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5-9♡ 二度目の喪失

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 ――深い、気が遠くなるような長いキス。
 モナを貪るように腔内を舐めとり、舌を絡め合う。
 息をするのも忘れて、相手を求め合う。

「んあっ……はふ……」
「もう駄目だと言っても遅いからね。キミを最後まで……犯す」

 ウルの双眸は女を狩る捕食者の目に変わっていた。
 獲物は勿論、モナだ。
 だが彼女はそれに怯むことはない。
 なぜなら、その瞳に映る自分自身も同じ眼をしていたから。

「もう、いいの……お願い……私を奪って……」
「分かった。ならこれを飲んで。痛みも和らぐから」

 ウルは唾液に魔力を込めると、疑似的な魔力ポーションを生み出した。
 それをキスと一緒に互いの体液を交換する。

「んくっ、んはあっ……」

 それは甘く、痺れるような感覚。
 酒精の酩酊感にも似た、心地よい官能的な快感が波の様に押し寄せ、モナの脳を蕩けさせる。
 それを自分から欲しがるように舌を伸ばし、すべて余すことが無いように腔内を蹂躙した。

 上気し、情欲に染まる雌の表情がウルの雄をさらに刺激させる。
 彼の下半身は驚くほど怒張していた。

「ウルのここ、苦しそう……」
「うっ……」

 服の上からサワサワと撫で、やさしく包んでみる。
 血が集まっただけとは思えないほどの硬さと熱が手に伝わってくる。
 敏感な部分に刺激を与えられたウルが呻く。
 自分の顔に熱い吐息が掛かるのも心地良い。

 ――彼の全てを受け止めてあげたい。
 他の誰でもない、自分自身で。

 ――そのためなら、初めてをあげてもいい。
 奪ってもらえたら、なんだか苦しみから全て解放してくれる、そんな気がするから。


「ウル……」
「分かってる、急かさないで?」
「ああっ……」

 はしたないと思いつつ、彼を求めてしまう。
 ウルもそれも承知の上で焦らしているのだ。
 段階があるでしょ?とばかりに、モナの蜜壺の具合を確かめ始めた。

 端正な甘い顔をしているくせに、彼の手は凄く男らしい。
 鍛錬で節くれだった、あのゴツゴツした指がニュププと卑猥な音を立てて侵入してくる。

「あっ、あああっ!!」

 太い触手のような指がもうとっくに濡れそぼっているモナの柔壁を繊細な動きでかき乱す。
 この契約の期間内で行われた、幾度とない前戯ですっかり自分の弱点は知られてしまっている。
 いや、それだけではない。
 彼女は自分すら知らなかったスポットを開発されていた。

「ここ、好きなんだよね?」
「や、ああっ……あ、あっ。ああっ!」

 耳元で囁かれ、そのまま舌で蹂躙される。
 ゾワゾワとした快感で首筋の肌が粟立つ。
 同時に洞窟内の甘い部分をグリグリとなぞられてしまう。
 自分では届くことの無い二点を同時に攻められたモナが、短く、連続して啼く。

「あ~ぁ、もしかしてイク? 俺のが欲しいとか言ってた癖に、指だけでイっちゃうの?」
「言わないでっ、だ、めっ……んんっ!! あああっ!!」

 トドメとばかりに言葉でも攻められ、ビクビクと情けなく痙攣する下半身。
 もしかしたら腰も動いていたかもしれない。

「はあっ、はあ……はぁ……」
「どうしたの? もう、満足しちゃった?」
「いや……いじわる、しないでよぉ……」

 普段のモナでは考えられないほどの甘ったるい声で懇願する。
 自分と同じ顔でヴィンチの剛槍を強請っていた妹の顔が一瞬脳裏をよぎる。
 リザとヴィンチが繋がっていた時は嫌悪や疑問で頭がいっぱいになったが、今なら分かる。
 心からオトコを欲した時は誰だってああなるのだ。
 そして今、自分もあの時のリザと同じような顔をしているに違いない。


「欲しい……」
「なにを?」
「ウルの……おちんちん……」

 遂に、言ってしまった。
 もう後戻りはできない。

 ――するつもりもないけれど。


 ウルは良くできました、とモナの頭を再び撫でると下半身を露出し始める。

「すごい……」

 何度も見慣れた――見慣れてしまった、彼のイチモツは天井まで反り返っていた。
 血管の浮いた肉の槍はいつ見ても立派だ。
 アレが自分の中に入ると想像しただけでまた下半身がジワっと熱くなる。

 正直前世の夫なんてモノより比べ物にならない。
 あんな大きなモノが、処女である自分に入るかどうかも分からない。

 心臓がバクバクと鳴って止まらない。

「入れるよ……?」
「う、うん。きて……?」

 優しくしてね、と言い掛けて口を閉じた。
 そんなのは求めていない。
 忘れられないような痛みと一緒に、ウルを自分に刻み付けて欲しい。
 奪うなら、一生残るセックスを。

 だが、モナの想像していた痛みが来ることは無かった。


「ひあぁっ、んんんっ~!!!!」

 挿入の直前にキスをされた。
 今までとは違う味がした。
 そう思った時にはウルの大きな棒が侵入してきた。
 そして、絶頂してしまったのだ。

 おそらく、今まで以上に濃い媚薬効果のある唾液を飲まされたのだろう。
 効果が出るや否や、今までで一番強くて深い快感が膣内から脳まで一気に駆け上ってきた。

 驚くことに、まだウルの肉槍は最奥まで達していなかった。
 極限まで引き伸ばされた時間の中で、ズルズルと挿入ってきているのが分かる。
 感覚も鋭敏になってしまっているようで、ソレが蜜壁を擦る度に絶頂してしまうのだ。

 目がチカチカする。声にならない声が止まらない。
 呼吸が出来なくて苦しい。

 何度もクる快楽で脳はバグったように覚醒と解脱を繰り返す。
 背筋がピンと伸び、脱力する間もなく再びイカされる。
 そして彼の先端が遂に最終地点まで辿りついたころには、モナの強靭な精神でももたず、意識がトんだ。



 モナが再び意識を取り戻した時には、ベッドの上だった。
 服も綺麗に着せられ、体液塗れだったシーツもしっかりと取り換えられていた。
 まるで夢だったかのような感覚だが、下半身に残る異物感と痛みは行為の証だろう。

 なにより、自分の隣りには優しく微笑む、全裸のウルがいたのだから。

「おはよう、モナ……」
「ちゅっ……おは、よう……ウル」

 挿入されただけで壊されてしまった恥ずかしさでマトモに顔を見ることが出来ない。
 いくら媚薬のせいだと言ったって、前世では子どもも産んだこともある自分があそこまで一方的に乱れるとは思わなかった。

「ごめんね、ちょっとやり過ぎちゃったみたい」
「ううん、私こそすぐ気を失っちゃって……」

 おそらく彼はあの後、すぐに行為を止めてくれたのだろう。
 優しい彼ならそれ以上をすることもないはず。

(私が寝ている間に襲っちゃってても可愛いから許しちゃうけど……)

 まったく、いつの間にこんなに変態にさせられてしまったのか。
 ちょっと前だったら性に関してここまでじゃなかったのに、すっかり染められてしまった。
 だが嫌な思いは無い。
 あれだけ鬱屈して重かった心は少しだけ軽くなった気がする。
 それもこれも、彼が奪ってくれたお陰。
 だからモナはそのお礼をしたくなった。

「ねぇウル……今から続き、する?」


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