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聖杯の章

♡13 タロットの真実

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「それが何だ」
「紅莉のタロットは外れない。ねぇ、彼女が占ったことで外れたことがあったかい?」
「それは……いや、なら尚更おかしいじゃないか!!」

 たしかにカズオについて占った時も当たっていた。
 だがあの時、紅莉は俺の運勢をこう言っていたはずだ。

『今回は三枚のカードで、悠真君の過去から現在、そして未来について見てみます』

「あの時、紅莉はこの三枚のカードをキミに見せた」

 マルコは胸ポケットから三枚のカードを取り出す。
 そして一枚一枚、悠真の前に屈んで並べ始めた。

 悔し涙で視界が滲む。腕で拭っても拭っても止まらない。
 涙が赤いと思ったら、気付けば腕の傷が開いていたみたいだ。
 でも興奮していて痛みなんてちっとも感じない。


「過去がソードの六。現在が真ん中が吊るされた男。未来がワンドの三」

 カードの呼び方は分からない。でも、書いてある絵には見覚えがあった。
 紅莉が持っていたカードと同じだ。まだ数日前のことなのに、懐かしい思いで胸が締め付けられた。呼吸が苦しい。

「過去は紅莉の支援を受けられることを示唆していた」

 マルコが指を差しながら説明をする。

『まずは過去ね。これは困難に向かう時、誰かの援助を受けられるって示されてるわ』

 そうだ。紅莉もそう言っていた。


『そして現在。悠真君は心配していたけれど、これはどちらかと言えば良い兆候よ』

『このカードは報われる努力を意味しているの。だから今の行動を信じて、このまま突き進むべきって事かな』

『うんうん。三枚目は新たなる旅立ち。先はまだ見えずとも、しっかりと大地に立って進んでいける。そんなカードだよ』


 どれも紅莉は悠真にとって良い事を言っていたはずなのだ。
 それがどうしてこんなことに。報われる努力? 新たな旅立ち?
 ふざけるな。紅莉が死んだ未来が良い旅立ちになるわけがない。


「では、教えてあげよう。タロットには正位置と逆位置がある。ほとんどの場合、逆位置ではその意味は逆転する」
「は? 正位置……?」
「キミは自分から見た方が正位置だと思っていたようだけど、それは違うんだよ。占い師から見ての向きが正解なんだ。だから、ね……」

 マルコは悠真にも分かるよう、上下の向きを逆にしていく。


「吊るされた男の逆位置。報われない努力。ワンドの3、その逆位置は『見えない未来』『トラウマ』『失敗』……紅莉は全て、


 ――逆?


「う、うそだ……」
「こうみえてボクは嘘が嫌いなんだよ。だから、ボクは最近の紅莉は好きじゃなかった。純粋だったあの子が、キミの前では嘘ばかり……ぜんぶ、キミのせいだ」
「俺が……」
「そう。ボクは紅莉を愛していた。なのに、紅莉はボクじゃなくって、キミを選んだんだ。憎いったらありゃしないね」

 真顔でそう言うマルコは真ん中のカードを拾い、指でビリビリと破いていく。


「紅莉はね。あの本に妄執した日々子の娘……彼女はボクとの子だと思っていたようだけど、勘弁してほしいよね。愛も無いのに子供ができるわけがないじゃないか。おっと、話がずれてしまった。星奈、とか言ったっけ? その子から、キミを奪いたかったんだよ。紅莉は」


 紅莉が星奈を……?

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