは、実験用の畑だな」
「実験用ですか?」
「そう。実は魔族領で自生する植物の種を、少し持っていてな。それをこの村でも育てられないか、試してみようと思うんだ」

 そう言って俺は、収納バッグからワサワサと黒い毛の生えた種を取り出した。





――――――――――――――――――

「ストラゼス様。とある世界で『ファンタジー大賞』が始まったそうですよ」
「あー、らしいな。読者さんの応援で、受賞する確率がUPするんだとか」

「『投票』をしてもらった作者が、気持ち悪い顔をしていたニャ!」
「僕も見たのです!」
「見たのー」

「ちょっ、三人とも……」
「…………あんまり言ってやるな」
「え、えっと。清き一票を入れてくださると……」

「作者はともかく、フシたちのためによろしくニャ!」
「なのです!」
「よろしくー」
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