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金貨の章
♦10 紅莉の秘策
しおりを挟む「……立夏って子。今、配信しているみたい」
「マジかよ……ソイツ、学生なんだろ? 学校サボってんのか?」
紅莉にスマホを見せてもらうと、確かにRIKKAというハンドルネームの女が配信をしていた。
どうやら最近発売されたホラーゲームの実況らしい。
配信の音とドア越しに聞こえている悲鳴が同じだった。
自分達のことを棚に上げておいて言うのもなんだが、学校にも行かずに何をやっているんだろう。そして平日の昼前だというのに、視聴者数も結構居るようだし。
「……で、どうする?」
諦めて出直すか? という意味を込めて紅莉にそう聞いてみる。
どちらにせよ、このまま部屋の前で待ち続けるわけにもいかないし。
「私に考えがあるわ。だから一度、下に戻ろう?」
「ん? 分かった。行こう」
案があるというのなら、乗ってみよう。
二人は再び、エレベーターホールへと向かう。
エレベーターの扉が閉まると、紅莉は「はぁ~」と溜め息を吐いた。
「それで、紅莉は何を探しているんだ?」
無事に一階に戻ってくると、紅莉はすっかり元気を取り戻した。
今はエントランスホールにあるポストの前を、行ったり来たりしている。
「七〇三号室のポスト。あ、あった!」
「いや、ポストで何を……っておい!」
紅莉は突然、ポストの挿入口をガチャガチャと開けて中身を覗き始めた。
運よく住人が辺りに居ないから良かったが、明らかに不審者である。
おそらく監視カメラもあるだろうから、バレたら大変なことになる。
悠真は紅莉に止めるように言うのだが、まったく聞いていない。
それどころか、今度は開封口にあった外付けのダイヤル式の鍵に手を出し始めた。
「おい、やめろって! 誰かに見つかったら……」
「開いた!」
「え? いや、嘘だろ……」
紅莉は自慢げに悠真に自身が開錠したばかりのダイヤル錠を見せつけてきた。
たしかに、開いている。
開いてはいるのだが……。
「いや、これは安直過ぎるだろ……」
そのダイヤルの番号は『一二三四』という、何の捻りも無いものだった。
「最初見た時には一二三五だったよ!」
「それで分からないっていう方がおかしいだろ……」
ここの住人は防犯意識というのが無いのだろうか。
忘れっぽいからこの番号にしたのか、毎日開け閉めするのが面倒だからこの番号に行きついたのか……いずれにせよ、鍵のテイを成していないものだった。いったい何のための鍵なんだか。
しかし、驚くのは鍵だけでは無かった。
「やったぁ! ツイてるよ、私達!!」
「なんというか、まぁ。この部屋の住人の性格が分かっちゃうよな……」
ポストの中をガサゴソと漁っていた紅莉が見つけたのは、キーホルダー付きの鍵だった。これは多分、玄関のスペアキーだろう。
キーホルダーには警察帽を被ったペンギンが『しっかり防犯!』というセリフ付きで描かれている。
持ち主は一体何を考えてこれを付けたんだ?
これをつけたら犯人が遠慮するとでも思ったのか?
「よしっ、もう一回部屋に行ってみよう!」
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