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『創造』のチカラ
しおりを挟むそうして僕がダンジョンでリアラを拾ってから、半月が経った。
晴れて冒険者となった僕たちは短期間で目覚ましい成長を遂げていた。
目の見えない彼女をいきなり命の危険に晒すのは不安だらけだったけど、それは全くの杞憂だった。
恐怖なんかよりも、リアラは見えることの喜びと好奇心に溢れていた。
恐ろしいモンスター相手にも積極的に攻めていて、僕よりもよっぽど冒険者らしかった。
全てを切り裂く魔法の剣を。
何者も拒む頑強な鋼の盾を。
僕が状況を『コネクト』し、リアラが『創造』で打破する。
僕と手を繋いでいる間の彼女は、文字通りの無敵になったのだ。
お陰で比較的難易度の低めなダンジョンは危なげなく踏破できるようになった。
戦闘技術の拙さはあるものの、彼女の祝福はそれを補って余りあるほどに強大だ。
まぁ何故か生み出す土偶は相変わらずブサイクな土偶のままだったけれど。
その土偶も、まるで命を吹き込まれたかのように動くようになった。
物語の中に出てくる伝説のゴーレムを彷彿とさせるような働きを見せ、コイツのお陰でダンジョンのトラップは無効にできたし、移動もかなり楽に進めるようになった。
って言っても、本当はコイツにワザとトラップに引っ掛からせていくだけなんだけどね……。
冒険者としての生活にもだいぶ慣れた僕たちは、満を持してミードのダンジョンへと向かった。
そこでも数々の困難に襲われたけれど、僕たちが歩みを止めることは無い。
モンスターやトラップを退け、数日かけて前へと着実に進んでいく。
過去の僕では到底辿り着くことのできないダンジョンの奥深く。
震えあがりそうな恐ろしいモンスターも、彼女が隣りに居れば僕は戦える。
「大丈夫か、リアラ」
「平気です。メージュさんがこうして手を握ってくれているので!!」
「……ああ!! 絶対に手を離すなよ」
一人じゃないということがこんなにも勇気をくれるとは。
今までの僕は、生まれた場所を追い出された恨みを晴らすためだけにダンジョンに潜っていた。
だけど今はもう名声を掴んで家族を見返す、だなんてどうでもいい。
この小さな手を護りたい。
大事な家族を救おうとする彼女を助けたい。
……でも、もし僕たちがエリクサーを手に入れることができたら。
彼女の目が見えるようになった時。
僕はどうなってしまうのだろう。
また独りぼっちになってしまうのかな。
それはなんか嫌だな。
僕も彼女の家族の一人になれたらいいのに……。
こうして攻略開始から四日ほど経った頃。
僕たちは漸くミードのダンジョンにある、最奥の間に辿り着いた。
最奥の祭壇には神像が鎮座している。
これに祈りを込めれば、めでたく目標達成だ。
「やっとついた……」
「やりましたね、メージュさん!!」
ここまでの苦労を思い出し、僕たちは抱き合って喜んでいた。
最初の頃は手を繋ぐのさえちょっと恥ずかしかったけれど、今じゃまるで熟年夫婦のようだ。この半月の間、同じものを見て寝食を共に過ごしてきたら、自然とこうなってしまった。
ともかく、これで念願のエリクサーを得ることができる。
リアラの目を治したら、彼女の家族を救いに行くのもきっと上手くいくはずだ……!!
……だけど、現実はそう甘く無かったようだ。
「クハハッ!! 『創造』の祝福がここまで強力とはな。創造の女神と不老不死のエリクサー、俺に譲って貰おうか……!!」
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